自然を相手にした副業にもいろいろな種類がある中で、狩猟をしながら収入を得ている人はごく一部に限られます。副業としては決してメジャーな存在とは言えませんが、有害鳥獣駆除の活動を行うことで報奨金がもらえる仕事です。
基本的には狩猟免許の取得や猟友会への加入が必要とされる狩猟の副業でどれだけ稼げるのか、有害鳥獣駆除の依頼を獲得する方法や報奨金の相場について調べてみました。猟友会に所属せずに害獣駆除の依頼を請け負うことで稼ぐ方法についても、記事の後半で詳しく解説します。
狩猟で収入を得る副業の種類
猟銃や罠などを使って野生動物を捕獲する狩猟は人類最古の仕事であると同時に、釣りと並ぶ野外レジャーの一種として長く親しまれてきました。魚介類を対象とした釣りの方は愛好家が現在でも多く、釣った魚を買取してもらったりして収入を得ている人も少なくありません。
シカ・イノシシなどの動物やカモなどの鳥類を対象とした狩猟の愛好家は釣り客ほど多くないと見られ、各地の猟友会でも高齢化が進んで会員数は減少傾向です。若い世代の間では馴染みの薄い趣味となりつつありますが、狩猟がお金を稼ぐ手段にもなり得るとなれば話は違ってきます。
狩猟で収入を得る代表的な方法は以下の通りです。
このうち自分で獲った鳥獣の肉を販売して稼ぐ方法はハードルが高く、ほとんど利益が出ないケースも考えられます。通常は11月15日から翌年2月15日までの猟期に限られる上に、ハンターがジビエレストランや一般の精肉店に直接販売することはできません。法律の壁があるため自分で獲った獲物であっても自由に売り買いはできず、たとえ売れたとしても卸価格にしかならないのです。
シカの角や毛皮などを出品して稼ぐ方法もあまり一般的とは言い難く、単なる狩猟の範囲を超えたハンドメイドの領域に踏み込んできます。狩猟を副業の手段として考えるなら、有害鳥獣駆除の報奨金獲得を目指すのが最も無難な稼ぎ方です。
狩猟を始める方法
日本の法律で認められている猟具を使った狩猟の方法には、以下の5種類が挙げられます。
- 小型の鳥から大型の動物まで狙える散弾銃
- 主に小型の獲物を狙うエアライフル銃
- 大型獣を狙うライフル銃
- 箱わなやくくりわななどを使ったわな猟
- 伝統的な網猟
以上5種類の狩猟を行うにはいずれも狩猟免許の取得が必要で、散弾銃とライフル銃を使うには第一種銃猟免許、エアライフル銃を使うには第二種銃猟免許が欠かせません。わな猟や網猟にもそれぞれ免許がありますが、スリングショットとも呼ばれるパチンコに似た猟具や投石・鷹狩、素手による捕獲は狩猟免許が不要の自由猟法です。
そうした自由猟法で大きい獲物を捕獲するのは困難なため、たいていの人は講習や試験を受けて狩猟免許を取得しています。自治体や狩猟方法によって異なる猟期の範囲内であれば、狩猟免許を取得することで一般猟区での狩猟ができるようになるというわけです。
釣りを始めようという場合にも道具を買い揃えるのに決して安くない費用がかかりますが、狩猟を始めるにはまず免許取得費用から必要になってきます。散弾銃やライフル銃を使用する場合は第一種銃猟免許の取得費用に16,700円かかり、鉄砲所持許可取得費用の71,000円と狩猟者登録費用の32,900円を加えると合計約12万円が必要です。その上に銃の本体や弾代なども含めると、少なくとも数十万円単位の初期費用は見ておかなければなりません。
第二種銃猟免許の場合は取得費用が約6万円、わな猟・網猟免許は約4万円で済み、狩猟に使う道具も散弾銃やライフル銃よりは安く上がります。シカやイノシシ用のくくりわななら数千円から購入できますので、あまり初期費用をかけずに狩猟を始めたいという人におすすめの方法です。
有害鳥獣駆除の報奨金
主に趣味としての狩猟を想定した猟期や猟区とは別に、自治体で独自に有害鳥獣駆除の依頼が出される場合があります。最近は全国各地でクマの出没が相次ぎ、農作物や家畜が食い荒らされたり住民が襲われたりする被害が跡を絶たない状況です。シカやイノシシによる農作物の食害も以前から農家を悩ませており、アライグマやハクビシンなどは住宅に侵入して悪臭や騒音の被害を与えています。
