世の中にはエッセイストや随筆家と呼ばれる人たちが存在します。エッセイを書くことを仕事にしている人たちですが、エッセイストの大半は本業ではなく兼業や副業です。プロの文筆家や有名人でなくても、エッセイを書いて収入を得ている無名の一般人は少なくありません。
以前は公募エッセイで賞金を稼ぐぐらいしか選択肢がありませんでしたが、インターネットの普及で収益化の方法は多様化している状況です。そこで今回はエッセイで収入を得る方法を整理し、4種類の稼ぎ方に分けて解説していきます。
筆者もかつて公募エッセイのコンテストに応募し、合計数十万円の賞金を稼いできました。エッセイの公募については裏事情まで把握していますので、記事の後半で稼ぐコツを公開します。
そもそもエッセイとは?
冒頭から当たり前のようにして「エッセイ」という言葉を使っていますが、文芸用語で言う「エッセイ」には捉えどころがない面もあります。辞書サイトで「エッセイ」の意味を調べてみると、定義としては以下の通りです。
デジタル大辞泉「エッセー」の解説
エッセー(essay)
《「エッセイ」とも》
1 自由な形式で意見・感想などを述べた散文。随筆。随想。
2 特定の主題について述べる試論。小論文。論説。
(出典:エッセーとは – コトバンク)
厳密な定義によるとエッセイには2つの意味があって、1つは日本で昔から「随筆」と呼ばれてきた文芸ジャンルとほぼ同じ意味です。デジタル大辞泉の定義では「1」に相当するわけですが、欧米では「2」の意味でエッセイという文芸用語が使われてきました。16世紀のフランスで活躍した哲学者・モンテーニュの名著『エセー(随想録)』は、その代表的な例です。この場合のエッセイは小論文という意味になってくるため、日本で言うエッセイとは意味合いが少々違ってきます。
いわゆるエッセイストと呼ばれる人たちが書いているエッセイは、もっと砕けた表現で書いた自由な文章が1つの特徴です。小論文と呼ぶほど堅苦しい文章ではなく、気軽に読める読み物として多くの読者に親しまれてきました。
古典の授業でもおなじみの清少納言『枕草子』は随筆文学の傑作と言われていますが、平安時代当時の貴族が気軽に読める文学作品という点では同じようなエッセイの一種です。小説のようなフィクションではない散文作品のうち、ノンフィクション(主に社会的なテーマを取り上げた記録文学や伝記文学の総称)・評論・日記などを除いた幅広い作品がエッセイに含まれます。
その中には何らかの出来事に関する体験談や身辺雑記もあれば、動植物や風習について考察した文章もあり、映画や音楽・舞台公演などの感想を記したコラムもあるという具合です。エッセイ集として出版されている本の内容もさまざまですが、公募されているエッセイコンテストの対象は体験談に偏る傾向も見られます。
エッセイを書いて副業収入を得る方法
デジタル大辞泉によると、「エッセイスト」は以下のように定義されています。
エッセイスト(essayist)
エッセーを書く人。随筆家。
(出典:エッセイストとは – コトバンク)
エッセイストが「エッセイを書く人」を意味する言葉だとすると、その気になれば誰でも自称エッセイストになれるはずです。文芸同人誌にエッセイを発表している人も、ブログやSNSでエッセイを投稿している人も、エッセイストを名乗る資格があります。
職業の紹介で「エッセイスト」を名乗ることが許されているのは、エッセイを書いて収入を得ている人たちです。エッセイの執筆は仕事の一種として認められているわけですが、それだけで生計が成り立つほどの金額を稼いでいるのはほんの一握りの人に過ぎません。
エッセイストを名乗っている人の多くは小説家や評論家・俳優・大学の教授など、他に本業の仕事を持っているのが普通です。そういう人たちは本業の傍らでエッセイを書いて雑誌に掲載したり、本にまとめて出版したりして副収入を得ています。
