当ブログでは以前、石を売って稼ぐ方法について紹介したことがありました。鑑賞石や隕石などと並んで高く売れているのは、大昔の生物が石になった化石です。化石は研究の対象だけでなく、鑑賞の対象としても価値を認められてきました。
美しい化石は絵画や骨董品などと同じように、美術品として取引されている商品です。熱心なコレクターも存在しますので、珍しい種類の化石なら高値で売れる可能性があります。
ただし化石収集を趣味にしている人は、絵画や切手・フィギュアなどと比べてそれほど多いとは言えません。いざ化石を売ろうと思っても、買いたいという人はそう簡単に見つからないのが常です。
- どうやって売ればいいのか
- 実際にどれくらいの値段で売れるのか
といった疑問もあるかと思います。
そこで今回は「化石の価格」をテーマに、買取価格の相場や高く売れる化石の種類について調査してみました。この記事で市場の取引状況を把握しておけば、化石を売るのに損をしないででも済むようになります。
化石が売れる店舗・サイト
まずは化石の売り先でどのような店舗やサイトがあるか、具体的に見ていきましょう。
化石を専門に販売している店舗は数多く存在ますが、必ずしも買取をしているとは限りません。筆者が知る限り、買取にも対応した化石の専門店は化石セブンが唯一と言ってもいい存在です。
きれいに磨き上げられた化石は置物やインテリアとして珍重されるため、骨董品や美術品を扱う店舗でも買取してもらえる可能性があります。業者が運営する買取店舗を利用せず、Yahoo!オークションやメルカリのようなサイトに自分で出品して売るのも1つの手です。それぞれの販売方法について、基本情報をまとめてみました。
化石セブン
広島市のジュラ株式会社が運営する化石セブンは、国立大学や博物館とも取引のある化石専門の販売サイトです。NHKの教養番組や民放の番組に、化石の実物やレプリカを提供した実績もあります。
化石セブンは化石の通販サイトであると同時に、買取も可能なサイトです。査定を依頼する方法には、インターネットと郵送の2通りがあります。
一般のリサイクル店舗と比べて、化石の品揃えが豊富な点は専門店ならではの強みです。他の店舗では買取不可と言われたり、極端に安い価格でしか売れなかったりした化石でも、化石セブンならきちんと査定してもらえる可能性があります。
骨董品の買取店舗
大昔の地球に生きた生物の痕跡が石に残された化石には、太古のロマンをかき立てるような独特の美しさがあります。化石は一種の美術品として置物やインテリアにされるため、骨董品を扱う店舗でも買取してくれる場合があります。
ただし大手の骨董品買取店では、買取アイテムの中に「化石」カテゴリを明記しているところはほとんどありません。一部の買取業者で、買取実績の中に化石を買い取った例が見られる程度です。
化石に関する情報をHPに記載している業者であれば、美品を買取してくれる可能性があります。近くに骨董品買取の店があったら、化石を買取できるかどうか問い合わせてみるといいでしょう。出張買取や宅配買取に対応した店舗なら、遠方に住んでいる人でも買取が可能です。
Yahoo!オークション
化石に限らず、買取の査定額は店舗によって差が出てくるのが普通です。実際に買取を依頼してみて、査定額が「思ったより安くてがっかりした」という人も少なくないと思います。
需要と供給のバランスや商品の状態によって金額は上下しますが、骨董品の買取金額は売価の30%から50%程度が平均的な相場です。店舗を運営するにもコストがかかるせいか、半分以上は業者の取り分として持っていかれるケースも少なくありません。
化石が欲しい人と個人対個人で直接取引できれば、店舗に買取してもらうより高く売ることも可能です。まったくの自力で購入者を見つけるのは困難ですが、ネットオークションに出品するという手があります。
この記事を書いた時点で、Yahoo!オークション(旧ヤフオク)には化石が7千件以上も出品されていました。オークション形式で出品すれば、最終的な落札価格が釣り上がる可能性もあります。
落札額の10%(LYPプレミアム会員は8.8%)は落札システム利用料として引かれますが、店舗に買取してもらうよりは高く売れやすい販売方法です。中間マージンの部分を少なくすることで、購入者にとっても店舗より安く買えるというメリットが出てきます。出品や発送などで手間はかかりますが、労力を費やした分だけ高く売れるという考え方もできます。
メルカリ
Yahoo!オークションにはオークション形式だけでなく、定額出品のフリマ形式でも出品可能です。同じフリマ形式なら、メルカリはさらに多くのユーザーに利用されています。メルカリに出品しておけば、ネットオークションを利用していない化石コレクターにも売れる可能性が出てきます。
メルカリで売上から引かれる手数料は、Yahoo!オークションと同じく10%です。出品するだけなら無料で、商品が売れた場合にのみ販売手数料が発生します。
Yahoo!オークションでは送料を落札者が負担する例も多いですが、メルカリでは送料を出費者側で負担するのが通例です。送料の分を計算に入れた上で、出品価格を決めるといいでしょう。
オークション形式だと落札価格が釣り上がることも珍しくありませんが、メルカリでは逆に値引き交渉を受ける場合もあります。「店で買うより安く手に入る」という理由で、メルカリを利用している人も少なくありません。出品されている化石の価格設定も、化石専門店よりは全般に低めの傾向です。
化石の買取価格相場
化石を売る3種類の販売方法を紹介しましたが、実際にはどれくらいの価格で売れているのでしょうか?
