消費者庁が行うネット広告の大規模調査とは?不正な広告の実態を解説

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成果報酬型のネット広告を利用して広告収入を稼ぐ方法は、はアフィリエイトとも呼ばれて副業の手段に利用されてきました。そんなネット広告でここ数年虚偽の内容や誇大広告など、不正な宣伝手法が問題となっています。

ネット広告を見て商品を購入した人が被害に遭うケースが相次いでいるのを受け、消費者庁がネット広告を対象とした大規模な実態調査に乗り出すことが明らかとなりました。大規模調査で消費者が著しい不利益を受けている実態が判明すれば、近い将来にアフィリエイトへの規制が強化される可能性もあります。副業でアフィリエイトに取り組んでいる人にとっては他人事でない消費者庁の動向について、どのような点が問題視されて大規模調査が行われるのか考察してみました。

消費者庁がネット広告の大規模調査へ

400万人から500万人もの人が副業目的でアフィリエイトに取り組んでいると見られる中で、薬機法や景品表示法に違反するような不正広告の発覚が相次いでいる状況です。特にダイエットや健康食品・コンプレックス関係のジャンルでこうした違法な広告が多く、消費者を欺く「フェイク広告」の温床となっています。消費生活センターにも被害の相談が相次いでいるのを受け、消費者庁がアフィリエイトの大規模実態調査に乗り出す事態となりました。

ネット広告アフィリエイト、大規模調査へ 消費者庁
「アフィリエイト」と呼ばれるインターネットの成果報酬型広告を巡り、消費者庁が広告主や広告作成者、仲介会社を対象に大規模な実態調査に乗り出すことが同庁関係者への取材で分かった。広告作成は副業目的の個人400万~500万人が担い、市場規模は右肩上がりで3千億円と活況を呈している。一方で虚偽、誇大広告といった不正も多く、野放...

消費者を欺くようなネット広告の存在は数年前から取り沙汰されるようになり、2018年には健康食品などを販売するブレインハーツ社が景品表示法に基づく措置命令を受けました。同社が販売していたダイエット食品や美肌石鹸などに対し、アフィリエイト広告を掲載していたサイトで優良誤認や有利誤認の表現があったものと判断されたのです。

従来であればアフィリエイトサイトに掲載された記事で不適切な表現がされていても、広告主の企業が直接の責任を問われることはありませんでした。2019年には芸能人の知名度を悪用した虚偽のネット広告が問題となり、NHKクローズアップ現代+でも「フェイク広告」として取り上げられた経緯があります。

追跡!“フェイク”ネット広告の闇 - NHK クローズアップ現代+
2019年1月22日(火)放送。見られていない広告の費用を企業や自治体が負担させられる問題などを追った「ネット広告の闇」。取材を続けると、一般消費者に狙いを定めた不正も明らかになってきた。それは、“フェイク広告”。「ダイエットに効く」とするサプリなどを芸能人が体験談を元に宣伝しているが、その画像は無断加工され、体験談も...

消費者の持つコンプレックスや健康への不安に付け込んだ商品で収益を得ようとするビジネスは、広告の表現ひとつで売上が大きく左右される世界です。収益性を高めようとするあまりについつい過激な表現に走りがちなのはジャンルの特性とも言えますが、ネット広告の複雑な仕組みが不正に拍車をかけている面もあります。

広告主の企業は悪い評判が広がるのを警戒し、自社で広告を制作する場合は違法な表現に走らないよう配慮するのが普通です。ASPと呼ばれる仲介業者を通じて広告が配信されるアフィリエイト広告を配信する場合には、広告主の企業が知らない第三者の手によって記事が制作されます。この広告は成果報酬型となっているため、一部のアフィリエイターが効率的に成果を得ようとするあまり違法な表現に走っているのが現状なのです。

アフィリエイト広告で収入が得られる仕組み

不正広告の温床となっている面があるとは言え、成果報酬の広告を掲載したすべてのサイトが違法というわけではありません。違法性が認められるのはごく一部のサイトに過ぎず、大半のサイトは合法の範囲内で書かれた記事に広告が掲載されている状況です。

