スーパーで値引きしない商品がある理由とは?業界のカラクリを暴露

雑学

コロナ禍で外食の機会が減り、自炊する人が増えた影響でスーパーの売上が好調です。閉店間際のスーパーは惣菜売場や生鮮食品の売場で商品に値引きシールが貼られるため、その時間帯を狙って買い物をするという人もいます。賞味期限や消費期限が迫っている商品は開店直後から、同じようにして値引き販売される場合があります。

スーパーで売られているすべての商品がそうした値引きの対象となるわけではなく、期限が近いのに値引きされない品も少なくありません。スーパーの従業員はどのように判断して値引きシールを貼っているのか、実際にスーパーで働いた経験者が業界のカラクリを暴露します。

スーパーで商品を値引きする理由

筆者は以前スーパーの従業員として勤務し、主にグロサリー(一般食料品)部門やデイリー(日配)部門を担当していました。豆腐や牛乳・パンなどを扱うデイリー部門は賞味期限(消費期限)の短い商品が多いだけに、商品の値引き作業も大事な仕事の1つです。仕入れた品々が毎日きれいさっぱり完売してくれればいいのですが、どうしても売れ残る商品が出てきます。

経験者の立場から言うと、スーパーで商品を値引き販売するのは「粗利率を少しでも上げる」のが最大の目的です。粗利というのは売上高から仕入れの原価を引いた残りの数字で、粗利を売上高で割った粗利率は店や部門の収益性を判断する重要な指標となります。

売れ残った商品を廃棄処分にすれば売上は0円となるため、その商品に関しては粗利率も0%となる計算です。定価で売れた場合の粗利率が30%の商品を半額で販売した場合には、粗利率も15%に半減します。元の粗利率に比べればだいぶ低くなってしまいますが、0%よりはずっとマシというわけです。

スーパーにとって粗利率は生命線

70円で仕入れた商品を100円で販売し、100個仕入れたうち50個が売れ残った場合で比較した計算結果は以下の通りです。

(1)売れ残りを半額で値引き販売した場合の粗利率
(30円×50個+15円×50個)÷(100円×100個)=(1,500円+750円)÷10,000円=22.5%
(2)売れ残りを値引き販売せず廃棄処分にした場合の粗利率
(30円×50個+0円×50個)÷(100円×100個)=1,500円÷10,000円=15%

売れ残りを半額で販売した場合と廃棄処分にした場合とで、粗利率に7.5%もの差がついてしまいました。1日に500万円を売り上げる平均的なスーパーの場合は、粗利率が1%下がっただけでも月に150万円の損失となります。150万円と言えば、平均的なパート従業員15人分の給料に相当する数字です。

スーパー業界は典型的な薄利多売のビジネスモデルだけに、どの店も粗利率の数字には神経を尖らせています。仕入れた商品の半分が売れ残るというのは極端な例ですが、スーパーの従業員は粗利率を1%でも上げるために地道な値引き作業に日々励んでいるのです。

値引きの対象外となる商品

以上のような値引き販売は惣菜売場だけでなく、鮮魚・精肉・青果といった生鮮品の売場で盛んに行われています。特に惣菜はその日のうちに売り切らなければならない商品が多いだけに、閉店時間の間際になるとほとんどの商品に半額シールが貼られる店も珍しくありません。鮮度が命の商品は売れ残ったところで廃棄される運命にあるため、値引きして売上に変えられれば少しでも収益アップにつながります。

惣菜や生鮮食品以外でも、パンや牛乳・ヨーグルト・豆腐などのデイリー商品はよく値引きの対象にされる商品です。消費期限や賞味期限が短い品は早めに見切り販売するのが普通ですが、中には同じジャンルでありながら期限が迫っていても値引きされない商品があります。あるメーカーの牛乳は賞味期限が残り数日で値引きシールが貼られるのに、別のメーカーは同じ日付でも値引きされないという具合です。

返品可の商品は値引きせず

値引きされる商品の多くは売れ残っても仕入先の業者に返品できず、期限が切れてしまえば店側で廃棄処分にするしかありません。代金を払って仕入れた商品が売れずに廃棄された場合には、お金をどぶに捨てるのと同じ結果となってしまいます。廃棄処分にするにも費用が余計にかかることから、たとえ半額でも売れてくれた方が店にとってプラスになるというわけです。

そうなるとスーパーで売られるすべての商品が値引きの対象となってもよさそうなものですが、中には売れ残った場合に返品が可能な商品もあります。特にデイリー部門では商品を委託販売のような形でスーパーの売場に置かせてもらっている業者も多く、期限が切れたり日付が迫ったりした商品は納入担当者が新しい品と交換していきます。または赤伝と呼ばれる返品専用の伝票を切って返品扱いにし、入れ替わりに新品を納入するのが慣例です。

