当ブログでは以前にもきのこ採りでお金を稼ぐ方法について紹介しましたが、今回取り上げるのは自分できのこを栽培して収入を得る副業です。きのこは生育に適した場所さえしっかりとセッティングしておけば、ほとんど放置しておいても勝手に育ってくれます。
多忙なサラリーマンの副業にもなり得るきのこ栽培について、売りやすいきのこの種類や栽培方法に関する基礎知識をまとめてみました。きのこ栽培ビジネスが本当に儲かるのかどうかという点に加え、記事の後半では失敗のリスクについても詳しく解説します。
きのこ栽培は副業でも可能
秋の山に行けば天然のきのこを採取できますが、キノコ採りには危険生物との遭遇や遭難のリスクもあります。きのこは自宅で栽培することも可能なため、販路さえ確保できれば副業として収入を増やす手段にもなり得る商品です。
家庭菜園で栽培した野菜を売って副収入を得るのに近いイメージですが、畑で野菜を作るのと違ってきのこは肥料を与えたり草取りをしたりする必要がありません。温度や湿度を保つようにセッティングさえしておけば、それほど手間をかけなくても収穫できるようになります。
人工培地を使った菌床栽培なら広い土地を必要とせず、室内でもきのこ栽培が可能です。栽培したきのこを自分で調理して自家消費している人も少なくありませんが、農産物直売所やフリマアプリなどを利用すれば販売も可能になってきます。自分で作った商品を売って収入を得るという点では、きのこ栽培もハンドメイド販売などと似たような副業の1つです。
きのこの栽培方法
秋の山林には自然に生えたきのこがたくさん見つかりますが、自然環境下よりも効率的に収穫できるようにするのがきのこ栽培の目的です。食用きのこを栽培するには、以下のような4種類の方法があります。
- 原木栽培
- 菌床栽培
- 堆肥栽培
- 林地栽培
日本では原木栽培の歴史が最も古く、江戸時代の初期にはホダ木と呼ばれる原木を利用した人工栽培が行われていました。現在の主流となっている菌床栽培は、昭和初期にエノキタケの人工栽培法として考案されたのが始まりです。
堆肥栽培はマッシュルームの栽培などに用いられてきた方法で、雑草・落ち葉・藁などを発酵させた堆肥や家畜の糞などを培地として活用します。林地栽培は松茸やトリュフなど人工栽培が困難な種類を対象に、きのこが生えやすい環境を整備することで収穫を増やそうとする試みです。4種類の中でも原木栽培と菌床栽培は副業の手段として利用されていますので、それぞれ詳しく解説します。
原木栽培
伐採して乾燥させた木を1メートルほどの長さに切り、種菌を植え付けるのが原木栽培と呼ばれる昔ながらのきのこ栽培方法です。最も代表的なしいたけ栽培の場合、ホダ木と呼ばれる原木にはクヌギやコナラ・カキ・クリなどの木が使われます。原木栽培はしいたけ以外にも、なめこやエノキタケ・ヒラタケ・舞茸などの栽培に利用されてきました。
菌床栽培よりも自然に近い環境下で栽培する方法のため、原木栽培のきのこは食味に優れている点が特徴です。一方で自然環境に左右されやすい原木栽培は収量が安定しにくい上に、原木の運搬などで重労働を強いられるというデメリットもあります。
原木栽培で伐採から収穫までの大まかな手順は以下の通りです。
- 原木を伐採する
- 切り出した原木を乾燥させる
- 乾燥させた原木を1メートルほどの長さに切断して1カ月ほど置いておく
- 原木に種菌を植え付ける
- 植菌を終えた原木を横積みの形で仮伏せにする
- きのこの菌糸を原木に繁殖させるための本伏せに移行する
- きのこが発生したところで収穫する
以上のように原木栽培は手間の多い栽培方法だけに、きのこが生えるまで時間がかかります。通常は2年ほどできのこが収穫できるようになり、1本の原木から5年から7年程度は収穫が可能です。作業に人手が必要で重労働が予想されることから、原木を使ったきのこ栽培は林業に従事する人や農家の副業に向いています。
菌床栽培
菌床栽培で使われる菌床ブロックには、きのこの繁殖に必要な栄養分が含まれています。おが屑に米ぬかなどを混ぜて作った培地に、きのこの菌糸をあらかじめ繁殖させたブロック状のかたまりです。
それらの材料を用意すれば自分で菌床を作ることも可能ですが、Amazonや楽天市場では培地にあらかじめ菌糸が仕込まれた菌床栽培キットが売られています。価格は1セットあたり1,500円から2,000円前後で、それほど高価なものではありません。
