小笠原諸島の海底火山噴火に伴って大量の軽石が海に流れ出し、沖縄などの海岸に漂着して大きな問題となっています。当ブログでは拾った石を売ってお金を稼ぐ方法について紹介しましたが、最近はこの軽石を拾ってきて販売する人も出てきました。軽石はガーデニングや美容目的にも利用されていることから、欲しいという人に売って一儲けしようというわけです。
こうした事態を受けて、メルカリでは海底火山の噴火に由来した軽石の出品を禁止しています。海岸で拾ってきた軽石は何が問題なのか、世の中を騒がせているこの現象について考察してみました。
軽石とは?
ホームセンターなどで売られている軽石は天然の軽石と、廃ガラスを材料として作られる人工軽石の2種類に大きく分けられます。火山の噴火で大気中に放出された溶岩が急速に冷やされ、内部の水蒸気が蒸発して多数の小さな穴が残った岩石が天然の軽石です。
軽石は入浴時にかかとなどの角質を落とすのに利用されている他、水はけの良さを利用して園芸用土や農業用の土壌改良剤としても使われています。軽石にはユニークな形をしたものが多いだけに、観賞用として収集している愛好家も少なくありまん。
海底火山の噴火で大量の軽石が漂着
2021年の8月に小笠原諸島の福徳岡ノ場という海底火山が噴火し、大量の軽石が海中に放出されました。この軽石が海流に乗り、遠く離れた沖縄の海岸に漂着したことでさまざまな被害が生じています。
大量の軽石で埋め尽くされた漁港では漁船が漁に出られなくなり、養殖場にも軽石が侵入して魚が大量死している状況です。離島ではフェリーの欠航も相次ぎ、住民の生活にも支障が出ています。
水蒸気を含んだ溶岩が急激に冷やされてできる軽石は発泡スチロールのような構造をしているため、サイズのわりに軽いのが特徴です。海底火山の噴火で生じた軽石は水に浮きやすく、海流に乗ってしまえば噴火地点から離れた場所にまで流れ着くことになります。
同じようにして軽石が漂着した例は過去にもありましたが、今回の海底火山噴火は100年に1回と言われるほど大規模な出来事でした。放出された軽石の量も桁違いに多いだけに、これほど大きな被害につながってしまったのです。
現在も大量の軽石が太平洋沖を漂流している状況で、今後は黒潮の流れに乗って伊豆諸島や関東地方の沿岸にも漂着する可能性があります。
メルカリでは軽石の販売が禁止?
漁業関係者や地元の住民にとっては厄介この上ない軽石も、発想を転じれば金儲けの材料になり得ます。実際にメルカリではここ最近、沖縄などの海岸で拾ってきた軽石を出品する動きが相次いでいました。物珍しさから購入する人がいるらしく、すでに「SOLD」となっている出品の例も見られます。
軽石に限らず、海や川・山などで拾ってきた石を売ってお金を稼ぐ「副業」は以前から存在しました。当ブログでも石を売ってお金を稼ぐ方法とは?鑑賞石買取やオークション出品を解説の記事で紹介しましたが、希少価値の高い石を見つけて愛好家に売れば結構な収入になります。今回の軽石出品もそうした文化の延長線上として、「元手0円でお金を稼ぐ方法」の1つと見なすことは可能です。
そうした中で2021年11月に入ってから、メルカリで以下のような方針を打ち出しました。
小笠原諸島の海底火山噴火で発生したとみられる軽石は、成分についてわかっておらず安全性が不明です。そのため、2021年11月8日(月)より小笠原諸島の海底火山噴火の影響で漂着した軽石と見受けられる出品を一律禁止し、削除対象とさせていただきます。
安全性が確認されれば将来的に出品禁止が解除される可能性もありますが、この記事を書いた時点では出品してもすぐに削除されている状況です。すべての軽石が出品禁止というわけではなく、禁止の対象となっているのは今回の海底火山噴火で発生した軽石に限られます。他の場所で採取した軽石は禁止の対象となっていないため、現在も出品が可能です。
同じようにして拾った石の売買に利用されてきたヤフオクでも、沖縄の海岸で拾ってきた軽石が数多く出品されてます。すでに1箱数千円で落札された例も見られ、それなりに買い手がついている状況です。
海岸で拾った軽石の問題点とは?
