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副業ガイドライン改定で働き方はどう変わる?収入が増える可能性も

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本業以外の仕事で収入を増やしている人にとって、副業推進の方針を打ち出している政府の動向は気になるところです。「副業元年」と言われた2018年には厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定しましたが、その中で触れられていた労働時間の通算については課題がありました。本業と副業の労働時間を通算して管理するには、労働者側の自己申告に頼らざるを得ない事情があったのです。

このほどガイドラインが改定され、労働時間を通算する具体的な方法が示されました。該当するのは飲食店バイトやコンビニバイトなど雇用契約を結ぶタイプの副業に限られますが、改定されたガイドラインが適用されれば副業収入が増える可能性も出てきます。

ガイドライン改定で示された労働時間通算の要点について、対象外となる副業の種類と合わせて最新情報をまとめてみました。この記事を読めば自分が取り組んでいる副業で収入が増える可能性があるのかどうか、10分程度で理解できるようになります。

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副業・兼業ガイドライン改定のポイント

当ブログでは以前にも副業時間の管理に関して取り上げ、厚生労働省の動向には何かと注目してきました。

副業時間の管理に関する国の方向性が判明
副業のあり方を議論した厚生労働省の検討会報告書に、企業が労働時間を管理する際に副業時間を自己申告とする方針が記載されました。副業時間を自己申告とすれば労働時間の把握が甘くなる可能性に加え、非雇用の副業は自己申告が困難という課題もあります。

この記事を書いた時点では本業と副業の労働時間を通算する具体的な方法がまだ示されておらず、副業時間は自己申告制とする方針だけが報告書に記載されました。以後の議論を経てガイドラインの改定に至り、厚生労働省のHPで閲覧可能となっています。

副業・兼業の促進に関するガイドライン(厚生労働省)

労働基準法では本業と副業の労働時間を通算する必要があると規定されていますが、これまでは本業の会社が副業の労働時間を正確に把握するのが困難でした。副業時間を労働者側が自己申告することにより、労働時間を通算して管理できるようになります。

今回のガイドライン改定で最大のポイントは、労働基準法で規定された所定外労働時間が副業にも適用されるようになるという点です。副業だけでは所定外労働時間に達しなくても、本業の労働時間と通算されれば割増賃金の対象となる可能性が出てきます。

労働時間の通算とは?

労働基準法の第32条には、労働時間の上限について以下のように規定されています。

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
○2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。(出典:労働基準法 – e-Gov法令検索

この上限を超えて労働させた場合は労働者と36協定を締結した上で、いわゆる残業代として割増賃金を支払わなければなりません。36協定とは時間外労働や休日労働に関する協定のことで、労働基準法第36条に基づく協定のためにこの名称で呼ばれます。

本業の会社で働いた時間が1日8時間または週に40時間以内で、副業の会社でも法定労働時間内しか働いていなければ、そのままだとどちらも割増賃金の対象外です。実際には副業が加わることで、合計の労働時間が1日8時間または週に40時間をオーバーする例はよくあります。そうした場合に両方の労働時間を通算して管理できれば、本業の会社で残業代が発生しなくても副業の仕事で割増賃金がもらえる可能性が出てくるのです。

本業の会社で1日8時間フルに働いたとすれば、退勤後に副業の会社で働いた分の労働時間は丸々割増賃金の対象ということになります。平日に本業で週40時間フルに働き、土日に別の会社で副業した場合も同様の扱いです。

労働時間通算の対象外となる副業

副業の収入を増やせる可能性があるという点では注目すべきガイドライン改定ですが、すべての副業に当てはまるわけではないという点には注意が必要です。労働時間通算の対象となるのはあくまでも雇用関係がある仕事に限られ、雇用契約を結ばないタイプの副業には当てはまりません。

本業以外に収入を得る手段も多様化していて、必ずしも特定の会社に雇われる仕事だけが副業というわけではなくなってきています。今回のガイドライン改定で労働通算の対象となるような副業は、以下の通りです。

    • 飲食店バイト
    • コンビニバイト
    • 引越バイト
    • 宅配バイト
    • 清掃バイト
    • 新聞配達バイト
    • 警備員バイト
    • 倉庫バイト
    • その他アルバイトやパート・派遣社員など雇用契約を結ぶ仕事

一昔前なら副業の手段もこのような仕事に限られていましたが、近年は副業全体に占める雇用契約の仕事の割合は下がってきています。本業の仕事でも会社に雇われて働いている人ばかりではなく、自営業や個人事業主・フリーランスと呼ばれる人も少なくありません。

他に本業の仕事を持つ人がフリーランスや個人事業主としてお金を稼ごうとしても開業資金が必要だったりして、以前は高い壁がありました。インターネットが普及したことで手軽に収入を得る手段が数多く考え出され、まとまった開業資金がなくてもプチ起業することが可能になってきています。

企業対個人や個人対個人で仕事の受発注や商品・サービスの売り買いを行うマッチングサイトも増えており、今や雇用によらない副業の種類もほとんど無数と言っていいほどの状況です。そうした中で副業の手段に選んでいる人が特に多く、改定されたガイドラインでは労働時間通算の対象外となるお金の稼ぎ方には以下のような種類があります。

  • クラウドソーシング
  • フリーランスのエンジニア
  • ブログ・アフィリエイト
  • YouTuber・ライブ配信
  • ネットショップ運営
  • せどり・転売
  • 情報販売・コンテンツ販売
  • スキル販売
  • 講師業
  • 電子書籍出版
  • ストックフォト
  • ハンドメイドマーケット
  • 民泊

