当ブログでは以前ザリガニの養殖を副業にする方法について紹介しましたが、現在は法律が変わって養殖業を営むのが困難になってしまいました。生き物を扱う副業が1つ減ったことで、落胆している人も少なくないのではないでしょうか?
生きたザリガニを販売するのでなければ、現在でも養殖ビジネスができないことはありません。許可や認定が必要なケースもあるので、初心者にもわかりやすいように最新情報を整理してみました。
川でザリガニ釣りをするのが得意な人は、釣ったザリガニでお金を稼げる可能性がまだ残されています。
販売目的のザリガニ養殖が実質禁止に!
2023年6月1日にアメリカザリガニが「条件付き特定外来生物」に指定され、飼育や販売が規制されることになりました。すでにアメリカザリガニ以外の外来ザリガニは、特別な許可を得た人でない限り原則として飼育できない決まりです。在来種のニホンザリガニも絶滅が危惧されていることから、現在は販売目的の捕獲や売買が禁止されています。
唯一の例外だったアメリカザリガニまでが規制の対象となったことで、ザリガニの養殖ビジネスが成り立たなくなってきている状況です。少なくとも「ペットとして飼育されることを前提に、生きた個体を販売する目的で養殖する」道は事実上閉ざされました。かつてはザリガニの売買で活況を呈していたYahoo!オークションでも、2023年6月を境に生体の出品が途絶えています。
食用のザリガニは養殖可能?
ペットとしての販売が無理でも、食用なら販売目的の飼育が可能なのでしょうか?
アメリカザリガニに関する規制内容を読み解くと、「生きていない状態」での販売は可と受け取れます。環境庁が公開している「アカミミガメ・アメリカザリガニの規制内容と手続き」の中に、以下のような記述があるからです。
規制されないもの、規制されるもの、必要な手続きについては以下の通りです。
(中略)
2.飼養等基準を遵守する場合に限り、手続き不要のもの
販売・頒布・購入を行わない、業としての飼養等(研究施設、動物園・水族館、教育施設等での飼養等や、防除事業の一環での飼養等)飲食店での保管及び購入
冷凍や加工品の状態(生きていない状態)で販売・頒布を行う目的で、野外から捕獲したものを飼養等すること
出典:アカミミガメ・アメリカザリガニの規制内容と手続き(環境庁)
つまり販売時に冷凍や加工品など「生きていない状態」で出荷するなら、川で釣ってきたアメリカザリガニを一時的に飼育するのはOKというわけです。知り合いの飲食店に食材として提供する目的で、アメリカザリガニを捕獲するようなやり方が考えられます。
同じ「アカミミガメ・アメリカザリガニの規制内容と手続き」で「許可が必要なもの」の1つに、以下のような記述も見られます。
商業的繁殖を行って冷凍や加工品の状態で販売・頒布を行う目的での飼養等(指定前から生業として行っていたもののみ許可取得が可能)
出典:アカミミガメ・アメリカザリガニの規制内容と手続き(環境庁)
繁殖で増やしたアメリカザリガニの個体を食用として飲食店などに販売する場合は、所轄の地方環境事務所長から許可を得る必要があります。野外で捕獲してきた個体をそのまま販売するだけなら、許可は不要です。
許可を得て繁殖個体を販売できるのは、2023年6月1日の規制開始以前からアメリカザリガニの養殖を生業としていた人に限られます。いずれも冷凍するなりして絶命させた上ではないと、食用としての販売は許可されません。
餌用としての販売は可能?
アメリカザリガニは食用としてだけでなく、餌用としても販売されてきました。2023年6月の規制開始後も、アメリカザリガニを餌用として販売することは可能なのでしょうか?
