アルバイト求人サイトでは遺品整理の仕事が多く募集されていて、給料もそれほど悪くないように見えます。一見するとおいしい仕事のように思えますが、「きつい仕事だった」と言っている経験者が少なくありません。どういった点できついのか事前に知っていれば、仕事を始める上でも心の準備が整うというものです。
筆者も一人暮らしをしていた親戚の者が亡くなった際に、遺品整理の仕事を引き受けたことがあります。そのときに味わったきつい経験に基づいて、遺品整理の仕事の大変さをまとめてみました。
社会的な貢献度という点では意義のある仕事ですので、「人の役に立つ仕事がしたい」という人にとっては知っておいて損はない情報です。
遺品整理のアルバイトはきつい仕事?
記事タイトルの前半部分を疑問形にしてしまいましたが、遺品整理のアルバイトは間違いなく「きつい仕事」です。筆者の場合は給料を受け取るような形での仕事ではありませんが、実際に遺品整理を経験してみて作業の大変さを嫌というほど思い知りました。
業者に依頼すれば料金が高くつくからという理由で、親戚の者が手分けをして遺品整理を行った次第です。亡くなったのは一軒家で一人暮らしをしていた50代の男性ですが、家の中はほとんどゴミ屋敷と化していました。これが業者のアルバイトだったとしても、同じようにきつい思いを味わったはずです。
高い料金を払ってでも業者に遺品整理を利用している人は、自分では手に負えないからこそ依頼する例が多いものと推定されます。本来であれば遺族の人が味わうべき作業の大変さを、料金と引き換えに代行業者のスタッフが味わうことになるというわけです。
遺品整理の仕事がきつい理由
ここまで読めば想像がつくと思いますが、遺品整理の仕事がきつい理由を経験者が具体的に解説していきます。筆者が経験したのは、ゴミ屋敷の片付けと特殊清掃を兼ねた遺品整理の現場です。遺品整理業者に持ち込まれる依頼でも、同様の事例が多いものと推定されます。
遺品整理そのものの作業がきつい理由は以下の通りです。
- 不衛生な環境での作業を強いられる
- 悪臭に悩まされる
- 力仕事で体力的にきつい
- 特殊清掃が加わる場合もある
さらに遺品整理業者のスタッフとして働く場合は、以下の2点も仕事がきつい理由に数えられます。
- 接客業の要素もある
- きつい仕事のわりに給料が高くない
合計6つの理由について、1つ1つ解説していきます。
不衛生な環境での作業を強いられる
遺品整理を代行するすべての住宅に共通するわけではありませんが、衛生的とは言えない環境下での作業が多いのも事実です。筆者が無報酬で経験したように、ゴミ屋敷の片付けを兼ねるような案件も珍しくありません。自分では遺品整理の作業をやりたくない状態だからこそ、依頼主も業者を頼ってくるという側面があります。
筆者が遺品整理を行った親戚宅も、目を覆いたくなるほど大量のゴミが部屋中に散らかっている状態でした。普通はゴミ袋に捨てるような紙くずや生ゴミが散乱する中に、さまざまな書類や雑誌の類が埋もれている有様です。部屋の掃除など久しく実施していなかったと見られ、不衛生極まりない状態での作業を強いられました。
真冬の時期だったのは不幸中の幸いで、これが夏場だったら大量の害虫にも悩まされたはずです。感染症のリスクもある現場での作業だけに、夏はどれほど暑くても万全の防護体制で臨む必要があります。遺品整理業者もそう頻繁にゴミ屋敷の片付けを依頼されるわけではないと思いますが、衛生的な環境での作業はめったにないものと覚悟しておいた方がいいでしょう。
悪臭に悩まされる
不衛生な環境で遺品整理の作業に従事する際には、部屋中に漂う異臭にも悩まされることになります。筆者の場合は亡くなった人が無類のヘビースモーカーだったために、煙草の臭いが部屋にこびりついている状態でした。煙草のヤニが腐ったような悪臭の漂う中で作業をしていると、マスクをしていても胸が悪くなってきます。
部屋の主が喫煙者でなかったとしても、衛生的でない環境だと異臭の原因となる物質が部屋中に存在している状況です。亡くなった人が生前に使っていた香水の臭いが残っていたり、古い住宅に特有の臭いが部屋にこびりついたりする場合もあり得ます。見た目はきちんと片付いている部屋でも、臭いに敏感な人にとってはきつい仕事になりがちです。
力仕事で体力的にきつい
遺品整理には遺品を分別してゴミを処分する作業の他に、大型の家具や家電などを運び出す作業も含まれます。求人募集で「引越し業者で働いた経験のある人を歓迎します」などと記載してある例が多いのは、どちらも力仕事で体力を使う場面が出てくるからです。