エッセイは主に有名人の副業というイメージもありますが、無名の一般人でもエッセイを書いて収入を得ることは可能です。それらの手段を整理すると、以下のような4種類の方法に大きく分けられます。
- 公募エッセイのコンテストに応募して賞金を稼ぐ
- メディアにエッセイを投稿して原稿料や謝礼で稼ぐ
- エッセイ集を出版して印税収入を稼ぐ
- エッセイブログで広告収入を稼ぐ
いずれも有名人と同様にエッセイだけで生活していくのは困難ですので、主に副業として収入を増やすための手段です。それぞれの稼ぎ方について、詳しく解説していきます。
公募エッセイのコンテストに応募して賞金を稼ぐ
必ず稼げるというわけではありませんが、公募のコンテストは無名の一般人がエッセイで収入を得る手段として以前から利用されてきました。全国各地の自治体では、地域のPRや町おこしの目的でさまざまなテーマのエッセイを広く募集しています。入選しても表彰されるだけで金銭的な見返りがない賞も少なくありませんが、賞金や賞品がかかったエッセイのコンテストも少なくありません。
同じような公募エッセイのコンテストは、一部の民間企業や団体の主催でも募集されています。毎年決まった時期に作品が募集される公募もあれば、1回限りや不定期で募集が行われる公募もあるという具合です。
1つの公募で複数の賞を選ぶのが一般的で、最優秀賞から佳作に至るまで10人以上が表彰される公募も少なくありません。賞金の額は優秀賞・佳作(入選)と賞のランクが下がるにつれて少額となり、最上位の賞が最も高額です。
原稿用紙換算で数百枚に及ぶ長編小説の新人賞では江戸川乱歩賞のように、1,000万円以上という高額の賞金がかかる公募も存在します。長くても数十枚程度のエッセイでそこまで高額の公募はありませんが、産経新聞で毎年募集している約束(プロミス)エッセー大賞は最高賞金が100万円(相当の商品券)です。文字数の上限は400字詰め原稿用紙換算でわずか4枚ですので、1枚あたりで稼げる金額は江戸川乱歩賞(350枚から500枚の長編ミステリー小説が対象)に匹敵する計算となります。
もちろんそれだけ高額の賞金がかかったエッセイのコンテストは応募数も非常に多く、約束(プロミス)エッセー大賞の応募総数は毎年5,000点以上です。その中から大賞に選ばれるのは大変な狭き門で、実力だけでなく運も必要になってきます。
賞金がかかったエッセイの公募は他にも数多くありますので、地道に応募を続けていれば良い結果も出てくるはずです。副業の手段としては確実性に欠けますが、その点ではネットビジネスや物販系の副業も変わりありません。公募で入選するコツさえ覚えれば、エッセイの応募活動で収入を増やせるようになります。最新の募集状況を公募ガイドONLINEあたりでチェックしてみるといいでしょう。
公募ガイドには電子書籍版を含む書籍版もあります。筆者もエッセイのコンテストに応募していた頃は、公募ガイド誌を定期購読して募集状況を毎月チェックしていました。現在は年4回の季刊となっていますが、Web上で見つからない公募情報が掲載される可能性もあるので油断できません。
メディアにエッセイを投稿して原稿料や賞金で稼ぐ
雑誌や新聞などのメディアにエッセイを投稿し、対価として原稿料をもらうという稼ぎ方も考えられます。新聞や雑誌には掲載枠に限りがあることから、エッセイを投稿しても簡単には掲載してもらえません。各界の有識者や著名人でもない限り、大手の新聞や雑誌にエッセイを掲載してもらうのは難しいと言えます。
地方新聞や地域のタウン誌なら一般の個人からも投稿を受け付けているところが多く、エッセイの掲載も可能です。投稿が採用されても報酬は出ないのが普通ですが、少額の謝礼がもらえる場合もあります。
新聞や雑誌のような既存の紙メディアだけでなく、近年はインターネット上のWebメディアでも記事の投稿が盛んです。ノウハウ系のお役立ち情報やニュース解説記事が中心ですが、体験談や感想などを自由に綴ったエッセイを募集しているサイトも少なくありません。このへんは前述の公募エッセイと重複する面もあって、最近はコンテストへの応募が特設サイトからの入力フォームで送信できる賞が増えている状況です。
