副業の収入源には企業から支給される給料や報酬の他にも、個人対個人の取引に伴う金銭的なやり取りが含まれます。中でも大道芸や路上パフォーマンスで得られる投げ銭は、日本でも江戸時代以前から行われていた収入手段の1つです。
インターネットが発達した現在では、ライブ配信などインターネットを利用して投げ銭収入を得る手法が確立しています。投げ銭収入だけで生活していくのはなかなか大変ですが、副業としては十分に成り立ち得る収入の手段です。投げ銭収入が得られる方法はライブ配信以外にもいろいろと考え出されていますので、最新情報を整理してわかりやすくまとめてみました。
大道芸・路上パフォーマンス
投げ銭で収入を得る手段で最も古い歴史を持つのは、路上で歌や踊り・楽器演奏・芸を披露する大道芸人の路上パフォーマンスです。日本でも声聞師や瞽女・放下師など、さまざまな形態の大道芸人が古くから存在しました。正月やイベント開催時に活躍する伝統芸能の獅子舞もそうした大道芸の1つで、見物人から御祝儀をもらうこともよくあります。
最近はこうした路上パフォーマンスを生業とする本職の大道芸人は少なくなりましたが、形を変えながらも現代に至るまで投げ銭文化の伝統が存続してきました。投げ銭だけで生計を成り立たせるのは難しくても、路上パフォーマンスを副業とすればお小遣い稼ぎとして悪くない収入が得られます。
現在でも街で見かける大道芸としては路上ライブやダンスの他、ジャグリングやアクロバット・バルーンアート・マジックなどの芸も人気です。全国各地の大道芸人が所属する派遣会社も存在し、路上や公園だけでなく学校や福祉施設・結婚式場・宴会などさまざま場所に芸人が派遣されています。
大道芸人の派遣会社に所属していて出演の依頼を受けた場合には、会社から自分の銀行口座に出演料を振り込んでもらう仕組みです。派遣会社に所属せずに自分で路上パフォーマンスを行う場合は、観客から受け取った投げ銭が自分の収入となります。
公共の道路で大道芸を行う際には警察の許可が必要で、駅の構内や公園などで行う場合も所有者から許可を得なければなりません。実際には許可を得ずに路上ライブなどを行う人が跡を絶たないのが現状で、通行人や近隣の迷惑にならない限りは大目に見られている節もあります。無用のトラブルを避けるためにも路上パフォーマンスを行う際には許可を得ておいた方が安全ですが、道路の使用許可は簡単に得られないのが実状です。
ライブ配信
リアル空間の路上パフォーマンスで投げ銭収入を得るのが難しくなっているのと入れ替わるようにして、現在では投げ銭文化がネット空間に引き継がれています。投げ銭収入を得る手段として最も広く普及してるのが、インターネットを通じて動画の生中継を行うライブ配信のサービスです。
17 LiveやSHOWROOM・Pococha(ポコチャ)など多くのライブ配信サービスでは、ポイントやバーチャルアイテムを配信者にプレゼントできる投げ銭システムが備わっています。受け取ったギフトは現金と交換可能なため、ライブ配信も路上パフォーマンスと同様に投げ銭収入を得る副業として成り立つ仕組みです。
プレゼントされたバーチャルアイテムは配信者に100%還元されるわけではなく、30%から70%程度の手数料を引かれた残りが実質的な投げ銭収入となります。手数料の数字を公表していないサービスも少なくありませんが、主なライブ配信サービスで推定される投げ銭の還元率は以下の通りです。
- YouTubeスーパーチャット 70%前後(iPhoneユーザーからの投げ銭は50%程度)
- 17 Live 13~30%程度
- SHOWROOM 20~30%
- ツイキャス 70%
- Twitch 70%
- ニコニコ生放送 40~50%
- ふわっち 50%
- ビゴライブ 20~30%
ちなみにPocochaは投げ銭ではなく配信時間に応じた時間報酬が配信者に支給され、盛り上がり報酬を加算した報酬システムが採用されています。この他にもInstagramのライブ配信で、2020年10月から有料バッジによる投げ銭機能が日本でも試験的に開始されました。2021年1月には若い世代で絶大な人気を誇るTiktokでも投げ銭機能が開始されるだけに、ライブ配信で投げ銭収入を稼ぐ人はますます増えそうな勢いです。
note