地域住民の生活を脅威にさらすそれらの有害鳥獣に対しては、地元の猟友会を通じて自治体から駆除を依頼されるのが一般的です。有害鳥獣駆除の依頼には報奨金を伴うのが普通で、その金額は対象となる鳥獣の種類や地域によって異なります。
猟友会に所属するハンターがボランティアで有害鳥獣駆除を行っている例もありますが、シカやイノシシ1頭あたり数千円から数万円ほどの報奨金をもらえるのが普通です。報奨金の金額は農作物などで有害鳥獣の被害が多発している地域ほど高額に設定される傾向も見られ、自治体によって年間の予算に限りがあります。
個人が趣味で行う狩猟と違って、自治体から依頼される有害鳥獣駆除は猟期による制限がありません。被害が発生している限りは1年中需要があるとは言え、年間の予算に達した時点で報奨金が打ち切られる可能性もあります。
いずれも有害鳥獣駆除の活動を行った後で書類を申請し、年度末などのタイミングで振り込まれるケースが多いようです。個人が自治体から有害鳥獣駆除を直接依頼される例は稀で、たいていは猟友会のメンバーから経験者が選ばれています。猟友会に所属することで1万円ほどの年会費がかかってきますが、副業収入につながる有害鳥獣駆除の依頼を受けられる点はメリットです。
害獣駆除の個人事業として起業
狩猟で稼ぐ副業は猟友会に所属して有害鳥獣駆除の依頼を受けるのが王道ですが、害獣駆除の個人事業を始めるという手もあります。害獣や害鳥との戦いに明け暮れる農家はもちろんのこと、一般の住宅でも動物の侵入に悩まされているという人は少なくありません。そうした人たちを顧客として害獣駆除の仕事を直接請け負うことができれば、猟友会に所属していなくても狩猟で収入が得られる可能性が出てきます。
畑や住宅に被害を与える害獣の多くは鳥獣保護法の対象となっているため、個人が許可を得ないで勝手に駆除することはできません。箱わなやくくりわななどのわなを使って捕獲しようという場合でも、自治体の許可とともにわな猟の狩猟免許が必要です。
ドブネズミやクマネズミ・ハツカネズミといった家ネズミの捕獲には許可や狩猟免許は不要ですが、最近はアライグマやハクビシン・イタチによる住宅への侵入被害が相次いでいます。それらの動物は外来生物法や鳥獣保護法の対象となっているため、許可申請の手続きと狩猟免許が必要になってくるのです。
わな猟などの狩猟免許を持っていれば、自治体の許可を得るだけでそれらの害獣を駆除できるようになります。必ずしも害獣駆除業者の従業員として雇用される必要はなく、個人事業主として活動しながら依頼に応じることも可能です。
実際にくらしのマーケットにはネズミやコウモリ・鳩なども含め、さまざまな害獣・害鳥駆除のサービスが掲載されています。便利屋として起業する際にも狩猟免許を取得した上でこうした害獣駆除をサービスに盛り込めば、迷惑な動物に悩まされている人からの依頼に応えられるようになります。スズメバチなどの害虫駆除と合わせて幅広いサービスを展開し、集客を工夫している個人事業主も少なくありません。
害獣駆除や害虫駆除を個人で請け負う場合は、本業の仕事にできるほどまとまった収入を得るのはなかなか困難です。会社員として働く傍ら休日などを利用して駆除の依頼に応える範囲であれば、収入を増やす副業の手段として成り立ち得ます。
狩猟で稼ぐ副業まとめ
自分で獲った獲物であっても肉を自由に販売できない事情があるため、狩猟で稼ぐ副業は次の2パターンに集約されます。
- 猟友会に所属して有害鳥獣駆除の依頼をこなし報奨金で稼ぐ
- 農家や個人住宅からの依頼で害獣駆除を直接請け負う
害獣駆除を直接請け負う方法は集客などの難易度が高めですので、有害鳥獣駆除の報奨金を受け取る方が稼ぎやすいと言えます。害獣による被害が増加している一方で狩猟の担い手は減少傾向だけに、少子高齢化社会を見据えた副業としても有望な選択肢の1つです。