化石の種類や状態によっても金額が変わってくるため、「何円で売れる」という保証はできません。買取店舗の査定額が売価の30%~50%と仮定すると、売価5,000円の化石を売って手元に残る金額は以下の通りです。
- 買取店舗1,500円~2,500円
- Yahoo!オークション4,500円
- メルカリ4,500円
オークション形式で出品した場合は落札価格が釣り上がることもあるので、もっと高く売れる可能性があります。その代わり入札希望者が少なかった場合に、落札価格が1円で終わることも珍しくありません。メルカリの最低出品価格は300円で、実質的な収益は送料と手数料を引いた残りの金額です。
どの販売方法でも、何万円という高値で売れるケースは存在します。Yahoo!オークションで過去180日間に落札された化石の平均落札価格は、2024年5月の時点で8,557円です。10%の手数料が引かれると、平均で7,700円ほどの金額を出品者が手にすることになります(送料を落札者負担とした場合)。
同じ平均価格の化石を買取店舗に持ち込んだ場合、査定額は売価の30%なら2,570円、50%なら4,279円です。売価8,500円相当の価値がある化石を5,000円以上で買取してもらうのは、運営コストのかかる店舗では難しいと言えます。あくまでも机上の計算に過ぎませんが、化石を売る際の目安にしてみるといいでしょう。
アンモナイトの化石はいくらで売れる?
Yahoo!オークションで過去180日間に落札された化石のうち、件数が特に多かったのは以下の種類です。
- アンモナイトの化石1,716件
- アンモナイト以外の貝の化石793件
- 恐竜の化石595件
- 魚の化石588件
- 昆虫の化石498件
- 三葉虫490件
- 木の化石333件
- サンゴの化石142件
- 植物の化石122件
- サメの化石89件
アンモナイトの化石が突出して多いのは、置物として根強い人気がある証拠です。
落札件数が多いと言っても、それだけ高く売れるとは限りません。Yahoo!オークションで過去180日間に落札されたアンモナイト化石の平均落札価格は、2024年5月の時点で5,529円です。
約50万円という高値で落札された例がある一方では、1円でしか売れなかった落札の例も複数ありました。1円から50万円までの落札価格を平均すると、5,529円という数字に落ち着くわけです。
化石を専門に扱う買取セブンの通販価格を見ると、アンモナイトの化石は平均で17,634円でした。7万円や8万円の商品が平均価格を押し上げていますが、5千円前後の商品が多い状況です。
買取価格を売価の30%から50%とした場合、平均で5,290円から8,817円で売れたものと推定されます。Yahoo!オークションの平均落札価格と、化石セブンに売価の30%で買取してもらったと仮定した場合の平均価格はほぼ同レベルです。
アンモナイトの化石にもいろいろな種類があって、商品の状態によっても買取価格や落札価格が上下します。一概には言えませんが、大まかに見れば1点5,000円前後が平均的な買取価格(落札価格)の相場です。
木の化石はいくらで売れる?
Yahoo!オークションでの化石落札件数では7番目という結果でしたが、木の化石もそれなりに売れてはいます。
過去180日間に落札された木の化石333件で最も高く売れたのは、オパール化したインドネシア産の珪化木化石です。1円からスタートして51件の入札があり、最終的には191,000円という高値で落札されました。アンモナイトの化石で最も高く落札された約50万円には及びませんが、木の化石では突出して高額な落札価格です。
木の化石でも1円で落札された例が複数あって、平均落札価格は3,688円にとどまります。アンモナイト化石の平均と比較して、2千円近く安いという結果でした。
化石セブンではさほど人気のあるジャンルでもないと見えて、木の化石は「その他の化石」の中にまとめられています。木の枝が丸ごと保存された大サイズの化石が11万円で売られている例もありますが、珪化木の化石は平均価格が約2万円です。買取価格が売価の30%だった場合は平均6,138円、50%だった場合は平均10,231円で売れた計算となります。
それほど貴重でない木の化石は、数千円程度で買取または落札されているものと推定されます。サイズが小さかったり状態が悪かったりようなする場合には、1,000円以下でしか売れないものと考えた方がいいでしょう。
高く売れる化石の種類
Yahoo!オークションで過去180日間に落札された化石は、すべての種類を合わせて約8千件にも達します。化石全体で見ると、平均落札価格は8,570円です。アンモナイト(平均5,529円)や木の化石(平均3,688円)は、化石全体の平均価格を下回っていることになります。
希少価値が高い種類の化石ほど出品数が少なく、落札価格も釣り上がるのが自然です。意外と落札件数が少ない中に、高く売れる化石が見つかるかもしれません。
Yahoo!オークションで化石の種類別に平均落札価格を調査した結果が、以下の値段ランキングです。過去180日間に落札された平均価格の高い順に並べてあります。
- ウミサソリの化石50,509円
- トンボの化石41,656円
