クリスマスケーキの販売にノルマがある理由とは?自爆営業も横行

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毎年クリスマスのシーズンになると、コンビニやスーパーなどの店先には豪華なクリスマスケーキが並びます。手近な店でケーキを買って済ませようという人を当て込んでの販売ですが、そうした店では高価なクリスマスケーキがなかなか売れないものです。

高い売上目標を掲げるコンビニやスーパーの中には、従業員にクリスマスケーキの販売ノルマを課しているところも少なくありません。従業員に自己負担で購入させてまでしてノルマ達成を求める店もあるくらいで、クリスマスケーキの自爆営業は以前から問題とされてきました。

筆者自身もスーパー勤務時代にクリスマスケーキの担当をしていたため、こうしたノルマの苛烈さについては身にしみる体験を持っています。そこで今回はクリスマスケーキの販売にノルマがある理由について、経験者の視点から業界の闇に迫ってみました。

華やかなクリスマス商戦の裏で苛烈なノルマの実態

プレゼント用の商品やパーティー用の食材など、年に一度のクリスマスは大きなお金が動く一大イベントです。クリスマス商戦という言葉が存在するほど各業界は活気づきますが、店の従業員にしてみれば決して喜ばしいことばかりではありません。

特にクリスマスケーキは一家で1個は購入するものと見なされているだけに、多くのコンビニやスーパーで従業員にノルマが課されてきました。1人あたり何個というように割り当てられたノルマを果たすには、家族はもとより友人や知人にも声をかけて高価なケーキを買ってもわらなければなりません。

ノルマが達成できそうにないとなれば自腹でケーキを購入し、無理やりノルマを果たすという「自爆営業」を強いられる店もあります。クリスマスケーキは消費期限が短いため大量に自腹購入しても期限内に食べきれず、残ったケーキを廃棄している人もいます。

同じような販売ノルマや自爆営業の例はおせち料理や節分の恵方巻でも見られますが、特にクリスマスケーキは苛烈なノルマの実態が以前から問題とされてきました。コンビニやスーパーなど日常的に買い物をする店では数十円から数百円の商品がメインだけに、普通にやっていては何千円もする高額なクリスマスケーキはなかなか売れるものではありません。

コンビニやスーパーで働いている従業員は営業のプロではありませんので、友人や親戚に頼み込んでクリスマスケーキを買ってもらうのは大きな苦痛を伴います。ノルマを達成するために自分でケーキを何個も購入したり、未達成分を給料から引かれたりするのも大いに問題です。正社員だけでなくパートやアルバイトの従業員にまでこうしたノルマを割り当てている店も多く、クリスマスケーキの注文獲得競争が熾烈を極めてきました。

クリスマスケーキ担当者のプレッシャー

クリスマスと言えば誰もが心浮き立つような心地を覚える日ですが、筆者にとってはむしろ憂鬱な日々でした。スーパーでクリスマスケーキの販売を長年担当し、毎年この時期はノルマとの戦いに頭を悩ませてきたのです。

筆者の勤務していたスーパーは他の従業員にまでクリスマスケーキの販売ノルマを割り当てることはせず、担当者だけがノルマを引き受けていました。ノルマを達成するためにはクリスマスの1カ月以上前から店内プロモーションを開始し、来店客や従業員からの予約受付を1件でも多く取り付ける必要があります。

限られた予約客だけではノルマを達成できるものではありませんので、残りはケーキが納品され始める12月22日頃からの店売りに賭けるしかありません。定価の10%引き程度で売れてくれれば利益も出ますが、クリスマスイブを過ぎても売れ残ったケーキは原価割れの割引価格で叩き売ることになります。業者からはすでにノルマを達成する数量を仕入れてしまっている上に、売れ残っても返品ができないからです。

原価をわずかに割り込む程度の3割引で完売できればいい方で、売れ残りが多い年は原価を大きく割り込む半額でようやく売り切ったこともありました。一度そうやって安く売ってしまうと、翌年以降は当たり前の値段でなかなか売れなくなってしまいます。売るのがもっと上手な人ならここまで苦労することもなかったはずですが、クリスマス期間は営業が苦手な担当者にとって身を切るようなプレッシャーとの戦いだったのです。

クリスマスケーキに販売ノルマがある理由

ライバル店の中には全従業員にノルマを割り当てていた店も多く、1人あたり10個という話も聞こえてきました。全国チェーンの大手スーパーと違って有名洋菓子店やスイーツメーカー製のケーキを扱っていない筆者の店では、地元製パンメーカーのケーキを売るしかありません。

製パンメーカーの担当者は前年の販売実績を持ち出し、最低でも前年並みの数字でお願いしますとばかりにノルマを突きつけてきます。それを受けて自店でも昨対にいくらかプラスした数字を売上目標に設定し、目標を達成できるようにケーキの個数を調整してメーカーに注文するという流れでした。