林内などの屋外で行う例が多い原木栽培と違って、近年の主流となっている菌床栽培はビニールハウスや倉庫などを使用します。温度や湿度をきのこの生育に適するように保っていれば、室内でも菌床栽培は可能です。原木栽培のような重労働も必要でないせいか、家庭で手軽にきのこ栽培を始める人が増えています。
菌床栽培キットを購入してから収穫までの手順は以下の通りです。
- 菌床ブロックを12時間から24時間ほど水(夏は氷水)に浸しておく、
- 水から出したブロックを容器または袋に入れ、直射日光の当たらない場所に置く
- 霧吹きを使って1日に1~2回ほどブロックを湿らせ、乾燥させないようにする
- きのこが発生して大きく育ったところで収穫
しいたけの原木栽培だと収穫までに2年ほどを要しますが、菌床栽培キットを購入すれば10日から2週間ほどで収穫できるようになります。その代わり1つの菌床ブロックからきのこを収穫できるのは2回から4回程度で、回を追うごとに収穫量は減っていくのが普通です。
3~4回収穫したらブロックを廃棄する必要もありますが、廃菌床はカブトムシやクワガタなど昆虫の飼育にも流用できます。ヤフオクやメルカリでは使用済みの廃菌床が昆虫飼育用として、数多く出品されているほどです。うまい具合に買い手がついてくれれば、菌床栽培キットの購入費用を少しでも回収する手段となり得ます。
副業に向いたきのこの種類
スーパーの青果売り場にはしいたけや舞茸・なめこ・しめじなど、たくさんの種類のきのこが売られています。秋頃を中心に天然物のきのこも市場に出回りますが、店頭で販売されているきのこの多くは栽培物です。
松茸やトリュフなど高値で売れるきのこは人工栽培が難しく、きのこ農家でも手を出す人は決して多くありません。副業として始めるなら原木栽培よりも、手間が少なく済む菌床栽培を選ぶのが無難です。菌床栽培キットが売られているきのこの種類は限られますので、副業に向いたきのこの種類も自然と決まってきます。
群馬県桐生市に本社を置く森産業株式会社は、きのこ種菌や菌床の製造販売で国内NO.1のシェアを誇る企業です。森産業ではしいたけやキクラゲ・エノキタケの他、なめこやエリンギ・ぶなしめじ・ひらたけといったきのこの栽培キットを発売しています。発売時期になればAmazonや楽天市場でも販売されるだけに、副業できのこ栽培を始めるには最も手頃な手段です。
きのこ栽培で起業する方法
菌床栽培キットなどを使ってきのこを栽培しただけでは、まだまだビジネスとは言えない段階です。副業の手段とするには栽培したきのこを何らかの形で販売し、現金収入に結びつける必要があります。
栽培キットが市販されている種類のきのこはスーパーの店先でも普通に売られているだけに、収穫物をどうやってお金に換えるかが問題です。きのこを栽培している農業法人にアルバイトとして採用されるのでない限り、たとえ副業でも自分で販路を開拓する起業精神が求められてきます。
きのこを含めた農産物で考えられる販売方法は、以下の通りです。
- JA(農協)に買い取ってもらう
- 道の駅や農産物直売所で販売する
- 農産物フェアや朝市などの販売イベントに出品する
- スーパーや青果店の知り合いに頼んで、売り場に置いてもらう
- ネットオークションやフリマアプリを利用して消費者に直接販売する
- 自分でネットショップを立ち上げ、通信販売で商品を発送する
米や野菜などを栽培している農家が副業としてきのこを栽培する場合には、収穫物をJAに買い取ってもらうケースが多いものと推察されます。JAを利用すれば規格品を確実に買い取ってもらえるだけに、安定した現金収入につながるからです。その代わり売値は卸価格となり、JA側に中抜きされる分だけ自分の取り分は少なくなってしまいます。
道の駅や農産物直売所は買取方式でなく、委託販売を採用している店舗が大半です。販売した商品が売れればJAに卸すよりも高収益が期待できますが、大量に売れ残れば赤字になるリスクもあります。
店頭で直接販売する場合は商品パッケージも自分で用意する必要があるだけに、資材コストも無視できません。送料や梱包費用を自分で負担したとしても、メルカリやヤフオクで消費者に直接販売する方法の方が収益を残しやすいと言えます。
きのこ栽培ビジネスはどれだけ儲かる?
