中学校や高校で部活動の指導をしているのは、必ずしも教員とは限りません。外部から人材を招いて指導してもらう例はこれまでにも見られましたが、近年になって注目されているのが専属の部活動指導員です。勤務時間などの条件面で本業との両立が可能であれば、一般の会社員でも部活動指導員が副業になり得ます。
働き方改革の中で注目される部活動指導員になる方法について、最新情報をまとめてみました。以前から存在した外部指導者との違いや、部活動指導員をめぐる問題点も記事の後半で解説します。
部活動指導員は副業でも可能
中学校や高校で教員として働く人たちの間では、勤務時間が長すぎる点について以前から問題視されてきました。特に部活動の顧問を務めている教員の負担は大きく、土日にほとんど休めないという人も少なくありません。
筆者の友人も公立中学で教師をしていて、部活動の仕事が大変だという話はよく聞いています。野球部の顧問を務めているため土日祝日の出勤は当たり前で、平日の勤務も深夜に及ぶという話です。
そんな教員たちの負担軽減を目的に学校教育施行規則が改定され、2017年に部活動指導員が制度化されました。部活動指導員も学校職員の一員として採用され、学校長の監督の下で部活動の指導を行います。
教員免許を持っていれば採用に有利となる可能性もありますが、教員と違って免許が必要というわけではありません。募集する自治体等の条件に合致すれば、一般の会社員でも副業の形で部活動指導員になることは可能です。
実際に部活動の指導を行うのは土日祝日だけでなく、平日の放課後も含まれてきます。平日の部活動は授業が終わった後の15時以降という例が多いだけに、柔軟な勤務に対応できる人に向いた副業です。
学校によっては週1回または月に1回、日曜日のみ指導を依頼するような募集の仕方をしている例もあります。外部指導者に近い形での勤務が可能な求人が見つかれば、一般の会社員でも副業にしやすいはずです。
部活動指導員になるには?
部活動指導員は求人サイトにも募集記事が掲載されていますが、求人数は決して多いとは言えません。地域名で求人を絞り込んだ場合、自分が指導したい競技の求人がまったく見つからない可能性もあります。
部活動指導員は国の主導で制度化が実現しましたが、教育現場で十分に浸透しているとは言い難い状況です。後述するような問題点がネックとなって、実際に部活動指導員を活用している学校は全体の一部にとどまります。部活動指導員に依頼したいと考えている学校は約25%に達しますが、現在依頼しているのは中学校で10%未満、高校でも10%を少し上回る程度です。
そうした事情もあって、部活動指導員の求人はなかなか表面化しづらい状況にあります。ハローワークや求人サイトでも募集が見つからない場合は、部活動指導員の人材バンクに登録しておくのも1つの手です。以下のようなサイトに人材登録しておけば、表に出ない非公開求人を紹介してもらえます。
いずれのサイトも登録は無料で、仕事を紹介してもらうのに費用はかかりません。
部活動指導員の時給相場
部活動指導員の副業を始める際に気になるのは、収入がどれくらいになるかという金銭面の条件です。従来の外部指導者は地域への貢献や母校への恩返しといった意味合いも強く、ボランティアで引き受けている人も少なくありませんでした。
保護者会から謝礼が出る場合でも、学校までの交通費を引けばほとんど残らないのが常です。高額な報酬をもらって部活動の指導を引き受けている外部指導者は、ごく一部にとどまるものと推察されます。
新たに制度化された部活動指導員は、学校職員や非常勤講師の立場で雇用される仕事です。公立中学や高校で採用された場合でも、学校や教育委員会から決められた給料が支給されます。
給料は1時間あたりいくらという時給の形で支給されるのが一般的、時給の金額は地域や学校によって差が見られる状況です。一般のアルバイトとそれほど変わりない1,200円前後という例もありますが、2,000円前後の有利な条件の求人も少なくありません。部活動指導員の仕事だけで生活していくのは難しいですが、副業としてはまずまずの水準と言えます。
部活動指導員と外部指導者との違い
中学校や高校の部活動で、外部の人材に生徒を指導してもらうスタイルは以前から見られました。外部コーチとも呼ばれる指導者の多くは善意のボランティアで、謝礼が出るとしても交通費でほとんど消えてしまう程度の金額です。
外部指導者は部活動の技術的指導を担当しますが、教員とは立場が違うため校外活動での引率はできません。練習試合や遠征の際には外部指導者ではなく、学校の教員が生徒を引率すことになります。
新たに制度化された部活動指導員は学校職員として採用され、時給いくらという形で決まった額の給料を支給される立場です。外部指導者と比べて職務権限も大幅に拡大され、練習試合など校外活動でも教員に代わって生徒を引率できるようになりました。
部活動指導員はそれだけ責任も重い立場で、事故やトラブルが発生した場合にも責任をもって対応しなければなりません。生徒に対する技術的指導だけでなく、保護者への対応や教育的な指導も期待されています。従来の外部指導者は責任の所在が明確でなかったのと比べ、教員並みの責任を負うという点が最大の違いです。
部活動指導員の問題点
制度化に伴って給料が発生するようになったという点も、部活動指導員が従来の外部指導者と大きく異る点の1つです。だからこそ副業の手段にもなり得るわけですが、学校や保護者の経済的な負担が増えるという問題も指摘されています。
特に公立学校の場合は人件費の予算も限られているだけに、部活動指導員を採用するのに二の足を踏む学校も少なくない状況です。部活動指導員の求人募集が決して多くないのも、公立学校で予算の枠に余裕がない証拠と言えます。
予算の一部を保護者に負担してもらえば学校側の負担は軽減されますが、各家庭の理解を得るのはなかなか難しいのが現状です。これまでは学校の教員が部活動の顧問を担当し、無償で指導をしてくれるのが当たり前でした。
新たに有償の部活動指導員を導入し、保護者にも費用の負担を求めるとなれば、学校への不満が表面化する可能性もあります。以上のような問題点が未解決のまま制度化されてしまったために、部活動指導員の求人数が伸び悩んでいる現状があるわけです。
2022年5月にはスポーツ庁の有識者会議で提言がまとめられ、中学校の部活動に関する新たな方針が示されました。中学校の部活動は教員が中心となって学校単位で運営されてきましたが、2023年度以降は地域のスポーツクラブ等へ段階的に移行する可能性が出てきています。
そうなると部活動の場が学校から離れることになるだけに、地域で指導を担う人材をどう確保するかが新たな課題です。学校職員として採用される部活動指導員以外の人にも、部活動の指導を副業の手段にできる可能性が出てきます。高校に関しては「義務教育ではない」という理由で、部活動の地域移行も見送られる模様です。
部活動指導員の副業まとめ
現状では求人数が決して多いとは言えませんが、部活動指導員は副業の手段となり得る仕事の1つです。部活動指導員になるには、以下のような2種類の方法が考えられます。
- 求人サイトで地域名を絞り込んで募集を探す
- 部活動指導員の人材バンクに登録して仕事を紹介してもらう
部活動指導員は従来の外部指導者と違って、学校職員や非常勤講師として学校に採用される立場です。時給いくらという形で決められた給料が支給される一方で、外部指導者よりも責任が重くなります。
それだけ生徒の成長を実感できる機会も増えると予想されますので、単にお金を稼ぐ目的でする副業以上の魅力がある仕事です。教育に関わる仕事を副業にしたいという人は、住んでいる地域で部活動指導員を募集していないかどうか検索してみるといいでしょう。