3月12日放送のNHK「クローズアップ現代+」でトレンドブログの実態が取り上げられ、情報発信のあり方に関する問題点が指摘されました。芸能人の熱愛や不倫など話題のニュースを扱うゴシップ的なブログは以前から存在していましたが、最近は新型コロナウイルスに関する話題を取り上げる例が増えています。
新聞やテレビなどの大手メディアが報じない情報でも、個人のブログなら自由に発信できるのは事実です。人々の興味をかき立てる話題と文言で爆発的アクセスを獲得すれば、ブログに掲載した広告を通じて収入を得ることができます。
副業としても注目度が高まっているトレンドブログについて詳しく知りたいという人に向けて、広告収入が得られる仕組みとアクセス数を稼ぐテクニックについてまとめてみました。人権やプライバシーの侵害を巡って以前から指摘されていた問題点についても、記事の後半で包み隠さずに解説します。
トレンドブログで稼げる仕組み
有名人から一般の会社員に至るまで副業の手段として利用されているブログには、取り扱う内容によって以下の3種類に大きく分けられます。
- 雑記ブログ
- トレンドブログ
- 特化型ブログ
このうち雑記ブログは日記のように日々の出来事や雑感などを書き連ねた内容で、芸能人が運営するブログに多く見かけます。特化型ブログは美容や金融・転職など特定のジャンルに関する記事を取り上げるのが特徴で、アフィリエイト広告を掲載したビジネス目的で開設するケースが大半です。
トレンドブログはどちらかと言うと雑記ブログ寄りではありますが、自分自身の身辺雑記ではなく世の中を騒がせているニュースを題材に取り上げる点で日記的なブログと異なります。このようなブログの大半はクリック報酬型のアドセンス広告を掲載しているため、アクセス数が増えれば増えるほど広告収入が積み重なる仕組みです。
トレンドブログの収入源
芸能人の熱愛や事件・災害などのニュースを取り上げるトレンドブログの運営者は、単なる趣味やボランティアでブログ記事を書いているわけではありません。ブログに広告を掲載するからには、記事を書いて収益を得ることが最大の目的です。
大手検索エンジンのGoogleが運営する広告配信サービスのアドセンスは、訪問ユーザーの閲覧履歴に合わせて最適な広告を表示するシステムを採用しています。特化型ブログの場合は特定ジャンルの商品やサービスを扱うアフィリエイト広告をブログ運営者が自分で選び、購入や会員登録などの成果に応じて報酬を受け取るのが一般的です。
ブログを運営している人の中にはアフィリエイト広告とアドセンス広告を使い分けている人もいますが、トレンドブログには多種多様な年齢や性別・興味を持つ人が訪れます。記事の内容が特定ジャンルの広告と直接関係するわけではないため、広告が自動的に選ばれるアドセンスと相性が良いのです。
爆発的アクセスを呼び込む仕掛け
トレンドブログは広告がクリックされるだけで報酬が発生する点では稼ぎやすい副業ですが、アドセンス広告は1クリックあたりの平均単価が30円程度に過ぎません。広告のクリック率は1%なら上出来と言われているだけに、まとまった収入を稼ぐには万単位のページビューが必要です。
トレンドブログで高収入を稼いでいる人はネタの選び方やタイトルの付け方が上手で、最新のニュースにも絶えずアンテナを張っています。芸能人の不祥事が発覚したり大きな事件や災害が発生したりした直後に素早く反応して記事を書き、ブログに爆発的なアクセスを呼び込んで広告収入を稼いでいるのです。話題のニュースに関する最新情報を知りたがる人が検索してくるキーワードを予測し、ライバルがまだ記事を用意できていない段階で検索上位を勝ち取れば先行者利益を得ることができます。
トレンドブログの何が問題?
