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コロナ禍で再来が懸念される就職氷河期とは?ロスジェネ世代を検証

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2021年春に卒業を予定している大学生の就職内定率が10月1日時点で約70%にとどまり、前年同月比より7%下がっているという事実が明らかになりました。新型コロナウイルスの影響で業績が悪化し、新卒者の採用人数を減らす企業が増えているのと符合する現象です。感染の第3波が拡大する中で今後は企業の採用意欲もよりいっそう冷え込むものと予測されるだけに、巷では「就職氷河期の再来か」という声も聞かれるようになりました。

大学を卒業しても非正規雇用の仕事にしか就けない人が続出し、ロスジェネ世代という言葉も生み出したのが1990年代から2000年代にかけての就職氷河期です。多くの学生が過酷な就職活動を強いられた就職氷河期とはどういう時代だったのか、当時の経済情勢や時代背景を手がかりに歴史を振り返ってみました。

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就職氷河期とは?

コロナ禍をきっかけに再び耳にする機会が増えている就職氷河期とは、就職が極めて困難だった1993年から2005年頃にかけての時期を言い表す言葉です。1980年代後半から1990年代初頭まで続いたバブル景気が崩壊し、1990年代半ば以降は日本経済が長い低迷期に入りました。1997年に北海道拓殖銀行や山一證券が経営破綻したように、長期にわたる不況が続いて業績の悪化した企業が相次いだのです。

そんな状況下では企業の採用意欲も高まるはずがなく、新卒採用の人数は極端に減らされてしまいます。バブル期に大量採用して余剰人員を抱えていた企業が多かった事情もあり、この時期に就職活動を行った学生にとっては極めて不利な状況に追い込まれました。

何十社も面接を受けながら内定が得られず、就職先が決まらないまま世の中に放り出されてしまった人も少なくありません。1990年代半ば頃に大学を卒業した年代はちょうど団塊ジュニア世代に当たるだけに、他の世代より人口が多かったという事情が就職難に拍車をかけました。景気低迷が長引いたことで団塊ジュニア以降の世代でもなかなか就職できないまま、非正規雇用の仕事で食いつないできたという人は多く見られます。

1997年頃には就職難がいったん解消しかけましたが、消費税が3%から5%に値上がりした影響もあって経済が再び冷え込みました。2000年代に入ると世界的なITバブル崩壊の影響も加わり、1990年代から続く就職氷河期が10年以上も長引く結果を招いてしまったのです。

就職氷河期を招いたバブル崩壊の原因

一流大学を卒業した人でもなかなか就職できないほど企業の採用活動が低調だったのは、大量採用が常態化していたバブル期の反動も一因です。バブル景気の最中には優秀な学生の内定辞退を防ごうとするあまり、国内外のリゾートホテルに学生を囲い込む企業が相次ぎました。いまだに語り草となっている内定者の「拘束」に関しては、テレビドラマでも人気となった半沢直樹シリーズ第1作の池井戸潤『オレたちバブル入行組』冒頭でも言及されています。

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世の中全体が浮かれていたバブル期は就職活動も空前の売り手市場で、企業が内定者に車をプレゼントしたり海外旅行に連れて行ったりする過剰な接待が横行していました。それだけ大量の人員が採用されていたわけですが、1990年代に入ってバブルが崩壊すると、一転して採用活動が冷え込むことになります。

就職氷河期の原因となったバブル崩壊の引き金は、日米英独仏の先進5カ国による1985年のプラザ合意です。対日貿易赤字に苦しんでいた米国の救済を目指す各国が為替レートに介入した結果、円高ドル安が進んで一時は日本経済が円高不況に陥りました。

当時の日本は世界市場で現在の中国のような地位にあり、安価な日本製品が米国を始めとする世界各国へと盛んに輸出されていた時期です。好調な輸出を背景に安定成長が続いていた日本経済の停滞を受けて、政府は金融緩和政策で円高不況を打開しようとしました。

銀行の金利が下がると借りたお金で土地を購入する企業が続出し、購入した土地を担保にしてさらに土地を購入しようとする動きも出てきます。再開発やゴルフ場建設を目的として全国各地の土地が買い漁られ、地上げが横行するほどの土地価格高騰を招きました。地価の高騰を抑えるために政府が実施した総量規制をきっかけに地価が下落し、お金がお金を生むようなバブル経済も崩壊へと向かっていくことになるのです。

バブル崩壊の影響は土地に投資していた企業にとどまらず、大量の不良債権を抱え込んだ銀行や、銀行から融資を受けていた多くの企業にまで及びました。不況の連鎖で業績が悪化する企業が相次いでくると、バブル期に大量採用した人員の人件費が経営を圧迫することになります。

日本の労働法制下では一度採用した社員を簡単には解雇できないため、人件費を圧縮するには新規採用を抑制するしかありません。そんな時代に就職活動のタイミングがたまたま重なってしまった不運な人たちに対して、バブル景気で払いすぎたつけを払わせる結果となってしまったのが就職氷河期の本質なのです。

ロスジェネ世代の苦闘

日本経済が長期的な低迷期に入ったバブル崩壊後の約10年間は、「失われた10年」とも言われた負の時代です。オウム真理教事件や酒鬼薔薇事件など陰惨な事件が世間を騒がせた背景には、長引く不況で社会に閉塞感が広がっていたという事情があります。

ちょうど就職氷河期とも重なるこの時代に社会人となった世代は、ロスジェネ=ロストジェネレーション世代とも呼ばれてきました。「失われた世代」と訳されるロストジェネレーションで最も有名なのは、ヘミングウェイやフィッツジェラルドなど1920年代から30年代にかけて活躍した作家たちの例です。

