釣りを趣味にしている人にとって、プロアングラーとも呼ばれるプロの釣り師は憧れの存在です。釣りのプロになれるものなら、自分もなってみたいと思っている人も少なくないのではないでしょうか?
そんなプロアングラーが、実際にどれくらいの年収を稼いでいるのかは広く知られていません。複数の収入源を持っている人でも、釣りだけで食べていけるほど稼いでいるプロアングラーはほんの一握りと推定されます。
そこで今回はプロアングラーの収入源を5つに分け、どれくらい稼げる仕事なのかを調べてみました。趣味の釣りを仕事にしたいと考えている人も、この記事を読めばプロになる道が開けてきます。
プロ釣り師の年収
「アングラー=angler」は、「趣味で釣りをする人」を意味する英語です。仕事で魚を獲っている「fisherman=漁師」とは区別されますが、世の中には釣りで生計を立てているプロも存在します。それが今回の記事で取り上げる「プロアングラー=プロ釣り師」です。
野球やサッカーのようなスポーツの世界には、ピラミッドのような人口構造が見られます。学校の部活動や趣味で競技に取り組んでいるアマチュア人のたちが底辺を形成し、ピラミッドの頂点にごく少数のプロが君臨しています。音楽や芸術の分野でも、プロとアマチュアの関係は同様です。
同じ構造が釣りの世界にもあって、ほとんどの人は趣味で魚釣りを楽しんでいます。たとえ収入が得られなくても狙った魚が釣れれば、大きな満足感が得らるというものです。釣った魚を持ち帰っておかずにすれば、食費の節約にもつながります。
とは言え釣りはお金がかかる趣味だけに、トータルで見れば赤字になるのが普通です。本来であれば支出ばかり増えてしまう釣りを続けながら、プロアングラーは逆に収入を得ています。
有名なプロ釣り師もいれば無名の人もいるせいか、プロアングラー全体の平均年収を把握するのに信頼できるデータは見つかりませんでした。有名なプロアングラーの村越正海さんは年収1,000万円超えが確実と推定され、高橋哲也さんも数千万円の年収を稼いでいるという情報があります。海外では高額賞金のかかった釣り大会が多いだけに、億単位の年収を稼ぐプロも存在する世界です。
このように高収入を稼ぐプロアングラーがいる一方で、あまり有名でないと年収がサラリーマンの平均を下回る人も少なくないと見られます。プロを名乗っていても知名度が低い場合は仕事がなかなか得られず、収入が限りなくゼロに近づいてしまうからです。
プロアングラー(プロの釣り師)になるには
プロアングラーを「釣りで生計を立てている人」と定義すれば、そう簡単になれる職業ではないことは容易に想像できます。「この資格を取得すれば、プロの釣り師として収入が得られるようになる」という資格もありません。
釣りに関してまったくの素人であれば、フィッシングコースのある専門学校でプロの指導を受けるという道もあります。この場合でも専門学校で学んだところで、必ずプロになれるという保証はありません。
アマチュア愛好家の中にも、釣りが上手な人は数えきれないほど存在します。単に釣りが上手というだけでは、プロにはなれないという厳しい世界です。
実際にプロアングラーを名乗る人でも、釣り具店やアウトドアショップなどの経営を本業にしている人は少なくありません。釣りで得られる収入だけでは生活していけないために、アルバイトの仕事をしたりして生計を立てている人もいます。
釣りのプロとして収入が得られるようになるには、釣り具メーカーなどの企業とスポンサー契約を結ぶのが一番の近道です。プロになるきっかけとしては、以下のような活動が挙げられます。
- 釣りの大会で上位の実績を作る
- 釣り愛好家や業界関係者との交流を通して人脈を形成する
- 釣りブログやSNS・YouTubeを通じて情報発信する
実際に趣味で釣りブログを運営していて編集者の目に留まり、釣り雑誌の原稿を依頼されるようになったというプロアングラーの例がありました。釣り雑誌の連載がきっかけとなって、釣り具メーカーとの契約にもつながった成功例です。
釣り大会には賞金獲得を狙って参加するだけでなく、ボランティアのスタッフとして大会運営に協力する形でも人脈形成につながります。釣り雑誌の編集者からプロアングラーに転身した人の例も含め、業界とのつながりが1つの鍵です。そうした点で芸能界きっての釣り愛好家で知られる照英さんのように、すでに知名度がある人は有利と言えます。
プロアングラーの収入源