遺品整理業者が依頼を受ける際には、数人のスタッフがチームを組んで作業を行うのが普通です。正社員は依頼客とのやり取りや作業の指示が中心で、力仕事などはアルバイトに任せるという場面が多くなってきます。
アルバイトとして働き始めたばかりの頃は、重要な仕事をなかなか任せてもらえません。どうしても荷物の運び出しやゴミの処分といった作業が多くなり、体力的にきつい仕事になりがちです。
筆者が親戚宅の遺品整理に駆り出された際にも、参加した中で年齢が最も若かったせいか、力仕事は率先してやらされました。体力にはあまり自信がある方ではなかったので、翌日には筋肉痛に悩まされる結果となった次第です。不衛生な環境や悪臭は何とか我慢できても、体力的なきつさが原因で辞めてしまうアルバイトも少なくないと見られます。
特殊清掃が加わることも
遺品整理の仕事がきつい理由について解説したサイトの記事を見ると、特殊清掃の大変さを挙げている例がよくあります。特殊清掃というのは孤独死や自殺・他殺など、異常な状況で亡くなった人の部屋を清掃する作業です。遺体から流れ出した体液で室内が汚れていたり、害虫や悪臭が大発生したりと、特殊清掃の作業は過酷を極めます。
筆者が経験したのもこれに近い状況でしたが、清掃そのものは他の人がやってくれました。本来であれば遺品整理と特殊清掃はまったく別の仕事ですが、遺品整理業者の多くは特殊清掃の依頼にも対応しています。すべての依頼案件で特殊清掃の工程が加わるわけではありませんが、そういう業者に継続雇用されていれば遭遇する可能性も出てくるというわけです。
求人サイトで遺品整理の仕事を探す際には業者名をGoogleやYahoo!でも検索してみて、その業者で対応しているサービス内容をチェックしてみることをおすすめします。「特殊清掃」がサービス内容に含まれている場合は、アルバイトの仕事でも担当する可能性があるのは当然です。
接客業の要素も
遺品整理の仕事には以上のようなきつい部分がありますが、黙々と作業をこなすだけで済むならまだ楽かもしれません。倉庫や工場で働くアルバイトのように、他人と接するのが得意でない人にも務まる可能性があります。
しかしながら遺品整理の代行業は、依頼客があってこそ成り立つ仕事です。捨てるものと残すものを判断したりする際には、依頼人の確認を取る場面が何度も出てくると予想されます。
そういう意味で言うと、遺品整理の仕事は一種の接客業です。数人でチームを組んで作業に従事する際には、依頼客とのやり取りは正社員が中心になって行います。アルバイトのスタッフは正社員の指示に従って作業を行う場面が多いとは言え、依頼客と接する場面がまったくないというわけではありません。
慣れてくればアルバイトにも仕事の権限が与えられるようになります。依頼客にはいろいろな性格の人がいるだけに、他人とのコミュニケーションが得意でない人にとっては仕事がきついと感じられる理由の1つです。
きつい仕事のわりに給料が高くない
遺品整理のアルバイトは他の業種より給料が高めと書きましたが、以上のような仕事のきつさに見合うほどの水準とは言い難い状況です。遺品整理業者で募集しているアルバイトの求人を見ると、給料を日給で支払うケースと時給で支払うケースの2通りがあります。
日給の場合は1日あたりの給料が10,000円から15,000円という例が多く、1日8時間働いたとすれば時給換算で1,250円から1,875円ほど稼げる計算です。仕事が早く終わった日は時給換算でもっと効率的に稼げることになりますが、忙しい日は8時間を超える場合も考えられます。
時給単位で求人を募集してる業者の場合、給料の相場は1時間あたり1,000円から1,500円程度です。いずれもコンビニや飲食店などのアルバイトと比べて高めの水準とは言えますが、仕事のきつさ加減を考慮すると十分とは言えません。
10年ほど前までは業者の数が少なかったこともあって、アルバイトの給料は今よりも高い水準でした。遺品整理ビジネスが儲かるという情報が広まったこともあって業者の数が急増した結果、競争の激化で価格破壊が進行中です。
どの業者も競合他社より安い料金を打ち出すために、人件費は真っ先に削ろうとします。アルバイトに支払う給料の相場もここ10年ほどの間で下落し、他の業種と比べて若干高めの水準に過ぎなくなったというわけです。仕事でこれだけきつい思いをしながら給料の面で報われないと思えば、精神的な面でもきついと感じてしまいます。
