GoToキャンペーンの効果は限定的?4つの分野で経済効果を予測

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コロナ対策の一環として始まった国の経済政策「GoToキャンペーン」は紆余曲折を経ながらも、これまでのところ着実に経済効果を発揮しているように見えます。7月に東京都を除外する形で先行スタートしたGoToトラベルに続き、GoToイートも10月から開始される予定です。10月中旬には残り1つのGoToイベントとGoTo商店街の開始も発表されており、コロナで打撃を受けて幅広い業界が支援される見通しとなりました。

1兆円以上の予算をかけて実施される大事業だけに期待は高まりますが、一方ではGoToキャンペーンの効果も限定的だという声があります。規模が小さい宿泊施設はキャンペーンの恩恵を十分に受けられないケースも見られ、高級宿を運営する大手が得をするような仕組みだと言われているのです。多様な意見が寄せられているGoToキャンペーンについて、4つの事業ごとにどれだけの効果が期待できるのか考察してみました。

GoToキャンペーンとは?

新型コロナウイルスの感染が広がったことで人々の消費行動が大きく変化し、観光業界や飲食業界・イベント業界などは業績が大幅に落ち込んでいます。当初は感染拡大の抑止を最優先としていた政府も方針を改め、7月以降は経済との両立を図る方向に舵を切りました。

コロナ禍で需要が大きく落ち込んだ業界を支援する目的で考え出されたのが、4つの事業からなるGoToキャンペーンです。4種類のキャンペーンは対象とする業界や管轄する省庁が異なり、開始時期にも数ヶ月単位で差が生じました。

国土交通省が所管するGoToトラベルは観光業界を支援する事業で、東京都以外の46道府県では7月からスタートしています。農林水産省が所管するGoToイートは営業自粛要請などで業績が落ち込んだ飲食業界を支援する事業で、食材を提供する農林水産業も支援の対象です。

10月中旬の開始が予定されているGoToイベントは経済産業省の所管で、音楽コンサートや舞台芸術・文化芸術・スポーツイベントなどのチケット購入時に補助が受けられます。同じく経済産業省が所管するGoTo商店街は、全国の商店街を対象にイベント開催やプロモーションの実施などを支援する事業です。

GoToトラベル以外の3事業は開始時期が10月にずれ込む見通しで、東京都に関してはGoToトラベルも10月1日からの開始となります。いずれの事業も万全の感染対策を講じた上での参加が条件となっているだけに、感染が再び拡大した場合は中止や一時中断などの措置が取られる可能性も否定できません。

GoToトラベルの効果は限定的?

GoToキャンペーンの導入が決まった7月は感染の再拡大が続いていた時期で、当初の予定から前倒しされた開始には反対の声も少なくありませんでした。国会で野党議員から「強盗キャンペーン」「GoToトラブル」などと揶揄されたほど混乱の中でのスタートとなり、内閣支持率低下の一因となった点も否めません。

反対意見を押し切る形で始まったGoToトラベルからは最大の人口を擁する東京都が除外されていたせいもあって、経済効果は限定的と見られていました。東京都以外の道府県でも感染者が急増していた時期で、当初は多くの人が「旅行どころでない」と感じていたのです。

そうした状況も8月以降は徐々に落ち着きを取り戻し、感染者数が減少傾向に転じた頃からGoToトラベルの利用者も増えていきました。8月末までのGoToトラベル利用者の数は速報値で1,300万人以上に達し、東京都の人口に匹敵する人が利用した計算となります。これを受けて全国の観光業界関係者からは、「だいぶ助かっている」「GoToトラベルがなければもっと悲惨な状況になっていた」という声も寄せられたほどです。

当初は批判的な声が多かったGoToトラベルも、そうした点を考えると一定の効果はあったと見られます。10月以降は満を持して東京都も対象に加わり、経済効果はさらに加速するはずです。それだけ感染の再拡大も懸念されますが、東京都以外では感染の極端な拡大を抑えながら観光を振興させてきた実績があります。