本業であれ副業であれ、釣りで収入を得るにはいくつかの方法があります。釣った魚を売ることで生計を立てている漁師を別にすれば、プロアングラーと呼ばれる人たちの主な収入源は以下の通りです。
- 釣り大会の賞金
- フィールドテスター
- 釣り雑誌への寄稿
- テレビやDVDへの出演
- フィッシングガイドの仕事
それぞれの概要と稼げる金額の目安について、1つ1つ解説していきます。
釣り大会の賞金
海外でプロアングラーと呼ばれる人たちが最大の収入源としているのは、バストーナメントなど釣り大会の賞金です。
「バスプロ」と呼ばれる職業が成り立っていることでもわかるように、海外では高額の賞金がかかったバス釣りの大会が盛んに開催されています。優勝賞金30万ドルのBASS(バスマスター)クラシックや、チャンピオンシップの優勝賞金が50万ドルに達するMLF(メジャー・リーグ・フィッシング)あたりが有名どころです。バス釣り以外ではホワイトマーリンオープンというカジキ釣りの大会で、日本円にして6億円近い440万ドルもの優勝賞金がかかった例もありました。
日本国内においては、これほど高額の賞金を獲得できる釣り大会は開催されていません。国内最高峰のバス釣りトーナメントと言われるJBトップ50でも、優勝賞金は200万円ほどと推定されます。
沖縄県で開催されるRyukyu Big Game Fishing Tournamentは、制限時間内に最も重いカジキを釣り上げたチームが優勝賞金300万円を獲得するフィッシングトーナメントです。ANGLERS DREAM CUPという巨大魚トーナメントでも、大会期間中に対象となる釣船で最も大きい真鯛を釣った人に優勝賞金100万円を授与されてます。
国内で開催されている他の釣り大会は、優勝賞金が数十万円以下という例が大半です。日本国内の釣り大会に限定していては、釣り大会の賞金だけで生計を立てるほどの収入を得るのは難しいと言えます。
海外の有名な釣り大会で優勝すれば、億単位の高額賞金獲得も夢ではありません。優勝者にはスポンサーもついてさらなる高収入につながりますが、有名バストーナメントは参加費だけで数百万円の予算が必要です。海外の大会に出場するには高額の遠征費用もかかってくるだけに、賞金を獲得しても手元に残る金額は少なくなってしまいます。
国内のバストーナメントに出場する場合でも、バス釣り用のボートや移動用のトレーラー・専用の釣り具でかなりの費用が必要です。多くのプロアングラーは賞金以外の収入源も模索しながら、生計を立てているものと推定されます。
フィールドテスター
プロアングラーが利用している収入源の2つ目は、釣り具メーカーとの契約で稼ぐフィールドテスターの仕事です。
プロの釣り師として名前が知られるようになると、「弊社の製品をテストしてみませんか」などとメーカーの企業から声をかけられる例が出てきます。開発中の製品や発売したばかりの新製品を実際に使用してみて、感想や改善点などをフィードバックするのがフィールドテスターの役割です。商品テストの仕事でメーカーの信頼が得られれば、商品の開発段階からプロジェクトに参加する機会も与えられるようになります。
フィールドテスター単独の仕事だと、それほどの収入を稼げないのが普通です。有名プロになれば報酬が数百万円クラスに達する場合もあり得ますが、無名のうちは報酬ゼロという例も珍しくありません。本格的な釣りには道具代だけでもかなりの費用がかかるだけに、メーカーから商品の提供を受けるだけでも金銭的なメリットがあるというわけです。
自分からメーカーに声をかけ、テストの名目で商品の提供を受けて釣り具の購入費用を浮かせている人もいます。この場合でも断られるのが当たり前で、報酬にまで結びつけるまでがなかなか大変です。
フィールドテスターの仕事で稼げるようになるには、釣り大会での上位入賞や釣り雑誌への連載など他の手段で実績を積み重ねる必要があります。
釣り雑誌への寄稿
釣り大会の賞金やフィールドテスターの仕事だけでは、プロアングラーの収入はなかなか安定しません。多くのプロは他にも収入源を持っていて、不足しがちな年収をカバーしています。
中でも貴重な収入源となるのが、釣り雑誌の連載などで得られる原稿料です。雑誌の記事がきっかけで釣り具メーカーからフィールドテスターのオファーを受けたり、メディア出演の話が来たりする場合もあり得ます。原稿料収入で稼ぐには釣りに関する知識だけでなく、釣りの魅力を文字情報で伝えるだけの文章力も必要です。
