ハイキングや登山などのアウトドア活動はもちろん、通勤や通学にも使えるのがバックパックとも呼ばれるリュックの便利な点です。そんなバックパックも急な雨に見舞われて濡れることが想定されるだけに、たいていの製品には水を防ぐための機能が備わっています。防水性には4つのレベルがありますので、それぞれの特徴を見ながら雨に強い製品の条件を探っていきます。
バックパックの防水性能
バックパックのように屋外で使用する運搬具には、雨や雪など水に濡れる場面を常に想定した備えが求められます。どれだけデザインが格好良くて収納性に優れていても、水に弱ければ中に入れた荷物が濡れてしまって台無しになりかねません。
特に最近はノートパソコンやタブレットなど、水に弱い電子機器をリュックに入れて持ち運ぶ人が増えています。バックパックにもこれまで以上に雨への対策が求められるようになり、メーカー各社は知恵を絞って商品開発を進めてきました。バックパックはもともと登山やトレッキングなどアウトドアスポーツ用に開発されてきただけに、ビジネスバッグなどと比べても防水性能が重視されています。
4段階に分かれるバックパックの防水機能
バックパックを水から守る機能には、耐水・撥水・防水・完全防水という4つのレベルがあります。このうち耐水・撥水・防水は素材がどれくらいのレベルで水を防げるのかを示す呼び方です。
当然のことながら防水性のレベルが高くなるほど製造コストが高くなるため、リュックの価格も高額になることが避けられません。バックパックに高水準の防水性を求めるなら、ある程度の予算を投じる必要があるとも言えます。以下に紹介する各段階の特徴を頭に入れながら、予算に応じて自分の求める防水レベルの製品を選ぶのが後悔しないコツです。
耐水タイプのバックパックは最低限の防水レベル
バックパックを作っている素材の防水段階のうち、耐水と呼ばれるタイプはその名の通りある程度の水に耐えられるようにしたレベルに相当します。このような耐水タイプに高いレベルの防水性は期待できませんが、小雨程度なら中身を濡らさずに済む程度に最低限の機能を備えています。
この場合の防水性とは水を防ぐということではなく、あくまでも水を通しにくいという意味に過ぎません。耐水タイプは低価格帯の製品に多く、他の3タイプよりリーズナブルな価格で購入できる点がメリットです。
水を弾く構造の撥水素材バックパック
撥水タイプのバックパックは素材自体が水を弾く構造をしているため、雨水を防ぐ性能が1段階アップします。撥水タイプのうち表面で水を弾く素材が使われてい製品を見ると、ナイロンやポリエステルなどの糸が高密度で織られていることがわかります。撥水タイプに見られるもう1つのタイプは、布の表面に撥水加工のコーティングを施している例です。
どちらのタイプの撥水もリュックの表面に水が当たった場合、水を瞬時に弾くことで中の荷物を濡らさないように作られています。撥水素材を使った製品は耐水タイプよりも雨に強いとは言え、長時間水に濡れた状態が続くと繊維の隙間からの浸水が避けられません。素材の表面が水の膜で覆われるような状態になると水を防ぎきれなくなり、繊維の隙間から水が染み込んで中の荷物を濡らしてしまうのです。
撥水加工の効果には寿命も
撥水タイプの素材はある程度の通気性も保った上で水を弾く構造となっていて、レインウェアなどにも多く利用されてきました。バックパックの素材に撥水加工のコーティングが施された製品は水を弾く効果が高い反面、長く使っているうちに撥水効果が低下してしまいます。そのようなタイプの素材は長期間効果が持続する撥水スプレーを吹き付け、水を弾くようにしているようなものです。
撥水スプレーの持続時間にも限界があるように、撥水加工されたリュックの効果も半永久的ではありません。洗剤等を使って表面の汚れを落とそうとする場合、水を弾くように加工されたコーティングが洗剤や摩擦の影響で剥がれる可能性もある点には注意が必要です。
水を通さない素材を使った防水タイプのバックパック
