個人レッスン型のスキルシェアサービスとして人気を集めてきたサイタが、2021年6月30日をもってサービスの提供を終了します。マンツーマンでレッスンを行う講師は報酬の単価も高めだけに、高収入が稼げる副業の手段としてもサイタは注目の存在でした。
そんなサイタがサービスを終了するのはどうしてなのか、講師業を取り巻く状況の変化という観点から背景事情を解説します。サイタは新たなサービスとしてリニューアルされる可能性もありますので、記事の後半では類似サービスの実例を参考にしながらリニューアル後の姿を予測してみました。
サイタとは?
正式版のサービス開始が2011年にまでさかのぼるサイタは、もともとコーチ・ユナイテッド株式会社が運営していたスキルシェアサービスでした。講師と生徒が1対1でプライベートレッスンを行う方式を特徴としていて、講師の予約やレッスン日程の調整はオンラインで完結する仕組みです。
同社が2018年に親会社のクックパッド株式会社に吸収合併された際に、サイタの事業は株式会社クラウドワークスに譲渡されています。クラウドワークスは国内最大級のクラウドソーシングサイトを運営し、東証マザーズにも上場している企業です。登録されている習い事のジャンルは英会話や韓国語などの語学レッスンに加え、音楽教室やプログラミング・資格講座・受験対策・スポーツ教室・ダンス教室・美容・手芸など多岐にわたります。
個人レッスンと言えば講師が生徒の自宅を訪問して指導を行う場面を想像しがちですが、サイタのレッスンは貸しスタジオやレンタルスペース・カフェなどの場所で行うのが特徴です。スポーツ関係のレッスンは公園や競技場など、屋外のスペースを利用して指導を行う場合もあります。
生徒がサイタに支払うレッスン料は無料体験レッスンを除いて、1時間あたり3,700円から4,900円が平均相場です。講師に支払われる報酬は時給に歩合給が加算される仕組みで、サイタが間に入るため報酬の未払いが生じるリスクがありません。
サイタの講師になるには審査に合格する必要があるため、生徒にとっては講師の質もある程度保証されているという点が安心材料でした。有料でレッスンを受ける前に無料体験レッスンで講師を試せるという点も、サイタが人気を集めていた理由の1つに数えられます。それぞれの得意ジャンルで指導スキルに自信がある人にとっては、サイタの講師は安定した収入が稼げる副業として注目に値する仕事だったのです。
サイタがサービスを終了する理由
クラウドワークスの傘下に入ったことでサイタのサービスも順調に展開しているかに見えましたが、2020年に日本経済を直撃したコロナ禍で状況は一変してしまいました。新型コロナウイルスの感染拡大で対面式のサービスが軒並み苦戦を強いられるようになった中、対面でレッスンを行うサイタもまた影響は避けられなかったのです。
コロナの影響で飲食店や宿泊施設・スポーツジムなど多くの店舗や施設が廃業に追い込まれていますが、サイタのサービス終了もまたそうした動きの1つに数えられます。レッスンの予約や料金の支払いなど手続き部分については以前からオンライン化が図られていましたが、肝心のレッスンそのものはあくまでも対面で行う必要があったのです。
同じようなレッスン方式のスキルシェアサービスを展開するストアカでも、これまでは対面での講座開催が原則でした。ストアカはコロナ感染拡大の初期段階からオンライン講座の導入に踏み切り、2020年6月にはオンラインへの正式対応を発表しています。今では対面よりオンライン講座の方が多いくらいで、コロナ禍による状況変化にうまく適応することで危機を乗り切ったのです。
コロナ以前は人気を二分していた2つのレッスン型スキルシェアサービスが、オンラインに対応するかしないかによって明暗が大きく分かれたのは皮肉な結果と言えます。教室のオンライン化に当たっては苦渋の決断を強いられたものと想像されますが、対面にこだわっていてはコロナ時代を乗り切ることが難しくなってしまうのです。
サービス終了に向けたスケジュール
2020年の7月1日にサイタのサービス終了が発表された当初は、2021年3月31日をもってサービスの提供を終了するとしていました。これに伴って2020年7月31日に無料体験レッスンの新規申し込みもいったん停止されましたが、2020年12月には受付が再開されています。同時期には株式会社クラウドワークスの公式サイトに新たな告知が追記され、サービス終了を2021年6月30日に延期すると発表されました。
再開されていた無料体験レッスンのお申し込み受付は、3月31日には終了となります。サイタでは安全にレッスンを行うために、講師と受講生が個人的に連絡を交わすのを控えるように通達していました。レッスンに関する連絡はサイタのマイページ機能を利用し、メッセージの送受信を行う仕組みです。
サイタのサービス終了後もレッスンの継続を希望する場合は、講師と生徒の間で相談して決めるようにとアナウンスされています。サービス終了後のレッスンで何かトラブルが発生してもサポートは受けられませんので、お互いに自己責任で継続する形となるわけです。
リニューアルの可能性は?
サイタのサービス終了時期が当初予定より3カ月延期されたのは、2020年7月の発表時より後に生じた状況の変化が背景にあると見られます。当初はサービスを完全に終了する予定だったところを、名称や運営方式を改めた上で新たなサービスとしてリニューアルされる可能性が出てきているのです。
サイタの公式サイトには2020年12月3日の日付で、「新サービスの準備開始」に関するお知らせが掲載されています。サービス提供期間が延長されたのは、新たなサービスが開始されるまでの間の移行措置とも受け取れる判断です。
公式サイトの告知によると、新サービスのリリース予定は「2021年夏頃を目処に」と書かれています。以上の流れから推察すると、6月30日を境として旧サービスのサイタから新サービスへと移行されるのではないかと見るのが妥当です。
コロナの感染状況はまだまだ予断を許さないだけに、新サービスはストアカのようにオンラインレッスンにも対応する方式が予想されます。対面とオンラインの両方に対応したプライベートレッスンの形態であれば、コロナ禍が続く中でもサービスの拡大が見込めるからです。
そうなるとオンライン講師の副業にも新たな選択肢が加わることになり、スキルシェア市場の勢力図も大きく塗り替えられる可能性が出てきます。対面が主流だったレッスン方式のスキルシェアサービスがコロナ禍で大きく様変わりし、ココナラのようにオンラインでサービスを提供する方式が主流になるのかもしれません。
まとめ
習い事の新たなスタイルを普及させてきたサイタもコロナ禍には勝てず、対面によるサービス継続が困難になってしまいました。類似サービスのストアカはいち早くオンライン講座に対応することで、スキルシェアの新たな潮流にもうまく乗っている印象を受けます。
ココナラやストアカの成功を受けて、スキルシェア業界には新規参入サービスが続々と登場している状況です。オンラインに対応したサービスも少なくない中で老舗のサイタは競争力を失い、業界からの撤退を余儀なくされました。
現在は一般の個人でもオンラインレッスンの講師として、スマホ1つで気軽に起業できる時代です。生徒募集や予約管理の手段として利用できるサービスも増えています。以下の記事でそうしたサービスを比較してみましたので、講師としての起業を検討している人は参考にしてみるといいでしょう。
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