クリック報酬型広告と違ってアフィリエイト広告で報酬を得るには、ユーザーが移動した先の広告主サイトで商品購入や会員登録などの成果を発生させる必要があります。その代わり成果1件あたりの報酬は高額な例が多く、1件で1万円以上稼げる広告も珍しくありません。

アフィリエイトの副業で高収入が稼げる理由と仕組みを徹底解説
ブログやサイトを運営して広告収入を得るアフィリエイトは高収入も狙える副業ですが、ほとんどの人はたいして稼げないままやめてしまうのが現状です。初心者が稼ぐのは難しいと言われているアフィリエイトの基礎知識について、稼ぐコツと注意点を解説します。

いずれも仲介業者のASPを通じて広告が配信され、個人のブログでも広告主と顔を合わせずに提携できるようプラットフォームが整備されています。法人として活動する広告代理業者を含めたアフィリエイターはASPを介して成果報酬型の広告を自サイトに掲載し、広告主の企業に代わって商品やサービスの宣伝を行うことで対価を得ているのです。

掲載した広告がクリックされて購入やサービス利用といった成果につながれば、あらかじめ決められた額の報酬がアフィリエイターの口座に振り込まれます。成約率を高めるには検索結果で上位表示を勝ち取るSEO対策だけでなく、記事の書き方や画像の効果的な使い方などページ作りの工夫も必要です。

不正なネット広告の実態

アフィリエイト広告の成約率を上げるには記事に体験談を織り交ぜたり、商品の比較記事やランキング記事を書いたりするのも効果的です。宣伝する商品を自分で実際に使ってみた感想なら読まれる価値もありますが、架空の体験談や根拠のないランキングで読み手を欺こうとするような例も一部で見受けられます。

そのような記事は高単価の成果報酬型広告に誘導しようとするのが常套手段で、記事の書き方が「広告ありき」となっているのが特徴です。特にダイエットや健康・コンプレックスなどお悩み解決系は他人に相談しづらいジャンルだけに、悩みを抱えている人の多くはネット通販で商品を注文しようとします。

消費者のそうした心理に付け込んだ紛らわしい広告表現は以前から問題となってきましたが、規制する法律の整備が進んだことで広告主の公式サイトからは違法な広告がほとんど姿を消しました。そんな監視の目もASPを介して広告が配信されているアフィリエイトサイトの隅々にまでは行き届かず、今もなお不正な広告が横行してる状況にあります。

フェイク広告が制作される理由

2019年1月22日にはNHKクローズアップ現代+の番組内で、そうした「フェイク広告」の実態が報じられました。芸能人の出演したテレビ映像やSNS投稿を勝手に編集してサプリメントなどの宣伝に悪用した記事を書き、アフィリエイト広告を掲載したフェイクの例が実際にあったのです。

有名な芸能人を起用することで絶大な宣伝効果が得られるという事実は以前から知られていましたが、本当に起用するとなれば莫大なギャラも発生します。問題のフェイク広告は有名芸能人に無断で動画や画像を引用し、宣伝に都合がいいよう勝手に編集を加えた上でサイトに掲載していました。これを見た消費者は「あの○○さんがおすすめしているのだから」と信用してしまい、真偽を確かめもせずに注文ボタンを押して高額な定期購入を契約させられたというわけです。

定期購入が割引の条件となっている点を目立たない場所に小さく表示したり、電話がなかなか通じず解約に手間がかかったりする点については、広告主の側にも問題があります。もともとの販売手法が疑問視されていた業界で不正なアフィリエイト広告の被害が多いのは、当たり前の宣伝方法では商品がなかなか売れないというのも一因です。

だからこそ第三者が巧みな売り文句で商品を宣伝してくれるアフィリエイトが隆盛を極め、広告主に代わって販路を大きく拡大してきた面があるとも言えます。収益率を最大化しようとするあまりにそうした販売手法が行き過ぎてしまった結果、一部のアフィリエイトサイトで虚偽広告や誇大広告といった不正が横行する事態を招いてしまったのです。

将来的な規制強化の可能性は?

