パソコンが普及した今では何でもプリンタで印刷できる時代ですが、手書き文字にもまだまだ根強い需要があります。表彰状や卒業証書・結婚式招待状など、毛筆による手書きを代行する筆耕バイトは古くからある仕事です。筆耕の仕事で生計を立てていくのは難しくても、在宅でお金を稼ぐ副業の手段にはなります。
そんな筆耕バイトもアルバイト求人サイトや求人雑誌では募集がなかなか見つからず、筆耕会社に採用してもらうためのハードルも決して低くはありません。一定の需要はあるはずなのに筆耕バイトの求人が少ないのはどうしてなのか、仕事が減少しつつある現状について調べてみました。そうした中でもインターネットを活用すれば宛名書きや代筆の仕事を獲得できる可能性がありますので、記事の後半で在宅開業の方法を紹介します。
筆耕とは?
今どき「筆耕」と言われてもピンと来ないという人が大半だと思いますが、要するに手書きで文字を書いて報酬を受け取る仕事です。昔から字のきれいな人は何かと重宝され、字を書くのが苦手な人に代わって手紙や熨斗袋などに書いてあげるのが当たり前でした。
そうした代筆や清書を専門に引き受けて報酬を得るのが筆耕の仕事で、複数の筆耕士が在籍する筆耕会社も存在します。専門に引き受けると言っても、筆耕の仕事を本業にするだけの収入を得ている人はほんの一握りに過ぎません。ほとんどの人は別に本業を持っているか、または専業主婦や定年退職後のシニアが収入を得る手段として利用しているのが現状です。
依頼されるのは賞状や卒業証書などが多いため、関連する資格としては賞状書士や賞状技法士などが挙げられます。とは言え賞状関係以外にも結婚式招待状の宛名書きやお中元・お歳暮の熨斗袋など、手書き文字の需要もさまざまです。筆耕会社に登録していればそうした仕事を回してもらえるため、子育てや介護などで外に働きに出られない人でもお金を稼げるようになります。
筆耕バイトの在宅求人が少ない理由
筆耕バイトは貴重な在宅の副業になり得る仕事ですが、ハローワークやアルバイト求人サイト・求人雑誌などで募集が見つかる例は決して多いとは言えません。ある程度の需要がありそうなものなのに求人がなかなか見つからないのは、そこまで大量の人員を必要とする業界ではないというのも一因です。
手書きの需要も以前と比べて減少傾向にあり、わざわざお金を払ってまでして業者に依頼しようというのは特殊な用途に限られます。筆耕会社に直接応募することもできますが、採用基準が厳しいため必ず採用されるとは限りません。
採用してもらうには毛筆で書いた封筒の宛名や賞状のサンプルを筆耕会社に送り、審査をパスした上で面接を兼ねた実技試験を受ける必要があります。試験に合格することで初めて在宅の筆耕士として採用され、仕事を回してもらえるようになるのです。
書道関連の資格や受賞歴があれば採用に有利というわけでもなく、筆耕の仕事をした経験の方が重視されます。何回書いても同じように読みやすくきれいな字を書ける能力があれば、未経験でも採用してもらうことは可能です。芸術書道のように癖のある文字はむしろ敬遠されますので、むしろ通信講座などで実用書道を習った方が採用につながりやすいと言えます。
筆耕会社以外では百貨店や結婚式場・ホテルなどで筆耕係を募集する場合もありますが、在宅の副業になるような求人が出る例はめったにありません。普段は他の仕事に従事していて、注文があったときだけ筆耕の仕事をこなすような求人もよくあります。求人サイトに掲載されているアルバイト募集の多くは、事務作業の中に筆耕の仕事も含まれるような求人です。
筆耕会社の求人募集状況
アルバイト求人サイトでは募集の掲載が多いとは言えない状況ですが、HPで求人を募集している筆耕会社は複数あります。2022年2月の時点では、以下のような筆耕会社で筆耕者を募集していました。