PHP研究所が発行している月刊PHPのように、誌面掲載用の原稿をWebで募集している例もあります。通常の投稿は採用された場合に数千円分の図書カードが謝礼としてもらえるだけですが、賞金5万円がかかるPHP賞も年に2回ほど募集されてきました。投稿の採用で賞金や謝礼がもらえるサイトは、この他にも探せば見つかる可能性があります。
自治体や民間企業・各種団体の募集する公募エッセイでも、Web応募が可能な賞は同じように投稿の感覚で気軽に応募できるはずです。「郵送に限る」としている公募と比べ、Web投稿なら原稿のプリントアウトや切手代も必要ありません。わずかな通信費を除けば実質無料で応募できますので、「下手な鉄砲」方式の応募も可能です。
クラウドワークスやランサーズのようなクラウドソーシングのサイトでも、個人の体験談は数多く募集されています。1文字あたりいくらという形で報酬が示される例もありますが、文字単価が低すぎる案件には注意が必要です。
文字単価が示されていない案件でも、報酬額を最低文字数で割れば単価を計算できます。効率的に稼ぎたいという人は、できるだけ文字単価0.5円以上の案件を選ぶようにするといいでしょう。
エッセイ集を出版して印税収入を稼ぐ
以上で紹介した2つの方法に比べると稼ぐ難易度は高めですが、書きためたエッセイを集めて1冊の本として出版するという稼ぎ方も考えられます。出版したエッセイ集が売れれば、売上の5%から10%程度が印税収入になる仕組みです。
印税というのは著作権使用料のことで、本の価格に対する割合は著者によって異なります。ベストセラーを連発しているような人気作家の中には印税率が10%を超える人もいますが、デビューしたての新人は5%程度で、平均すると10%程度が相場です。無名の一般人が書いたエッセイが編集者の目に留まって出版されることに決まった場合は、印税率も新人作家並みの5%に抑えられる可能性があります。
それでも大手出版社からエッセイ集を出版できればまとまった収入につながりますが、よほどの話題性がない限りは無名の人が書いたエッセイを出版してもらえません。出版費用を自分で負担すれば自費出版も可能とは言え、商業出版ではないため印税は支払われないのが一般的です。
運良く売れて重版になれば印税が発生する可能性もありますが、出版費用の元を取るにはかなりの部数を売る必要があります。出版費用を著者と出版社側で折半する協力出版も含め、無名の一般人がエッセイ集を出して収入を得るのは難しいのが現状です。自費出版や協力出版はあくまでも人生の記念に本を出版したい人向けのサービスで、普通は副業の手段にはならないものと認識しておく必要があります。
普通に生きていては得られない珍しい体験の持ち主であれば、エッセイ集の商業出版が実現して印税収入が得られる可能性もあります。そうした経験をブログやSNSなどで情報発信し、大きな反響を呼んだことで出版が実現したケースも少なくありません。
すでに他の分野で高い知名度を持つ有名人なら、日記のような内容のエッセイ集でも売れる可能性があります。そうでない無名の一般人はよほど特殊な体験に基づいたエッセイのネタを持っていない限り、商業出版の対象にはならないというわけです。
誰もが経験するようなありふれた出来事であっても、独特の感性で面白いエッセイに仕立て上げる文章力があればその限りではありません。体験か文章力か、どちらかにお金を出すだけの価値があると認められれば、一般人でもエッセイ集を出版して印税収入を稼ぐ道が開けてきます。
Kindleなら個人でもエッセイ集の出版が可能
以上は伝統的な出版業界を通してエッセイ集を出版する場合の話で、ここ数年驚異的な勢いで急成長が続く電子書籍はまた事情が異なります。電子書籍は専用端末以外でもスマホやタブレットの画面で読めるだけに、人々の読書行動を大きく変えました。