遺品整理バイトに向いている人
以上のような仕事の大変さを考慮すると、遺品整理のアルバイトを長続きできる人は限られてきます。求人サイトで遺品整理業者の求人が多く掲載されているのは、それだけ人の出入りが多いという証拠です。他の業種より給料が高めという点に釣られて応募しても、この仕事に向いていない人は長続きしません。
遺品整理に仕事に向いている人の方が少ないとも思われますが、以下のような人であれば長続きできる可能性があります。
- 掃除や片付けが好きな人
- 虫が平気な人
- タフな精神力の持ち主
- 体力に自信がある人
- 他人コミュニケーションが得意な人
- 細かい気配りができる人
- 他人の死に対してドライに割り切れる人
これらすべての条件を兼ね備えているのが理想ですが、そういう人はなかなかいないかもしれません。どれか1つでも当てはまる部分があって、後述する「遺品整理バイトに不向きな人」に該当する要素がなければ、困難な仕事も長続きしやすいと言えます。
遺品整理バイトに不向きな人
遺品整理は特殊な仕事だけに、向き不向きのうち「不向き」の条件で人を選ぶところがあります。以下に挙げる条件で1つでも当てはまる項目があれば、遺品整理の仕事を長く続けるのは困難です。
- 不衛生な環境に耐えられない人
- 臭いに敏感過ぎる人
- 虫が苦手な人
- 体力に自信がない人
- 接客が苦手な人
- 霊感が強い人
他の項目には当てはまらなくて「体力に自信がない」という点だけ不安材料がある場合は、アルバイトではなく正社員を目指すことをおすすめします。正社員でも力仕事をする場面がまったくないとは限りませんが、アルバイトのスタッフよりは体力的な負担が軽いはずです。
「接客が苦手な人」が遺品整理業者のアルバイトとして働く場合でも、仕事に慣れれば何とか対応できるようになる可能性があります。それ以外の要素は雇用形態に関係なくついて回りますので、不衛生な環境や悪臭への耐性が強い人でないと務まりにくいのは確かです。
遺品整理バイトの仕事を探す方法
遺品整理業者で募集している求人は、アルバイト求人サイトに数多く掲載されています。Indeedや求人ボックスのような求人検索エンジンでも募集は見つかりますが、ブラック企業の募集が紛れ込んでいる可能性には注意が必要です。
遺品整理の仕事は前述したような大変さがあるとは言え、従業員がすぐに辞めてしまう会社は慢性的な人手不足に陥っています。求人を常に募集している会社の場合、労働環境や給料面など働く条件の部分に問題がある例も少なくありません。
希望条件に合う求人が見つかってもすぐには応募せず、その会社名で悪い評判がないかどうか検索してみることをおすすめします。求人サイトを利用せずに業者のHPで見つけた求人に直接応募する場合は、口コミや評判のチェックがなおさら欠かせません。
単発バイトも募集中
アルバイトの従業員を継続的に雇用している業者もありますが、遺品整理業界では単発の仕事を募集している例も珍しくありません。この仕事が自分に合っているかどうか不安な場合には、そういう単発バイトの仕事を一度経験してみるのも手です。
1回限りのアルバイト募集や、週1日から勤務可能な副業向けの求人など、さまざまな雇用形態で人員が募集されています。経験したことがない人にとっては結構強烈な仕事ですので、まずは負担の軽い形でアルバイトの仕事をしてみるのがおすすめです。
まとめ
ボランティアのような形ではありますが、遺品整理の仕事の大変さは筆者も一度経験して嫌というほど味わいました。給料をもらって仕事をするアルバイトの場合でも、他の業種と比べるときつい仕事の部類です。
重い荷物を持ち運ぶ体力的なきつさだけではなく、不衛生な環境に由来する生理的なきつさも半端ではありません。遺品整理のきつさ加減は依頼の案件によっても差が見られ、中には比較的楽に仕事が終わるケースもあり得ます。どちらにしても人の死と関わる仕事だけに、精神的にきついという点では共通する部分です。
現場での作業を何度も繰り返すうちには耐性ができる可能性もありますが、慣れないうちは余計にきついと感じやすくなります。記事の中で紹介した「遺品整理バイトに向いている人」の条件に当てはまる人であれば、最初の関門を突破できる可能性もあるはずです。単発のアルバイトも多く募集されていますので、見込みがありそうな人はこの仕事を一度経験してみるといいでしょう。