飲食店を悩ますNoShowとは?無断キャンセルの実態と対策を解説

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コロナ禍で売上が大きく減った飲食店を支援しようと、10月1日からGoToイートキャンペーンがスタートしました。まずはオンライン飲食予約によるポイント還元が先行して開始されていますが、飲食店の予約と言えばNoShowとも呼ばれる無断キャンセルが以前から大きな問題となっています。

大人数の予約が無断でキャンセルされた場合は、店側に10万円以上の損失が出る例も珍しくありません。相次ぐ無断キャンセルに頭を悩ませてきた飲食店の中には、悪質な被害を警察に届け出るケースも出ています。

実際に刑法が適用され逮捕者まで出しているだけに、NoShowは違法性に問うことも可能な迷惑行為です。飲食店に大きな損害を与える無断キャンセルが跡を絶たないのはどうしてなのか、飲食店を守る最新の対策と合わせて被害の実態をまとめてみました。

飲食店のNoShowとは?

予約をしておきながら指定の時刻を過ぎても客が現れず、無断でキャンセルすることを英語で「NoShow」と言います。NoShowは飲食店に限らず飛行機・列車などの交通機関や宿泊施設、美容院・エステサロンなどさまざまな業種に及んでいる状況です。

ホテルなどの宿泊業界ではNoShowへの対策も比較的進んでいて、無断でキャンセルした場合にはキャンセル料を請求するところが増えています。その点で飲食店はキャンセル料を取る店が多くないせいか、数年前から無断キャンセルが大きな問題として取り上げられてきました。

飲食店で予約が無断キャンセルされると、確保していた席が他の飛び込み客に提供できなくなってしまいます。コース料理を予約してあった場合は事前に食材の仕入れや仕込みを済ませる必要があるため、ドタキャンされることで食材や人件費が無駄になってしまうという点も大きなダメージです。

他の客に食材を流用できる場合はまだしも、大量の料理や食材を廃棄しなければならないケースも少なくありません。飲食業界ではこのような無断キャンセルが予約全体の1%近くにも達し、経済的損失は合計で2,000億円にも達すると推定されています。

無断キャンセルが跡を絶たない理由

モラル的には許されないNoShowが跡を絶たないのは、飲食店を手軽に予約できるグルメサイトの便利さも一因です。もちろんぐるなび食べログなどのグルメサイトそのものが悪いというわけではありませんが、飲食店がインターネットで簡単に予約できるようになった変化も影響しているものと見られます。

以前は飲食店に予約を入れる場合、店に電話をして予約の日時と人数を伝えるか、来店して直接伝えるのが普通でした。そうした予約方法には一定の心理的ハードルがあるせいか、無断キャンセルの発生率は今ほど高くなかったと見られます。NoShowは電話予約でも一定割合で発生しているとは言え、無断キャンセルのおよそ半数はネット予約による被害です。

筆者も会社勤務時代に飲み会の幹事を買って出て、居酒屋を電話で予約したことがありました。前日になって職場で体調不良者が続出したため飲み会を中止することになり、電話でキャンセルの連絡をしましたが、店に申し訳ないという後味が残ったものです。今でも電話で予約しておきながら無断キャンセルする人が少なくないのは、「連絡するのが億劫だ」という心理が働くのも一因と見られます。

グルメサイトを使えば簡単な操作で店が予約できるため、飲み会などの予定日までまだ日にちがあるうちに複数の店舗を「とりえず予約」しておくという人も少なくありません。予定の日が迫ってきてメンバーが固まってきたら改めて店を検討し、1つの店に絞り込んで他の店はキャンセルの連絡を忘れるというのが典型的なNoShowのパターンです。

無断キャンセルも全部が全部悪意があったわけではなく、キャンセルの連絡を「うっかり忘れた」ケースが多数を占めています。たとえ悪気がなかったとしても店側にとっては大迷惑ですので、社会人としての常識に欠ける行為なのは言うまでもありません。

こうしたNoShowが大きく取り上げられる1つのきっかけとなったのは、2018年に起きた大学生グループによる居酒屋の無断キャンセルでした。総額でおよそ10万円もの損害を出したこの事例は学生のモラル欠如に非難が集まりましたが、飲食店予約全体の1%近くを占める無断キャンセルも20代から30代の比較的若い世代が中心です。

飲み会の経験が少ない若手社員が幹事役を任され、社会人としてのモラルが十分に形成されないうちに無断キャンセルしてしまった例も少なくないと見られます。予約が簡単にできるグルメサイトの普及がこうした風潮に拍車をかけ、飲食店のNoShowが大きな社会問題にまで発展してしまったのです。

その背景には飲食店やその従業員に対して、「客に奉仕して当たり前」という誤った優越意識もあると考えられます。飲食店の間で競争が激しい中では接客が丁寧な店が支持されやすく、そういう店を普段から客の立場で利用しているとついつい勘違いしてしまいがちです。

おいしい料理とくつろぎの空間を提供してくれる飲食店に対して、無断キャンセルは客として当然払うべき敬意を欠く行為だと言えます。急用や体調不良などでやむを得ずキャンセルしなければならなくなった場合でも、できるだけ早く店に連絡して損害を最小限に抑えるよう配慮すべきなのは言うまでもありません。

無断キャンセルは違法?