紙の書籍は発行部数が年々減っているのと比べ、電子書籍は逆に増えている状況です。電子コミックが発行部数の大半を占めていますが、小説やビジネス書などの電子書籍も徐々に浸透しつつあります。有名人や一般人が書いたエッセイ集も、電子書籍で人気を集めているジャンルの1つです。
電子書籍にはKindleや楽天Kobo・BookWalkerなどさまざまなプラットフォームが存在しますが、Amazonの運営するKindleが圧倒的なシェアを占めています。Kindleで注目すべき点は、誰でも無料で電子書籍が出版できるサービスの存在です。Kindleダイレクトパブリッシング(KDP)と呼ばれるセルフ出版の仕組みを利用すれば、無名の一般人でもエッセイ集を実質無料で出版できるようになります。
印税率はKindle独占出版を許可した場合は70%で、他社の電子書籍サービスも併用して販売する場合でも35%という高い水準です。紙の書籍として出版する場合は本の体裁を整えるため、原稿用紙換算で少なくとも200枚から300枚程度の分量が必要でした。電子書籍の場合はそういう制約もなく、もっと少ない分量で出版している人の例はいくらでもあります。
Kindleで有料販売する場合の最低価格は99円ですが、ブログのように無料で出版することも可能です。まずは無料のお試し版としてエッセイ集を出版してみて多くの人に読んでもらい、評判を得たところで有料販売の続編を出すという手もあります。
月額980円で読み放題となるKindle Unlimitedの対象書籍に設定すれば、読まれたページごとに収益の分配を受けることも可能です。読み放題サービスで大きく稼ぐのは難しいですが、書きためたエッセイ集を数多く登録しておけばお小遣い稼ぎになります。
知名度が低い一般人が書いたエッセイ集の場合、有料販売ではわずか100円程度でもなかなか購入してもらえないのが普通です。何冊読んでも料金が変わらない読み放題サービスなら、タイトルや表紙に釣られて気軽に読んでもらえる可能性も出てきます。実質無料で出版できる電子書籍の選択肢が加わったことで、エッセイの出版も副業として現実味を帯びてきている状況です。
エッセイブログで広告収入を稼ぐ
エッセイを書いて稼ぐ副業の手段として最後に紹介するのは、芸能人の間でも副収入を得る手段として利用されてきたブログを利用する方法です。TwitterやインスタグラムなどのSNSが普及したことで注目度は薄れつつありますが、ブログは文字数の制限がないだけにまだまだ捨てたものではありません。
企業の情報発信手段に利用されているブログはノウハウ集が中心で、エッセイと呼ぶには抵抗があります。個人ブログの中にも明らかに収益目的と見られる例は少なくありませんが、雑記ブログの多くは体験や感想などを自由に書き綴った文章です。エッセイの定義にも当てはまりますので、副業の手段とする場合の有力な選択肢の1つになり得ます。
ただしエッセイ以外も含めた無数のブログは、書き手が収益を得ている例とそうでない例に大きく分かれているのが現状です。ブログの書き手が収益を得ていない典型的な例としては、アメブロやFC2ブログのような無料ブログに投稿している人のケースが挙げられます。
それらのブログにも広告は掲載されていますが、広告収入は基本的にブログの運営会社のものです。無料ブログの多くは、利用ユーザーの収益となるような広告を自由に掲載できません。
レンタルサーバーを借りて自分で作ったブログであれば、広告も自由に掲載できます。サーバーを借りるのに月額1,000円前後の料金はかかりますが、月額費用を上回るだけの広告収入を稼げば問題になりません。ブログを収益化するには他にもいろいろと方法があるとは言え、広告収入で稼ぐのが最もポピュラーなやり方です。