低価格の宿泊施設が苦戦している理由

コロナ禍で最も大きな打撃を受けた観光業界にとっては救世主となったGoToトラベルも、すべての宿泊施設が恩恵を受けているというわけではありません。もとより感染対策が不十分だったりしてGoToトラベルに参加していないホテルや旅館は恩恵を受けられず、キャンペーンでかえって不利になりかねない状況です。入念な感染対策を講じた上で参加している宿泊施設でも、思うように客足が伸びていない例は少なくありません。
GoToトラベルは1人1泊あたり最大2万円の割引が受けられる仕組みで、先行スタートしていた旅行代金そのものの割引は35%となっています。15%が補助される地域共通クーポンが10月から加われば、旅行代金が最大で半額になるという仕組みです。

割引額の上限が2万円に設定されている点を考えると、滞在先の飲食店や土産店の利用を含めた代金の総額が1泊あたり4万円の旅行が最もお得になります。旅行代金が4万円と言えば宿泊費も相当に高額な高級ホテルや高級旅館が想定されるだけに、もともと低価格の料金を売りにしていた民宿やビジネスホテルにとっては不利な状況です。

実際にGoToトラベルを利用した人の多くは普段なかなか利用する機会のない高級宿を予約しているのが現状で、1泊あたり1万円以下で泊まれる民宿やビジネスホテルはキャンペーン開始後も振るいません。GoToトラベルは数年前からブームとなっていた民泊も対象に含まれますが、マンション型のように低価格が売りだった民泊施設は同じように利用が低迷している状況です。

GoToトラベルの経済効果が限定的だと言われている背景には、宿泊施設の間でそうした格差が生じているという事情があります。東京都民には高所得者が多いだけに、10月以降に東京都が対象に加われば格差がさらに拡大しかねません。

GoToトラベルで無断キャンセルが相次いでいる意外な理由とは?
GoToトラベルで宿泊施設に活気が戻っていますが、地域共通クーポンの不正取得が目的と見られる無断キャンセルも相次いでいます。宿泊業界を支援するはずのキャンペーンで何が起きているのか、根深い無断キャンセルの問題について取り上げてみました。

GoToイートで予想される効果

この記事を書いた時点では飲食業界を対象としたGoToイートはまだ正式に開始されていませので、経済効果も予想の域にとどまります。感染の落ち着いた地域から順に開始される予定となっているGoToイートのキャンペーンは、ポイント還元とプレミアム付き食事券の2種類です。地域によって開始時期はバラバラですが、ポイント還元に関しては10月1日から順次開始されると発表されています。

ぐるなび食べログなど、認定されたオンライン飲食予約サイトがGoToイートのポイント還元対象です。それらのサイトで飲食店を予約・来店した人は、次回の来店時に使えるポイントが1人最大1,000円分もらえます。

購入金額が最大25%上乗せされるプレミアム付き食事券も地域によって開始時期が異なり、一部の地域では10月上旬から先行予約が開始されるという状況です。紙媒体の食事券はお釣りが出ませんが、QRコードを使った電子食事券なら1円単位で使うことができます。

現時点では33の府県でプレミアム飲食券への参加が決まっていますが、1次公募の時点では東京都が含まれていません。プレミアム飲食券の使える地域が限られているせいか、GoToイートに関しても今のところGoToトラベルほど注目度は高くないのが現状です。

東京都など現時点で対象でない地域に住んでいる人でも、対象地域への旅行ならプレミアム飲食券も利用可能です。GoToトラベルの地域共通クーポンと合わせて利用すればさらにお得ですので、10月にスタートすればある程度の経済効果を発揮するものと期待されます。とは言えキャンペーンに参加しない飲食店が少なくない上に対象地域も限定されることから、GoToトラベルほどの盛り上がりを期待するのは難しいと見るのが妥当です。

【11月16日追記】GoToイートのオンライン飲食予約は「トリキの錬金術」や「無限ループ」の裏技で何かと話題を集めてきましたが、予算が上限に達したことでポイント付与の終了が農水省から発表されました。「食べログ」や「ぐるなび」「ホットペッパーグルメ」など主要な予約サイトでは、11月15日前後で新規予約を終了しています。これまでに付与されたポイントは2021年3月末まで使用が可能で、プレミアム飲食券の方も現時点ではまだ発行されている状況です。
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GoToイベントで効果

新型コロナウイルスが広がったことで大きな打撃を受けたのは、観光業界や飲食業界だけではありません。音楽コンサートや舞台公演・スポーツイベント・テーマパークでも中止や自粛・無観客試合が相次ぎ、エンタメ業界・スポーツ業界が存続の危機に直面しました。営業自粛や展覧会の中止が相次いだ映画館・美術館・博物館なども含め、コロナ禍にあっては「不要不急」と判断されがちな文化芸術の分野は客足が遠のいてしまったのです。

