スーパーマーケットでは大勢の従業員が働いている上に、店舗数も全国で合計2万店以上に達します。スーパーの店員は求人数も多い仕事ですが、店長は限られた人にしかできない職種です。一般の従業員と店長では年収にもかなりの差があるだけに、自分もスーパーの店長を目指したいという人も少なくないのではないでしょうか?
一方でスーパーの店長は大変な仕事で、激務に耐えなければならないとも言われています。筆者もかつてスーパーに10年以上勤務した中で、店長職も経験してきました。
店によって違いもありますが、どのスーパーでも店長は重い責任を背負うことになります。人手の足りないスーパーほど店長にかかる負担が大きくなるため、激務になりがちなのは事実です。
そこで今回はスーパー店長の仕事がどれだけ大変なのか、具体的な仕事内容について情報をまとめてみました。すべて実体験に基づいた情報ですので、スーパーの店長を目指している人にとっては役に立つはずです。
スーパーの店長は激務だった!
筆者がかつて勤務していたのは地方の中小企業ではありますが、県内に複数店舗を展開していたスーパーマーケットのチェーン店です。入社5年目で部門の主任から昇進し、小規模店の店長職を兼務するようになりました。
人手不足が慢性化していた店だけに、一般食料品と日配の両部門で担当を続けながらの店長兼務です。直属の部下はパートタイマー1人しかいなかったため、品出し作業に追われる中で店長業務もこなさなければなりませんでした。従業員数が30人程度で売り場面積も狭い店だからこそ、こういう状態でも店長職の兼務が可能だったと言えます。
大手のスーパーとは条件がだいぶ違いますが、店長がすべき仕事はある程度共通しているはずです。たとえ部門の仕事がなかったとしても、店長の仕事はやはり激務そのものでした。勤務時間が長くなりがちで肉体的にきついだけでなく、責任の重い役割で精神的にも大変な思いをしたものです。
スーパー店長の仕事が大変な理由
スーパーの各店舗では、どの店長も同じように激務をこなしているとは限りません。筆者はスーパーの仕事を10年以上続けてきた中で、ほかの店長の仕事ぶりも見てきました。泣き言ひとつ口にしないで激務に耐えていた店長がいる一方で、ほかの店長より楽をしているとしか思えない人もいます。
それほど激務でもないように見えた店長に共通していたのは、人を使うのが上手だという点です。部下に権限を与えて仕事を分担させるようにすれば、激務になりがちな店長の負担も軽減されてきます。人手が絶対的に足りない店では困難な話ですが、部下を使うのが下手な店長はどうしても激務になりやすいと言えます。
筆者も店長に任命された当初はまだ20代だったせいか、部下を使うのが決して上手な方ではありませんでした。何でもかんでも自分1人で抱え込み、店長の仕事を必要以上に大変なものにしていた感があります。
むしろ筆者が入社当時の店長は人を使うのが上手な人で、兼務していた部門の仕事もパートタイマーにほとんど任せていたくらいでした。自身は店長にしかできない仕事だけをしていたせいか、傍から見れば楽をしているように見えたものです。実際には店長ならではの苦労もいろいろとあったでしょうが、絶えず忙しそうに立ち回っているという風ではありませんでした。
店長が多忙すぎて余裕がないようでは、不測の事態が発生した場合に迅速な対応ができません。部下でもできる仕事は可能な限り任せるようにして、自分は余裕を持って店内に目を配るのが理想の店長像です。
スーパーは副店長も激務?