特定のテーマを深堀りした特化型ブログにエッセイを掲載する場合は、A8.netに代表されるASP広告が向いています。テーマを限定せず自由に書いた記事を投稿する雑記ブログの場合は、訪問ユーザーに合わせて広告が自動的に表示されるクリック報酬型の広告が最適です。雑記ブログでGoogle AdSenseの広告を掲載している例が多いのも、エッセイとクリック報酬型広告の相性が良いという理由によります。
特定の商品やサービスを紹介した記事でなくても、Google AdSenseの広告を掲載していればブログの収益化は十分に可能です。まとまった金額を稼ぐにはGoogle AdSenseの審査を通過した上で、ある程度のPV(ページビュー=ページが表示された回数)を集める必要もあります。誰でもエッセイを書いて簡単に稼げる方法ではありませんが、コンテストへの応募やエッセイ集の出版以外の方法を試してみたい人には有力な選択肢です。
エッセイの書き方
エッセイを書いて収入を得る副業の手段も、以上のようにいろいろなパターンが考えられます。それぞれの方法ごとに求められるエッセイの内容も違ってきますので、すべてに共通する書き方の正解はありません。
公募エッセイのコンテストに応募する場合は選考委員が読者となってくるため、作品を審査する先生方の視点で文章を組み立てる必要があります。どうしても国語的な文章術が求められ、文章の書き方も万人向けの無難な表現になりがちです。
ブログの形でエッセイを発表する場合は、もっとくだけた表現も許さます。文章の構成面でも公募エッセイほど厳密に考える必要はありませんが、あまりにも締まりがない文章では読者の支持が得られません。
両方に共通したエッセイの書き方として、初心者におすすめなのは「起承転結」の基本に従った文章の構成です。以下にその理由と文章組み立てのコツを解説します。
初心者は起承転結に当てはめて書く
「起承転結」はもともと漢詩の技法として用いられてきた構成の手法で、小説や随筆などの散文にも応用されてきました。現在では4コマ漫画でも起承転結の構成が用いられているように、あらゆるストーリー作品に通用する構成法としては基本中の基本です。
起承転結をエッセイのような文章に応用した場合は、以下のような構成となります。
- 起:書き出しで読者の注意を引く
- 承:書き出し部分から続く描写や状況説明で読者の興味を持続させる
- 転:大きな出来事や場面転換で読者を揺さぶる
- 結:余韻を残すような読後感につながる場面の描写で締めくくる
起承転結の解釈は書き手によって異なりますが、筆者の場合は以上のような構成に従ってエッセイを書いていました。必ずしも起承転結の構成を守る必要はなく、慣れてきたらあえて基本を外す構成で意表を突いてみるという手もあります。「転」の部分をいきなり冒頭に持ってきたり、起転承結の構成に変えてみたりするような変形パターンも効果的です。
ただし初心者がこれをやると、文章が支離滅裂になるリスクもあります。エッセイの基本をマスターした上で、変形パターンの冒険にチャレンジすることをおすすめします。
ブログを利用してエッセイを投稿する場合は、「導入文→本文→まとめ」という3段階の構成で書くのが一般的です。当ブログはエッセイではなくノウハウ系の情報発信と位置づけていることから、「転」なしの「起承結」構成を基本としています。
分量としては本文に相当する真ん中の部分が圧倒的に多くなるため、エッセイを書く場合には「転」の部分がないと今ひとつ盛り上がりません。本文の終盤に用意した「転」のクライマックスから逆算して、「起」と「承」の部分を組み立てるようにすると構成しやすくなります。
「結」はあくまでも文章を締めくくるためのパーツと考え、短く切り上げるようにするのがコツです。テーマを全部言い切らず読者の想像に委ねる部分を残しておけば、エッセイにも余韻が出て味わい深くなります。
公募エッセイで稼ぐコツ
ここ数年はブログ運営などに力を入れるようになったので遠ざかっていますが、筆者はかつてエッセイのコンテストに応募しまくっていた時期がありました。当時はまだ「副業」という意識はなく、一攫千金を狙った賞金稼ぎの目的で応募していたように記憶しています。