釣り雑誌の連載で原稿料をどれくらい稼げるのか調べてみましたが、プロアングラーで数字を公表している例は見つかりませんでした。釣りに限らず雑誌全般の例で見ると、記事1本あたり2万円から5万円ほどが原稿料の相場です。記事単位ではなく1ページあたり2万円から3万円という形で、契約が交わされる例も珍しくありません。
最近は釣りに関する情報をインターネットで発信しているWebメディアも増えてきました。こうしたWeb記事に釣りライターとして寄稿した場合は、1文字あたり3円から5円ほどが原稿料の相場です。駆け出しのライターだと、1文字1円という例もあります。
クラウドソーシングでも釣りに関する記事執筆の仕事は募集されていますが、文字単価は1円前後という案件が多い状況です。むしろプロアングラーとしての実績を生かして釣りブログを運営した方が、広告の掲載でまとまった収入を稼げる可能性があります。広告収入を稼ぐには無料ブログでなく、レンタルサーバーを借りてWordPressで記事を投稿するのがおすすめです。
テレビやDVDへの出演
プロアングラーとして名前が知られるようになると、テレビ局から釣り番組への出演を依頼されるケースも出てきます。釣りDVDへの出演も含め、メディア出演の仕事もプロの釣り師にとって貴重な収入源の1つです。釣り雑誌の連載やテレビ出演を主な収入源としているプロアングラーは、「メディアプロ」とも呼ばれています。
よほど有名な釣り師でない限り、釣り番組への出演もそれほど高収入を稼げる仕事ではありません。番組出演のギャラは、1本あたり1万円から2万円程度が平均的な相場です。
1回の出演で何十万円ものギャラが発生する売れっ子芸能人などと比べ、プロアングラーのギャラは低く抑えられています。釣り師でもタレント性を前面に押し出してテレビで人気者になれば、番組出演でもっと稼げるようになるはずです。
最近は動画投稿サイトのYouTubeでも、釣り関連の動画が人気を集めています。YouTubeには誰でも無料で動画が投稿できますので、テレビ局からオファーがなくても自分で釣り番組を配信できるようになります。人気YouTuberになれば自身のチャンネルで収益化が可能になり、テレビ出演の仕事以上に稼ぐことも可能です。
フィッシングガイド
プロアングラーの収入源として最後に紹介するのは、プロガイドとも呼ばれるフィッシングガイドの仕事です。主に船釣りで初心者に同行し、タックルの使い方や釣り方などを付きっきりで指導します。釣れるポイントを教えたり、大物を釣り上げたときにサポートしたりするのもフィッシングガイドの役目です。プロアングラーを目指せる専門学校にも、フィッシングガイド専攻の学科を設ける例が出てきています。
ガイド料金は1回8時間ほどの釣行で、1人あたり3万円前後が平均的な相場です。一度に複数人のガイドを引き受ける場合、1人あたりの料金は割安感が出るように設定されます。
料金の半分以上はボートの燃料費に消えてしまうのが普通で、フィッシングガイドの仕事だけで生活していくのはなかなか困難です。高めの料金でも依頼客が絶えない一部の人気ガイドを除いて、多くのプロガイドは他の収入源と併用しながら生計を維持しているものと推定されます。
ココナラのようなインターネット上のスキルマーケットでは、釣りについて教えるサービスを出品している人も少なくありません。副業で出品している人が多い状況ですが、プロとしての実績を示せば集客面で有利になってきます。
サービスの出品価格は1,000円から数千円という例が多く、付きっきりで船釣りをサポートするフィッシングガイドの料金よりリーズナブルです。それだけに購入されやすい面もありますので、他の収入源でなかなか稼げない場合はココナラへの出品も試してみるといいでしょう。ココナラ類似サービスでストアカやタイムチケットを利用すれば、対面で釣りを教えることも可能です。
まとめ
プロアングラーと呼ばれるプロ釣り師の収入源を5つに分け、実際にどれくらい稼げるのか検証してきました。どの収入源を選んでも簡単に稼げるわけではありませんが、ガイドプロ以外は釣り具メーカーや出版社・テレビ局などの企業がバックについています。あらゆる趣味の中でも釣りは人口が多く、商品の販売でもコンテンツの配信でも一大市場が成り立っている証拠です。
野球やサッカーなどのメジャーなスポーツほど市場規模が大きいわけではありませんが、釣りで生計が成り立つプロも少数ながら存在します。プロアングラーになるには、業界とのコネクションが重要な鍵です。まずはブログやSNS・動画投稿など、5つの収入源につながる形で釣りの情報を発信してみるといいでしょう。