地方では農家が親戚や知人などに依頼して、農作業を手伝ってもらうことがよくあります。繁忙期とそれ以外の時期で、作業量が大きく違ってくるのが農業の特徴です。
普段は農家の人たちだけで対応できても、農繁期になるとは作業が追いつきません。農業の担い手が不足している中でも、一時的に多くの人手が必要となってきます。収穫期などにアルバイトを募集している農業法人も少なくないだけに、農家の手伝いは副業の手段になりそうなものです。
実際に筆者は農業を営む友人の手伝いをして、ちょっとした副収入を稼いだことがありました。知り合いに農家がいない人でも、農業マッチングサイトを利用すれば同じように稼げるはずです。
そこで今回は筆者の経験に基づいて、農家の手伝いを副業にする方法について考察してみました。副業におすすめの農業マッチングサイトを5つ厳選し、記事の後半で紹介します。
農家の手伝いが副業になった話
少し前までは、農家の手伝いをしても副業のうちに入らないのが当たり前でした。親類などが依頼された場合は報酬を期待せず、手弁当で農作業を手伝うような例も少なくありません。現金の謝礼は出ない代わりに、弁当や飲み物・農作物など現物の提供を受ける場合もあります。
筆者は田舎に住んでいて、農家を営む友人もいます。何年か前にこの友人から頼まれて、枝豆の収穫作業を手伝ったことがありました。5日に及んだ手伝いの中で、初日から4日目までは現金を受け取っていません。「たばこ休み」と称する休憩時間に菓子と飲み物を提供された他は、余った規格外の豆をもらった程度です。
農業ボランティアのようなものだと思っていたところ、手伝いの最終日にサプライズが待っていました。「どうもありがとう。おかげで助かったよ」という労いの言葉とともに、謝礼の封筒を手渡されたのです。
当時は筆者も在宅の仕事で稼ぎが少なかっただけに、貴重な臨時収入となりました。現金収入にはならないと思って引き受けた仕事が、結果的に副業となったわけです。
つい先日も同じ友人に頼まれて、今度は米作りの準備作業を手伝いました。播種機という機械を使って、育苗箱に土を入れていく作業の手伝いです。機械に土を入れる作業は友人が行い、筆者は育苗箱を機械にセットする役目でした。
ほぼ1日がかりの手伝いで昼食や間食・飲み物の提供は受けましたが、今回は謝礼を受け取っていません。帰り際に夕食代わりの弁当を手渡され、「また頼む」とも言われました。今後も何度か手伝うことになるとすれば、また最終日に謝礼が出る可能性はあります。
農家の手伝いでどれくらい稼げる?
筆者が枝豆の収穫作業手伝いで受け取った謝礼の封筒には、1万円札1枚と千円札が3枚入っていました。休憩時間を除けば1日あたり実働3時間程度ですので、時給に換算すると866円ほどになる計算です。当時としても地域の最低賃金レベルではありますが、現物を加えると1時間あたり1,000円を上回ってきます。
農作業を手伝ってもらった場合に渡す謝礼の金額は、農家によってさまざまです。農業法人のように雇用契約を結んでアルバイトを雇うのでない限り、必ずしも最低賃金を守る必要はありません。多くの謝礼金を出す余裕がない農家だと、時給換算で500円以下という場合もあり得ます。
現金の謝礼を期待せずに、現物の提供を受けるだけで手伝いを引き受ける人も少なくありません。もっと儲かっている農家の場合は、筆者が受け取ったより多額の謝礼金をもらえることもあるはずです。それらを平均すると農家の手伝いでもらえる金額の相場は、やはり最低賃金程度と見られます。
お金を稼ぐ目的でする副業としてはあまり効率的とは言えませんが、農家の手伝いは社会貢献にもつながる仕事です。人手不足に悩む農家を支援することで、食の安定流通に関われるようになります。普段はデスクワークなどの仕事で運動不足の人にとっては、格好の気分転換にもなる副業です。
農家で収穫作業を手伝った場合、余った野菜や果物を分けてもらえることもよくあります。筆者も枝豆の収穫作業を手伝った際に、規格外の豆を大量にもらいました。現金の謝礼が出なかった場合でも、現物を支給されれば食費の節約になります。
農業バイトの時給相場
同じように農作業を副業とする手段の1つに、農業法人で募集しているアルバイトの仕事があります。アルバイトやパートなどの待遇で、雇用契約を結んで農作業に従事する働き方です。
大規模な農地を経営する農業法人では、田植え時期や収穫期などの農繁期に多くの人手を必要とします。期間限定で大量のアルバイトを動員しているところも少なくありません。
