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コロナのストレスで持病悪化?安倍首相辞任から会社員が学ぶべき教訓

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普通の会社員にとって総理大臣は雲の上の存在ですが、世間を驚かせた安倍首相の辞意表明会見を「他人事でない」と受け止めている人も少なくないはずです。国民の命と生活を預かる国の最高責任者と一企業の管理職では天と地ほどの差があるとは言え、職務に何らかの責任を伴うという点では共通しています。

第一次政権に続いて任期途中で総理の職を辞する羽目になったのは、安倍首相が長年の持病としている潰瘍性大腸炎の再発が主な理由でした。有効な治療薬のおかげで病状が安定しているという理由から8年前に首相の座へ返り咲いた安倍総理にとって、コロナ禍という未曾有の危機に首相の立場で直面したストレスは相当なものだったはずです。

はっきりとした発症原因が不明で難病にも指定されている潰瘍性大腸炎は、ストレスで症状が悪化するとも言われています。仕事の責任に伴うストレスが健康に大きな影響を及ぼすという点では、総理大臣も民間企業で働く会社員も変わりありません。安倍首相の辞任劇から会社員が学ぶべき教訓について、ストレスと健康との関係という観点から考察してみました。

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安倍首相の持病とストレスとの関係

潰瘍性大腸炎に関しては、世界で最も信頼されている医学の教科書「メルクマニュアル」で以下のように定義されています。

潰瘍性大腸炎とは、大腸に炎症が起こり、潰瘍が形成される慢性炎症性腸疾患で、出血性の下痢や腹部のけいれん痛、発熱を伴う発作が起きます。潰瘍性大腸炎がない人と比べて、結腸がんの長期リスクが高まります。(出典:MSDマニュアル家庭版

国の指定難病にも定められている潰瘍性大腸炎の原因は、過剰な免疫反応だとする説や遺伝が関わっているとする説など諸説あります。ストレスが直接の原因となるわけではないとも考えられていますが、心因性のストレスが病状を悪化させる可能性は否定できません。若い世代に多い過敏性腸症候群もストレスを原因とする説があるくらいで、神経が網の目のように張り巡らされている腸は何かと脳の影響を受けやすい器官なのです。

腸は「第2の脳」とも言われるほどストレスに敏感な部位だけに、潰瘍性大腸炎を持病とする安倍首相もストレスで病状が悪化した可能性は大いに考えられます。今回の記者会見では辞任を決意するに至った理由として、持病の「再発」という表現が使われていました。有効な治療薬のおかげで症状が抑えられていたところへ、ストレスがあまりにも大きくなったために薬が効かなくなってしまったものと見られます。

コロナ対応のストレスは想像以上か

首相の立場でコロナ対応の指揮を執らなければないというストレスは、一国民の想像が及ばないほど壮絶なものだったのでしょうか? 確かに今回のコロナ禍では政府の対応のまずさも目立ち、布マスク配布や10万円給付をめぐる迷走ぶりが批判の対象とされました。PCR検査の件数がなかなか増やせなかった点なども含め、安倍首相がコロナ対応で優れたリーダーシップを発揮したとは言えないのも事実です。

アベノマスクをめぐっては揶揄の対象にもされてしまいましたが、コロナ禍のようにやり場のない不満が渦巻く危機にあっては、誰かがスケープゴートの役割を演じなければならない面もあります。国の最高責任者として陣頭指揮を執るべき立場にあった安倍首相がその対象にされてしまったのも、ある意味では「運が悪かった」としか言いようがありません。

東日本大震災と福島第一原発事故で国が存亡の危機にさらされた2011年のときは、当時の菅直人首相が同じような批判の対象とされました。天災の責任の半分を被った形で民主党政権が瓦解した後の世論を追いに、政権の座に返り咲いた安倍首相はアベノミクスの経済政策を武器として長期政権を演じてきたのです。安倍首相が得意とする外交政策の副産物として中国との関係も改善され、訪日観光客の増加を背景とした観光大国化も長期政権の恩恵でした。

しかしながら長く政権の座にあるうちには、コロナ禍のような危機に直面する確率も出てきます。新型コロナウイルスという予想もしなかった災厄によって、安倍政権の下で好調が続いていた経済や観光が打撃を被ってしまったのは大きな痛手です。

菅官房長官との「すきま風」も持病悪化の一因?