メーカーからのプレッシャーも

店側からもクリスマス期間は売上目標も高く設定されているだけに、単価の大きいケーキの売上に期待する部分も確かにあります。それだけでは苛烈とも言えるノルマが横行している事実を説明できませんが、クリスマスに関してはケーキを納品するメーカー側の意向も無視できない要素です。

特に筆者が勤務していたような地方の中小スーパーは地元の製パンメーカーに依存していた面もあって、メーカー側から昨対の数字を持ち出されると従わざるを得ませんでした。昨年対比を下回るような数量でクリスマスケーキを注文した日には、それ以降パンの特売でも条件を出してもらえなくなる可能性があります。他店の事情は定かでありませんが、ライバル店でも同様に製パンメーカーからの圧力を受けていたはずです。

ノルマに縛られた業界

高級洋菓子店のクリスマスケーキを扱う大手スーパーを含め、スーパー業界のクリスマス商戦は取引先業者も巻き込んでの顧客争奪戦の様相を呈しています。ケーキを販売する店舗も製造するメーカーも昨対の数字に縛られ、達成困難な数字であっても従業員にノルマを課すことで無理やり達成させようとしているのです。

過去に一度でもクリスマスケーキの販売で好調な実績を残してしまえば、翌年以降に数字の呪縛が毎年つきまとうことになります。前年並み以上の注文数量を迫る製パンメーカーの担当者と言えども、会社から昨対の数字を押しつけられて営業を行う一従業員に過ぎません。こうした流れが一度でも止まってしまえばクリスマス商戦が二度と盛り上がらなくなってしまうため、そうならないように業界の誰もが必死で走り続けるしかないのです。

自爆営業を強制するのは違法?

販売に関わる仕事でこのようなノルマを課されるのは、クリスマス商戦のコンビニやスーパー従業員だけではありません。営業の仕事をしている人には多かれ少なかれノルマが付きもので、歩合給が採用されている場合はノルマの達成度が給料にも響いてきます。ノルマが達成できなければ営業成績が下がり、昇給や昇進への悪影響も避けられません。

そうした意味でのノルマであれば必ずしも違法ではありませんが、ノルマを達成できなかった場合に自腹で商品の購入を強制されるとしたら問題です。実際にクリスマスケーキのノルマでも、一部のコンビニやスーパーでそうした自腹購入が横行してしています。

労働基準法に違反する可能性

いわゆる「自爆営業」は日本郵政やJAでも以前から問題となっていて、お年玉付き年賀はがきや共済への加入などで自腹での購入を強いられてきました。中にはノルマ未達成の従業員に対して減給や解雇などのペナルティを課したり、暴言などのパワハラ行為に及んだりする例も見られます。

クリスマスケーキの販売でもこうした形でノルマ達成を迫る店舗が跡を絶ちませんが、自爆営業を強制したりノルマ未達成者にペナルティを課したりするのは違法性のある行為です。ノルマ達成のために商品を自己負担で購入させられた場合は、労働基準法に違反する可能性があります。賃金は通貨の形で労働者に直接全額を支払わなければならないという文言が、労働基準法の第二十四条に明記されているのです。

強要罪が適用される可能性も

クリスマスケーキの自爆営業を強制した時点で、賃金支払の原則が崩れてしまうことになります。これは本来なら通貨の形で直接支払うべきだった給料の一部が、ケーキという現物支給の形に置き換えられた状態です。
会社の上司が部下に対して自爆営業を強制した場合には、刑法上の強要罪に抵触する可能性も出てきます。ノルマを達成できなかった人に対して給料減額のペナルティを課す行為も、労働基準法の第十六条に反する違法行為です。

日本郵政で自爆営業の問題が大きく報じれて以降は、ノルマのあり方について多くの企業が見直すようになりました。それでもクリスマス商戦を迎えたコンビニやスーパーなどの一部では、今もなおこうした違法なノルマを課しているのが現状です。

クリスマスケーキのノルマまとめ

コンビニやスーパーを利用する客の立場からではなかなか見えにくい面もありますが、華やかなクリスマス商戦の陰では以上のようなノルマに従業員が苦しめられてきました。ノルマを達成できずに自腹で大量のケーキを購入する人や、上司からのパワハラに耐えかねて店を辞めてしまう人も少なくありません。売上目標としてのノルマを設定しながら従業員同士で競い合うのも悪くはありませんが、自爆営業や未達成ペナルティを強制するのは行き過ぎた違法行為です。

コンビニやスーパーで従業員にクリスマスケーキのノルマを課しているのは、そうでもしないと昨年対比の数字をクリアできないほどクリスマス商戦の売上が肥大化した結果とも言えます。そうやって季節商品の需要が強制的に生み出され、日常的な売上だけでは達成困難な年間目標が維持されているのです。

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