マジシャンと言えばイベントやショーに出演したりテレビに出演したりと、「プロがする仕事」というイメージがあります。マジシャンはマジックバーや結婚式場・介護施設など、さまざまな場所で需要がある仕事です。テレビに出演するほど有名なマジシャンだけでは、すべての仕事をまかないきれません。
知名度がそれほど高くないマジシャンの中には、マジックの仕事だけでは食べていけないという人も少なくないと見られます。逆に見ると曜日や時間などの条件さえ問題なければ、普通の会社員でもマジックの仕事を副業にできるはずです。
そこで今回は副業のマジシャンになる方法について、3種類のパターンに分けて情報を整理してみました。マジシャンの収入事情についても、記事の後半で調査結果を報告します。
副業のマジシャンになる方法
「手品師」や「奇術師」とも訳されるマジシャンは、イベントやパーティを盛り上げる一級のエンターテイナーです。歴代のマジシャンたちは人間の目の錯覚や思い込みを利用し、さまざまな奇術の数々を考案してきました。
そんなマジシャンの華麗な芸に魅了され、「自分もやってみたい」と思っている人も少なくないはずです。趣味やボランティアとしてマジックに取り組む人もいますが、マジックを披露することで対価が得られれば仕事の手段にもなり得ます。プロのマジシャンとして専念するのは無理でも、夜間や休日を利用すればマジックの仕事を副業にすることは十分に可能です。
東京や大阪などの大都市に多いマジックバーの仕事は夜が中心で、イベントやパーティなどの出張マジックは休日に依頼されるケースが多くなります。ほとんどのマジシャンはフリーランスの立場で案件ごとに仕事を獲得し、依頼先を回って芸を披露している状況です。
マジシャンを副業から始めるには、以下のような3つの方法が考えられます。
- マジックバーのバイトとして働く
- プロのマジシャンのアシスタントとして働く
- 独学でフリーランスのマジシャンを目指す
それぞれの始め方について、詳しく解説していきます。
マジックバーのアルバイトとして働く
東京を中心とした都市部で最近増えているのが、飲食をしながらマジックショーやテーブルマジックを楽しめるマジックバーです。プロのマジシャンが経営している店が大半ですが、複数のマジシャンが在籍している店もあります。週1日から勤務OKのような店で求人を募集していれば、平日の日中に会社の仕事がある人でも副業にすることが可能です。
たいていは面接で実技テストが行われ、マジックの腕前を見た上で店の仕事を任せられることになります。マジックバーも飲食店の一形態ですので、接客や雑用が仕事内容に含まれる求人の例も少なくありません。
マジックの腕が認められれば、お客さんの前で実際に芸を披露する機会も与えられるようになります。将来的にプロを目指したいという人にとっても、先輩マジシャンの芸を間近で見られるマジックバーは修業の場になり得ます。勤務時間が夕方から翌日の午前5時頃までという店が多いだけに、夜に強い人に向いた仕事です。
プロのマジシャンのアシスタントとして働く
カードやコインなどの小道具を使ったテーブルマジックは、マジシャン1人で演じるのが普通です。イリュージョンのように大掛かりなステージマジックになると、人体浮遊や切断・脱出などのマジックを演じるのにアシスタントが欠かせません。アシスタントはダンスなどのパフォーマンスも披露し、ステージを盛り上げる役目を演じます。
マジシャンのアシスタントとして働く場合は、ステージの仕事に自分の生活を合わせる必要があります。本番のステージは土日祝日とは限らないため、会社の仕事と両立できるかどうかがポイントです。
ステージの本番以外にもリハーサルや稽古がありますので、フルタイムで働いている人が副業にするのは大変かもしれません。むしろアシスタントの仕事だけでは収入が足りず、他にアルバイトの仕事をして食いつないでいる人も少なくないと推測されます。
求人サイトでは募集が見つかりにくい仕事ですが、HPなどで独自にアシスタントを募集しているマジシャンは少なくありません。男性のマジシャンが女性のアシスタントを従えてショーを行う例が多いせいか、アシスタントの募集も女性限定という求人が大半です。マジシャン個人で募集する以外にも、マジシャンの派遣業者でアシスタントを募集している例があります。
独学でフリーランスのマジシャンを目指す
