毎年春になると、全国各地のホームセンターでさまざまな野菜の苗が売り出されます。野菜を種から育てるのは手間がかかるだけに、苗の販売価格は種よりも割高です。
家庭菜園に慣れてきて、野菜の種まきに成功したという人も少なくないのではないでしょうか?
そんな場合に自分で育てた野菜の苗を販売できれば、プロの農家でなくても収入が得られるようになります。農産物直売所やフリマサイトなどを利用すれば個人でも野菜の苗を販売することは十分に可能です。
ただし市販の種を使って育てた苗を無断で販売しようとすると、法律に違反してしまうケースがあります。メルカリで種を売るのは違法?無許可でも販売可能な種の種類を解説でも紹介したように、種や苗の販売で許可が必要な品種と不要な品種があるからです。
苗に関しては種とは販売方法が違ってくる部分もありますので、販売許可を得る方法について調べてみました。趣味で家庭菜園を楽しんでいる人でも、この記事を読めば安心して野菜の苗を販売できるようになります。
個人で野菜の苗を販売する方法
ホームセンターや園芸店で売られている野菜の苗は、取引先の卸業者から仕入れるのが一般的です。たいていは会社経営で野菜や花の苗を生産し、ホームセンターなどに卸して収益を得ています。個人が家庭菜園で育てた野菜の苗をホームセンターに売ろうとしても、信用がないために断られるのが普通です。
しかしながら野菜の苗が売られている場所は、ホームセンターのような小売店だけではありません。農産物直売所や道の駅など、生産者が消費者に農作物を直接販売する場も用意されています。野菜や果物の収穫物だけではなく、苗も委託販売の対象です。
自宅や菜園が交通量の多い道路に面していれば、自分で無人販売所を設置して野菜の苗を売るという手もあります。さらに最近では、メルカリのようなフリマサイトを利用して野菜の苗をネット販売している人も少なくありません。プロの農家でなくてもこうした手段を利用すれば、自分で育てた野菜の苗を販売できるようになります。
苗の販売は儲かる?
ホームセンターや園芸店などの売り場では、1袋に数十粒から100粒以上入った野菜の種が数百円程度で売られています。種から育てるのに成功すれば、数百円の元手でたくさんの苗を作り出すことも可能です。
ホームセンターの屋外園芸コーナーを見ると、野菜の苗は1株100円前後から数百円ほどで売られています。種から育てた苗が全部売れれば、個人のレベルでもかなりの儲けになるはずです。
実際には種まき専用の用土が必要だったり、種まきトレーや育苗ポットを用意したりするのに費用がかかります。トマトやきゅうりなど人気の夏野菜は発芽の難易度が高いだけに、温度管理や害鳥対策などの手間もかかってきます。
接ぎ木苗を作るには台木の購入費用に加え、作業の手間も倍に増えてきます。費用と手間がかかるからこそ、野菜の苗は種よりも高値で売られているわけです。
個人で苗を育てて販売する場合でも、手間とコストを費やした対価として、種の購入費用の何倍という売上を得られるようになります。売上から合計費用を引いた残りが、苗を育てた作業の手間賃として自分の収入になる計算です。
初心者でも育てやすい野菜として人気のミニトマトは、苗が1株数百円で売られています。ミニトマトの種も、数十粒ほど入った袋の販売価格は数百円程度です。全部を苗に育てるのに成功すれば、資材コストを引いても数千円の儲けが残る計算となります。
種を買って苗を売る場合の注意点
購入した野菜の種を発芽させて苗に育てれば、苗を売ることで元値の何倍という収益が得られるのは確かです。直売所やフリマサイトなど個人で利用できる販売方法も複数用意されていますが、苗を販売する際には種苗法の規制を受けることになります。
種を購入した野菜が登録品種だった場合、苗を販売するのに育成者の許可が必要です。ホームセンターや通販サイトで売られている野菜の種には、登録品種とそうでない品種があります。苗の販売に許可が必要かどうかが違ってきますので、それぞれのケースについて以下に概要をまとめてみました。
苗の販売に許可が必要なケース
2022年の種苗法改正に伴って、登録品種は販売パッケージへの表示が義務付けられるようになりました。品種登録された種や苗を販売する際には、原則として育成者の認可が必要です。
野菜や果物などの農作物にも、特許や著作権と同じように育成者の権利が認められています。どちらも知的財産権として法律で保護され、権利者に無断で複製する行為が禁止されているわけです。
品種登録番号やPVPマークがパッケージに記載されていれば、登録品種の種ということになります。農林水産省の品種登録データ検索も併用しながら、登録状況を確認してみるといいでしょう。
許可が不要のケース
品種登録には特許と同じように、有効期限というものがあります。期限が切れている場合には、一般品種と同様の扱いとなります。
例えばイチゴのブランド品種として有名な「とちおとめ」の場合、品種登録の有効期限は2011年の11月22日に「期間満了」となりました。現在は全国の農家で作られるようになったせいか、個人の出品者が多いメルカリでもとちおとめの苗はよく見かけます。
じつは野菜全体から見ると、登録品種は1割程度でしかありません。在来種や固定種の野菜は最初から登録されていませんので、許可を得なくても苗を販売できます。「認可の手続きが面倒」という人はそういう一般品種の種を探してみて、苗作りに挑戦してみるといいでしょう。
種苗販売で許可を得る方法
品種登録された野菜の種や苗を販売するには、育成者の許可が必要です。ホームセンターや通販サイトで登録品種の種を購入して育てた苗を売る場合、どうやって許可を得るのでしょうか?
購入した野菜の種は必ずしも登録品種とは限りませんので、まずは種のパッケージを確認します。「登録品種」と記載されていたり、PVPマークがついていたりする場合は、許可が必要な登録品種です。
農林水産省の品種登録データ検索にアクセスし、パッケージに記載されている品種名で検索する方法もあります。パッケージに品種登録番号が記載されている場合は、「登録番号」欄に番号を入力するだけで詳細情報が確認できる仕組みです。
詳細情報の中に品種登録者の名称と住所が記載されていますので、登録者と連絡を取る手段が確保できます。都道府県などが登録者となっている場合は、公式HPからメールなどの手段で連絡を取ることも可能です。
多くの登録品種を持つ農研機構のように、個人との利用許諾契約を行っていないところもあります。連絡先が判明しても必ず許可が得られるとは限りませんが、まずは品種登録データ検索で登録者を調べるところから始めてみるといいでしょう。
まとめ
個人で野菜を種から育て、苗を作って販売する方法について解説してきました。家庭菜園でも栽培が可能な野菜は、登録品種と一般品種に大きく分けられます。在来種や固定種などの一般品種であれば、苗を販売するのに許可は必要ありません。
登録されていた品種であっても、有効期限が切れていれば苗を自由に販売できるようになります。期限が切れていない場合は、苗を販売するのに許可が欠かせません。登録者の連絡先は品種登録データ検索で調べられますので、苗の販売が可能かどうか問い合わせてみるといいでしょう。