下手な鉄砲方式だけに落選作も数多く出しましたが、めげずに続けているうちには何件かに1件は入選するようになりました。入選と落選の両方を経験することによって、結果を出すためのコツがわかってきます。
高額賞金のかかった大賞や最優秀賞は1つの公募で1人しか選ばれないのが普通で、そう簡単には受賞できません。優秀賞や佳作のような下位の賞は入選枠も多く用意されていますので、コツコツと応募を続けていれば引っかかるケースも出てきます。
傾向と対策の重要性
毎年決まった時期に募集されるエッセイのコンテストで入選するには、過去の受賞作を読んで選考の傾向を把握する作業が欠かせません。どれだけ素晴らしい文章を書いても、賞の趣旨と合わない作品は没にされてしまいます。小学生や中学生・高校生を対象とした作文のコンクールでも同じことが言えますが、選考委員の先生方に受けるような作品を書かないと選んでもらえません。
毎年開催されているエッセイのコンテストでも、選考委員を務めているのは毎回似たような顔ぶれです。受賞傾向も自然と形成されてきますので、過去の受賞作を読んで研究するのとしないのでは結果がだいぶ違ってきます。過去の受賞作をインターネットで公開している公募も少なくありませんので、応募作品を構想する前に一通り目を通しておくことをおすすめします。
受賞作を一般に公開していない公募や単発で実施される公募(新設された公募も含め)の場合は、募集要項をよく読んで受賞傾向を推測するしかありません。過去の受賞作のタイトルだけでも判明している場合は、タイトルから題材を読み取ることで傾向と対策を立てることも可能です。
いずれにしても公募されているエッセイのコンテストは、読者の対象が選考委員の先生方に限定されてしまいます。入選作品をまとめた作品集が出版されるケースもあるとは言え、受賞作は賞を主催する自治体や団体・企業のPR目的に使用されるのが一般的です。PRに一役買うような意識を持って作品を書けば、受賞作にも選ばれやすくなってきます。
本来の意味のエッセイはもっと自由に書いても許される文章のはずですが、コンテストで募集されているエッセイは自由度がそれほど高くありません。誤解を恐れずに言えば、エッセイと言うより「賞の趣旨に合うように書いた作文」です。筆者もその点に気づいてからは入選確率が上がり、コンスタントに賞金を稼げるようになりました。
エッセイの公募で入選しやすいネタ(題材)
以上のような選考の傾向を掴んだからと言って、過去の受賞作と同じような作品を書いて送るのはNGです。公募エッセイも小説の新人賞などと同じように、選考に当たっては作品のオリジナリティが重視されています。
自治体が主催する公募には無難な受賞作を選ぶ傾向も見られますが、過去の受賞作とまったく同じ題材で書かれた作品が再び選ばれる可能性は高くありません。選考委員の間でもバラエティに富んだ受賞作を出そうという暗黙の了解があるらしく、賞の趣旨に沿う範囲内で毎回違った趣向の作品が選ばれています。公募エッセイで受賞しやすい題材というものが存在するのも事実ですが、過去の受賞作と丸かぶりするネタは避けるのが無難です。
公募されているエッセイのコンテストでは「食べ物に関する思い出」「旅行に関するエッセイ」「医療に関する体験記」など、何らかのテーマが設けられています。そういう場合にグルメや有名観光地・健康法に関するうんちくを傾けたようなエッセイを書いても、読み手の心に響くものがなければ受賞作に選ばれません。
家族や友人など親しい人物を作中に登場させ、テーマと絡めながら心のふれあいを描くようなエッセイに仕立て上げるのが公募で選ばれるコツです。今は亡くなった親や病気と闘っているいる友人など、読み手の心の琴線に触れるような人物を登場させれば味わい深いエッセイになります。
エッセイコンテストにはビギナーズラックもある!
