手書き伝票や見積書・名刺などのデータ入力と似た仕事の1つに、インタビューや会議などの音声を文字にする「テープ起こし」があります。同じように在宅で作業が完結する案件が多く、外へ働きに出られない人の収入源や会社員の副業にも最適な仕事です。
テープ起こしバイトは在宅ワークの定番とされてきましたが、時給換算で稼げる金額にはかなりの個人差が見られます。作業に不慣れな人やタイピングの遅い人だと、1時間で数百円程度しか稼げません。時給換算で1,000円以上まで上げるには、効率的に稼ぐためのコツを知っている必要があります。意外に奥が深いテープ起こしの仕事について、仕事の探し方や稼げる金額の目安などの概要をまとめてみました。
テープ起こしとは?
雑誌や新聞などのメディアにはインタビューや座談会の記事がよく掲載されますが、それらの文章を作成するには録音した音声を聞いて文字に変換する作業が必要です。音声を文字に変える作業も以前は手書きで行われ、業界用語で文字に「起こす」と呼ばれてきました。それらの音声を録音するのにカセットテープが使われていたことから、音声を文字に変える作業が今でも「テープ起こし」と呼ばれているのです。
現在ではICレコーダーなどのデジタル機器を使って録音するのが主流となっているため、音声もテープではなくデジタルデータとして提供されます。与えられた音声データを再生しながら内容を聞き取り、WORDやGoogleドキュメントなどを使って文章を作成していくのがテープ起こしバイトの仕事です。
テープ起こしの対象となる音源にはインタビューや対談・座談会だけでなく、講義・講演やセミナー・会議などさまざまな種類があります。ラジオ番組の音声を扱う案件などはユニークな仕事の1つですが、最近はYouTubeに投稿された動画の音声を文字に起こす仕事も増えている状況です。
テープ起こしバイトの募集状況
インタビューや対談・会議の模様を掲載した記事は新聞や雑誌だけでなく、インターネット上のメディアでも一定の需要があります。音声認識ソフトの精度も向上しつつあるとは言え、まだまだ人力による文字起こしの水準には及びません。
そうしたテープ起こしの仕事は「バイト」と呼ばれる場合が少なくないだけに、アルバイト求人サイトにも募集が掲載されています。大和速記情報センターのように自社サイトでテープ起こしの在宅スタッフを募集している例もありますが、仕事を見つけやすいのはクラウドワークスやランサーズなどのクラウドソーシングです。
いずれも「カンタン作業」「タスク・作業」カテゴリ内で、データ入力案件とともにテープ起こしの案件が掲載されています。サイトへの登録そのものは基本的に無料で、仕事を受注した後でクライアントから支払われる報酬から20%程度の手数料が引かれる仕組みです。以前はテープ起こしの仕事を探すのが一苦労でしたが、クラウドソーシングが普及したことで条件に合った仕事が見つけやすくなりました。
それらのクラウドソーシングとは逆に、仕事を請け負う人自身が主体となって仕事の依頼を募集する方法もあります。スキルシェアサイトとして人気のココナラには、テープ起こしや文字起こしのサービス出品が多く見られます。
それだけライバルが多く出品者同士の競争もありますが、自分の得意に合わせてテープ起こしの条件を細かく設定できるのはココナラならではのメリットです。サービスを購入する側にとっても気楽に依頼しやすい雰囲気がありますので、テープ起こしバイトの募集がなかなか見つからない場合は自分から動いてみるといいでしょう。
テープ起こしバイトで稼げる金額の目安
クラウドソーシングで募集されているテープ起こしの案件は、固定報酬制のプロジェクト方式が多くを占めています。報酬の金額は1件あたり5,000円から50,000円程度までさまざまですが、音声データの時間が長くなるほど報酬の金額も上がるのが普通です。
テープ起こしの仕事は完全出来高制で募集される例が大半で、一般的なアルバイトのように時給いくらという形で給料が支払われる求人は多くありません。報酬の額が多いか少ないかを判断するには、音声データ1分あたりの単価が目安となります。
例えば60分で5,000円の固定報酬制だった場合は1分あたりの単価が83円、120分で6,600円の場合は55円という具合です。平均すると1分あたり50円から100円の案件が多く、単価が100円を上回れば高額案件の部類だと言えます。実際のテープ起こし作業に要する時間は習熟度やタイピング速度によって異なり、作業のスピードが速い人ほど時給換算でも稼げる金額が増える計算です。