マジシャンの仕事を副業にする第3の方法は、独学でマジックの芸を身につけて仕事を獲得するという働き方です。アシスタントやマジックバーなら師匠や先輩マジシャンから芸を教わる(盗む)ことも可能ですが、独学の場合は書籍や動画教材などを使って芸を身につけるしかありません。
フリーランスのマジシャンとして活動するには、仕事を獲得するための営業努力も必要になってきます。マジックバーに雇われるような働き方と違って、フリーランスは自分から動かないと仕事をもらえないからです。
結婚式や企業のパーティ・忘年会・新年会など、出張マジックの仕事はいろいろと考えられます。ショッピングモールや幼稚園・保育園・学校・病院・介護施設といった施設でも、マジシャンが活躍する行事が随時開催されています。
そういった仕事を自力で獲得するのが難しいという場合には、出張マジシャンの派遣サービスに登録するのも1つの手です。以下のような派遣サービスで登録マジシャンを募集しています。
意外なところではオンライン予約サイトのくらしのマーケットでも、出張マジシャンのサービスが100件ほど登録されています。くらしのマーケットを介して予約が成立した場合に、自身で設定したサービス料金の22%が手数料として引かれる仕組みです。
他の派遣サービスに登録して仕事を獲得した場合の報酬も、利用客が支払う料金から仲介手数料が引かれた残りの金額ということになります。中抜きされる手数料の金額は派遣サービスによって異なり、一般には公開されていません。さまざまな情報を総合すると、推定される手数料の相場は30%前後です。
出張マジック以外の稼ぎ方
フリーランスのマジシャンは出張マジックの仕事がメインとなりますが、それ以外にも副業収入を稼ぐ手段はいろいろと考えられます。公園や公道などで許可を得て路上マジックを披露し、投げ銭収入を得る稼ぎ方はその1つです。
出張マジックの仕事だけでは十分な収入が得られない場合は、有料のマジック教室を企画して生徒を募集するという手もあります。ココナラやストアカ・タイムチケットといったサービスを利用すれば、対面やオンラインなど自分に合った方法でマジック教室の生徒を募集できるようになります。
動画教材を作るスキルの持ち主なら、Udemyでマジック講座の動画を販売するのも1つの手です。YouTubeにマジック動画を投稿して広告収入で稼いだり、ライブ配信アプリでマジックを生配信して投げ銭収入を得たりと、副業マジシャンが収入を得る方法は他にも考えられます。
マジシャンに資格は必要?
副業・専業を問わず、マジシャンになるのに特別な資格は必要ありません。マジックバーで募集している求人で経験者が優遇されるケースはありますが、未経験可という求人も少なくない状況です。
マジシャンのアシスタントも同様で、マジックそのものよりダンスなどパフォーマンスの経験が重視される傾向も見られます。フリーランスのマジシャンを目指す場合はなおさら、自分で名乗ってしまえば誰でもその日からマジシャンになれるような業界です。
マジシャンを自称するのと仕事の獲得は別物ですので、仕事を獲得しようという際になると経験が物を言います。マジシャンのアシスタントを務めたりマジックバーで働いたりした経験があれば、フリーランスとして独立する際にも集客に役立つというわけです。マジシャンに必須の資格は特にありませんが、コンテストの入賞歴があれば、同じようにして営業や集客に役立つ可能性があります。
マジシャンに向いている人
カードやコインなどの小道具を使ったマジックを華麗に演じるには、手先の器用さが求められます。天才マジシャンと言えども練習なくしては技を習得できませんので、同じ技の練習を繰り返し繰り返し何度も積み重ねるだけの努力も必要です。つまりマジシャンは手先が器用で、なおかつ地道な努力を厭わない人に向いた仕事だと言えます。
大がかりなイリュージョンマジックなどは無言で行う場合もありますが、マジックは観客との交流を通して成り立つエンターテインメントです。時には観客の目を欺いたり、ミスリードしたりと、巧みな話術を駆使しながらトリックを演じる必要も出てきます。
常識的ではあり得ない不思議なマジックの現象にも、結果から逆算されして考案した種があります。そんなトリックをいかにも不思議な現象のように演出するには、観客の心を自由自在に操る心理テクニックとトーク術が欠かせません。コミュニケーションスキルの高い人ほどマジシャンに向いていますので、営業の仕事や接客業の経験があれば役に立つ可能性があります。
副業マジシャンの年収はどれくらい?
