アウトドアインストラクターはキャンプやアウトドアスポーツなど野外活動の魅力を伝え、技術面や安全面での指導を行う仕事です。自然を愛する人にとっては魅力的な仕事ですが、インストラクターの年収は会社員全体の平均より低めの水準と言われています。年収の額を最も重視する人にとっては、必ずしも稼ぎやすい仕事ではないかもしれません。
アウトドアインストラクターの年収が平均以下にとどまっているのはどうしてなのか、求人募集状況や仕事内容から理由を探ってみました。アウトドアインストラクターの種類や関連する資格についても、記事の後半で詳しく解説します。
アウトドアインストラクターの平均年収
アウトドアインストラクターはキャンプや登山・釣り・ダイビングなど、アウトドア関連のさまざまなインストラクターの総称です。産業別に見ると複数の業種を含む仕事のせいか、アウトドアインストラクター全体の平均年収を算出した信頼できるデータは見つかりませんでした。
厚生労働省が公開している賃金構造基本統計調査に基づいて、独自に計算した年収データを公開しているサイトは存在します。そうしたサイトの間でもアウトドアインストラクターの年収は、400万円以上という例から350万円程度まで金額に開きが見られる状況です。
出典を明記していないサイトでは、200万円から250万円程度と推定している例もあります。そうした複数の情報を総合すると、アウトドアインストラクターの平均年収は350万円前後と見るのが妥当な線です。
国税庁の民間給与実態統計調査によると、民間企業全体の平均給与は令和2年の時点で433万円でした。アウトドアインストラクターの平均年収が350万円だとすると、会社員全体の平均よりは低めの水準と言えそうです。
アウトドアインストラクターの年収が平均以下の理由
アウトドアインストラクター全体の平均年収が低めの水準にとどまっているとすれば、背景に何らかの事情があるはずです。野外が中心となる仕事の性質を考えると、平均年収の額を抑えている要素として以下のような理由が考えられます。
- 季節や天候などに仕事が左右されるため、収入が不安定
- 契約社員やアルバイト・パートなど非正規雇用で働いている人が多い
- 給与水準の高い都市部で求人が少なく、地方で働いている人が多い
- ボランティア的な働き方をしている人も少なくない
それぞれ詳しく解説します。
季節や天候の要因で収入が不安定
スキーやスノーボードなどウィンタースポーツのインストラクターは冬が中心の仕事ですが、それ以外のアウトドアインストラクターは夏場が繁忙期となります。キャンプやマリンスポーツ・スカイスポーツなどのインストラクターになると、冬場の仕事はどうしても途絶えがちです。スキーやスノーボードのインストラクターは逆に、夏場は仕事がなくなってしまいます。
季節によって仕事の有無が大きく左右されるだけでなく、天候の影響も無視できません。悪天候の日はイベントや教室そのものが中止になる例も多いだけに、アウトドア関連の仕事は収入がどうしても不安定になりがちです。以上のような点がアウトドアインストラクターの平均年収にもマイナスの影響を及ぼしているものと推定されます。
非正規雇用の割合が多い
アウトドアインストラクターの仕事は普通の会社員と違って、毎日決まった仕事があるわけではありません。アウトドアスポーツや自然体験を教わろうとする人がいて、初めて成り立つ仕事です。
インストラクターの仕事がない間は他の仕事をするような働き方も考えられますが、仕事の依頼があった日時にのみ出勤するという人も少なくありません。どうしても正社員の割合が少なくなり、契約社員やアルバイト・パートといった非正規雇用が多くなります。アウトドアインストラクターを雇用する企業の側でも、非正規で雇う従業員の方が人件費を節約できるからです。
非正規雇用の割合が多い業種ほど、年収の平均値が低い傾向も見られます。飲食業や宿泊業の他、小売業・サービス業といった業種はその典型的な例です。そうした点ではアウトドアインストラクターも例外ではありません。
正社員として雇用された場合は、アウトドアインストラクターの年収も会社員全体の平均に近づくと期待されます。普段は店舗での商品販売やデスクワークなど他の業務に従事し、必要に応じてアウトドアインストラクターの仕事を行うような働き方です。
地方の求人が中心
アウトドアインストラクターの平均年収が低めとなっている理由の1つとして、給与水準が高い都市部の求人が多くないという点も挙げられます。大手企業の本社は東京都心などの都市部に集中しているだけに、他の地域より平均年収も高いのが特徴です。地方に行くに従って中小企業の割合が増えるため、給与水準が全般に低くなるのは避けられません。
アウトドアインストラクターは仕事柄、都市部よりも自然豊かな地域で求人が多い職種です。平均給与も地方の水準に合わせている例が多く、正社員であっても全国の平均より低めの水準と推定されます。