応募条件に制約がある例も多く、応募しても必ず採用されるとは限りません。後述するように筆耕会社を通さずに仕事を請け負う方法もありますので、採用されなかった場合でも筆耕の仕事で稼ぐ道は残されています。
筆耕の報酬(料金)相場
晴れて筆耕バイトに採用されたら、筆耕会社に注文があった仕事の一部を回してもらえるようになります。在宅の筆耕士は普通のアルバイトと違って、時給いくらという給与体系で雇用契約を結ぶわけではありません。書いた枚数に応じて報酬が支払われる完全出来高制の業務委託契約となるケースが多く、どれだけの枚数をこなせるかによって稼げる金額が左右されてきます。
企業向け郵便物などの宛名書きは1枚あたりペン書きで20円から30円程度、毛筆の場合で40円から60円程度が平均相場です。結婚式招待状になると、1枚あたり50円からら80円ほどに単価が上がります。賞状の筆耕は名前のみを書き入れる仕事と全文を書く仕事があり、名前のみの報酬は1枚あたり数百円、全文を書いた場合は数千円が平均的な相場です。
筆耕会社に宛名書きや賞状の筆耕を依頼した場合の料金相場も、参考までに紹介しておきます。筆耕会社によって料金体系は異なりますが、宛名書きの場合は1枚あたり150円前後が平均的な料金相場です。行数によって料金が増減するケースや、個人宛と企業宛で料金に数十円程度の差を設けているケースもあります。
賞状や卒業証書の筆耕料金は全書で5,000円前後、記名のみで500円前後が平均的な相場です。記名筆耕で1文字あたり30円前後の料金体系を設定しているところもあります。いずれも筆耕会社が間に入ることで中間マージンが発生し、筆耕バイトの受け取る報酬は料金の半分以下という例が大半です。
フリーランスの筆耕士として開業する方法
筆耕会社に採用されたとしても実績が乏しいうちは回してもらえる仕事の量が少なく、思ったよりも稼げないのが普通です。納品の品質が安定していてなおかつ納期もきちんと守っていれば、優先的に仕事を依頼されるようになります。
それまで待てないという人や、筆耕会社を通さずに依頼を獲得したいという人は、自宅で開業して独自に集客するのも1つの選択肢です。実際にブログやSNSを使って宣伝しながら、個人で依頼客を募集しているフリーランスの筆耕士も何人か見かけます。
筆耕会社に登録するのと違ってすべて自己責任となりますが、依頼さえ獲得できれば雇われ筆耕バイトより高収入を稼ぐことも可能です。間に筆耕会社をはさんでいるとどうしても中間マージンが発生するため、顧客が支払った料金の一部しか報酬になりません。フリーランスの筆耕士として開業すれば料金の全額が自分の収入となり、筆耕会社より安い料金を打ち出して競争力を強めることもできます。
今はインターネットを使っていくらでも集客できますので、店舗を用意して看板を掲げる必要もありません。在宅のまま開業すれば初期費用もサーバー代など最低限で済み、低リスクでフリーランスの筆耕士を名乗れるようになります。
筆耕士の主な仕事
専門の筆耕会社以外では、百貨店や結婚式場などで筆耕の求人が募集されることがあります。生花店や神社なども、筆耕バイトを募集する可能性のある職場です。筆耕会社を通じて注文される例を含めると、筆耕士には以下のような仕事が与えられています。
- お中元やお歳暮の熨斗書き
- レストランのメニュー
- 結婚式の式次第・席札・結納品の目録
- 手書きの御礼状や結婚式の招待状
- 祝辞や弔辞
- 生花店の立て札
- 神社の御札
- 命名書
- 過去帳
- 腕章
- 賞状や卒業証書・感謝状
- 宛名書き
- 手紙の代筆
賞状や卒業証書などは、筆耕会社から筆耕士に仕事が割り振られる例が多くなっています。百貨店や結婚式場・生花店などで筆耕を担当する場合は、それぞれの業界特有の仕事が中心です。宛名書きや手紙の代筆については筆耕会社を通さずに依頼される例も少なくありませんので、募集状況を個別に紹介します。
宛名書き代行