商品の平均的な粗利率は惣菜が40%前後で生鮮食品は30%前後ですが、加工食品は定番商品でも20%前後しかありません。期限が近いからと言って返品可の商品を半額で値引き販売してしまうと、店側が赤字を引き受ける結果となります。返品可の商品は期限が近くなっても敢えて値引きせずに売り続け、最終的な損失を業者に負担してもらうのが得策なのです。

賞味期限が長い商品の値引き状況

インスタント食品や調味料・乾物類など賞味期限が長い加工食品は、スーパーではグロサリー(一般食料品)部門で取り扱っています。商品の主な仕入先となる食品問屋では期限切れを理由とした返品を受け付けないのが普通ですが、値引きが必要になるまで売れ残るのは稀なケースです。

それでも長期にわたって売れ残った品を、「商品入れ替えのため」と称して値引き販売している光景はたまに見かけます。たとえ売れ残っても店側で赤字を背負う必要がない商品であれば、わざわざ値引きシールを貼ってまでして原価割れの値段で売る必要はありません。

期限が迫っていても値引きされないのは返品が可能な商品か、または店側で廃棄処分しても赤伝で処理できるような品に限られます。つまりスーパーで商品を値引きするかしないかの判断は、売れ残った場合に店側が損をするかどうかで決まるのです。

値引きロスと売上チャンスロス

スーパーの値引き販売には以上のような経営上の目的があるとは言え、半額で売ってしまっては大半の商品が利益ゼロどころか赤字になってしまいます。商品が売れ残らないようにすれば値引きロスも発生しませんが、そうなると今度は欠品による売上チャンスロスが避けられません。

商品が売り切れてしまっては、「せっかく買いに行ったのに欲しい商品がなかった」というマイナス評価につながってしまいます。これが閉店間際ならともかく、もっと早い時間帯に売り切れ続出では大いに問題です。店側にとっても商品が早く売り切れることで売上の機会を失うことになり、目に見えない損失が生じることになります。

コンビニとの違い

最近ではコンビニでも弁当などを値引き販売する店が増えてきましたが、かつてはスーパーと違って値引き販売をしないのが普通でした。値引きせずに売れ残った商品は廃棄され、金銭的な損失はフランチャイズ加盟店の負担となるのが一般的です。

コンビニで商品を頻繁に値引き販売してしまうと、当たり前の値段では売れなくなってきます。スーパーより高めに設定している売価に割高感を持たせないために、フランチャイズ本部は加盟店に値引き販売を禁止してきたのです。

フランチャイズ制は本部と加盟店で経営が別々となっているのが特徴ですが、スーパーの場合は個別店舗の収益が会社全体に響くような経営体制となっています。売れ残り商品を値引き販売した方が経営へのダメージが小さくなることから、可能な限り廃棄ロスを減らす努力がされているのです。

値引きロスを計算に入れて売価設定

スーパーでは以上のような理由で期限の近い商品の値引きが積極的に行われているとは言え、商品の仕入れと販売を担当する従業員は日々難しい判断を強いられています。商品が早い段階で完売せず、同時にできるだけ値引き販売しなくても済むような数量を発注しなければなりません。

惣菜や生鮮食品の場合は店側でパック詰めなどの商品を製造することになりますので、作る商品の数量をどれくらいにするかの判断が問われます。過去のデータや天候なども計算に入れながら数量を決めてはいますが、誤差が生じるのは避けられません。たいていの店は数量を多めに見積もって売上チャンスロスが生じない方向に調整しているため、どうしても値引き商品が出てしまうのです。

半額にまで値引きしては完全な赤字ですが、店側では値引きロスの分も計算に入れた上で売価を設定しています。同じ商品でもコンビニで買うとスーパーよりかなり割高になってしまうのは、値引きロスより損失が大きい廃棄ロスが売価に含まれているからなのです。

スーパーの値引き事情まとめ

コロナ禍にあってはテレワークができないスーパーの従業員も、エッセンシャルワーカーの1つとして光が当てられました。人々の生活を支えるスーパーの仕事には、売れ残りそうな商品に値引きシールを貼る作業も含まれます。閉店間際の時点で売れ残っていた商品に半額シールを貼るだけならそれほど難しくありませんが、賞味期限や仕入れとのバランスから値引きを判断するのは熟練を要する作業です。

きれいに売り切ろうとしてシールを貼りすぎると値引きロスが必要以上に増えてしまい、粗利率が大きく下がってしまいます。ロスを小さくしようとするあまり発注数量を減らしすぎた場合には、チャンスロスが大きくなって売上ダウンにつながりかねません。各売場の担当者がそのへんのバランスをうまく取りながら販売しているおかげで、スーパーのお店も潰れずに営業を続けられるのです。

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