2019年11月には居酒屋を無断キャンセルした50代の男が、「偽計業務妨害」の容疑で逮捕されるという事件が報じられました。NoShowは以前から問題になっていたとは言え、実際に逮捕者まで出たのは極めて異例のケースです。

無断キャンセルは違法行為だと法的にも認められたわけですが、刑法上の犯罪行為に問うにはハードルがあります。この事件で逮捕された男は東京の居酒屋に17人分の団体予約を入れておきながら、無断でキャンセルすることで店に20万円以上の損害を与えました。

通常であれば金額の多い少ないに関わらず逮捕にまで至らないところですが、男は同じ系列の店にも同様の予約を入れて無断キャンセルしていた事実が明らかになっています。この居酒屋チェーンに不満があり、嫌がらせの目的で虚偽の団体予約を入れて無断キャンセルした点が悪質と判断されたのです。

このような行為は人を欺く計略を用いて店の営業を妨害する偽計業務妨害罪に当たり、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処すると規定されています。社会問題と化している飲食店の無断キャンセルもここまで来れば立派な犯罪となりますので、「キャンセルの連絡をうっかり忘れていた」というレベルとは話が違ってくるのです。

簡単に予約できてしまうがゆえに起こりがちなうっかりミスによる無断キャンセルでも、法律とまったく無縁というわけではありません。キャンセルの連絡を失念していたのであれば刑法上の罪に問われることはないはずですが、民法上の損害賠償請求を受ける可能性はあります。グルメサイトや電話などを通じて飲食店に予約を入れた時点で契約が成立したと見なされ、無断キャンセルした場合は債務不履行と見なされる場合も考えられるのです。

飲食店の予約に当たってはいちいち契約書を発行したりしませんが、民法の上では飲食店側に損害賠償を請求する権利があると見なされます。無断キャンセルは民法に定められた不法行為に該当する可能性もありますので、たとえ契約が成立していなくても債務不履行と同様に損害賠償の対象です。裁判で損害賠償が認められれば、予約していたコース料理分の全額を支払わなければならなくなる可能性が出てきます。

とは言え裁判になると店側にも弁護士費用の負担が生じる上に多忙な中で余計な手続きに時間がかかるため、実際に訴訟が起こされた例は決して多くありません。飲食店もお客さんあっての商売だけに「事を荒立てたくない」と考えるところが多く、ほとんどのケースでは店側が泣き寝入りする結果に終わっているのが現状です。

NoShowを防ぐ最新の対策

店の経営を圧迫しかねない無断キャンセルの問題に対して、飲食店側も手をこまねいているわけではありません。NoShowに対抗するためのさまざまな対策が考え出され、一定の効果も出始めています。

宿泊施設のようにキャンセル料を設ける飲食店が増えてきているのも、そうした動きの1つです。公式サイトでキャンセル料について明記することで無断キャンセルに対しては一定の抑止効果が期待できますが、マイナスのイメージを持たれてしまうと集客面では不利になりかねません。

飲食業界はホテルなどの宿泊施設と比べて小規模の店も少なくないだけに、キャンセル料を設ける習慣があまり定着していないのが現状です。そうした点も無断キャンセルが跡を絶たない一因ですが、NoShowがこれだけ問題となってくると業界全体が変わる必要にも迫られます。

無断キャンセルを減らすもう1つの対策として考えられるのは、予約を入れる際にPayPalなどを利用して引き落とされる事前決済や手付金のシステムです。宿泊施設でも実際に取り入れているところが増えており、今後は飲食店の間でも普及が進むものと予測されます。

さらには無断キャンセルに備えた保険のような保証サービスや、NoShowが発生した場合にキャンセル料の回収を代行するサービスまで登場しました。保証サービスに加入すると月額数千円程度の保証金を支払う必要はありますが、無断キャンセルが発生した場合には損害の全額を肩代わりしてもらえます。

弁護士などが手がけている例の多いキャンセル料の回収代行サービスは登録料が基本的に無料で、回収を依頼した場合に30%程度の手数料が引かれる仕組みです。店側がこうした自衛策に走らざるを得ないというのは、それだけ無断キャンセルが飲食店に大きなダメージを与える証拠だと言えます。

飲食店を悩ますNoShowの実態まとめ

利益率が決して高くないと言われる飲食店にとって、一度に10万円以上の損害が出る場合も珍しくない無断キャンセルは深刻な問題です。NoShowとも呼ばれる迷惑行為が跡を絶たない背景には飲食店予約に伴うモラル意識の低下に加え、簡単に予約できてしまうグルメサイトの存在もありました。

無断キャンセルする人の多くは罪の意識が薄いと見られますが、民法上の債務不履行や不法行為に該当して損害賠償される可能性もあります。悪質と判断されたケースでは偽計業務妨害に問われ、実際に逮捕者まで出してしまいました。

飲食店の側でもNoShowの問題には対策に乗り出しており、キャンセル料を設けたり事前決済を導入したりするところが増えています。キャンセル料の回収代行や無断キャンセルの保証サービスなども含め、店側が防衛策を講じなければならないのが現状なのです。

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