転売とせどりはどちらも小売店舗などを通じて商品を仕入れ、購入代金よりも高値で売って差額を利益とする点で共通する手法です。両方の言葉を区別せずに使っている人も多く、副業としては同じカテゴリに分類されています。
それでいながら転売はせどりと比べて何かと悪いイメージで語られやすいだけに、どこが違うのかと疑問に感じてしまうのも無理はありません。そんな疑問を解消するために、意味が混同されやすい転売とせどりの違いについて情報をまとめてみました。転売やせどりに付きもののネガティブなイメージを向上させるための心得についても、記事の後半で詳しく解説します。
転売とせどりの違い
転売の意味を辞書で調べると「買ったものを他に売り渡す行為」などと書かれていますが、その意味ではせどりもまた転売の一種ということになります。せどりの方が狭い意味で使われ、転売は広い意味で使われるという考え方も可能です。
せどりには「競取り」「糶取り」「背取り」などという当て字があり、もともとは古書店界隈で使われていた業界用語でした。値付けの甘い古本屋で掘り出し物の本を見つけ、他の古書店に高値で売って利ざやを稼ぐのがせどり本来の手法です。全国チェーンの大手リサイクル書店ではそうした掘り出し物が見つかりやすいため、せどりの仕入先として重宝されてきました。
現在ではせどりの扱う商品ジャンルがCDやDVD・ゲーム・おもちゃ・家電・古着など、あらゆる中古商品にまで拡大しています。これに対して転売の方は新品やチケット類も対象に含まれ、せどりよりも幅広い商品を扱うのが特徴です。
需要と供給のギャップを利用して稼ぐ転売の手法
主に中古の商品を安く仕入れるせどりと比べ、狭い意味での転売は基本的に新品を購入して高値で売りさばく行為を意味します。新品を販売して利益を出すには、小売価格より安い卸価格で商品を仕入れるのが物販の普通です。卸問屋と取引するには店舗を持っていることが条件だったり、商品をロット単位で仕入れる必要があったりして制約があります。
個人で転売を手がける人は卸価格ではなく小売価格で商品を仕入れていますが、限定品や入手困難品など需要と供給のバランスが極端に崩れている品に着目するのが特徴です。需要が急増している商品をいち早くキャッチして市場からなくなる前に購入し、入手困難になったタイミングで出品すれば高値でも買ってくれる人が出てきます。コロナ禍においてはマスクやアルコール消毒液の高額転売が横行し、転売を規制する法律が適用されたのは記憶に新しいところです。
本来の意味での転売には音楽ライブやスポーツイベントなどのチケット類も対象に含まれ、必ずしも形のある商品だけに限られるというわけではありませんでした。価格高騰が大きな問題となったのをきっかけにチケット転売禁止法が施行され、現在は業としてのチケット転売ができなくなっています。
せどりには目利きが必要?
需要と供給のギャップを利用して差額で稼ぐという意味では、中古品を扱うせどりの手法にも共通点が見られます。インターネットが普及する以前から行われていた古本せどりの場合は、古書店の店頭で安く売られている本の中から稀少本や絶版本などの掘り出し物を探し出すのが常套手段でした。本来の商品価値と比べて著しい安値で投げ売りされている本を発見するには、豊富な経験と知識に裏付けられた目利きが必要です。
従来の古本せどりは古書店での売価と市場価値との差額を頭の中で計算していましたが、インターネットが発達した現在ではスマホを使って情報を簡単に調べられるようになっています。せどりを行うのに必ずしも目利きは必要でなくなり、情報を素早く検索可能なツールが重視されるように変わってきているのです。
転売のイメージが悪化した理由
転売とせどりには以上のような違いもありますが、世間一般的なイメージとしてはせどりと比べて転売は何かとマイナスの印象を持たれがちです。せどりは仕入れの段階で本来の価値より安く売られている商品を見つけ、商品価値に見合った価格で売ることで差額を利益にします。
これに対して転売は新品を通常価格で購入しながら、供給不足を理由に釣り上げた価格で販売して差額を利益にする手法です。ただでさえ品薄傾向にあった商品が、転売目的の買い占め行為によって余計に入手困難なる弊害が問題とされてきました。一部の行き過ぎた買い占め行為や、結果としての価格高騰に非難が集中したことで、転売のイメージが悪化してしまったのです。
一般には転売ほど悪いイメージが広がっているわけではありませんが、せどりの場合でも店頭で商品のバーコードをスキャンして中古価格を調べる行為は店側から嫌われています。他のお客様の迷惑になるからという理由で店員から注意されるようになったため、最近は店頭で商品を効率的に仕入れるのが難しくなりました。
転売やせどりのイメージを向上させるには?
通常の小売価格よりも高く売ることで収益を得る転売も、もともとの小売価格より安い中古価格で仕入れて利ざやを稼ぐせどりも、仕入れ値と売値の差額で稼ぐ手法には変わりありません。扱う商品や仕入れ手法の違いもありますが、どちらも差額が大きければ大きいほど収益性が高くなるという点では共通しています。
いずれも仕入れ値を小売価格より高く設定しないことには利益が出せないことから、転売やせどりは価格高騰の悪因というイメージで語られがちです。実際に売値を自由に設定できるという点を悪用し、必要以上に価格を釣り上げている人が存在するのも否定できません。
そうした負のイメージを払拭するには適正な価格で出品する必要もありますが、希少価値の高い商品に高値がつくのは個人が制御できない市場原理です。需要と供給の法則を利用して収益を最大化しようとする行き過ぎた行為が非難の対象となり、転売のイメージ悪化につながったのだと言えます。
買い占め行為以外の理由で入手困難となっている商品を自らの努力によって仕入れ、欲しいという人に適正価格で譲り渡すような転売であればむしろ歓迎されるはずです。この努力の部分にこそ、利益を上乗せした価格でも購入者が納得できる価値があります。
せどりの場合でも仕入れを効率化しようとする行為は店に嫌われますが、掘り出し物を目当てに常連客となって大量購入してくれる人はありがたいお客様の1人です。現在ではこの目利き力が情報力に取って代わられているとは言え、高く売れそうな品を安く仕入れるというせどりの基本は変わりありません。そうやって仕入れと販売のあり方が健全化していけば、転売やせどりのイメージも向上していくはずです。
転売とせどりの違いまとめ
新品を普通に購入して市場価格より高く売るのが転売、中古品を安く購入して市場価格で売るのがせどりの基本でした。最近はそのへんの区別があいまいになり、セールやバーゲンを利用して安く手に入れた新品を市場価格で売るせどりの手法もあれば、転売で中古品を扱う例も珍しくありません。
この市場価格も中古品の場合は変動幅が大きく、希少性の高い品は価格が高騰しがちです。だからこそ入手困難な中古品が転売の対象にもなり得るわけですが、転売目的で商品を買い占めたりしなければせどりの範囲内だと言えます。
読みを誤ると大量の在庫を抱えるリスクもあるだけに、新品を高値で売りさばく転売ビジネスは難易度が高めです。転売もせどりも基本は共通しますので、まずは中古品のせどりから初めて経験を積み、商売のコツがわかってきたところで新品の転売にも挑戦してみるのが無難なやり方だと言えます。