店長が担うべき仕事は多岐にわたるため、1人で背負いきれるものではありません。たいていのスーパーには副店長や店長代理と呼ばれる人がいて、店長を補佐する役目を果たしています。
店舗の運営を円滑に進めていくには、店長を副店長が支える仕組みが欠かせません。1人では担いきれないほど重い職務でも、2人で役割分担すればだいぶ楽になるはずです。
店長の職務と権限の一部を副店長に与えることで、店長も店全体を見るだけの余裕が出てきます。店長がすべき仕事の大半を副店長が担い、店長は名前だけの存在に過ぎないという店も存在するほどです。
筆者は20代で小規模店の店長職を経験した後、県庁所在地にある大規模な店に異動されました。各部門の主任クラスには、店長経験者が何人も配属されていたほどの店です。長年にわたって店長職を務めてきた人がその店の店長だっただけに、筆者は一部門の主任と副店長を兼務する役目でした。
この店長はバイヤー職を兼務していて会議への出席や出張も多かっただけに、店長がすべき仕事の多くは副店長の筆者がするしかありません。同じような状況にある店では、副店長の仕事も店長に劣らず激務となります。むしろ副店長が楽をしているような店では、店長が大変な思いをしているはずです。
スーパー店長の仕事内容
スーパー店長の仕事が激務になりがちなのは、すべき仕事が多すぎるのも理由の1つです。記事の後半では筆者の経験に基づいて、スーパー店長の主な仕事内容をまとめてみました。店長に課せられる仕事の中身は店によって違いもありますが、以下のような仕事はほとんどのスーパーで共通しているはずです。
- 店舗や従業員の管理業務
- 販売促進業務
- 本部への報告・会議への出席
- 業者やトラブルへの対応
- 従業員の採用・面接
- 朝礼・店内放送
- 人手が足りない部署のフォロー
それぞれ詳しく解説します。
店舗や従業員の管理業務
店長の仕事で重要度が高いのは、店舗の管理に関わるさまざまな業務です。店内設備の管理や売上管理だけでなく、シフト管理や部下への指示など従業員の管理業務も含まれてきます。
筆者の場合は朝6時頃に出社し、店の鍵を開けることから1日の仕事を始めるのが常でした。朝の早い鮮魚部の主任が先に来て鍵を開ける日もありますが、少しでも遅れると鍵を持たない従業員を店の裏口で待たせることになってしまいます。商品を搬入する業者も6時頃から続々と到着するため、店の鍵を持つ店長も早くから出社している必要があったわけです。
筆者が勤務していた店の営業時間は午前9時半から夜9時までですが、ナイトマネージャー(夜間店長)は採用していませんでした。誰かが最後まで店に残り、閉店業務をこなして店の鍵を締めることになります。
店長時代の筆者はこの閉店業務もほとんど1人で引き受けていたため、「朝誰よりも早く店に来て、夜は最後まで残る」の繰り返しでした。この間に何か異状があれば随時対応し、自分で対処しきれない場合は業者を呼ぶのも店長の仕事です。
店内設備を隈なくチェックして、汚れている場所を見つけたら部下に指示して清掃させる仕事もあります。誰もやる人がいなければ、店長自身が掃除するしかありません。売り場の陳列状態や値札の付け方で不適切な個所があれば、担当部署の従業員に注意して改善させるのも店長がすべき仕事の1つです。
販売促進業務
スーパーのチェーン店を運営する会社から見れば、店長は1つの店舗を任された担当責任者でもあります。店の売上を管理してコスト削減に努め、収益の面でも会社に貢献することが求められる仕事です。
ある程度の売上を確保しないことには、収益の目標も達成できません。会社から与えられた目安の数字に基づいて、売上と収益の目標を決めるのも店長の仕事の1つです。店全体の月間目標を決め、部門ごとに売上目標と粗利益の目標を割り当てていきます。
筆者の店では毎月1回店長と部門の長が集まって会議を開き、翌月の目標と販売戦略を検討するのが常でした。店の販売会議を主宰して進行を司るのも、店長に課せられた重要な役目です。業績が振るわない部門があれば主任を追及し、改善に向けた対策を一緒に考え出す必要も出てきます。
筆者の店ではチラシ広告を店単位で出していたため、週2回発行するチラシの企画を考えるのも店長の役目でした。季節ごとのイベントや創業祭・周年祭などの特売日に合わせて、チラシ広告と連動した店内装飾を企画する仕事もあります。
場合によっては部門ごとの特売商品にまで口を出し、「この日は卵を安く出せないか」「売価をもう10円下げられないか」などと担当者に再検討させる例もありました。来店客数を増やすためには、ライバル店の動向も絶えずチェックする必要があります。
このように店長は店の業績に対して責任を負う立場にあるため、数字に強い人でないとなかなか務まりません。筆者も店長時代は頭の中が数字でいっぱいになり、絶えず追い立てられるようなプレッシャーを感じていたものです。