インターネット上では以上のようなライブ配信以外にも、さまざまなコンテンツが投げ銭の対象となり得ます。noteは文章やイラスト・漫画・写真・音楽などのコンテンツを有料販売できるプラットフォームですが、無料で公開しているコンテンツでも投げ銭で収入を得ることが可能です。
noteで公開された無料コンテンツには、クリエーターを金銭的に支援できるサポート機能が実装されています。記事の下に設置された「サポートする」ボタンを押すことで、読者は100円から10,000円までの金額を支援することが可能になってくるのです。
noteで有料コンテンツを販売して収益を得るのは、よほど知名度のあるインフルエンサーでないと難しいと言われています。無名の一般人がnote上で有料コンテンツを販売したところで、そう簡単には購入してもらえないのが実状です。
初心者のうちは敢えて無料noteとしてコンテンツを公開し、気に入ってもらった人からのサポートを受け付けた方が少しでも収入に結びつきやすくなります。良質なコンテンツを発信し続けていれば知名度も徐々に高まり、有料noteを購入してもらえる可能性が出てくるというわけです。無料記事の方が有料よりも多くの人に読まれやすく、「役に立った」「面白かった」と感じてもらえば投げ銭収入にもつながります。
ブログに実装可能な投げ銭システム
ライブ配信やnoteで投げ銭収入が得られるなら、ブログでも同じことができないものかという発想が出てくるのは当然の流れです。実際にブログに投げ銭機能を持たせることが可能なシステムも、いろいろと考え出されています。
最も多く利用されている投げ銭システムは、Amazonギフト券や「欲しいものリスト」などAmazonのサービスを使った実装方法です。Amazonで買い物を一切しないという人には不向きな方法ですが、Amazonならたいていの商品を購入できます。
ブログの記事内にEメールタイプのAmazonギフト券を購入するボタンを設置しておけば、「記事が役に立った」と感じた読者がボタンを押してくれるかもしれません。Amazonの「欲しいものリスト」は第三者にも公開が可能で、リンクを設置しておけば欲しい商品を読者がプレゼントしてくれる可能性が出てきます。
Amazon以外の投げ銭システム
以上の方法はAmazonの商品を介して間接的に投げ銭を受け取る方法ですが、PayPal.meというサービスを利用すれば投げ銭を現金で受け取ることも可能です。ブログだけでなくTwitterやInstagramなどSNSの投稿にもリンクを貼り付け可能ですが、利用するにはブログの運営者と読者の双方でPayPalへの登録が必要です。取引額の3.6%+40円の手数料が引かれる仕組みのため、PayPal.meは少額の投げ銭には不向きの面もあります。
クリエーターに対する感謝の気持ちを1文字2円のファンレターとして送れるOfuseも、ブログに投げ銭機能を追加できるサービスの1つです。WordPressプラグインとして実装可能な課金システムのcodocを利用すれば、ブログをnoteのように有料コンテンツ化したり投げ銭機能を持たせたりすることが可能になってきます。海外ではビットコインなどの仮想通貨を投げ銭として受け取れるWordPressのプラグインも存在しますが、国内ではまだ一般的となっていない状況です。
ポッドキャストでも投げ銭収入は可能?
最近は音声版ブログとも言えるポッドキャストが盛り上がりを見せていますが、副業の手段とするには一工夫が必要です。有料の音声コンテンツを販売しようとしても、有料noteと同様に無名の一般人ではなかなか購入してもらえません。ポッドキャストはブログと違って広告配信システムが未整備の状況ですが、投げ銭収入を得る方法ならハードルも低めです。
誰でも気軽にラジオ番組が配信できるRadiotalkには、リスナーからギフトを贈られることでポイントを受け取れるシステムがあります。Radiotalkで投げ銭として手に入れたポイントは、RealPayのサービスを通じて現金などと交換することが可能です。投げ銭機能が備わっていないポッドキャストのアプリでも、ブログと同様にPaypal.meやOfuseなどのサービスを利用すれば音声配信で投げ銭収入が得られる可能性が出てきます。
投げ銭が違法になるケースとは?