筆耕の依頼で最も多いのは、結婚式招待状や企業が発行する封筒などの宛名書きです。はがき作成ソフトとプリンタを使えば簡単に印刷できる時代ですが、手書きの方が温かみが感じられるという理由で宛名書きには根強い需要があります。企業から依頼される封筒の宛名はペン書きが大半でも、招待状などは毛筆で宛名を書くのが一般的です。
筆耕会社を通さずに宛名書きの依頼を獲得する方法は、いくつか考えられます。クラウドワークスやランサーズといったクラウドソーシングでも筆耕の仕事が募集されることがあります。
とは言え現在募集中の案件数は決して多いとは言えず、この記事を書いた時点では宛名書きの募集は見つかりませんでした。むしろココナラやジモティーなどを利用して自分で集客した方が、宛名書きの依頼を獲得できる可能性があります。
スキルシェアサイトとして国内最大の規模を誇るココナラで依頼を獲得するコツについては、以下の記事で詳しく解説しておきました。
手紙代筆の副業
特に利用者が多いココナラで目立つのは、宛名書きだけでなく手紙などの代筆もサービス内容に含まれる出品の例です。エントリーシートや履歴書・小論文などの代筆サービスを出品している人もいますが、手紙や冠婚葬祭・年賀状・ラブレターの代筆サービスも少なくありません。
何事もプリンタで印刷するのが主流となっているだけに、手書きの文章を苦手とする人が増えています。だからこそ手書きできれいな字が書ける人は重宝され、お金を払ってでも代筆してほしいという人も出てくるのです。
代筆の依頼も以前は友人や知人間に限られていましたが、ココナラのようなサービスが登場したことでそうした垣根が取り払われました。地理的に離れている人同士でも代筆を依頼したり引き受けたりすることが簡単にできるようになり、在宅で収入を得る新たな手段として定着しつつあるのです。
ココナラよりは出品数が少なめですが、スキルを30分単位の空き時間として売り買いできるタイムチケットにも代筆のサービスが出品されています。無料掲示板のジモティーには代筆の依頼を募集する人と、代筆を依頼したい人の両方で投稿が見られます。
筆耕士になるのに資格は必要?
筆耕士というのは国家資格でも何でもなく、法律で定められた名称独占資格や業務独占資格には当たりません。その気になれば誰でも筆耕士を自称できますが、筆耕の仕事に役立つ可能性のある民間資格ならいくつか存在します。賞状書士や賞状技法士・毛筆書士といったところが、筆耕関連の代表的な資格です。
それらの資格を持っていなければ、筆耕の仕事ができないというわけではありません。筆耕会社の募集している求人を見ても、採用の条件に資格の取得を挙げているところはほとんど見られませんでした。
資格を持っていれば採用に有利となる可能性もありますが、筆耕会社では資格よりも筆耕の経験を重視しています。まずはココナラなどを利用して個人で筆耕の仕事をこなし、経験を積んでから筆耕会社の求人に応募するのが無難な始め方です。
筆耕バイトで稼ぐ在宅副業まとめ
手紙の代筆などは文字の書ける人が少なかった江戸時代から存在した仕事ですが、デジタル全盛の時代にあっても収入を得る手段として生き残っています。手紙ほど文字数が多くなくても、封筒の宛名書きや賞状・卒業証書・感謝状・招待状など、手書き文字の需要は少なくありません。独自の文字文化が息づいてる日本人の間でもきれいな字を書ける人が減ってきているだけに、書ける人は特技を生かしてお金を稼ぐチャンスです。
筆耕バイトの求人は見つけるのが難しい上に審査が厳しい面もありますが、しっかりと練習すれば資格がなくても採用してもらえる可能性があります。本業にするほどまとまった収入を稼ぐのは難しいとは言え、本業の仕事や家事の片手間に取り組んで収入を増やす手段としては長い歴史を持つ副業です。自分で筆耕士として開業する方法も含め、書道が得意だった人や手書き文字に自信があるという人は挑戦してみる価値があります。