そうした業界の悲痛な声を受け、GoToキャンペーンにエンタメ業界やスポーツ業界への支援も盛り込まれました。これまで明らかになっていなかったGoToイベントの内容が9月下旬になって発表され、10月中旬のスタートに向けた事業が動き出しています。チケット代や会場の物販などに20%の割引が適用されるGoToイベントは、以下のようなイベントやエンターテインメント行事が対象です。

  • 音楽コンサート
  • 伝統芸能
  • 演劇
  • 美術館
  • 博物館
  • 映画館
  • 遊園地
  • 展示会
  • スポーツの試合観戦
  • スポーツイベント
  • 無観客ライブの配信

GoToトラベルのように料金が実質半額になるというほどではありませんが、GoToイベントが実施されれば業界の活性化につながるものと期待されます。とは言え1兆円以上の予算を投じて実施されるGoToトラベルと比べ、GoToイベントの予算は事務委託費を含めても約1,200億円です。

観光業界もイベント業界も年間の市場規模は16兆円から17兆円ほどに上り、コロナ禍で大打撃を受けたという点では変わりありません。それでいてGoToキャンペーンに投じられた予算にこれだけの差が設けられたのは、観光業界の方が重視されている証拠とも言えます。

ちなみに飲食業界の市場規模は2018年の時点で約14兆円という調査結果が出ていますが、GoToイートに投じられた予算はおよそ2,000億円です。そうした予算の規模を考えると、GoToイベントで予想される経済効果もGoToイートと同じくGoToトラベルには及ばないと見られます。

GoTo商店街の効果

コロナ禍においては観光業や飲食業・イベント業への影響が特に大きかったとは言え、外出自粛の動きが広がったことで全国各地の商店街も売上が大きく落ち込みました。小売業やサービス業などさまざまな業種の店が集まる商店街を支援する目的で、GoTo商店街が4つ目の事業として追加されています。予算の規模は50億円程度で、他の3事業ほど大々的に実施されるわけではありません。

GoTo商店街は商品券や割引などの形で消費者が直接利用できるようなキャンペーンでもなく、予算の使い道は事業に参加する商店街に委ねられています。商店街で独自にイベントを実施して集客したり、プロモーションや商品開発に役立てるなどの利用方法が考えられます。

予算の上限は1商店街あたり300万円で、商店街同士が広域で連携を行う場合はさらに500万円が上乗せされる仕組みです。GoToイベントとともに10月中旬からの開始が予定されていますが、予算が消費者に還元されるまでには時間がかかると見られます。他の3事業と比べて予算の規模が小さい点も考えると、キャンペーンの実施でどれほどの経済効果が得られるか現時点では未知数です。

10月19日スタートのGoTo商店街とは?全国への経済効果を予想
GoToキャンペーンの一環として10月19日に開始したGoTo商店街は、コロナで打撃を受けた商店街を国が支援する経済政策です。他のキャンペーンとは違って消費者が直接恩恵を受けるわけではないGoTo商店街について、経済効果を予想してみました。

GoToキャンペーンの効果予測まとめ

4つの分野にわたって実施されるGoToキャンペーンの経済効果は、投入される予算の規模にある程度比例するものと予想されます。全体の予算の半分以上を占めるGoToトラベルは旅行代金が最大で半額相当になるキャンペーンだけに、すでに相当な効果を上げている最中です。10月から東京都が対象に加わることでさらに盛り上がるのは間違いないと見られ、コロナ禍で大きく落ち込んだ観光業界が息を吹き返すきっかけになるものと期待されます。

GoToイートとGoToイベントに関しては予算規模がそこまで大きくないため、GoToトラベルほどの効果は発揮されないと見るのが妥当な予測です。それでもキャンペーンが実施されないよりはプラスの効果が得られ、キャンペーンに救われる飲食店やイベント関係者も少なくないはずです。

GoTo商店街に関しては消費者が直接の恩恵を受ける形のキャンペーンではないため、効果が出るかどうかは参加する商店街しだいの面もあります。予算が限られる中で政府が最も重視する観光業界が手厚く支援され、飲食業界とイベント業界がこれに次ぐというのがGoToキャンペーンの構図なのです。

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