2023年1月のニホンザリガニに続いて、同年6月にはアメリカザリガニも生きた個体の販売が原則禁止となりました。アメリカザリガニ以外の外来ザリガニは特定外来生物に指定されていて、以前から生体の販売が禁止されています。
ザリガニはペットとしても根強い人気があるだけに、規制が強化される以前は個人間の取引も活発に行われていました。生きた個体の販売が実質的に禁止されたことで、ザリガニの養殖ビジネスが成り立たなくなってきています。
今となっては時代遅れの稼ぎ方でしかありませんが、かってはザリガニの販売ビジネスで高収入を稼いでいた人が存在するのも事実です。そこで今回はザリガニ養殖について解説した2022年の記事を大幅に改訂し、以前は可能だった稼ぎ方を振り返る記事に書き直してみました。
この記事で紹介した養殖ビジネスは過去の話で、現在ではほぼ不可能です。アメリカザリガニの規制が強化された現在の状況については、ザリガニの養殖は実質禁止?許可が不要な条件と売る方法を解説で詳しく解説しておきました。
ザリガニ養殖の副業が儲かると言われていた理由
アメリカザリガニが食用として流通している中国では、ザリガニの養殖ビジネスが盛んです。日本ではゲテモノ扱いで食材としての利用は限定的ですが、ザリガニをペットとして飼育している人は少なくありません。愛玩動物として一定の需要が期待できることから、かつては中国と同じように養殖ビジネスで稼いでいる人たちが存在しました。
ザリガニは雑食性で強い生き物だけに、飼育にそれほど手間がかかりません。他に本業の仕事を持っている人でも世話ができるため、会社員の副業にもなり得る趣味でした。
哺乳類や鳥類・爬虫類を飼育して販売するには許可が必要なだけに、副業としてのハードルは高めです。養殖ビジネスの対象で副業にしやすい生き物は、魚介類や両生類・昆虫などに限られてきます。メダカや金魚・熱帯魚などの魚類に加え、カブトムシ・クワガタなどの昆虫や両生類のカエルなどが人気です。
そうした中でもザリガニはペットとしての人気が根強く、突然変異で生まれた珍しい色の個体が高値で取引されていました。ザリガニはエサによって色が変わるだけでなく、白ザリガニのように遺伝で体色が受け継がれる場合もあります。飼育に手間がかからないという気安さも手伝って、ザリガニ養殖は「儲かる副業」と言われていたのです。
養殖ザリガニの販売方法
何らかの手段で手に入れた生き物のオスとメスを繁殖させ、数を増やした上で販売して収益を得るのが養殖ビジネスの基本です。ザリガニもただ飼育するだけでは単なる趣味ですが、数を増やして売れば副業の手段となってきます。飼育そのもののハードルは低めですので、後はどうやって売るかが問題です。
規制が強化される前なら、以下のような販売方法が可能でした。
- ザリガニを売っているペットショップに買取してもらう
- Yahoo!オークションに出品する
- 欲しいという人に直接販売する
どのペットショップでもザリガニを販売しているわけではなく、扱っていない店の方が多い状況です。近くにザリガニを売っている店があれば、交渉しだいで買取してくれる可能性もありました。
たいていの店は業者を通じて仕入れをしているため、素人は相手にされないのが普通です。したがってペットショップに買取してもらう方法は、よほど運がいい場合に限られていました。
素人が自分で飼育したザリガニを売る方法として最も現実的だったのは、生き物の出品が可能なYahoo!オークションで売る方法です。出品できるのは魚類と昆虫・両生類に限定されますが、メダカやカブトムシ・クワガタなどの養殖ビジネスにも利用されています。
ザリガニはエビやカニなどと同じ甲殻類として魚類に含まれるため、規制以前ならYahoo!オークションへの出品が可能でした。かつてはYahoo!オークションではザリガニの出品や落札が活発で、2022年4月の時点では1,000件以上の出品が確認されています。副業としてザリガニ養殖を手がける際には、Yahoo!オークションを利用した販売が第一の選択肢とでした。
ペットショップやネットオークションを経由せずに、ザリガニを欲しいという人に直接販売する売り方も以前なら可能だったものです。友人や知り合いにザリガニを飼っている人がいれば話は早いですが、普通は買い手がなかなか見つかりません。
無料掲示板のジモティーでは、現在でもザリガニを譲ってほしいという投稿を見かけます。(販売が可能だった頃は)「1匹25円で」などという書き込みが多かっただけに、単価の方はあまり期待できませんでした。それでもペットショップに買取してもらう場合は1匹10円かそこらが相場ですので、個人対個人の方が少しでも高く売れる可能性があったのです。
ヤフオクでの落札相場
2022年4月の時点でYahoo!オークションに出品されていた「ザリガニの商品」の内訳は、1,000件のうちオークション形式での出品が約500件で、フリマ形式での定額販売が約600件です。過去180日間に落札された「ザリガニの商品」は、約170件でした。落札例には生体だけでなく、ザリガニの餌などを出品している例も含まれます。