慣れないうちは60分の音声データを文字起こしするのに手間取り、10時間を費やす場合も珍しくありません。60分5,000円の案件だとすれば、時給換算で500円しか稼げない計算となります。速い人は音声データの3倍程度の時間で文字起こしを完了できるため、同じ案件でも時給換算で稼げる金額は1,666円に上がるというわけです。
作業が速くなれば副業として1日2時間ずつテープ起こしの仕事をこなすことで、月に10万円以上を稼ぐことも可能になってきます。ココナラに出品されているテープ起こしのサービスは1分あたり100円程度で価格設定している人が多く、簡易編集を行うことで60分10,000円の出品例もありました。ココナラでは販売金額5万円までの分については25%の手数料が引かれる仕組みですので、そのへんも計算に入れて価格設定する必要があります。
テープ起こしバイトで効率的に稼ぐコツ
事務の経験があってタイピングに自信があるという人でも、テープ起こしに特有の作業に慣れないうちは時給換算で最低賃金レベルに満たない報酬になりがちです。同じようにタイピング速度が求められるデータ入力バイトも単価の低い案件が多いだけに、作業をどれだけ効率化できるかが1つの課題でした。
どちらの仕事もパソコンを使用して画像データなり音声データなりを文字に変換し、文書データを作成するという共通した特徴があります。現時点では画像認識ソフトや音声認識ソフトの精度に限界があることから、依然として人手に頼った文字起こしの仕事に需要があるのです。
あらかじめ音声認識ソフトを使って音声データをざっくり文字データに変換しておき、音声を聞きながら細部を修正していった方が効率よく文字起こしできる場合もあります。人力ならソフトウェア的な文字への変換と比べて精度は高くなりますが、普通にやっていては時間がかかりすぎて効率的に稼げません。
文字変換の精度を落とすことなく作業をスピードアップしていくには、パソコンでマウスを使う操作を極力減らすのが効果的です。音声を再生するソフトの操作を可能な限りキーボードで代用できるようにすれば、文字入力も含めてほとんどの作業がキーボードで完結します。
キーボードショートカットを駆使したPC操作術は、パソコンが普及し始めた黎明期から工夫されてきた仕事の知恵でした。マウスを使うことでパソコンが便利になった面もあるとは言え、データ入力やテープ起こしのようにスピードが求められる仕事でいちいちマウスを操作するのは非効率的です。
最近はテープ起こしの仕事術もさらに進化しており、フットスイッチと呼ばれる周辺機器を接続して任意のキーをファンクションに割り当てる操作も可能となっています。数千円程度で買えるUSBのフットスイッチを導入することで両手は文字入力だけに専念され、まるでピアノを演奏するようにしてパソコンを操作できるようになるというわけです。
クライアントから提供される音声データを再生する際には、普通のPC用音楽プレーヤーだと使い勝手が悪いと感じられるかもしれません。テープ起こしプレーヤーやOkoshiyasu2などの専用ソフトには音質調整機能やノイズ除去機能もあり、フットスイッチとも連動できるようにプログラムされています。テープ起こしの仕事で時給換算1,000円以上を稼いでいるような人は、以上のような工夫で作業を最大限に効率化しているのです。
テープ起こしバイトの稼ぎ方まとめ
インタビューや対談・セミナー・会議などの音声データから文字データを作成するテープ起こしのバイトは、ほとんどが在宅で完結する仕事として募集されています。テープ起こし専門の会社やアルバイト求人サイトにも募集が掲載される場合はありますが、最近はクラウドソーシングで仕事を探すのが主流です。
完全出来高制で支払われる報酬の平均相場は音声データ1分あたり50円から100円程度で、作業に慣れていないと時給換算で数百円しか稼げません。キーボードショートカットやフットスイッチなどを使って作業を効率化すれば、音声データ再生時間の3倍程度で作業を終わらせることができるようになります。このようにテープ起こしバイトは稼げる人と稼げない人の間で収入格差が大きいだけに、作業の効率をいかにして向上させるかが最大のポイントとなってくるのです。