攻めには滅法強い安倍政権も、いざ守勢に回ると意外な脆さを露呈しました。危機管理に強かった菅官房長官がコロナ対応の初期段階では蚊帳の外に置かれていたのも、政府の迷走ぶりに拍車をかけた可能性があります。「令和おじさん」として名を上げた菅官房長官も一時は安倍首相との間ですきま風が吹いていると言われ、コロナ対応の最前線から外されていたという報道もありました。

菅官房長官は以前からの盟友として安倍政権を長く支えてきた女房役でしたが、強面の顔も持つゆえに最近は煙たがられていたとも想像されます。コロナ対応においても当初から官房長官が前面に出て火消しに走っていれば、あれほどの迷走は避けられたはずです。

菅官房長官も普段は政府の広報役というイメージですが、長期政権を女房役として支えてきた手腕から「影の総理」とも呼ばれてきました。時には悪役を演じてでも安倍政権を守り抜いてきた菅官房長官に頼らなかったために、コロナ対応における国民の批判が首相に集中してしまった面もあります。

そんな菅官房長官もGoToトラベルキャンペーンをめぐる対応では一歩も譲らない強硬姿勢を見せたほど、最近は発言力を取り戻しつつあるところです。時すでに遅し、安倍首相の持病は6月頃から再発の兆候が見え始め、8月に至って辞意を決断するまでに悪化してしまいました。体調を案じた菅官房長官や麻生副総理は休むように進言しましたが、安倍首相は聞き入れなかったと伝えられています。

それだけ首相としての責任感が強かった証拠とは言え、結果的にはコロナ禍のさなかで力尽きる形となってしまいました。進言を聞き入れて適度に休んでいれば、あるいは当初から官房長官に頼っていれば、と思わないでもありません。

とは言え国民の多くは首相に過大な期待を抱いているのが現状で、コロナで大変なときに首相が休日を持ったりしては批判を浴びた可能性もあります。そんな無言の圧力が首相を追い詰めたのだとすれば、持病悪化による突然の辞任劇も他人事ではなくなってきます。

突然の辞任劇から学ぶべき教訓

国のトップと一民間企業のトップや管理職では責任の重さがまったく異なりますが、同じような圧力にさらされる可能性があるという点では共通します。安倍首相の場合はストレスで悪化しやすい持病というハンディの要素もありましたが、ストレスは潰瘍性大腸炎に限らず万病のもとです。がんや心筋梗塞・脳卒中など、命に関わることもあるさまざまな病気はストレスが原因の1つとされています。

責任の重い職務を担うことができるのも身体という資本があっての話で、健康に不安が生じては役目を全うできなくなります。管理職の地位にある人の中には1人で背負いきれないほどの責任を抱え込み、ストレスで体を壊してしまう人も少なくありません。ストレスは適度に発散させていないと蓄積され、心身の健康を少しずつ蝕んでいくようになります。

どのような仕事でもストレスは付きものですが、管理職のように責任を負うような仕事のストレスはまた格別です。何かと1人で責任を背負い込むような人ほどストレスを溜めやすく、病気になるリスクも高くなってしまいます。そんなときにトップの重い責任を分け合いながら陰で支えてくれる存在が近くにいれば、管理職特有のストレスにさらされても溜め込まずに乗り切れるものです。

強い組織に強いリーダーが必要なのはもちろんですが、リーダーを支える頼もしい存在も欠かせません。リーダー1人だけに責任が集中して過剰なストレスにさらされるような組織では、コロナ禍のような難局を乗り切るのが難しくなってきます。新型コロナウイルスの脅威にさらされている企業がこれからの時代で生き残るには、トップのリーダーシップだけに頼らない組織力が鍵となりそうです。

まとめ

史上1位の記録を塗り替えるほど安定しているかに見えた長期政権も、コロナ禍という未曾有の危機には勝てませんでした。新型コロナウイルスさえ登場しなければ安倍首相の持病も再発することなく、任期満了までトップの座を守り続けたはずです。女房役となる官房長官との関係性が変わらず良好であったなら、コロナ禍に際してもリーダーシップを発揮していた可能性があります。

一方で日本以上に感染状況が深刻な他国の首脳よりも早く力尽きてしまった背景には、日本人特有の国民性も見え隠れしないではありません。周囲の進言を聞き入れずに首相が満足な休みも取らず働き続けたのが本当だとしたら、無言の圧力が持病悪化を招いた可能性もあります。

民間企業でも似たような例は珍しくない点を考えると、安倍首相の辞任も決して他人事ではありません。会社でそれなりに責任のある地位に就けば、誰でも同じような場面に遭遇する可能性があります。そんなときにどう判断してどう行動すべきなのか、安倍首相は身をもって国民に問いを示したように思えてなりません。

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