このうち最高額で落札されたのは、約20万円の値がついたニホンザリガニのアルビノ個体です。白や青・黒など珍しい色の個体は高値がつきやすく、5万円前後で落札された例も少なくありませんでした。
最低価格の1円で落札された例もあって、価格にはかなりの幅が見られます。当時の平均落札価格は3,900円となっていますが、これは両極端の落札例を含めた全体の平均値です。
数千円で落札された例の中には数匹以上の成体出品や、稚ザリを10匹単位で出品しているような例も含まれていました。1匹あたりの平均価格は3,900円よりだいぶ低くなるため、まとまった金額を稼ぐには数を多くこなす必要があったわけです。
ザリガニの外来種に対する規制の状況
日本国内には在来種のニホンザリガニの他、アメリカザリガニやウチダザリガニといった外来種も生息しています。ニホンザリガニの生息域は北海道と北東北の1道3県に限られるため、自然環境で見つかるザリガニの大半は外来種という状況です。
アメリカザリガニを除く外来種のザリガニは2020年の法改正で特定外来生物に指定され、飼育や販売が原則としてできなくなりました。それ以前から飼われていた個体に関しては、2021年5月1日までに申請することで飼育の継続が可能です。
最後の砦となったアメリカザリガニも、2023年6月1日には条件付特定外来生物に指定されました。生きた個体の販売や原則購入が禁止されたため、現在はザリガニの養殖業そのものが成り立たなくなっています。
アメリカザリガニも飼育禁止に
同じように外来種でありながら、2020年の法改正でアメリカザリガニだけが特定外来生物に指定されなかったことには理由があります。
アメリカザリガニはもともとウシガエルのエサとして輸入され、逃げ出した個体が野生化して全国に広がりました。川や池などでザリガニ釣りを楽しむ人たちが捕獲しているのも、大半がアメリカザリガニです。
アメリカザリガニはミドリガメの通称で知られるミシシッピアカミミガメとともに、ペットとしても広く飼育されています。特定外来生物に指定して飼育禁止にすれば大きな混乱が生じ、野外に捨てる人が続出すると懸念されてきました。他の在来ザリガニにない特殊事情があることから、アメリカザリガニに限って飼育を認められてきたわけです。
そんなアメリカザリガニにも、近年は新たな規制の動きが出てきました。従来の特定外来生物に新たな枠組みが設けられ、現在は「販売目的での飼育」が禁止となっています。野外から捕獲した個体をペットとして飼う分には問題ありませんが、他人への販売や譲渡を前提とした飼育はできなくなりました。
2023年6月の規制開始以降は、ザリガニの養殖ビジネスをやめる人が続出したものと推定されます。Yahoo!オークションなどの販売プラットフォーム側でも、アメリカザリガニの生きた個体は出品禁止となっている状況です。
かつては在来種のニホンザリガニも、アメリカザリガニとともにYahoo!オークションで活発に売り買いされていました。2023年1月には特定第2種国内希少野生動植物種に指定されたことで、現在はニホンザリガニも販売や販売目的の捕獲が禁止となっています。
ニホンザリガニは生息域が限られるため、野外で見つけるのも簡単ではありませんでした。飼育するには水温を20℃以下に保つ必要があって、水質管理もアメリカザリガニよりシビアです。飼育の難易度が高めだけに、「飼育にあまり手間がかからない」というザリガニ養殖のメリットが薄れてしまいます。
そうした中でもYahoo!オークションの出品状況を見ると、珍しい色をしたニホンザリガニの個体が高値で落札されていたのも事実です。マニア的なザリガニ愛好家を対象として、ニホンザリガニの養殖ビジネスが成り立っていました。今となっては過去の話ですので、ザリガニ養殖からメダカ養殖に転じるのも1つの手です。
まとめ
気軽に飼育できるという参入ハードルの低さも手伝って、以前はザリガニの養殖ビジネスは副業の手段として利用されていきました。白や青・黒など珍しい色の個体を捕獲して繁殖させれば、一攫千金も夢ではな言われていたほどです。
そんなかつての活況も、法改正で一変してしまいました。かつてはYahoo!オークションで活発に取引されていたアメリカザリガニとニホンザリガニが、今は両方とも販売が原則禁止の状況です。少なくともペットとして飼育されることを前提として、生きた個体を売る道は閉ざされてしまいました。
規制が強化された今もなおアメリカザリガニだけは、野外からの捕獲や飼育の道が残されています。冷凍や加工品など生きてない状態であれば、食用や餌用としての販売も可能です。ザリガニを利用したビジネスが完全になくなったわけではありませんので、チャレンジ精神を持つ人は試してみるといいでしょう。