マジシャンの年収には上限がないだけに、世界には何億円もの高年収を稼いでいる一流マジシャンも存在する世界です。一方ではなかなか仕事も恵まれず、年収が100万円に満たないマジシャンも少なくないと推定されます。副業のマジシャンとして活動する場合は本業の仕事が優先されるため、マジックの仕事に費やす時間が制限されてしまうからです。
マジックの仕事だけで生計が成り立っている人は、マジシャン全体から見てほんの一部に過ぎないと見られます。マジックバーの仕事から出張マジックの仕事までひっくるめると、マジックの仕事そのものにはかなりの需要があるはずです。地域ごとに細分化されたそれらの仕事を、副業や兼業も含めた数多くのマジシャンで分け合っている状況と推測されます。
出張マジックの料金はテーブルマジックとステージマジックで違ってきますが、平均すると1回あたり4万円前後が相場です。マジシャンの派遣サービスに登録して仕事を獲得した場合、仲介手数料を引いた報酬の目安は1回あたり2~3万円と見られます。月に4回から5回ほど出張マジックの仕事をこなしていけば、月に10万円ほど稼げる計算です。
カードやコインなどの小道具を使ったテーブルマジックの場合、1回あたりの出演時間は30分前後という例が多くなっています。出演時間が1時間を超えるようなステージマジックになると、料金も高額になるのが普通です。
いずれも時給換算で高収入が稼げる仕事のように思いがちですが、マジシャンは本番の何倍も時間をかけて練習やリハーサルに費やしています。1つの芸を完成させるのに多大な時間を要するからこそ、出張マジックの料金相場が高額になっているというわけです。
マジックバーで働く場合は時給プラス歩合給という例が多く、お客さんからチップを多くもらえれば収入が増えます。副業として週に2日程度の勤務をこなしていれば、チップしだいで100万円以上の年収を稼ぐことも十分に可能です。
以上のようにして100万円以上の年収を稼げるようになれば、副業マジシャンとしては十分に合格ラインと言えます。会社員の平均以上の年収をマジックの仕事で稼ぐには、副業のレベルでは難しいのが現状です。プロのマジシャンとして完全に独立し、稼げる大口の仕事を獲得していく必要があります。
まとめ
副業でマジシャンの仕事をするには、以下のような3種類の方法が考えられます。
- マジックバーでアルバイトの仕事をする
- マジシャンのアシスタントになる
- 自分で営業を行って出張マジックの仕事を獲得する
マジックバーや出張マジックの仕事は夜間や土日が中心だけに、会社員が副業の手段とするのに好都合です。路上マジックやマジック教室など、副業マジシャンが収入を得る方法は他もいろいろと考えられます。営業がうまくいって好条件の仕事を獲得できれば、出張マジックが最も稼ぎやすい仕事です。
マジシャンは感染症の拡大に影響されたり景気に左右されたりと、安定して稼ぐのが難しい仕事でもあります。月によっては収入ゼロになる可能性もありますが、趣味や特技を生かして収入が得られるという点では魅力的な副業です。観客との交流を通じてコミュニケーションスキルも身につけられるという点も、副業マジシャンのメリットに数えられます。