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悪質クレーマーにマニュアルは通用しない?カスハラ対策の現状を解説

仕事術
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飲食店や小売店・サービス業の店舗など、接客を伴う店の従業員を悩ませているのが店に持ち込まれる苦情の問題です。最近はクレーム対応マニュアルが完備されている店も増えていますが、いわゆる悪質クレーマーと呼ばれるタイプのクレーム客にはマニュアル通りの対応が通用しません。カスハラ(カスタマーハラスメント)と呼ばれる嫌がらせ行為そのものが目的の客もいれば、クレームに乗じて金品を要求しようと目論む典型的なクレーマーもいます。

そうした2種類に大きく分けられる悪質クレーマーに屈しないためには、正当なクレームに対応するのとは違った対策が必要です。接客の現場で精神的なストレスを負いがちな店員やカスタマーサポートの担当者に向けて、厄介な悪質クレーマーへの対処法をまとめてみました。この記事を読めばクレーマーの目的や常套手段が理解できるようになり、接客の仕事も怖くなくなります。

クレーム対応の基礎知識に関しては、以下の記事で詳しく解説しておきました。

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悪質クレーマーと正当なクレームの見分け方

モンスタークレーマーのイメージ

店にはいろいろな人がお客さんとして訪れるため、接客の仕事を担当する中ではいろいろと不愉快な出来事にも遭遇しがちです。クレーム対応も嫌な仕事の1つですが、正当な理由で苦情を持ち込んできたお客さんであればマニュアルが役に立ちます。クレーム対応がしっかりしている会社は人間心理に基づいて入念に作成した対応マニュアルを持っており、接客に当たる従業員の1人1人に徹底させているのです。

タイプマニュアルが確立されているような会社ではクレームを改善の好機としてむしろ歓迎し、適切に対応することでクレーム客を店のファンに変えています。それも正当な理由でクレームを寄せてくれたお客さんに限った話で、不当な理由からクレームに及んでいる悪質クレーマーには当てはまりません。

正当なクレームと悪質クレームとの境界線にはあいまいな面もあるため、時として両者の区別が難しい場合も出てきます。正当な理由でクレームを申し立ててきたお客さんであっても、対応の仕方がまずいと激昂して声を荒らげてしまうこともあるのです。だからと言ってそういう人まで悪質クレーマーだと決めつけてしまっては、店としての信頼も揺らぎかねません。

両者の違いを見分けるには、悪質クレーマーの特徴を知っておくことが重要です。モンスタークレーマーなどと呼ばれることもある悪質クレーマーはストレス発散型と、より悪質な金品要求型の2種類に大きく分けられます。それぞれに特有の言動が見られますので、以下に特徴をまとめてみました。

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ストレス発散タイプ

悪質クレーマーの中でもストレス発散型の客は大声で怒鳴ったり机を叩いたり、時には胸ぐらをつかむなどの暴力行為に及ぶことのある危険な相手です。このようなタイプの悪質クレーマーに当たってしまった従業員は恐怖のあまり泣き出したり、クレーム対応がトラウマになって店を辞めたりすることも珍しくありません。

大声を上げない場合でも相手の人格を傷つけるような暴言を吐かれた場合や、身体的特徴を差別するような言葉で攻撃された場合も悪質なクレームの例に数えられます。マニュアルに従って適切なクレーム対応を心がけているにも関わらず怒りを募らせ、対応に当たった従業員を長時間にわたって拘束したり、延々と説教を続けたりするのもこうしたストレス発散タイプの特徴です。

このような悪質クレーマーは苦情の対象となった商品の返金や交換・返金が目的ではなく、クレームを口実にして従業員を責め立てることそのものが目的と見なされます。カスタマー(顧客)によるこうしたハラスメント行為はパワハラと似ており、カスタマーハラスメント(カスハラ)という新語も生まれるほど問題となっている社会現象です。

パワハラ上司

職場のパワハラは仕事で優位に立つ上司が立場の弱い部下に対して、威圧的な言動で嫌がらせに及ぶ行為を意味していました。接客の場でも優位に立つ顧客が立場の弱い店の従業員に対して、同様の威圧的な言動で責め立てるカスハラ行為が社会問題となっているのです。

このようなストレス発散タイプのクレーマーはどれだけ真摯に対応したところで、店のファンに転じてくれることはありません。通常のクレーム対応マニュアルも通用しませんので、できるだけ早くお引取り願うよう店側が団結して対処に当たる必要があります。

金品要求タイプ

お札を数える

同じ悪質クレーマーでも金品要求タイプはストレス発散型と異なり、必ずしも威圧的な言動を示すとは限りません。話の内容をころころと変えたり同じ話を何度も繰り返したりしながら長時間居座り、店側が折れてくるのを粘り強く待ち続けるような傾向も見られます。