第一次世界大戦の従軍体験で虚無感や絶望感を味わった彼らは、宗教や道徳など既成の価値観に対する疑念を文学・芸術作品に昇華させました。バブル崩壊後の不況は当時の若者にとって戦争にも匹敵するほど絶望的な体験だったことから、米国のロストジェネレーションになぞらえて「ロスジェネ世代」と呼ばれるようになったのです。

ロスジェネ世代の中にも新卒時に一流企業への就職を果たし、今もなお会社の第一線で活躍している社員たちは大勢います。その一方では一流大学を卒業しながら正社員としての就職が叶わず、フリーターになったり派遣の仕事で食いつないだりして暮らしてきた人も少なくありません。ニートや引きこもりと呼ばれる人たちの中にもロスジェネ世代は相当数存在するものと推測されますが、就職活動の躓きがきっかけになったというのはよく耳にする話です。

「半沢直樹」は時代劇?原作『ロスジェネの逆襲』で読み解く時代背景
高視聴率が話題となっているドラマ「半沢直樹」の続編は、勧善懲悪ストーリーや顔芸など時代劇っぽい演出も人気の一因です。「今どきこんな会社ありえない」とも言われている「半沢直樹」の時代背景を、前半の原作『ロスジェネの逆襲』から検証してみました。

何社も面接を受けながら内定を得られず就職活動に失敗し、無防備な状態で社会に放り出されてしまった体験がトラウマになったという人も少なくありません。そうやって面接に落ち続けていると、自分の存在を全否定されたような絶望感に襲われがちです。

心の傷が癒せないまま30代40代となったロスジェネ世代の人たちは、今もなお社会にうまく適応できずに苦しんでいます。今さら正社員を目指そうにも、これまで非正規の仕事しか経験していない人はキャリア形成が十分ではありません。中途採用の人材を受け入れている会社は大手企業の中にも少なくありませんが、特定分野のキャリアを持つ即戦力を求めているケースが大半です。

転職市場でも不利な立場に置かれがちな就職氷河期世代の人たちを支援しようと、今になって国や自治体がさまざまな支援制度を打ち出し始めました。地方公務員としての登用や就職支援プログラムなどが行われつつありますが、特定の世代だけを対象とした制度には賛否両論があります。「今さら遅すぎる」という辛辣な声も聞かれるほどで、国の無策に人生を大きく狂わせられた人たちを救う制度としては十分と言えないのが実状です。

コロナ禍で就職氷河期が再来する可能性は?

現在は30代後半から40代となった就職氷河期世代は、本来であれば管理職として企業を支えるべき年齢に入ってきている人たちです。新卒採用数を減らそうという動きが10年以上にもわたって続いた結果、多くの企業でこの年代の人材が薄くなってきています。

就職氷河期に続いた2000年代後半以降は人手不足に陥る企業が続出するようになりますが、急に採用人数を増やしたところで戦力がすぐに回復できるわけではありません。社員教育も不十分な中で即戦力の働きを求められるケースが相次ぎ、今度は人手不足を背景としたブラック企業やパワハラが社会問題化するようになります。

2010年代後半にはアベノミクスの経済政策が功を奏して企業の業績も上向き、就職活動は売り手市場が続いていたところでした。そんな矢先に世界を襲ったコロナ禍で経済が一気に冷え込み、航空業界や観光業界・飲食業界を中心に業績が悪化する企業が相次いでいます。小売業や製造業の分野も厳しい状況で、今後は就職氷河期並みに新卒採用を抑える企業が増える恐れが出てきました。

バブル崩壊に端を発した就職氷河期は一種の人災でしたが、今回のコロナ禍は天災とも言える災難だけに厄介です。現在の状況を見ても政府がコロナを制御しきれていないのは明らかなだけに、今後の感染拡大によっては就職氷河期の再来もあり得ます。

とは言えコロナで経済が打撃を受けるのはワクチンや治療薬が開発されていない間に限られ、就職氷河期ほど長期にわたって経済が低迷するわけではないという予測も可能です。近いうちにワクチンが開発されて国民に行きわたり、有効な治療薬も市販化されるようになれば、人々も安心して経済活動が再開できるようになります。少なくとも2021年春に大学を卒業する年代は就職活動への大きな影響も避けられませんが、影響がそれ以降の世代にまで及ぶかどうかは今後の感染状況しだいです。

就職氷河期の検証まとめ

100年に一度と言われるパンデミックの渦中にあっては、わずか1年後の社会を予想するのも困難です。現在の経済情勢はバブル崩壊直後にも匹敵するほど悪化しているだけに、このままの状況が続けば第2の就職氷河期世代を生み出しかねません。

一方で就職氷河期の苦い教訓を持つ企業の中には人材に大きな空白が生じるのを避ける目的で、業績が苦しい中でも採用活動を維持しようという動きが見られます。バブル崩壊という大きな混乱を生き残ってきた日本企業は、コロナ禍のような危機に対しても打たれ強いはずです。したがって一時的には採用を抑える動きが出ても、就職氷河期ほど長期にわたって就職活動が困難になるとは考えにくいと言えます。

コロナ禍をきっかけにテレワークやオンラインを活用した多様な働き方が普及すれば、新卒一括採用という日本的な就職活動も次第に廃れていくのかもしれません。就職氷河期が非正規雇用の拡大を招いたように、企業の採用活動を冷え込ませるような出来事は働き方の大きな変革を生む契機となります。同じように就職活動に混乱を引き起こしているコロナ禍がどのような変革をもたらすのか、今後の行方から目が離せません。

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