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『小説上杉鷹山』が今もなおビジネスマンに読まれ続けている理由

上杉鷹山像(米沢市・上杉神社) おすすめの本
©︎2020YAMATO
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歴史小説で人気を二分しているのは戦国物と幕末物ですが、江戸時代中期を舞台とする作品にも傑作は少なくありません。中でも上杉鷹山の生涯を描いた『小説上杉鷹山』は、歴史小説を得意とする童門冬二の作品で最も売れた代表作です。

1983年に初版が刊行された『小説上杉鷹山』は歴史小説のファンだけでなく、ビジネスパーソンの間でも長く読み継がれてきました。40年近い歳月にわたって本作が読まれてきた理由について、会社経営やビジネスにも通じる意義という観点から解説します。

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『小説上杉鷹山』の主人公

上杉鷹山

歴史好きの人ならたいていの人がその名を知っている上杉鷹山は、江戸時代中期に破綻寸前だった米沢藩の財政を救ったことで知られる9代藩主です。もともとは九州・高鍋藩主の次男だった上杉治憲は、8代米沢藩主重定の娘・幸姫の婿養子に入る形で米沢藩主を継ぐことになりましした。

当時の治憲はまだ17歳の若さでしたが、自らの信念に基いて大胆な改革を次々と実行して藩の財政を建て直していきます。33歳で藩主の座を後継の治広に譲った後も、治憲は藩主を後見しながら藩政の指導に当たりました。

51歳で剃髪後の治憲は鷹山を名乗るようになったため、上杉鷹山の名が現在に至るまで広く知られています。童門冬二は主として上杉鷹山の前半生にスポットを当て、現代の読者にもわかりやすい文章で歴史小説に仕立て上げたのです。

財政逼迫の米沢藩を改革

上杉家と言えば戦国時代に活躍した義の名将・上杉謙信が有名ですが、謙信を継いだ上杉景勝の時代に徳川家康と敵対したため、120万石の会津から15万石の米沢へと国替えされました。大幅な減封にも関わらず120万石時代の家臣団をそのまま抱え込んだ上杉家は、他藩と比べて藩財政に占める人件費の割合が著しく高い状態に陥っていました。その結果米沢藩の財政は破綻寸前まで逼迫し、藩領を将軍家に返上する間際にまで追い込まれていたのです。

そんな藩の危機に9代藩主となった上杉治憲は、すぐさま藩政改革に着手しました。治憲は竹俣当綱や莅戸善政ら有能な人物を登用して改革の実行を命じ、倹約の徹底や産業の振興・藩校の設立といった事業を推進させていきます。彼は藩内に倹約を徹底させるために自らが粗食粗衣の生活を実践し、領民を最優先とする政治を断行したのです。

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数々の困難を乗り越え財政再建

こうした急速な改革の推進は、先代藩主が任命した家老を中心とする藩内の旧勢力の反発を招いてしまいます。『小説上杉鷹山』でもそうした抵抗勢力による数々の妨害行為や嫌がらせが描かれますが、強い意志と信念に支えられた治憲はこれに決して屈しませんでした。

既得権益を持つ権力層や先例を重んじる保守勢力からの反発は、いつの時代の改革にも付きものです。そうした抵抗勢力との戦いに加え、主人公・治憲が信頼を寄せて現場を任せていた部下の竹俣当綱が専制的・強権的振る舞いに出たことでも改革がピンチに陥ります。

東北地方を襲った天明大飢饉への対策にも追われて改革は停滞を余儀なくされましたが、治憲が隠居して鷹山と号して以降は莅戸善政を竹俣当綱に替わる改革の先頭に立てて盛り返します。こうした幾多の困難をその都度克服することで米沢藩は養蚕や織物などの産業や学問を盛んにしていき、破綻寸前だった藩の財政が見事に再建されたのです。

なせば成る なさねば成らぬ 何事も 成らぬは人の なさぬなりけり

©︎2020YAMATO

『小説上杉鷹山』が今も読み継がれている理由

歴史小説の中でもこうした経済面に焦点を当てた作品は堅苦しいイメージも抱きがちですが、その点で『小説上杉鷹山』は現代の読者にも読みやすいように独自の工夫がされています。作者の童門冬二は長く都庁に勤務して重職を歴任した経歴の持ち主で、数多く書かれた歴史小説も組織と人間の関係というテーマで一貫してきました。

『小説上杉鷹山』は童門冬二が書いた膨大な歴史小説の中でも、最も多くの読者に読まれてきた作品です。『人生で必要なことはすべて落語で学んだ』という著作もあるほど落語に造詣の深い童門冬二らしく、歴史小説も落語の語り口を取り入れて面白く読めるように書かれています。登場人物の会話は現代風にアレンジされている例が多いため、普段歴史小説を読み慣れていない人でも抵抗なしに読み進められる点が童門作品の特徴です。

現代の組織にも通じる改革術

経営学やリーダー論といった観点からも読み継がれている『小説上杉鷹山』は、会社組織に課題を抱える企業の幹部が読めば改善のヒントが多く見つかる作品です。作者の童門冬二は『上杉鷹山の経営学―危機を乗り切るリーダーの条件』と題するビジネス書も出版していますので、『小説上杉鷹山』と合わせて読むことでよりいっそう理解が深まります。

童門冬二は52歳で都庁を退職して作家活動に専念し、歴史小説やビジネス書を中心とする著作を精力的に発表し続けてきました。歴史が好きな人ばかりでなくサラリーマン層や企業経営者まで幅広い読者層を持つ童門冬二の書いた作品群の中でも、『小説上杉鷹山』は特に現代的意義の大きい歴史小説です。現在新刊で購入可能な本書には上下巻に分かれた文庫版のほか、700ページ近い分量が1冊に収録された文庫本があります。

まとめ

歴史小説好きのシニア世代だけでなく現役のサラリーマン世代が読んでも楽しめる『小説上杉鷹山』は、人生をよりよく生きるヒントも満載された傑作小説です。障害を抱えて30歳で夭折した妻の幸姫を心から愛した鷹山の優しい人柄も、この作品が長く読まれてきた魅力の1つに数えられます。

『小説上杉鷹山』を読んで人生に対する考え方が変わったという人や、歴史が好きになったという人も少なくありません。NHKの大河ドラマをよく見るという人にも、『小説上杉鷹山』はおすすめの1冊です。

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