審査さえ通れば誰でも広告収入が稼げるようになるという点では、クローズアップ現代+で紹介されていた通りトレンドブログは「新しいビジネス」です。番組ではそんなトレンドブログの持つマイナスの面に光を当て、問題点を浮き彫りにしていました。
すべてのブログ運営者に当てはまるというわけではありませんが、アクセス数を稼ぎたいばかりに過激な記事を掲載する人がいるのも事実です。人々が「知りたい」と渇望しながら大手メディアが伝えない種類の情報にこそ、爆発的なアクセスを集められる秘密が隠されています。そうした情報は簡単には入手できないのが普通ですが、憶測に基づいた怪しげな情報ならSNSを検索するだけでいくらでも見つかるのが現状です。
社会的責任を持つ上場企業の大手メディアは個人情報の取り扱いにも細心の注意を払っているのに比べ、トレンドブログを運営する個人の中にはそうした自覚に乏しい人も少なくありません。既存メディアでは実名報道されていない人物の個人情報をネットで探し出して晒す行為など、不適切な記事の例は番組でもいくつか取り上げられていました。
フェイクニュース拡散や人権侵害で法的リスクも
トレンドブログが深刻な人権侵害にまで発展した一例として番組が紹介していたのは、2019年に世間を騒がせた常磐自動車道でのあおり運転・暴行事件に関する記事です。加害者の車に同乗していた「ガラケー女」と称して異なる人物の個人情報がトレンドブログに掲載され、SNSで誤った情報が拡散されたことでこの女性がデマの被害に遭いました。フェイクニュースと言えば報道機関の問題と思われがちですが、トレンドブログを使えば一般の個人でもフェイクニュースの発信者と化してしまうリスクがあるのです。
同様の問題は海外でも物議を醸しており、フェイクニュースの制作が地場産業のようになっているマケドニアの小さな街がメディアに取り上げられたこともありました。ニュースの発信を手がけていたのは街に住む一般の個人で、貧困から抜け出す目的で手っ取り早く稼げる偽のニュースを製造し続けていたのです。
意図的にフェイクニュースを発信して稼ごうとしくても、事実誤認から結果的に間違った情報を世に出してしまう可能性はあります。実際に真偽のほどをよく確かめないまま、ネットで調べた情報を鵜呑みにして記事を書いている人も少なくありません。たとえ事実であったとしても個人情報や誹謗中傷をインターネットで書き込んだ場合は、名誉毀損罪やプライバシー侵害の罪に問われる可能性があります。
トレンドブログにも情報発信者としての責任感が必要
現実には人権侵害に該当する記事がブログに掲載されたとしても、匿名で運営されている場合は情報を発信した個人を特定するのは難しいと言われています。よほど深刻なケースでない限りは訴訟にまで発展する例が少なく、大半の被害者は泣き寝入りしているのが現状です。
とは言えトレンドブログが人権侵害の温床となってしまうと大きな社会問題に発展し、政府が対策に乗り出す可能性も出てきます。国が強権を発動してブログ運営者を特定できるように法律が改正されれば一般のブログにまで影響が及び、表現の自由が萎縮されかねません。
人々が知りたいと願う情報を大手メディアに先駆けて提供するトレンドブログを健全化するには、運営する個人にも大手メディア並みの自覚が必要です。トレンドブログに広告を配信するGoogleも健全化に取り組んでおり、著作権侵害や差別的表現の見られるブログに対しては配信停止などの対策を講じています。
まとめ
コツさえ覚えれば誰でも初期費用ゼロから稼げるようになるという点では、トレンドブログは大きな可能性を秘めた副業のあり方です。新型コロナウイルスに関するニュースでも、人々が本当に知りたいと思っている最新情報をいち早くキャッチしてブログで発信すれば世の中に貢献できます。絶えず情報を発信し続けていなければ稼げなくなる点では労働集約的ですが、特化型ブログよりも参入しやすい点はトレンドブログの強みです。
一方でトレンドブログの扱うニュースは人権やプライバシーの侵害につながりかねないだけに、個人情報の取り扱いには大手メディアと変わりない慎重さが求められます。ブログを武器に一介の個人が新聞や雑誌・テレビとの報道合戦に加わろうと思えば、相応の社会的責任も伴ってくるのです。