三が日に休業するスーパーが増えた理由とは?業界経験者が背景を解説

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コロナ感染が第3波の様相を呈している中で迎えた2021年の初売りは、百貨店など多くの店で福袋の販売を前倒しにするなど大きく様変わりしました。一方で食品スーパーの中には正月三が日に営業せず、すべて休業とする店が首都圏を中心に相次いでいる状況です。

繁忙期のイメージがある三が日を避け、敢えて休み明けの1月4日を初売りとする店が増えているのはどうしてなのでしょうか?一見矛盾しているように思える現象について、スーパー業界で働いた経験に基づいて背景事情を探ってみました。コロナ禍においてもエッセンシャルワーカーとして多忙を強いられたスーパー従業員の状況を知れば、三が日休業に踏み切った店の判断も理解できるようになります。

食品スーパーで正月三が日を休業する店が続出

正月三が日と言えば小売業界にとって初売り商戦の書き入れ時に当たり、1年で最も忙しい時期というイメージがあります。確かに例年なら百貨店やアパレルショップなどの店で福袋の販売に長蛇の列が並び、ショッピングモールでも初売りを目当てに大勢の客が押し寄せていたものでした。

福袋の行列に大勢の転売ヤーが並ぶのも見慣れた光景でしたが、2021年の初売りはコロナの影響で異変が生じています。混雑を避けるため福袋の販売を年内に前倒しとしたり、予約や抽選制にしたりするような動きが相次いだのです。

その一方では食品スーパーの間で正月三が日に1日も営業せず、1月4日が初売りという店が増えています。首都圏で約120店舗を展開する大手スーパーのサミットを始め、関東地方で約170店舗を展開するヤオコーや、約140店舗を展開するいなげやも大半の店舗で三が日すべてを休業としました。

スーパーが三が日を休業した理由

2021年は1月2日と3日が土日に当たっている関係で、正月休みが1月3日までという人も少なくありません。そうした中で集客が期待できるはずの三が日に敢えて営業せず、休み明けとなる1月4日を初売りとしたのは何か理由があるはずです。

これが百貨店や大型ショッピングモールであれば売上への大きな影響は避けられないところですが、食品スーパーは必ずしも三が日が書き入れ時というわけではありません。筆者もかつてスーパー業界に所属し、小さい店ながら店長を務めた経験もあります。

地方のスーパーだけに年末は1年で最大の繁忙期となり、12月30日と31日は従業員が全員出社で早出をして対応に当たるのが慣例でした。おせち料理や年越しそばなど年末年始向けの食品に加え、帰省客をもてなすのに欠かせない刺し身盛り合わせや寿司・オードブルも大量の予約が入ります。

コロナの影響で帰省客が減っているのも事実ですが、それだけでは食品スーパーで三が日休業の動きが広がった理由を説明できません。その背景にはコロナ以前からスーパー業界を悩ませていた問題があり、コロナ禍で経営課題が浮き彫りとなったために大手各社が英断を下したのです。

食品スーパー特有の事情

地方の食品スーパーでは年末に休憩時間を取る暇がないほどの忙しさを味わった一方で、年が明けてしまうとかえって暇になるのが常です。ほとんどの客は年末にまとめ買いするせいか、正月三が日は普段より売上が落ちるという店も珍しくありません。年末年始は卸売市場が休みになるため生鮮食料品の仕入れがストップし、正月は品薄状態になるという事情もあります。

都会のスーパーは地方の店ほど年末と年始の落差が極端ではないと見られますが、どちらも日常的に必要とする食品や日用品を売る店には変わりありません。おせち料理の食材や餅などは大晦日までに購入するという人が大半で、年が明けてしまえばほとんど売れなくなってしまいます。百貨店やショッピングモールなどと異なり、一般の食品スーパーは三が日だからと言って特別に忙しいというわけではないのです。

それでも今までは来店客の利便性に配慮し、三が日でも店を開けて買い物需要に対応していた店が大半でした。かつては元日だけでも休業するのが主流でしたが、1990年代以降は店舗間の競争が激化した影響で、元日営業に踏み切る店が増えたという時代の流れもあります。従業員を犠牲にしてでもライバル店から客を奪おうした流れに変化が生じたのは、働き方改革が叫ばれるようになったここ数年の話です。

スーパー業界の働き方改革

2019年頃から政府の主導で働き方改革が進められ、民間企業の間で残業時間を減らしたり有給休暇を取得しやすくしたりする動きが広がっています。視聴者から一律に受信料を徴収し国会で予算を承認される必要があるNHKですら、働き方改革を名目に番組制作の省力化が図られている状況です。

時代のそうした変化はスーパー業界の働き方にも波及して当然ですが、コロナ禍においては従業員が以前よりむしろ多忙を強いられました。テレワークや自粛生活で自炊する人が増えた影響もあって、スーパーで買い物をする人も増加傾向です。

コロナ禍においては感染リスクを冒しながら働き続けた医療従事者やドラッグストア従業員などの人々に対し、エッセンシャルワーカーとして敬意を表されました。生活に欠かせない食材や日用品を販売するスーパーの従業員もまた、同様の感謝が捧げられるべきエッセンシャルワーカーの一員です。

コロナ禍でエッセンシャルワーカーが敬意を集めた理由を経験者が検証
緊急事態宣言下では医療従事者やスーパーの従業員・配達員など、エッセンシャルワーカーと呼ばれる人たちが敬意を集めました。営業自粛の対象となった業種やテレワークが可能な職種との違いについて、エッセンシャルワーカー経験者の視点から解説します。

一方でスーパー業界は慢性的な人手不足に悩まされているのが実状で、人員を確保するためにも従業員の働き方改革が急務となっています。2020年はコロナ禍でそれまで以上に感染防止対策を強いられたことから、多くの従業員は疲弊している状況です。

正月三が日に休業するスーパーが相次いだ背景には、例年に増して苦労をかけた従業員に対するねぎらいという意味合いもあります。正月に仕事が休めるとなれば、働き方改革に前向きな会社として求人活動にも有利になってくるのは確かです。「お客様第一主義」を掲げていたスーパー業界もコロナ禍をきっかけとして労働環境の見直しが進み、従業員にやさしい店に生まれ変わろうとしているのだと言えます。

まとめ

首都圏の大手チェーンを中心に正月三が日を休業とした食品スーパーが相次いでいる背景には、ももともと正月に売上が大きく伸びる業種ではなかったという事情もあります。むしろ日常的に利用する店として人々の生活を守ってきた面もあるだけに、コロナ禍においてはスーパー従業員に対してもエッセンシャルワーカーとして光が当てられました。

コロナ対策で疲弊している従業員をねぎらう目的で三が日を休業とした部分はありますが、不足しがちな人員を確保したいというスーパー各社の思惑も見え隠れしています。この調子でスーパー業界の働き方改革が進めば、慢性化していた人手不足の緩和にもつながっていくはずです。

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