エッセイストと言えば、「文章のうまい熟練の書き手」というイメージもあります。公募されているエッセイコンテンストにも、入選の常連となっている人たちが存在するのも確かです。
しかし公募エッセイは、必ずしも名文の作品が受賞するとは限りません。むしろ文章に不完全な点がありながら、選んだ題材の良さで受賞したような例も目立ちます。
コンテストの主催者からしても、同じ人ばかり何度も選ぶよりは、バラエティに富んだ選考結果にしたいというのが本音です。エッセイコンテストで選ばられるのに一番大切な要素は、作品の題材だと言っても過言ではありません。
筆者にも覚えがありますが、応募の常連になってくると、似たような題材を取り上げるしかなくなってきます。常連ばかりだと作品の新鮮味が薄れてしまうところへ新たな書き手が登場すると、選考委員の先生方もフレッシュに感じてくれるはずです。
ギャンブルや釣りでよくあるビギナーズラックにも、エッセイコンテストで起きる場合にはそれなりの理由があります。高額の賞金がかかったエッセイコンテストでは、「初めての応募で受賞」というような現象も珍しくありません。
初心者にも、ベテランに勝てるチャンスは十分にあります。他にない珍しい経験を持つ人は、エッセイの公募にチャレンジしてみるといいでしょう。
落選作を書き直して受賞した例
筆者は過去に応募した落選作品を書き直して再応募し、原稿用紙換算3枚のエッセイで賞金数十万の最優秀賞を受賞した幸運な例もありました。同じネタを取り上げた場合でも書き方を工夫することで、作品の印象が大きく変わるという典型的な例と言えます。そのエッセイのコンテストも現在は募集されていませんが、応募総数が数千点にも達するだけに受賞はかなりの狭き門です。
応募したのは音楽に関する少年時代の思い出について書いたエッセイでしたが、落選作では与えられたお題(音楽)にこだわりすぎた面もありました。落選作を書き直す際には当時の貧しい生活ぶりを前面に押し出し、父親が出稼ぎに行っていた間の不安な心情を盛り込んだ結果です。
音楽をテーマにしたエッセイの募集だからと言って、必ずしも音楽そのものの話が求められているわけではありません。むしろ少年時代の貧乏エピソードを中心に据えて書いた方が、受賞作に選ばれる確率が高くなるという事実を知りました。
この手の公募エッセイでは貧乏や生活苦の体験談に限らず、肉親の死や難病・障害を取り上げた作品が受賞しやすい傾向があります。結婚・出産で締めくくるハッピーエンドの話や子育ての苦労話なども、選考委員の先生方に好まれやすい題材です。
親しい人の死や病気のようにネガティブな話でも、前向きな方向に持っていくように書けば読後感が良くなります。最初から最後までポジティブな話で通すよりは、読み手の感情をマイナスからプラスに変化させるように書いた方がエッセイの選考でも有利です。
特に日本人は苦難を乗り越えてささやかな幸せを手にしたような話を好むだけに、公募エッセイで入選の常連となっている人はそのへんの書き方を心得ています。まだ生きている親や兄弟を亡くなったことにして、フィクションの要素を盛り込んだエッセイを書いて応募している人も存在するほどです。そういうやり方で賞金稼ぎをするのは決して褒められませんが、正直に書いてばかりいてはなかなか結果を出せないのが公募エッセイの難しいところでもあります。
この記事はエッセイを書いて収入を得る方法について、精神論ではない具体策を紹介するのが最大の目的です。現にエッセイの公募で事実を脚色した作品の受賞例がある以上(作者がブログで報告している例が複数あります)、こうした現状にも触れないわけにはいきませんでした。「公募エッセイの受賞作はすべて、事実をありのままに書いた作品です」などと断言しては、それこそ嘘になってしまいます。
とは言えまだ生きている人を亡くなったことにして感動話に仕立て上げるのは、読者や選考委員を欺くのと等しい行為です。そういう本質的な部分にフィクションを加えるのは、筆者としてもNGだと考えています。公募対策で脚色を加えるとしても、読者心理的に許される範囲にとどめておくのが無難です。
エッセイで稼ぐ副業まとめ
今回の記事では主にエッセイのコンテストで賞金を稼ぐ方法を紹介しましたが、エッセイで収入を得る方法は公募に限りません。Webメディアに体験談を投稿して謝礼や報酬を得る方法もあれば、エッセイ集を電子書籍として出版して印税収入を稼ぐという手もあります。最も手軽なのはブログにエッセイを掲載する方法ですが、どうやって収益化するのかという点が課題です。
ブログや出版のように、一般の読者を対象としたエッセイには文章の面白さが求められます。副業の手段になり得るエッセイの中でも公募コンテストは特殊な分野で、主催者のPR目的に沿った作品を書かなければなりません。そういう不自由な面も承知の上で賞金獲得を目指したい人は、この記事で解説した情報を参考にしながら応募にチャレンジしてみるといいでしょう。
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