もちろん金品要求型の悪質クレーマーにも威圧的な言動で従業員を脅し、恐怖心を与えて目的を果たそうとする人も少なくありません。ストレス発散タイプとの大きな違いは、怒りのあまり我を忘れてそういう言動に走っているわけではないという点です。威圧的な言動もネチネチとした攻め手もすべて計算づくの行為で、店側から商品券や現金などの金品を引き出すのを目的としています。

そういう悪質クレーマーの中には定職につかないで同じ手口を繰り返し、店側から脅し取った金品で生計を立てている職業クレーマーのような手合いも存在します。圧力に屈して金品を提供してしまってはクレーマーの思う壺ですので、ストレス発散タイプと同様速やかにお引取り願うしかありません。

悪質クレーマーに屈しないための対策

クレーマーのイメージ

以前の悪質クレーマーはいかにもその筋の人間といった強面の人物が多いという特徴も見られましたが、近年は一見ごく普通の人にしか思えないクレーマーが増えています。それだけ正当なクレームとの見分け方が難しくなっているわけですが、マニュアルに従って話を進めるうちには違和感に気づくようになるものです。

単にストレス発散を目的としたクレームだと確信された場合には、マニュアル通りの対応から危機管理を目的とした非常モードへと切り替える必要があります。クレーム対応マニュアルに従って伝えるべき事柄を伝えても執拗に暴言を吐き続けるようなら、いつまでも相手をしている必要はありません。「当店としてはこれ以上対応することはできません。お引取りください」というように、毅然とした態度を示して話を打ち切るのが基本的な悪質クレーマー対策です。

それでも相手が帰ろうとせず長時間にわたって居座ったり暴力的な言動を示したりするようなら、威力業務妨害罪や不退去罪といった刑法上の罪に問うこともできます。場合によっては警察に通報するなり弁護士に相談するなりして、問題の解決を第三者の手に委ねる覚悟も必要です。

「誠意を見せろ」には要注意

金品要求型の悪質クレーマーでも自分からはっきりと金額を提示することは少なくなり、店側が圧力に屈して金品による解決を持ちかけるのを待つのが常套手段となっています。このようなタイプのクレーマーは何かと理由をつけては話を長引かせ、相手がしびれを切らすように仕向けるのが特徴です。治療費や慰謝料などの名目で金銭を要求したのでは恐喝罪に問われるかねないため、具体的な金額は一切口にせずに「誠意を見せろ」と迫るのが悪質クレーマーの典型的なの手口です。

この場合の「誠意」とは言うまでもなく金品を暗示していますが、はっきりと金銭を要求しているわけでないので恐喝罪を適用するというわけにはいきません。ストレス発散型のクレーマー対策と同様に、毅然とした態度でお引取り願うのが最も効果的です。当店としてはこれ以上の対応ができないと明言して話を打ち切れば、たいていの金品要求型クレーマーは諦めます。

それでもしつこく食い下がるようであれば、威力業務妨害罪や脅迫罪・不退去罪などの違法行為が適応できないかどうかの検討も必要です。法的手段の行使も辞さないという姿勢をちらつかせることによって、欲得ずくで行動するクレーマーを牽制するという意味合いもあります。

メモや会話録音も効果的

ボイスレコーダー

以上のような悪質クレーマーへの対処で警察や弁護士を頼る場合には、違法行為の証拠を残しておいた方が何かと有利になってきます。クレーム対応の経緯を第三者に把握してもらうためにも、相手の承諾を得た上で随時メモを取るのも効果的です。そうやって会話のやり取りを記録している点を印象づけておけば、相手もいい加減なことは口にできなくなります。

スマホやICレコーダーなどを使って相手との会話を録音しておく方法は、「言った、言わない」の不毛な水掛け論を防ぐ意味でも効果的です。相手の許可を得ず勝手に録音するのは盗聴に当たるのではないかと思いがちですが、クレーム対応に当たる当事者の店側が録音するのであればプライバシーの侵害に該当しません。

悪質クレーマーの対策まとめ

最近は悪質クレーマーの引き出しも多彩になってきており、ハラスメントの手段がインターネット空間にまで拡大されています。情報が瞬時に拡散されてしまう世の中だけに、モラルを欠いた相手に当たれば店名や従業員の実名をSNSで晒されかねません。タクシー業界などでは実際にクレームの対象となった運転手が実名と顔写真をSNSで晒され、会社を辞めさせられる事態にまで発展した例があります。

それだけ悪質クレーマー対策が難しくなっているのが現状ですが、たいていのクレーマーは店側の毅然とした態度に弱いものです。逆に自信がない素振りを見せたり弱みを見せたりしては、クレーマーに付け込まれてしまいます。

カスハラを繰り返すモンスタークレーマーは複数の店舗で問題を起こし、要注意人物としてマークされている例も珍しくありません。そのような相手は末端の従業員1人では手に負えませんので、店が一体となって組織的な防御に当たる必要があります。通常は店長など責任のある立場の人が対処に当たりますが、それでも手に余るようなら警察や弁護士の力を借りるのが問題解決への近道です。

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