- マンモスの化石24,159円
- ナウマンゾウの化石23,486円
- 恐竜の化石22,338円
- 三葉虫の化石22,126円
- カブトガニの化石21,297円
- アノマロカリスの化石20,724円
- ヒトデの化石13,420円
- ウミユリの化石12,909円
手作業で集計したので抜けがあるかもしれませんが、大まかな傾向は把握できるかと思います。
ウミサソリやトンボの化石は落札件数が10件程度でも、1件1件の平均価格が全般に高額です。落札件数数十件のマンモスやナウマンゾウの化石とともに、10万円以上の高額落札例が平均価格を押し上げた面もあります。
恐竜の化石はアンモナイトや貝の化石に次いで落札件数が多いにも関わらず、平均価格はさすがに高水準です。歯や爪のように比較的小さいサイズの化石でも、10万円以上の高値で落札された例が多く見られます。
ちなみに化石セブンで販売されている恐竜の化石は、2024年5月の時点で平均価格が103,957円でした。Yahoo!オークションで落札された恐竜の化石と比べて、販売価格は平均で5倍近くにもなる状況です。「化石を少しでも安く手に入れたい」というコレクターが、Yahoo!オークションで購入しようとしている様子もうかがえます。
三葉虫も500件近い落札件数があって、平均価格は上位に食い込んでいる人気の化石です。カブトガニやアノマロカリス・ヒトデ・ウミユリなど太古の海に生きた古生物の化石は、希少価値の高さで平均落札価格を押し上げているものと分析されます。
アンモナイトの化石は平均落札価格が5千円台ですが、アンモライトと呼ばれる化石ならもっと高く売れる可能性があります。長い年月をかけて殻の表面に真珠層が形成され、虹色の輝きを持つようになった化石型の宝石です。
Yahoo!オークションで過去180日間に落札されたアンモライトの平均価格は、普通のアンモナイト化石より2倍ほど高い12,675円でした。最も高額な例では、約50cmで約17kgのアンモライトが353,000円で落札されています。
海外では70億円で落札された例も!
以上は日本国内における化石の取引状況ですが、海外の取引は金額が桁違いです。海外では富裕層の間で、化石がアート作品と同じように高値で売れています。海外のオークションハウスでは、恐竜の全身骨格化石が何億円という高値で落札される例もあります。
2020年の10月には米国のオークションで、当時の化石史上最高値を更新する落札価格が出ました。3,180億ドルで落札されたのは、「スタン」と呼ばれるティラノサウルスの全身骨格化石です。当時の為替レートで日本円に換算すると、実に33億円で売れた計算になります。
スタンは全長約12mにも達するティラノサウルス・レックスの全身骨格を、ほぼ忠実に再現した超大型の化石です。Yahoo!オークションで恐竜の歯や爪の化石が数万円で落札されたのとは、次元がまったく違う話になってきます。
2021年の10月にはフランスのオークションハウスで、「ビッグ・ジョン」と名付けられたトリケラトプスの巨大化石が660万ユーロ(日本円で約8億7,000万円相当)で落札されました。全長約8mでギネスブックにも掲載された、世界最大のトリケラトプスです。
2024年の7月にはニューヨークのオークションハウスで、約70億円という過去最高額の落札価格が出ました。スタンを上回る高値で落札されたのは、「エイペックス」と名付けられたステゴサウルスの全身骨格の化石です。
スタンやビッグ・ジョン、エイペックスと言えども発掘されたままの状態では、ここまでの価値は認められなかったと思われます。多数の断片に分かれていた化石を組み合わせて全身骨格を再現するには、多大な労力と費用がかかったはずです。
ビッグ・ジョンの化石も、発掘されて数年はなかなか売れませんでした。ただ大きいというだけでは、特別に学術な価値が高いというわけでもないからです。発掘した化石ハンターは博物館が買い取ってくれると期待していましたが、どこからも声がかかりませんでした。
ようやくイタリアの化石修復工房が買い取ってくれましたが、買取価格は20万ドルに過ぎません。当時の為替レートで2,000万円以上には相当しますが、最終的な落札価格からすれば3%以下でしかない金額です。
全体の60%が揃っていた化石を職人たちが修復し、足りない部分を埋めてビッグジョンの全身骨格が復元されました。高度な技術を駆使して完成した巨大なトリケラトプスの化石だからこそ、8億円もの価値が認められたわけです。
まとめ
恐竜に限らず、化石の価値は必ずしも学術的な価値と比例するわけではありません。学術的には貴重な標本とされる化石ほど、部屋に飾っておくには意外と地味だったりします。
海外の化石オークションでも、日本の化石専門店やYahoo!オークションでも、高値で売れているのは美術品としての価値が高い化石です。発掘されたばかりの化石と、高値で取引される化石は、ダイヤモンドの原石と磨き上げられたダイヤの関係に似ています。化石の原石をきれいにクリーニングした上で、化石修復師の手で復元された品々です。
実際に取引される化石の値段は、需要と供給のバランスにも大きく左右されます。化石を買取に出したり出品したりする際には、この記事で紹介した調査結果を参考にしてみるといいでしょう。