農家の手伝いをした場合は謝礼が出たり出なかったりで、弁当や収穫物など現物のみという場合もあり得ます。雇用契約を結んで働くアルバイトの場合、給料は現物でなく必ず現金で支給するのが決まりです。給料の金額も最低賃金の規制を受けるため、1時間あたりで極端に低い金額には設定できません(罰則もあります)。
この最低賃金がここ数年で上昇していて、2023年には全国平均が1,000円を突破しました。農業法人が募集するアルバイトの時給も、1,000円前後という例が増えてきている状況です。最低賃金が1,000円未満の県では、農業バイトの時給も低めの傾向が見られます。
土日だけ農家を手伝うスポットワーカーも人気
アルバイト求人サイトに掲載されている農業バイトは、「週3日以上勤務」など勤務日が決まっている求人が多いです。土日だけ農家の手伝いで副業がしたいという会社員にとっては、働きやすい求人がなかなか見つからないかもしれません。
そんな農業特有の事情に合わせて、スポットワーカーと呼ばれる働き方が人気を集めています。「1日だけ」「土日だけ」「数時間だけ」等々、短期間・短時間だけ単発の仕事をする働き方がスポットワーカーです。
筆者も友人の農家を手伝ってみて実感しましたが、農家は繁忙期の限られた日や時間帯だけ極端な人手不足に陥ります。飲食店や小売店などと違って、アルバイトを常時雇うだけの余裕はありません。スポットワーカーの新しい働き方は、農家を手伝うのにうってつけの方法です。
スキマ時間を活用して農作業をしたい人と、人手不足に悩む農家とをマッチングするアプリも、ここ数年で増えてきています。マッチングアプリを通じて気軽に申し込める環境が整ったことから、農家を手伝うスポットワーカーの仕事が人気を集めているわけです。
副業におすすめの農業マッチングサイト5選
筆者の場合は農業を営む友人から手伝いを頼まれますが、農家に知り合いがいないという人も多いかと思います。農家と接点を持たない人でも、今はインターネットでスポット的な仕事を探せる時代です。人手不足に悩む農家と、農業の仕事をしたい人とをマッチングするサイトが続々と誕生しています。
大手の求人サイトは「がっつり稼ぐ」系の農業バイトが多いですが、農業に特化したマッチングサイトなら副業にも最適です。「土日だけ農業の仕事がしてみたい」「1日だけ農家の手伝いがしたい」といった条件にも、当てはまる求人の募集が見つかる可能性があります。
農業の求人に強い単発バイトアプリも含めて、副業におすすめのマッチングサイトを5つ選んでみました。
daywork(デイワーク)
最初に紹介するのは、Kamakura Industries株式会社が運営するdaywork(デイワーク)です。サービス開始は2019年の8月にさかのぼります。農業の仕事に特化した1日バイトアプリとしては老舗の部類です。もともとは北海道で提供されていたサービスですが、現在は九州に至るまでの全国に拡大されています。
daywork(デイワーク)のアプリに登録しておけば、農家を手伝う仕事が1日単位で探せる仕組みです。都道府県によって求人の多い少ないに差も見られますが、農業の盛んな地域では求人が活発に募集されています。
筆者の自宅がある市では、以下のような仕事が募集されていました(仕事内容は地域や時期によって異なります)。
- 水稲の種蒔き補助作業
- 田植え補助
- 切り花の収穫調整
- 牛の管理
筆者も「水稲の種蒔き補助作業」を友人の農家で手伝ったばかりですので、仕事内容はだいたい想像がつきます。きつい仕事もあるでしょうが、「補助作業」であればそれほど難しいこともありません。
daywork(デイワーク)は求職者・生産者ともに無料で利用できます。
- 1日だけ農業を経験してみい
- スキマ時間を利用して稼ぎたい
- 人手不足の農家を支援したい
という人は、アプリに登録して仕事を探してみるといいでしょう。
daywork
Kamakura Industries無料posted withアプリーチ
農How
株式会社アグリトリオが運営する農Howも、単発の農業バイトに特化したマッチングサイトです。daywork(デイワーク)と同時期の2019年にサービスが開始されました。アプリに「クルー登録」して友だち追加すれば、LINEでも仕事募集の情報を受け取れるようになります。
農Howの対象エリアは2024年4月の時点で、関東地方から九州地方までの16県です。筆者の住んでいる東北地方は、残念ながら対象エリアに含まれていませんでした。比較的近い新潟県の例では、
- 果実の受粉作業
- 果実の摘花