今回の海底火山噴火で生じた軽石の出品を禁止した理由として、メルカリでは「安全性が不明」という点を挙げています。天然の軽石にはカドミウムやヒ素・鉛・水銀・アスベストなど、有害成分が含まれている可能性があるからです。
一方では園芸用品や美容目的などで、天然の軽石がホームセンターや通販サイトなどで広く売られています。小笠原諸島の海底火山噴火で生じたもの以外の軽石はメルカリでも出品が可能ですが、他の場所で採取された軽石であればすべて安全とは限りません。そのへんを徹底させようとすると、かなりのコストをかけて専門機関に成分分析を依頼しない限り、メルカリに軽石を出品できなくなってしまいます。
軽石以外の天然石でもどのような有害成分が含まれているかわかりませんが、出品禁止の対象には指定されていません。今回の軽石は漂着による被害が大きなニュースになっていることから、出品禁止も社会的な影響を考慮しての判断と見られます。
安全性と並んで問題になるのが、海岸で拾った軽石に含まれている高濃度の塩分です。沖縄の海岸で拾った軽石をメルカリやヤフオクに出品している人の中には、ガーデニングでの利用を示唆している例も見受けられます。
軽石は植木鉢の底に敷き詰めたり園芸用土として利用したりされていますが、塩分を含む軽石を使ったのでは植物を枯らす原因になりかねません。少々洗った程度では塩分が簡単に抜けないため、海岸で拾った軽石はガーデニング目的には不向きです。
成分の分析が進んで安全性に問題がないと判断されれば、メルカリでも海底火山由来の軽石を出品できるようになる可能性はあります。その場合でもインテリアなど観賞用として販売するのでない限り、塩害が出ないようにするには何十回も流水にさらしたりするような手間が必要です。
今回の海底火山噴火で発生した軽石の成分を沖縄県環境部で分析した結果、土壌環境の基準を満たしていることがすでに判明しています。塩分の問題されクリアできれば、農業用や建築資材として利用することは可能です。
厄介者の軽石が資源にもなり得るというのは耳寄りな情報ですが、そうなると個人対個人の取引というレベルの話ではなくなってきます。業者が本格的な事業として軽石の回収に乗り出してくると予想されるだけに、個人が軽石を拾うのにも許可が必要になるかもしれません。
軽石の採取が違法になるケース
メルカリで出品が禁止されている品でも、全部が全部違法性があるとは限りません。「サービス・権利など実体がないもの」のように、トラブルや不正行為を防止する目的で禁止されている出品物の例もあります。
今回の小笠原諸島海底火山の噴火で生じた軽石も、メルカリに出品する行為そのものが法律に違反するというわけではありません。軽石に含まれる成分が不明の状態で、安全性が確認されていないというのが出品禁止の理由です。将来的に安全性が確認された暁には出品できるようになる可能性もありますが、その場合でも軽石を拾う場所によっては違法になることがあり得ます。
国立公園や国定公園など自然公園法で定められた公園の特別保護地区では、石ころ1つでも持ち帰るのは法律で禁止された行為です。大量の軽石が漂着した沖縄県には国立公園が多いだけに、そういう場所を観光目的で訪れたついでに軽石を拾って持ち帰ると違法になりかねません。
海岸に漂着したもの以外の軽石についても、法律は同じように適用されます。富士山や桜島のような活火山の付近にも軽石はたくさん落ちていますが、そういう場所に限って国立公園の特別保護地区だったりするものです。販売目的かどうかに関わらず、軽石を拾う際には持ち帰ってもいい場所なのかどうか確認してから拾うことをおすすめします。
海底火山の噴火で誕生した軽石は、国立公園や国定公園に指定されていない一般の海岸にも漂着しています。法律を厳格に適用すると、そういう場所で石を拾う場合にも管理者の許可が必要です。
実際には個人が趣味の範囲内で少量の石を持ち帰る程度なら、いちいち許可を得なくても大目に見られています。販売目的で大量に持ち帰る場合は、必ずしも寛容に扱ってらえるとは限りません。心配な人はその海岸を管理している自治体や組織を調べた上で、軽石を拾ってもいいかどうか問い合わせてみるといいでしょう。
軽石鉢に加工して売るという手も
ここからは軽石全般を対象とした話ですが、メルカリでは軽石鉢と呼ばれる品が数多く売られています。大きめの軽石を拾ってきて中央部分を丸くくり抜き、植木鉢として使えるようにしたハンドメイド・DIY商品です。
軽石は形や風合いが1個1個異なるだけに、植木鉢に加工することで個性的な器が出来上がります。ガーデニングの楽しみが広がる逸品として、他の通販サイトでも人気の品です。
軽石を拾ったままの状態で出品してもそれほど高く売れないのが普通ですが、軽石鉢にすることで付加価値が生まれます。多肉植物やミニ盆栽用の鉢として使うことを提案すれば、軽石のまま出品するより高く売ることも可能です。
軽石は表面がもろく削りやすいだけに、ヤスリなどを使えば手作業で穴を開けることもできなくはありません。DIY用にドリルを持っている人なら、穴を掘る作業も効率的です。
材料が軽石だと配送の際に壊れやすいですので、発送の際には緩衝材でしっかりと梱包して破損対策を万全にする必要があります。海岸で拾った軽石を鉢に加工するには、真水に長期間浸けておくなどして塩分を抜く作業も欠かせません。
小笠原諸島の海底火山噴火による軽石を材料にした品は、たとえ鉢の形に加工したものでもメルカリに出品できません。minne(ミンネ)やCreema(クリーマ)のようなハンドメイドマーケットにも軽石鉢が出品されていますので、自信作が完成したら出品を検討してみるといいでしょう。
21万名の作家さんによる260万点の作品が集まる国内最大級のハンドメイドマーケット≪minne(ミンネ)≫
まとめ
海では厄介者の扱いを受けていた軽石も、最初のうちは物珍しさが手伝って買う人がいました。メルカリで出品禁止の方針を打ち出してからは、海岸で拾った軽石を気軽に出品して売るのが難しくなってきています。
海水に浸かった軽石には塩分が含まれているため、そのままでは園芸用として使うのに不向きです。出品が禁止されていないサイトを利用して販売しようとする場合でも、真水に長期間浸けておくなりして塩分を抜く作業が必要になってきます。
軽石を拾ったままの状態で売る場合と比べて、塩抜きをした場合は作業の手間に見合うだけの収益を得るのは困難です。軽石鉢として加工すれば新たな商品価値が出てきますので、拾った軽石の販売も十分に副業の手段となり得ます。