国勢調査は「統計法」という法律に従って、国が5年に1回実施する統計調査です。国勢調査に回答することは「義務」とされていて、拒否した場合には罰則もあります。
一方で国勢調査では、偽の調査員も出没しているのが現状です。国勢調査を装った不審な訪問や電話に関しては、国民生活センターでも注意を呼びかけています。
多くの人が不安に感じている国勢調査について、詐欺などに巻き込まれないための注意点をまとめてみました。5年に1回募集される国勢調査員と似た統計調査員の仕事についても、記事の後半で詳しく解説します。
国勢調査をかたる偽調査員が今回も出没

国勢調査を装った偽の調査員は、前回(2020年)の調査でも多数報告されていました。国勢調査の目的と偽って住宅を訪問し、家族構成や収入などの個人情報を聞き出そうとするのが典型的な手口です。施錠したままインターホン越しに応答したとしても、個人情報を漏らしてしまうと悪用される恐れがあります。
総務省統計局のホームページによると、令和7年国勢調査の調査項目は以下の通りです。
世帯員に関する事項
- 氏名
- 男女の別
- 出生の年月
- 世帯主との続き柄
- 配偶の関係
- 国籍
- 現在の住居における居住期間
- 5年前の住居の所在地
- 就業状態
- 所属の事業所の名称及び事業の種類
- 仕事の種類
- 従業上の地位
- 従業地又は通学地
世帯に関する事項
- 世帯の種類
- 世帯員の数
- 住居の種類
- 住宅の建て方
出典:令和7年国勢調査の概要(総務省統計局ホームページ)
調査項目の中に、収入金額や預金の有無などの情報は含まれていません。銀行口座や暗証番号、クレジットカード情報など、国勢調査と関係ない個人情報を聞き出そうとする怪しい動きも見られます。そういう質問をされた場合は、偽調査員による「かたり調査」の可能性が大です。
国勢調査は調査用紙の回収や郵送の他にインターネット回答も受け付けていますが、調査員が電話や電子メールで直接聞き取り調査を行うことはありません。少しでも怪しいと感じたら、警察や市区町村の担当者・消費生活センターなどに相談することをおすすめします。
詐欺やアポ電強盗に悪用の恐れも
国勢調査や統計調査を装ったかたり調査の例としては、預金額や取引先の銀行について電話で聞き出そうとするのが典型的なパターンです。提出済みの調査票で不明な点があったり、期限までに提出しなかったりした場合には、電話で確認やお願いをする場合も確かにあります。家族構成や年齢などの情報は国勢調査の項目にも含まれていますが、正規の調査員が世帯ごとに電話をかけて直接聞き取り調査を行うことはありません。
年金の受取先銀行名や年金生活者かどうかという質問に加え、資産状況や介護保険の状況について問い合わせる電話の例も報告されています。国勢調査の項目にない個人情報を電話で聞き出そうとしたりすることはありませんので、そのような電話がかかってきたら語り調査の可能性が濃厚です。
一方では統計調査員になりすました人物が世帯を実際に訪問し、カード番号を聞き出そうとしたり、家計簿を代理で回収しようとしりした事例も報告されています。国勢調査でも訪問型のかたり調査が行われる可能性がありますので、騙されないよう注意が必要です。

正規の国勢調査員であることを示すには、顔写真付きの調査員証と腕章が必要です。調査書類を入れる青い手提げ袋も、国勢調査員を証明する目印となります。
「令和7年国勢調査」と書かれたそれらの目印があれば信頼できますが、管理がずさんな例も過去には報告されていました。国勢調査員の腕章が拾得物として届けられたり、支給品のバッグがメルカリに出品されたりするような事例です。
そうした正規の支給品が偽調査員の手に渡ってしまったら、特殊詐欺やアポ電強盗などに悪用されかねません。国勢調査員として採用された人は職務の遂行に責任をもって取り組むと同時に、支給された調査員証や腕章・バッグも決して紛失しないよう厳重に管理することが求められます。
国勢調査員も公務員?

国勢調査の実施には、調査書類の配布や説明・回収・集計など多くの作業が伴います。常勤の公務員だけでは人手が足りなくなるため、各自治体や町内会が募集する調査員の協力が欠かせません。
国勢調査員の仕事に対しては報酬も支払われるだけに、会社員や主婦が副業として任務を引き受けている例もよくあります。国勢調査の実施される時期に限定した仕事ですが、非常勤ながら国勢調査員も公務員の扱いです。
国勢調査員は1調査区あたり、50世帯から70世帯ほどの調査を担当します。1人で2つ以上の調査区を受け持つ人も少なくありません。国勢調査員の報酬は、募集する自治体によって異なります。1調査区あたり4万円前後が平均的な相場で、複数の調査区を担当すれば収入をそれだけ増やせる計算です。
統計調査員になる方法
国や自治体で実施している統計調査は国勢調査だけでなく、労働力調査や家計調査・工業統計調査・商業統計調査などさまざまな種類があります。国勢調査は5年に1回しか実施されないのに対して、労働力調査と家計調査は毎月実施され、工業統計調査は年に1回行われる調査です。
実施にあたってそれらの調査票を対象世帯や事業所に配って説明したり、回収や点検・整理を行ったりする人が必要になってきます。国勢調査を含めたそれらの役目を引き受けるのが統計調査員で、総務大臣や都道府県知事から任命された場合は非常勤の公務員という立場です。

統計調査員になるには都道府県や市区町村で募集されている求人を見つけ、面接を受けた上で採用してもらう必要があります。国勢調査員の仕事を一度引き受けると、以後も労働力調査や家計調査などの仕事を依頼される可能性が出てきます。仕事の基本的な流れは国勢調査と共通しますが、工業統計調査や商業統計調査の場合は担当地域の世帯ではなく事業所が対象です。
最近はそれらの統計調査を民間業者に委託する例も増えてきており、アルバイト求人サイトに募集が掲載される場合も少なくありません。今回の国勢調査員はこの記事を書いた時点ですでに締め切られていますが、事務補助や集計作業・コールセンター業務など、国勢調査に付随する仕事の募集は引き続き掲載されています。国を上げて実施される5年に一度の調査には一時的に大量の人手が必要となりますので、単発バイトの仕事を探している人は見逃せません。
まとめ

5年に1回だけ短期間に限定した仕事とは言え、国勢調査員は国の最も重要な統計調査の役割を担う立場にあります。調査票を配布したり回収したりするのは自分に都合の良い日時を選べますので、平日は会社の仕事があるというサラリーマンでも副業にすることが可能です。
主婦や定年退職後のシニアが担当している例も多い国勢調査員は戸別訪問の煩わしさがあるだけに、人員は全国的に不足の傾向にあります。逆に世帯ごとの個人情報を扱うという特権に目をつけ、国勢調査員を装った偽調査員が出没している点には要注意です。
正規の統計調査員にとっては仕事が余計にやりづらくなることから、人手不足に拍車がかかるのではないかと懸念されます。そうした困難と戦いながら任務を遂行している調査員に対しては、可能な限り協力してあげたいものです。