本部への報告・会議への出席
店長は店の代表として、会社側とやり取りする役割を与えられています。報告すべき事柄が生じた場合には、メールや電話で本部に連絡するのも店長がこなすべき仕事の1つです。
通常はメールでの報告で事足りますが、緊急性の高い事案が発生した場合は電話を使用します。自分では判断できないトラブルに直面した場合には、社長や本部の指示を仰ぐ必要があるからです。
筆者が勤務していた会社では月に1回各店の店長が本部に集まり、社長を交えた会議に出席するのが常でした。前月の売上と収益について報告し、業績が振るわなければ改善策を検討するのが目的です。
会議のほかにも店舗の視察やセミナーへの出席など、店長は何かと出張の多い仕事でもありました。店長が店を空けている間は、副店長が最高責任者の職務を代行することになります。
業者やトラブルへの対応
スーパーは扱う商品の数が多く毎日大勢の来店客が訪れるせいか、日常業務の中でさまざまなトラブルが発生します。小さいトラブルなら個々の従業員で対応できますが、部下が対応しきれない場合は店長の出番です。
筆者が店長だった当時には、以下のようなトラブルがありました。
- 店内の冷蔵ケースが故障して冷えなくなった
- 商品や従業員の対応についての苦情電話がかかってきた
- チラシに掲載していた特売商品が入荷しなかった
- 担当者のミスで商品を値札より高く販売してしまった
- レジが故障して長蛇の列が並んだ
- 店内を通る排水溝が詰まって悪臭が発生
- 大雪で駐車場に車が入れなくなった
- 急な欠勤で人手が足りない部署が出てきた
- 従業員が不正を働いて店に損害を与えた
- 従業員同士のトラブルで職場に雰囲気が険悪に
冷蔵ケースが故障したりレジが故障したりした場合には、たいてい業者を呼んで修理してもらうことになります。業者を呼ぶにしても、到着まで時間がかかるのが当たり前です。自己解決できるケースもありますので、まずは自力で直せないかどうか店長自身が修理を試みるケースも珍しくありません。
店長たる者は店内設備に関する知識も求められるだけに、機械に弱い人よりは強い人の方が店長に向いています。排水口が詰まったり大雪で駐車場が埋まったりした場合には部下に指示を出し、可能な限り自分たちで問題を解決するように努力するのが常道です。そんなトラブルにまでいちいち業者を使っていたのでは、経費がいくらあっても足りません。
お客さんからのクレームに対しても、店長が店を代表して対応に当たるのが普通です。商品のクレームに関しては担当部署の責任者が最初に対応しますが、店長が粗品を持って相手の自宅まで謝罪に赴く例も珍しくありません。従業員がトラブルを起こした場合にも店長が介入し、問題解決の道筋を示してやる必要があります。
店に損害を与えたのがパートやアルバイトの場合は、店長自身が解雇を通告することもありました。社員の場合は店長の裁量で簡単に解雇できない仕組みとなっていたため、社長や本部に相談して処分の仕方を話し合うことになります(店長に与えられる権限は会社によって異なります)。
以上のような数々のトラブルに臨機応変の対応をしながら、迅速かつ適切な判断を下していくのも店長の重要な任務です。マニュアル通りにはいかないケースも出てくるだけに、決断力と柔軟性の両方を兼ね備えている人に向いていると言えます。
従業員の採用面接
スーパーの店長は問題のある従業員に引導を渡すだけでなく、新たな従業員を採用するのも仕事の1つです。退職者が出たり売上が伸びたりして人手が足りない部署があったら、従業員の募集をかけて応募者の面接を行います。
ほかの店舗への異動も想定される正社員を採用する場合は、社長や専務が面接を担当していました。店単位で採用するパートやアルバイトの面接は店長の仕事です。
このへんは必ずしも決まっているわけではなく、店長が社員の面接を行う場合もありました。スーパーは離職率が高く人の出入りが激しい業界だけに、人材を確保する仕事も店長に課せられた使命の1つです。
朝礼・店内放送
多くのスーパーでは従業員に仕事への意識を高めてもらうために、開店前に全員を集めて朝礼を行います。朝礼は店長が主宰し、司会進行を務めた上で訓示を述べるのが一般的です。
筆者は人前で話すのが苦手なだけに、店長になったばかりの頃は毎朝の朝礼が大きなストレスでした。慣れるにしたがって人前で話すのがそれほど苦痛でなくなりましたが、朝礼を苦手とする店長は筆者だけでないはずです。
特売日には店長がマイクを持ち、日替わり商品やおすすめ商品を店内放送で紹介する光景もよく見られます。喋るのが得意な社員に店内放送を代行してもらうこともありますが、誰もやりたがらない場合は店長がするしかありません。
店内放送も上手な人になると店に活気を与え、売上アップに大きく貢献します。筆者は店内放送も得意ではありませんでしたが、何度もやっているうちには無難にできるようになりました。何事も慣れが肝心ということです。