スマホやパソコンの操作に慣れたネット世代にとっては、きのこを販売する場合でもメルカリやヤフオクに出品するのが最も手軽なやり方です。メルカリを例に挙げると、菌床栽培された「国産・無農薬」のしいたけが1kgあたり2,000円前後で出品されています。500kg1,000円前後という手頃な価格で、「SOLD」となっている出品例も少なくありません。
生しいたけだけでなく干ししいたけの出品も多く見かけますが、こちらは100gあたり1,000円弱が平均的な相場です。乾燥させる手間がかかるとは言え、重量が軽くなれば送料の節約にもなります。
メルカリでは出品した商品が売れた場合にのみ、売上の10%が販売手数料として引かれる仕組みです。ヤフオクでも売上の10%(Yahoo!プレミアム会員は8%)が落札手数料として引かれ、残りの金額が出品者の収入となります。
しいたけの菌床栽培で1回あたりに収穫できるのは、菌床ブロックの重さの40%程度が目安です。1.5kgの菌床ブロックを購入した場合は、1回で600gほどのしいたけが収穫できる計算となります。これをメルカリに出品して1,000円で売れたとすると、売上から手数料を引いた収益は900円です。
菌床ブロックの購入代金が1,500円とすれば赤字ですが、収穫後に水に浸すことで1つの菌床ブロックから3~4回ほど収穫できます。回を追うごとに収量が少なくなったとしても、トータルで見れば栽培キット購入代金を上回る収益を残すことも十分に可能です。
大量の菌床ブロックを用意して本格的なきのこ栽培ビジネスを展開するとなると、市販の栽培キットでは代金が割高になってしまいます。菌床栽培に慣れてきたら材料を仕入れて自分で菌床を作り、栽培キットの購入代金を浮かせて収益アップを目指してみるのも悪くありません。
売れ残った場合でもスライスした上で乾燥させれば、干ししいたけの形でも出品できます。自分で栽培したきのこをそのまま販売する場合は問題ありませんが、乾燥させたものを売る場合は保健所の許可が必要です。
加工食品を販売する際には保健所に届出をして営業許可を得るために、通常は自宅の台所と別の調理施設を用意する必要もあります。きのこを乾燥させる程度の簡易な加工であれば、届け出するだけで許可されるのが一般的です。
きのこ栽培でありがちな失敗と対処方法
以上のような試算はきのこ栽培が順調に進んだ場合の話で、栽培には失敗も付きものです。特にきのこの栽培は温度と湿度の管理が重要になってくるため、慣れないうちは収量が安定しない可能性もあります。
しいたけの栽培に適した温度は18℃から25℃で、夏場の高温には弱いという点に注意が必要です。しいたけは25℃で最も活発に成長しますが、成長が速すぎると小ぶりになってしまいます。温度が低めの方が肉厚に成長しやすいため、春や秋がしいたけの栽培に適した季節です。
温度や湿度の管理が順調に行けば、1つの菌床ブロックから数十個の芽が出ます。1つ1つを肉厚の大きなしいたけに育てるには、10個ほどを残して芽の間引きを行う作業も欠かせません。
収穫の際に手で引き抜くと菌床がボロボロになってしまい、2回目以降の収穫が難しくなります。収穫作業には菌床を傷めないように、ハサミを使って根本からていねいに切り取るのがコツです。収穫後に切り残しがあるとその部分からカビが生えやすくなりますので、切り残した部分もハサミできれいに切り取っておくといいでしょう。
収穫後は菌床ブロックを2週間ほど休ませ、菌床の回復を待つ期間が必要です。この間も1日に1回から2回は霧吹きで水分を補給する必要はありますが、途中で青カビが生えてきても慌てることはありません。指でこすらないようにして水道水で洗い流しせば、厄介なカビもきれいに取り除けます。
きのこ栽培で稼ぐ副業まとめ
市販の栽培キットを使ったきのこ栽培ビジネスはキット購入費用がかかるため、副業としてまとまった収入を得るのは難しい面もあります。菌床栽培で本格的なきのこ栽培ビジネスを展開するにはビニールハウスや倉庫などを利用し、多数の菌床ブロックで同時に栽培するぐらいの設備投資も必要です。
未経験でいきなり大々的にきのこ栽培ビジネスを始めるのでは、失敗のリスクが高くなります。初心者はまず少数の菌床ブロックを購入し、栽培を体験してみるのがおすすめです。栽培の要領を把握してきたところで栽培規模を拡大し、販路を広げていった方が失敗の確率を低く抑えられます。
市販のキットを使った栽培に飽き足りない人には、自分で菌床を作ったり原木栽培に挑戦したりする選択肢も用意されています。自分に合った栽培方法を選べば収益性がアップし、副業としても長続きしやすくなるはずです。
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