インターネットを利用したサービスは進化のスピードに法整備がなかなか追いつかず、法の網をくぐり抜ける形でさまざまな犯罪に悪用されているのが現状です。そうした中でも不正なネット広告に対してはここ数年で景品表示法や薬機法違反に問う事例が相次いでおり、既存の法律の範囲内でも安泰とは言えなくなってきています。

前述のブレインハーツ社は措置命令と課徴金納付命令だけで済みましたが、2020年7月には肝臓に効くと称するサプリメントで薬機法違反による逮捕者も出ました。サプリメントを販売していた広告主のステラ漢方の担当者に加え、記事型広告を制作した広告代理店の社長や従業員までが逮捕される事態となったのです。医薬品ではないサプリメントで効能や効果を宣伝するのは薬機法に違反する行為だけに、関係者の逮捕という異例の判断がなされたものと見られます。

消費者庁でもこうした事態に危機感を募らせた結果、不正の温床になっているアフィリエイトの大規模調査は避けられない情勢です。こうしたネット広告には調査後に何らかの規制が加えられる可能性もありますので、副業としてアフィリエイトに取り組んでいる人にとっては消費者庁の動向から目が離せません。不正に手を染めた一部のアフィリエイターのせいで、真面目にやっているその他大勢のアフィリエイターまでが割を食う羽目になりかねないからです。

広告出稿の条件が厳格化される可能性も

美容や健康ジャンルはかつて「稼げるジャンル」としてアフィリエイトでも鉄板商品とされていましたが、2016年に世間を騒がせたWELQ問題を境に状況は一変してしまいました。Googleが実行した健康アップデートの結果、IT企業や個人ブログは医療・健康ジャンルで上位表示が難しくなってしまったのです。

YMYLに含まれるジャンルとは?上位表示が難しくなった理由を解説
検索エンジンのGoogleでは健康やお金・安全に関連するジャンルを「YMYL」と呼び、検索順位の決定にサイトの信頼性や記事の専門性を重視するようになりました。YMYLジャンルでは個人のブログで上位表示が難しくなった理由について解説します。

美容・健康ジャンルの自然検索で上位表示が難しくなってくると、今度は広告費用を投じてでも悩みを抱えた見込み客を誘導しようとする動きが出てきます。フェイク広告の温床となっているのは自然検索で上位表示が難しくなったジャンルと重なり、検索結果に連動して表示されるリスティング広告が悪用されている状況です。
最近は広告費用が安いSNS広告でも、こうした不正な宣伝手法が目につくようになりました。信頼性が高いはずの新聞社が運営するニュースサイトでも、広告枠の中にフェイク広告が紛れ込んでいた例があったほどです。

こうした実態が消費者庁の調査で明るみに出れば、広告出稿の条件を厳格化するなどの規制が強化されるものと予想されます。規制強化がそれだけにとどまらず、一般のアフィリエイトサイト全般にまで波及するようなら副業アフィリエイターにとっても死活問題です。広告主の公式サイトと同一ドメインでなければ広告を掲載できなくなる事態も考えられるだけに、そうなった場合はアフィリエイトのビジネスモデルそのものが存続の危機に直面することになります。

まとめ

消費者庁がアフィリエイトサイトを対象とした大規模調査に乗り出そうとしている背景には、虚偽広告や誇大広告など不正なネット広告が横行している実態がありました。そうした不適切な宣伝手法は美容や健康ジャンルに多く、健康アップデートの影響から自然検索で上位表示が難しくなっている状況です。消費者さえ誘導できれば高い収益性が期待できるジャンルだけに、検索連動型広告やSNS広告を悪用した不正広告が目に余るようになっています。

これを問題視した結果の大規模調査ですので、近い将来にはアフィリエイト広告全般に対して何らかの規制強化が行われる可能性も否定できません。広告主の商品やサービスを真面目に紹介しているアフィリエイターも少なくはありませんので、副業で地道に稼いでいる人たちが割を食う事態にならないことを祈りたいものです。

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