人手が足りない部署のフォロー
スーパーの店長には以上のようにさまざまな仕事がありますが、店の代表者としての務めだけではありません。人手不足で仕事が間に合わない部門があれば、現場の作業を手伝う場合もあります。部門の品出しを手伝ったり、混雑する時間帯にレジの応援に入ったりする仕事です。
慢性的な人手不足を解消するには、新たな従業員を募集する必要があります。募集をかけても応募してくる人がいなければ、勤務シフトの変更や店内の人員異動で対処するしかありません。
人員が絶対的に足りない部署では、従業員1人1人の負担が増えてしまいます。急な欠勤が生じたりして、部門内で一時的な人手不足に陥る例も少なくありません。そのような場合に従業員の負担を少しでも軽くするために、比較的自由に動ける店長がフォローに入ることはよくあります。
スーパーの店長はほかの業種の店長と違って、従業員の上に立ってふんぞり返ってばかりいるわけではありません。時には部下と同じ仕事もこなし、足りないピースを埋める役割を果たします。
特にレジの応援は、ほとんどの店長が経験しているはずです。筆者も店長や副店長を務めていた頃は、特売日にレジ係の1人として自分自身もカウントに入れていました。
レジの担当者を多めに採用すれば済むように思いがちですが、忙しい時間帯と暇な時間帯でかなりの差が生じる仕事です。忙しい曜日や時間帯に合わせて人員を配置すれば、人件費に無駄が生じてしまいます。
レジ部門には必要最低限にプラスアルファぐらいの人員を配置しておいて、手が足りなくなったら自分が応援に入るようにするのが合理的です。そうすることで店舗の円滑な運営と人件費の節約が両立できることになります。
部下にできることは可能な限り委ねるのが理想ですが、経費に余裕がない店舗だとなかなか理想通りにはいきません。店長自身も1人の労働力として計算に入れ、少ない人件費でも店が回っていくように苦慮する必要があります。
スーパー店長の年収はどれくらい?
厚生労働省が運営する日本版O-NETの職業情報提供サイトjob tagによると、スーパー店長の年収は全国平均で357.7万円となっています。令和4年の賃金構造基本統計調査を基に、データを加工して算出した数字です。
都道府県によっても、スーパー店長の平均年収にはかなりの格差が見られます。最も高い大阪府では407.8万円に達しますが、300万円未満という県も少なくありません。
国税庁が発表した平均給与によると、給与所得者の平均年収は461万円です。スーパー店長で年収が最も高いとされる大阪府でも、サラリーマン全体の平均年収には及ばないということになります。
全国にチェーン展開する大手スーパーの店長なら年収も高水準と推定されますが、全国各地には中小企業のスーパーも少なくありません。筆者が店長を務めていたのも、地方で数店舗のスーパーを展開する程度の中小企業です。
それでも当時30歳前後で、ボーナスを含めた年収は約450万円に達しました。平の社員だった頃と比べ、月給ベースで10万円ほど上がったのを記憶しています。
まとめ
スーパーの従業員が店長に昇進すると、給料は大幅に上がるのが普通です。その代わり店を代表する立場で重い責任を背負わされるため、スーパー店長の仕事は激務と言われるほどハードになります。
筆者が経験したスーパー店長の主な仕事内容は以下の通りです。
- 店舗や従業員の管理業務
- 販売促進業務
- 本部への報告・会議への出席
- 業者やトラブルへの対応
- 従業員の採用・面接
- 朝礼・店内放送
- 人手が足りない部署のフォロー
担当部署の仕事も兼務しながらの店長職でしたので、いつも時間に追われていました。
部下を使うのが上手な人であれば、激務になりがちなスーパーの店長でも余裕を持って働けるはずです。人手が足りない店では部下を使うにも限度がありますので、店長にかかる負担がどうしても大きくなってしまいます。人手不足の店が多い業界だけに、「スーパー店長の仕事は激務」などと言われているわけです。
部下でもできる仕事は可能な限り任せ、自分は店長にしかできない仕事に専念するのが理想の姿と言えます。多くのスーパーでは人件費を節約するために、店長自身も部門のフォローや雑務に煩わされているのが現状です。
スーパーの店長は重い責任を背負う仕事であると同時に、人員の不足する部分を自分自身が吸収する役目も果たさなければなりません。店長が激務をこなすことで、店舗運営が成り立っている側面もあります。
ほかの従業員より高い給料をもらっているのと引き換えに、店長の仕事がハードになるのも当然です。スーパーの店長を目指すには、ハードな仕事を受け入れる覚悟も必要となってきます。副店長を含めた部下を上手に使うことが、激務になりがちな店長業務を少しでも楽にするコツと言えそうです。