Webライティングに関する本はこれまで数多く出版されてきましたが、岸智志氏の『Webライター実践入門』は本気でプロを目指す中級者にもおすすめできる良書です。「文章で生きる夢をマジメに叶えてみよう」という副題が付けられている通り、本書はライター業の実践的なテクニックが満載されています。
Webライターを名乗る当ブログ運営者のYAMATOも、本書はいろいろと参考になる面がありました。初心者だけでなく中級者にもおすすめできる『Webライター実践入門』の読みどころについて、同業者の観点から解説していきます。
『Webライター実践入門』の概要
ライター歴5年のYAMATOはスキルアップを目的に、これまでにWebライティング講座や文章術に関する本を30冊以上読んできました。2019年12月刊行の『Webライター実践入門』はその中でも比較的新しい本ですが、業界の最新トレンドも盛り込まれている点で興味深い1冊です。
一方で本書は書名に「入門」が付いているように、Webライティングの経験がない初心者を主な対象としています。この仕事には在宅の副業として人気が高いクラウドソーシングの記事作成も含まれますが、本書で扱うのはフリーランスのライターとして独立できる水準のスキルです。
著者はライター歴14年のベテラン
『Webライター実践入門』の著者は株式会社「スタジオライティングハイ」の代表取締役を務めるとともに、紙媒体とWeb媒体両方のライターとして活躍してきた人です。本書のプロローグに「ライター歴は14年ほど」と書かれていますので、YAMATOにとっては大先輩ということになります。
岸智志氏はこれまで漫画原作のシナリオライターやセールスライティングなどの仕事を通じて文章力を鍛え、インタビュー記事や取材記事なども得意としてきました。著者が経営に携わるスタジオライティングハイは、横浜市に本社を置く原稿制作専門のプロダクションです。Webメディアから紙の書籍までさまざまな文章の執筆を代行するとともに、新人ライターやWeb担当者を対象にライティング講座も行っています。
本書の大まかな構成
7つの章に分かれた本書は最初の章で主な仕事内容や仕事の見つけ方と収入など、Webライターの概要について書かれています。第2章から第5章にかけての4つの章は、文章を書く上での実践テクニックが学べる本書の中心的な部分です。企画の立て方について書かれた第2章と取材の仕方について書かれた第3章を経て、文章の書き方を学べる第4章と文章の直し方が学べる第5章へと続きます。
ここまでは紙メディアのライターにも共通する内容ですが、SNSも含めたWeb上に掲載される文章について扱う第6章はWebライティングに特化した内容です。最後の第7章では「書く」以外のスキルについて言及されており、文章力だけでなく営業力や行動力が必要だということが強調されています。
『Webライター実践入門』はこんな人におすすめ
5年ほどWebライティングの経験があるYAMATOにとっても、本書は参考になる箇所が少なくありませんでした。一方で本書はタイトルに「入門」が付いているだけに、初心者が読んでどれだけ理解できるかという点も評価のポイントです。その点では今まで読んできた文章術の入門書と比べて難易度が若干高めですが、初心者から脱して中上級ライターを目指そうとする人が読んでも有意義な内容を含んでいる点では高く評価できます。
ライター業の基本が学べる本
著者がインタビュー記事を得意としているせいか、本書は取材に関するノウハウについて丸々1章を割いている点が特徴です。Webライターの仕事はネットで検索した情報を参考にするだけで書けるような記事も少なくありませんが、そういう案件は概して報酬が低めの傾向にあります。高単価の仕事を受注するには取材に基づく一次情報を自ら生み出す能力が求められるだけに、本書の第3章は記事の書き手として生き残っていくのに必要なスキルが学べる章です。
文章の書き方について懇切丁寧に解説した第4章や文章の修正ノウハウを伝授する第5章も、ライター業の基礎をしっかりと身につけたい人には見逃せません。以上のような文章ノウハウは紙メディアに掲載する記事を書く場合でも通用するだけに、本書は他の入門書を読んでも文章力がなかなか上達しないという人におすすめです。
本気でプロのライターを目指したい人には有益な内容
会社勤めや主婦業・子育ての傍らでクラウドソーシングの仕事をしている人にとっては、本書の内容は少々オーバースペック気味に感じられる可能性もあります。本書はどちらかと言うと、Webメディアと契約を結んで取材段階からプロジェクトに関わるようなライターになることを想定した本です。
本書に書かれてある文章術をマスターして取材ノウハウや営業ノウハウも身につければ、プロのライターとして一本立ちすることも夢ではありません。本書はサブタイトルにもある通り、文章で生きることを本気で目指す人のために書かれた入門書なのです。
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まとめ
『Webライター実践入門』で学べる内容のすべてを初心者が実践していくのは、正直に言ってなかなか容易ではありません。本書は誰でもWebライティングで稼げるようになる方法論について解説した本ではなく、Webメディアで活躍できるだけのスキルを身につけるための本です。実際にWebメディアで活躍中のライターが自分の仕事について書いたコラムも本書に複数掲載されていますので、実際の仕事がどういうものなのかがイメージできます。