政府が支援の方針を打ち出したことで、「リスキリング」が注目されるようになりました。リスキリングはここ数年の間で耳にするようになった新しい用語ですが、わかりやすく言えば「学び直し」という意味です。それも趣味や生涯学習ではなく、仕事に生かすスキルの学び直しという意味で使われています。
そのせいか、リスキリングは企業が社員を対象に取り組むべき課題とされてきました。仕事に関連したスキルの学び直しは、個人のレベルでもやってできないことはありません。個人が利用できるオンラインの講座は数多く存在しますので、その中から無料で学べるサイトや、安い費用で学べるサイトをまとめてみました。
個人でリスキリングに取り組むメリット
岸田首相が国会の所信表明演説で触れた「リスキリング」は、企業が主体となって社員に学びの機会を与える取り組みを意味していました。「5年で1兆円」という首相の言葉で大きな話題を呼ぶ以前から、企業の間ではリスキリングに取り組む動きがあったわけです。会社から押し付けられるような学びの場に対して、煙たい思いを抱いてきた人も少なくないのではないでしょうか？
首相が国会で支援の方針を打ち出したのは、「個人のリスキリング支援」です。個人が新たな仕事のスキルを学ぶことで、結果的に転職したり独立・起業したりするケースも出てきます。企業にとっては人材の流出にもつながりかねませんが、労働市場全体で見ればリスキリングのメリットは明らかです。
こうした個人レベルでの学び直しは、国が主導して推進していくぐらいでないとなかなか普及しないと予想されます。具体的にどのような支援策が行われるのか、現時点ではまだ明らかでありませんが、その気になれば今からでも個人でリスキリングに取り組むことは可能です。
企業が主体となって行うリスキリングと違って、業務の範囲内で新たなスキルを学ぶというわけにはいきません。自分の時間を削って学びに費やすことになりますが、それで新たなスキルを獲得できれば、仕事をする上でいろいろなメリットが得られるようになります。副業を始めて収入を増やしたり、今より条件が良い会社への転職が実現したりするようなメリットです。
リスキリングをきっかけに会社から独立して起業し、収入が大幅に増えるような成功例も出てくるものと予想されます。いきなり会社を辞めて独立する勇気がないという人でも、副業からのスタートなら取り組みやすいはずです。
会社が主導するリスキリングで、転職や起業にまでつながるスキルを獲得するのは難しいかもしれません。個人で自発的な学び直しの機会を持てば、自分の人生を自分で切り開いていけます。
個人でリスキリングを行う方法
会社に頼らず個人でリスキリングを実践していこうという場合、ほとんど無数と言っていいほどたくさんの選択肢が与えられています。書店で売られている書籍を使って独学する方法もあれば、ある程度の費用をかけてプログラミングスクールを受講する方法もあるという具合です。むしろ情報が多すぎて、どれを選んだらいいのか迷ってしまいます。
「スキルを学ぶのに費用はかけたくない」という人と、「転職や副業で収入アップにつながるなら、少しぐらい費用をかけても構わない」人では選び方も違ってくるのが当然です。そこで今回は個人で仕事のスキルが学べるサイトを無料版と有料版に分け、それぞれの概要をまとめてみました。
無料で学べるサイト
まずは「費用をかけずに仕事のスキルを身につけたい」という人に向けて、無料で学べるサイトをいくつか紹介します。
検索の達人であればGoogleやYahoo!の検索だけで、仕事に関する知識を身につけることもできなくはありません。ITやマーケティングなど、仕事に役立つ情報を発信しているブログやWebサイトは数多く存在するからです。各サイトに掲載された広告による収益に支えられているため、大半の記事は無料で読める仕組みとなっています。
検索エンジンならいつでも無償で利用できますが、ただで手に入る情報は玉石混交です。検索の精度も年々向上してきているとは言え、有料の講座やスクールに比べると、情報の質という点ではどうしても見劣りがします。
ここ数年はリスキリングの必要性が大きくクローズアップされているせいか、無料で学べる高品質のサイトも増えてきている状況です。インターネット上に数多く存在する講座やトレーニングプログラムを整理し、提携サイトへのリンクをまとめたサービスがいくつか存在します。一部で有料の講座が登録されているサイトもありますが、以下のサイトに掲載されている講座の大半は無料のプログラムです。
- 日本リスキリングコンソーシアム
- 巣ごもりDXステップ講座情報ナビ
- マナパス
- JMOOC
- マナビDX
- Gacco（ガッコ）リスキリングに特化したサイト以外でも、動画投稿サイトのYouTubeを利用して仕事に関するスキルを学ぶという手があります。YouTubeと言えばエンタメ系のジャンルが人気のイメージもありますが、プログラミングやマーケティング・会計・語学など、仕事に役立つ知識が学べる動画も少なくありません。
ただしGoogleやYahoo!の検索結果と同様に、YouTubeの動画も玉石混交の状況です。YouTubeを利用してリスキリングを安上がりに済ませるには、情報の質を見極める目も必要になってきます。
あわせて読みたい安価な費用で学べる有料講座
無料で得られる情報では満足できないという人は、有料の講座も選択肢に入ってきます。仕事のスキルを身につけるのに、必ずしも何十万円という高額の費用をかけてビジネススクールに通うことはありません。もっと安い費用で受講できる講座やサービスが、インターネット上には数多く存在します。
月額料金1,000円前後の安価な費用で、登録されている講座を受講し放題になるサイトは以下の通りです。
いずれも機能限定版の無料会員や、期間限定の無料体験コースが用意されています。まずは無料で試してみて、気に入ったら有料プランに移行することも可能です。この他にGLOBIS学び放題は半年プランが11,000円、1年プランは19,800円の料金で動画教材が学び放題となります。
総合型のスキルマーケットを利用してビジネス関連のスキルを学びたい人には、以下の3サイトもおすすめです。
ストアカには3万件以上の講座が登録されていて、「ビジネススキル」や「IT・リスキリング」「副業・起業・キャリア」など仕事関連の講座も充実しています。受講料は講師によってさまざまですが、ビジネス関連は1時間あたり2,000円前後の例が多い状況です。
ココナラはスキル版のメルカリとも言えるサイトで、仕事に関連したスキルがフリーマケットのような気軽さで売り買いされています。ビジネス関連のカテゴリは出品価格が高めで、「プログラミング・ソフトウェア」は最低価格が3,000円です。個人対個人のやり取りを通じてスキルを学ぶ方式だけに、オンラインでも個人レッスンに近い感覚でしっかりとサポートしてもらえる安心感があります。
アメリカに本部があるudemyは、世界最大級の規模を誇る動画教材のスキルマーケットです。プログラミング関連やEXCELなど仕事のスキル向上に役立つ動画教材が、1,800円からというリーズナブルな価格で販売されています。udemyにも無料で学べるオンラインコースが用意されていますので、興味がある人は試しに利用してみるといいでしょう。
まとめ
こうして見てくると、個人でもリスキリングの手段に活用できるサイトが随分と増えてきたことを実感します。今回紹介したサイトの多くは、10年前にはまだ存在していませんでした。個人が自力で仕事のスキルを身につけるのが難しかった時代と比べ、環境が整備されてきた現在は恵まれた状況にあると言えます。従来型のリスキリングに関しては、導入する企業によって格差も見られる状況です。自分の勤務する会社で思うような学び直しができないでいる人でも、この記事で紹介したサイトを利用すれば、個人のレベルで新たな仕事のスキルを身につけられます。自分に合ったサービスを選び、リスキリングに取り組んでみるといいでしょう。