リアル空間で投げ銭収入を得る路上パフォーマンスでも、警察や土地所有者の許可を得ていない場合は違法性に問われるリスクがありました。他人に迷惑をかけない限りは大目に見てもらえる場合もありますが、許可を得ずに大道芸で投げ銭収入を得ようとするのはグレーゾーンの稼ぎ方です。
ライブ配信などネット上で投げ銭収入を稼ぐ方法なら、そうした問題とも無縁のように見えます。投げ銭機能を備えたサービスの大半は合法の範囲内ですが、過去には法的な問題点が指摘されたケースもありました。2018年に画期的な投げ銭システムとしてサービスが開始されながら、わずか1年でサービスを終了したOsushiはその代表的な例です。
Osushiはお寿司に見立てた100円~1,000円の投げ銭を決済可能にするサービスで、ブログ運営者やアプリの開発者を支援する手段として使われていました。セキュリティ面の問題で炎上したのがサービス終了の主な理由でしたが、資金移動に関する法律に違反するのではないかという指摘もあったのです。
個人間で送金を行う際に事業者を介する場合には、運営側が資金移動登録を済ませている必要があります。資金移動登録には厳しい審査が伴うため、銀行でもない企業にとっては荷が重い手続きです。
そうした法律上の制約を回避するために、ライブ配信などのサービスでは課金アイテムを購入することで投げ銭を行う仕組みとなっています。そこから配信者に投げ銭収入が還元される仕組みであれば、資金移動を制限した法律にも違反せずに済むというわけです。PayPal.meなど現金で投げ銭が可能な決済サービスとしてすでに多くの人が利用しているケースでは、運営会社が資金移動登録を済ませています。
物乞い行為がNGの理由
投げ銭に関わる法律でもう1つ知っておく必要があるのは、軽犯罪法に記載されている以下の規定です。
第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
(中略)
二十二 こじきをし、又はこじきをさせた者
(出典:軽犯罪法 _ e-Gov法令検索)
古くは投げ銭の定義にこうした物乞い行為も含まれていましたが、現在のネット社会においては歌やダンスなどの芸に対する対価という意味合いが強くなっています。ライブ配信やnote・ブログなどを通じて投げ銭収入を得ようとする場合でも、金銭的な支援を行う相手に何らかの価値を与えるような行為が前提条件です。たとえ雑談のような表現形式であっても視聴者が価値を感じてくれるのであれば、合法的に投げ銭収入を得る手段となり得ます。
そうした価値の提供を伴わず、単に生活苦を訴えるなどして同情を誘うやり方で投げ銭を得ようとするのは、軽犯罪法で禁止されている物乞い行為に該当しかねません。過去には路上での物乞い行為を動画で中継し、視聴者にも金銭の提供を呼びかけていた男が逮捕されたという事例がありました。ライブ配信などを利用して投げ銭収入を得ようとする際にも、こうした行為に該当しないよう注意が必要です。
投げ銭で稼ぐ副業まとめ
大道芸人の路上パフォーマンスから始まった投げ銭の文化はネット空間に受け継がれ、ライブ配信を中心に空前の盛り上がりを見せています。投げ銭の対象は生中継の動画を通じて披露される歌やダンスなどの芸にとどまらず、記事や画像など多彩なコンテンツまでが対象となっている状況です。基本的に無料で公開されるコンテンツで投げ銭を稼ぐ手段としてはnoteが代表的な存在ですが、ブログやポッドキャストにも投げ銭機能を持たせる方法がいろいろと考え出されています。
広告収入で稼ぐ副業は企業の意向を忖度したような表現になりがちなのと比べ、投げ銭収入を得る副業は視聴者や読者の側を向いた稼ぎ方です。ネット上のサービスを利用して投げ銭収入を得ようとする場合でも、大道芸人と同様のサービス精神が求められてきます。アフィリエイトなど広告収入で稼ぐタイプの副業が肌に合わないという人は、投げ銭で稼ぐ方向に変えてみるといいでしょう。
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