主な副業の種類については、以下の記事で合計16のタイプに分けて解説を試みました。

副業にはどんな種類がある?16種類のタイプに分けて仕事内容を解説
副業の手段になる仕事やお金の稼ぎ方はあまりにも種類が多すぎて、どれを選んだらいいのか迷ってしまうものです。合計16種類に及ぶ副業を「在宅」「シェア」「代行」「その他」の4ジャンルに大きく分け、それぞれの仕事の特徴についてまとめてみました。

人気のウーバーイーツ配達員や電話占い師のような仕事は一見するとアルバイトのように思いがちですが、実際には雇用契約ではなく個人事業主として業務委託契約を結ぶ働き方です。クラウドソーシングなども案件ごとに業務委託契約を交わして仕事を受注するものと見なされるため、今回のガイドライン改定では労働時間通算の対象になりません。

この他に家事代行や運転代行・モーニングコール代行といった代行業は、一般に「バイト」と呼ばれていても完全出来高制の業務委託というケースが大半です。雇用形態の上では業務委託や業務請負契約であっても、独立性の高い個人事業主ではなく拘束性のある労働者に近い働き方というケースはよくあります。

実質的な雇用契約と認められるような事例は偽装委託や偽装請負と呼ばれ、個人事業主扱いにされて社会保障などの対象外とされた人は不利益を被りかねません。今回のガイドライン改定ではこのようなケースも想定し、偽装委託や偽装請負と認められる場合に使用者の責任を問う可能性についても言及されています。

カーシェアリングや駐車場シェアなどシェアリングエコノミーの手法は、必ずしも労働の対価として収入を得るわけではないため労働時間通算の対象外です。株やFX・仮想通貨・不動産投資など、投資で稼ぐ手法も本来の意味では副業に含まれません。シェアリングエコノミーも投資もお金を稼ぐために何の作業も必要でないというわけではありませんが、交渉や手続きに費やした時間は同じく労働時間通算の対象外となります。

副業ガイドライン改定で収入が増える可能性は?

あくまでも雇用契約を結んで働いた副業に限られますが、本業との間で労働時間が通算されれば収入が増える可能性も出てきます。これまでは本業と副業の会社で別々に労働時間を管理し、それぞれの会社で法定労働時間を超えた場合にのみ個別で割増賃金が支払われていました。

この場合は休日に副業の会社で1日8時間以上働きでもしない限り、割増賃金は支給されません。改定されたガイドラインが適用されれば本業の会社で1日8時間で週40時間フルに働いた場合、副業の会社で働いた分にはすべて割増賃金が適用されることになります。

割増率は時間外労働と深夜労働が基礎時給の1.25倍、法定休日労働は1.35倍です。時間外労働に深夜労働が加算された場合には、割増率が1.5倍にも達します。本業の仕事を終えた後の深夜にコンビニや飲食店などでアルバイトの仕事をしている人は、副業分の給料が1.5倍に増えるという計算です。働きすぎで健康を損ねたり本業の仕事に支障をきたしたりしては本末転倒ですが、余力を持ちながら副業に取り組んで収入を増やしたいという人にとっては朗報だと言えます。

管理モデル導入で会社の負担も軽減

副業する人にとってはガイドライン改定で収入アップのメリットが生まれることになりますが、そうなると負担が大きくなると予想されるのが労働時間を管理する会社側の担当者です。通算の対象となる副業の労働時間は自己申告制とは言え、割増賃金を算出するのに計算が複雑になってしまいます。

2つ以上の会社と雇用契約を結んで働いている人の場合、後から労働契約を結んだ会社の方がどうしても割増賃金の対象となりがちです。それも所定外労働の発生順に労働時間を通算するように規定されているため、計算がますますややこしくなってきます。

そんな会社側の負担を軽減するために、今回のガイドライン改定では「簡便な労働時間管理の方法」として管理モデルが示されました。本業と副業の合計労働時間が単月で100時間、複数の月の平均で80時間以内にとどまっていれば、副業の労働時間を把握する必要がないというのが管理モデルのポイントです。

この場合は事前に両方の会社で労働時間の上限を決めておき、その範囲内で法定労働時間を超えた分にのみ割増賃金を支払うことになります。この管理モデルを導入することによって副業も認めやすくなり、会社側に大きな負担をかけることなく労働者側も収入を増やせる可能性が出てくるのです。

副業・兼業ガイドライン改定まとめ

困難があるかと思われた本業と副業の労働時間通算にも、以上のような形で1つの道筋が示されました。ガイドラインが改定されたと言っても浸透には時間がかかると予想され、副業している事実を会社に隠して働いている人も少なくと見られます。業務委託契約や個人事業主など雇用によらない働き方で収入を増やしている人も含め、今回の改定で副業に取り組むすべての人が恩恵を受けるというわけではありません。

労働時間を通算することで副業の収入が増やせる人は一部にとどまるとも推察されますが、雇用契約を結ぶ働き方は拘束性が強いだけに労働者が不利な立場になりがちです。本業と副業を合わせて法定労働時間を超えている人でも、会社が違えば副業分の割増賃金はもらえないのが実状でした。その点だけでも改善される可能性が出てきたのは、今回の改定で評価すべきポイントです。

あとは労働時間通算の対象外でありながら、実質的に雇用契約と変わらない働き方で副業している人をどう救済するのかが課題となってきます。改定されたガイドラインでも、現在の副業に見られる多様性が十分に反映されているとは言えません。ガイドラインをさらに改定して現状に即した基準を示すためには、時代遅れとなりつつある労働基準法そのものを見直す必要もありそうです。

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