撥水タイプのバックパックは生地の表面で水を弾く構造ですが、防水タイプの製品は素材そのものに水を通さない生地が使われているという点に違いがあります。防水素材は撥水素材や撥水加工された素材より水に強く、長時間雨に降られる場面でも繊維の隙間から水が染み込むようなことはほとんどありません。
一般的なリュクに使われる素材はコットンやナイロンなどの布が多いため、そのままだと繊維の隙間から水が侵入してしまいます。防水素材にはそうした生地の隙間を何らかの方法で埋め、水が侵入しないようにする仕組みが採用されているのです。
防水タイプのさまざまな素材
ターポリンという塩化ビニール製の生地はテントや屋外広告に利用されるほど防水性の高い素材ですが、バックパックの中にもターポリン素材を採用した防水タイプは少なくありません。ビニールやゴムは生地そのものが水を通さない代表的な素材で、水を弾く性質の高いそれらの素材はレインウェアにも多く採用されてきました。
この他にも生地に水を通さないようにするための防水加工として、ラミネート加工と呼ばれる方式が挙げられます。防水性の高いポリ塩化ビニールを生地の表面に貼り付けるラミネート加工を施せば、水に弱い生地でも水を通さないようになります。
防水素材の弱点を改善した防水透湿素材のバックパック
防水タイプのバックパックは耐水タイプや撥水タイプよりも雨に強い反面、長時間背負っていると背中が蒸れやすくなるのが欠点です。水分を通さない生地を使っているということは、汗が蒸発して出る水蒸気も通さないことを意味します。そんな防水素材の弱点を改善したのが、レインウェアなどにもよく利用されている防水透湿素材です。
防水透湿素材は外からの雨水に対しては水を防ぐ性質を発揮して水滴を通さず、内側から出る水蒸気は通すので蒸れにくいという特長を持ちます。最近はレインウェアやスキー・スノーボードのウェアだけでなく、リュックにも防水透湿素材を採用した製品が増えてきました。リュックを長時間背負っていると背中がびしょびしょになるというほど汗っかきの人には、こうした防水透湿素材の製品がおすすめです。
海や川のレジャーにも使える完全防水タイプのバックパック
バックパックでも4段階のレベルに分けられる防水性能のうち、最も雨に強いのは防水タイプを上回る完全防水タイプの製品です。完全防水の段階にある製品は単に水を通さない素材が使われているだけでなく、細部にも水を防ぐためのさまざまな処理が施されています。
防水素材を使ったリュックでも、雨に長時間打たれたりすると縫い目やジッパーといった隙間からの浸水を完全には防げません。完全防水タイプのバックパックは縫い目を溶接したりして水を防ぐ処理が施されており、土砂降りの雨にも耐えられる構造です。マリンスポーツや沢登りのような水に濡れる場所でのレジャーにも、こうした完全防水タイプの製品なら安心して持っていけます。
完全防水のメカニズム
完全防水タイプのバックパックは、防水タイプの盲点となりがちなジッパー部分にも水を防ぐの工夫がされています。雨が予想される日に本格的な登山に出かける際には、リュックに防水性のあるレインカバーを掛けて備えるのが一般的です。
止水ファスナーが採用された完全防水タイプのリュックなら、レインカバーが間に合わないほど急な雨に見舞われた場合でも時間を稼げます。こうした完全防水タイプの製品は開口部にも水を防ぐ工夫が施されており、雨に対する備えも万全です。開口部を巻く形で閉じるロールトップは開閉に手間がかかるというデメリットはあるものの、雨に強いことから完全防水タイプの製品に多く採用されています。
まとめ
以上のようにバックパックが水を防ぐ仕組みにもいろいろな段階があって、耐水から撥水・防水・完全防水という順に水に対して強くなります。水に強い製品ほどバックパックの価格も高くなるのが普通だけに、求める防水機能と予算のバランスをどう考慮して製品を選ぶかが重要です。本格的なアウトドア活動に使うなら完全防水が最強ですが、タウンユースならそれ以外の3タイプも選択肢に入ってきます。