調べてみると、販売しようとするアメリカザリガニの状態によって対応が異なるようです。「アカミミガメ・アメリカザリガニの規制内容と手続き」には、以下のような記述もあります。
【許可が必要なもの】
生きた個体を飲食店用、学術研究用、展示用、教育用、飼養生物の餌用(アメリカザリガニのみ)に販売・頒布する目的での飼養等(指定前から生業として行っていたもののみ許可取得が可能)
出典:アカミミガメ・アメリカザリガニの規制内容と手続き(環境庁)
規制開始以前からアメリカザリガニの養殖業に従事していた人に限り、餌用として販売する目的で生きた個体を飼育することは可能です。その場合でも所轄の地方環境事務所長に申請した上で、許可を得なければなりません。
冷凍や加工品など生きていない状態であれば、アメリカザリガニを餌用として販売することは可能です。同じ状態で野外から捕獲した個体を販売するだけなら、許可を得る必要はありません。
繁殖させた個体を餌用として販売する場合は、生きていない状態であって許可が必要です。規制開始以前から生業としてきた人でないと、許可を受けられない決まりとなっています。
ザリガニの養殖に許可が必要な条件
これまでに解説した規制状況をまとめると、ザリガニ養殖で許可が必要な条件は以下の通りです。いずれもアメリカザリガニだけが対象で、2023年6月の規制開始以前から生業としてきた人に限定されます。
- アメリカザリガニを繁殖させ、増やした個体を生きていない状態で販売するケース
- 食用や餌用(研究・展示・教育目的も含む)として、アメリカザリガニの生きた個体を販売するケース
川で釣ってきたアメリカザリガニを生きていない状態で販売するだけなら、許可は不要です。
水田に住むアメリカザリガニは稲の苗を切断したり、畔に穴を開けたりして、さまざまな農業被害を引き起こします。以下のようなケースでは、許可とは別に「防除の確認・認定」が必要です。
【防除の確認・認定が必要なもの】
防除を主目的として、防除した個体を生きたまま飲食店用、学術研究用、展示用、教育用、飼養生物の餌用(アメリカザリガニのみ)に販売・頒布すること
出典:アカミミガメ・アメリカザリガニの規制内容と手続き(環境庁)
防除の確認と認定を受ければ、捕獲したアメリカザリガニを生きたまま販売できると受け取れます。実際の防除は都道府県や市町村など、自治体や団体の事業が想定されている模様です。農家などの個人にはハードルが高めと見られますが。興味がある人は問い合わせてみるといいでしょう。
ザリガニを売る方法
規制以前と比べて販路は大幅に狭まりましたが、アメリカザリガニなら現在でも売れないことはありません。コツさえつかめば川で簡単に釣れる生き物だけに、趣味と実益を兼ねた副業にする道は残されています。
せっかくザリガニを捕まえてきても、買ってくれるところがなければ収入になりません。冷凍のアメリカザリガニを売るには、以下のような3通りの販売方法が考えられます。
- ザリガニ買取業者を利用
- フリマサイトに出品
- 個人でネットショップを開業
ザリガニ買取業者を利用
規制が強化されて以降は激減しましたが、現在でもアメリカザリガニの買取をしている業者は存在します。駆除された外来生物の買取を行う小林昆虫もその1つです。
小林昆虫にアメリカザリガニの買取を依頼する際には、サイズごとに選別した上で冷凍する必要があります。水を切ってハサミも切断し、1匹1匹がバラバラの状態になるような冷凍方法です。
特に小さいサイズのザリガニは、「買取歓迎種」に含まれます。サイズの選別をしていない状態だと、買取価格が極端に下るそうです。
他にペットショップなどで買取をしているところがあるかもしれませんので、近くに店があったら問い合わせてみるといいでしょう。
フリマサイトに出品
規制される以前の2022年時点では、Yahoo!オークションに生きたザリガニが1,000件以上も出品されていました。2023年6月の規制開始以降は、生体の出品が完全に途絶えています。
現在でも「生き餌などに最適」などとして、冷凍のアメリカザリガニは出品されている状況です。過去180日間の落札状況を見ると、50匹前後で出品されたものが2,000円前後で落札されています。かつてのペット用生体ほど高値では売れませんが、Yahoo!オークションはザリガニを売る数少ない手段の1つです。
生きていない状態であれば、メルカリのようなフリマサイトにも冷凍ザリガニを出品できます。Yahoo!オークションと比べて冷凍ザリガニの完売例は多くありませんが、メルカリでも過去には1kg数千円で売れた例がありました。
個人でネットショップを開業
買取業者に冷凍のアメリカザリガニを持ち込んだ場合、期待したほどの値段では売れない可能性もあります。Yahoo!オークションやメルカリならもっと高く売ることも可能ですが、売れても手元に残るのは10%程度の販売手数料を引いた金額です。
個人でネットショップを開業すれば、この手数料の部分が少なく済みます。冷凍ザリガニの買取を行っている小林昆虫も、GoofooChainという無店舗販売のサイトを運営しているほどです。
「昆虫ねるねる」などの商品を扱う小林昆虫の通販サイトは、ネットショップ作成サービスのBASEを利用して作成されています。BASEを使えば個人でもネットショップを開業できますので、「インターネット上に自分だけの店舗を持ちたい」という人は利用を検討してみるといいでしょう。
まとめ
以前は希少種のザリガニがペット用として高値で取引されていましたが、規制が強化された現在は生きたままの販売ができない状態です。川などで釣ってきたアメリカザリガニを売るには、冷凍などの生きていない状態でしか販売が許されません。
ザリガニ釣りのコツを会得した人にとっては、冷凍のアメリカザリガニを売ってお小遣い稼ぎをする道も残されてはいます。同じ冷凍でも捕獲してきた個体をそのまま売るなら許可は不要で、繁殖させて増やした個体を売る場合は許可が必要です。
2023年6月の規制開始以前からザリガニ養殖を生業としてきた人でない限り、繁殖個体を販売する許可は得られません。これからザリガニの養殖を始めようとする人は、捕獲した個体を繁殖させずに冷凍して売る以外に選択肢はない状況です。
冷凍ザリガニの販路としては、以下のような3つの販売方法を紹介しました。
- ザリガニ買取業者を利用
- フリマサイトに出品
- 個人でネットショップを開業
「困難は覚悟の上で、それでもザリガニが売りたい!」という人は、自分に合った方法でチャレンジしてみるといいでしょう。