- 堆肥撒き補助作業
- 野菜の定植作業
などが募集されています。
daywork(デイワーク)と同様に、農Howも求職者は無料で農業バイトの仕事を探せるサービスです。対象エリアに在住の人は、農Howにも登録しておくといいでしょう。
農How
株式会社アグリトリオ無料posted withアプリーチ
農mers(ノウマーズ)
同じく2019年にリリースされた農mers(ノウマーズ)は、人材大手の株式会社マイナビが運営する農業マッチングアプリです。ベンチャー企業がアプリを運営している例が多い中で、知名度の高い大手企業が運営しているという安心感があります。
掲載されている求人は農作業が中心ですが、野菜ネット販売の運営や商品企画の仕事が募集される場合もあるという話です。スマホアプリを通じて、さまざまな形で農家と関われるようになります。
前述の農Howは仕事を募集する農家の側で、実働1時間あたり300円のシステム利用料がかかる仕組みです。農mers(ノウマーズ)は生産者と働き手ともに、無料でサービスを利用できます。副業で農業関連の仕事を経験してみたいという人や、人手不足に悩んでいる農家の人は、登録しておいて損はありません。
農mers(ノウマーズ) – 農業をはじめる人と農家をつなぐ
Mynavi Corporation無料posted withアプリーチ
ジモベジワークス
株式会社ジモベジワークスが運営するジモベジワークスは、2022年にサービスが開始された農業特化型の求人サイトです。農業マッチングサイトとしては後発組ながら、業界では注目の存在となっています。
仕事を募集する農家の側ではマッチング成立後に、1人あたり500円の紹介料を支払う仕組みです。1時間あたり300円のシステム利用料が発生する農Howと比べて、費用を安く抑えられるというメリットがあります。農家の手伝いをする働き手の方は、他のマッチングサイトと同様に料金はかかりません。
筆者の住んでいる地域で求人を検索してみたところ、daywork(デイワーク)よりは案件が少なめでした。もしも自分が農家の立場だったら、無料で利用できるサービスの方を選んでいたかもしれません。リリースされてまだ日が浅いサービスだけに、今後の利用拡大に期待したいところです。
Timee(タイミー)
農業特化型ではありませんが、Timee(タイミー)は農業バイトに強い単発バイトアプリです。タイミーのようなアプリを利用して副業に取り組み、スキマ時間をお金に換えている人も多いのではないでしょうか?
スポットワーカーと呼ばれる働き方が普及しているのも、単発バイトアプリが登場したおかげと言えます。やショットワークスなど他の単発バイトアプリは都市部の案件に強い半面、地方の求人は少なめの傾向です。地方の求人に関しては、タイミーの方が多いという評判も見受けられます。
都合のいい日に好きな時間だけ働く仕事を探せるのは、農業の分野でも変わりありません。農家の仕事は繁忙期に集中しがちなだけに、タイミーのような単発バイトアプリと相性がいいとも言えます。
実際にタイミーを利用して、単発の仕事を募集する農家が増えている状況です。飲食店や小売店などの求人は都市部に偏りがちですが、農家の手伝いなら地方でも見つかる可能性があります。地方都市に住んでいて農業の単発バイトをやってみたい人は、タイミーでも仕事を探してみるといいでしょう。
スキマバイトはタイミー /単発アルバイト探し・求人アプリ
Timee, inc.無料posted withアプリーチ
まとめ
農家の手伝いは個人的に頼まれることが多いせいか、現金収入にならないケースも少なくありませんでした。人手不足が深刻となっている地方の農家では、親戚や知り合いにも手伝いを頼める人がいなくなってきている状況です。
そんな農業の危機を解決する手段の1つとして、農業マッチングサイトのリリースが相次いでいます。筆者は友人の農家を手伝って1万円以上の謝礼を受け取り、結果的に副業となったことがありました。この記事の後半で紹介したマッチングサイトを利用すれば、農家に知り合いがいない人でも同じように稼げる可能性が出てきます。
農家の手伝いをしても効率的に稼げるとは限りませんが、副業の目的は単に収入を増やすだけではありません。人手不足の農家を手伝うことで社会貢献につながり、気分転換にもなる仕事です。スーパーやコンビニで食料品が簡単に買える時代だからこそ、農家の手伝いをすることには大きな意義があります。農産物を作り出す苦労を少しでも実感できれば、食に対する意識が違ってくるはずです。