給与水準の高い大手企業の社員を含めた会社員全体の平均年収と比べ、アウトドアインストラクターの平均が低めになるのは仕方がありません。その代わり地方は都市部より物価水準が低く、自然豊かな環境にも魅力があります。
ボランティア的な働き方をしている人も
アウトドアインストラクターとして活動している人の中には、必ずしも金銭的な見返りを期待せずに役割を引き受けているケースも見受けられます。後述するアウトドアインストラクター関連の民間資格も、ボランティア目的で取得している人が少なくない状況です。環境保護の啓発目的で開催される自然観察会や林間学校など、学校行事で講師を依頼される人もいます。
アウトドアインストラクター全体の年収が平均より低めの水準にとどまっているのは、こうしたボランティアの人たちが一定割合で含まれているのも一因です。有償のボランティアとして依頼を引き受けている人でも、謝礼の金額は会社員の給料より安くなります。
一般的に言って、ボランティアに依頼する場合でも常に無償とは限りません。林間学校の指導員の例では、2万円前後の謝礼を受け取れるケースもあります。それでも指導員の仕事にはボランティアの精神が求められるだけに、金銭的な条件は二の次と考えられがちです。
アウトドアインストラクターの求人募集状況
ハローワークや求人サイトでアウトドアインストラクターの求人を検索してみると、予想通りアルバイトやパートといった非正規雇用の求人が多く見つかりました。スポーツ用品店やアウトドア施設などで正社員を募集している例もありますが、接客・販売や施設運営など仕事内容はさまざまです。そうした中の一部として、インストラクターの仕事が含まれてきます。
契約社員やアルバイトのような非正規雇用になると、野外での指導やガイドといったインストラクターならではの仕事がメインです。イベントや自然体験教室が開催される日だけ仕事をするように、柔軟な働き方も可能になってきます。アウトドアショップなどで募集している求人の中には勤務地が都市部となっている例も見られますが、ほとんどは地方の里山や都市近郊のアウトドア施設などを勤務地とする求人です。
アウトドアインストラクターを副業にするには?
アルバイトやパートの雇用形態で募集されているアウトドアインストラクターの中には、「週1日からOK」という求人も少なくありません。土日祝日のみの求人も多く募集されているだけに、副業や兼業の手段として利用している会社員もいるものと推定されます。平日は会社の仕事を行い、土日にアウトドアインストラクターとして働くというスタイルです。
土日も働くとなれば過重労働も懸念されますが、アウトドアインストラクターの仕事は気分転換にもなります。平日にデスクワークの仕事をしている会社員であれば、自然と触れ合える副業は格好の息抜きになるはずです。
利用者の安全にも配慮しなければならないだけに緊張感も求められますが、無事に役目を果たしたときには大きな充実感が得られます。単に収入を増やすだけではなく、人生をより豊かなものにする目的で副業を始めたい人は、アウトドアインストラクターの求人を探してみるといいでしょう。
住んでいる地域で求人が見つからない場合でも、個人でアウトドアインストラクターの仕事を獲得することは可能です。教室集客サイトのストアカを利用すれば、誰でもアウトドア教室を主催して生徒を募集できるようになります。
アウトドアインストラクターの主な仕事内容
一口にアウトドアインストラクターと言っても、指導を行う対象によって求められる役割はさまざまです。スキューバダイビングやラフティング・パラグライダーといったアウトドアスポーツのインストラクターは、技術面での指導に加えて安全面の指導も欠かせません。キャンプや登山のインストラクターも同様ですが、自然の魅力を伝えるのも仕事内容の1つです。
自然観察会や環境保護を目的とした研修になると、現地ガイドや解説者としての役割も重要になってきます。利用者の安全を確保して不測の事態に対応し、ケガ・病気の応急処置や天候急変時の避難誘導なども大切な仕事です。キャンプ場などのアウトドア施設に雇用される場合は、施設の保守点検や清掃が仕事内容に含まれる場合もあります。
アウトドアインストラクターの種類
アウトドアインストラクターにもいろいろな種類があって、種類ごとに民間資格も存在します。仕事内容には共通点も少なくありませんが、技術的な指導はそれぞれ違ってきます。
アウトドアインストラクターの主な種類は以下の通りです。
山のレジャー関連のインストラクター
- 登山
- クライミング
- キャンプ
マリンスポーツ関連のインストラクター
- サーフィン
- ボート&ヨット
- 水上バイク
- スキューバダイビング
- シュノーケリング
リバースポーツ関連のインストラクター
- カヌー
- カヤック
- ラフティング
- キャニオニングガイド
スカイスポーツ関連のインストラクター
- スカイダイビング
- パラグライダー
- 熱気球
- バンジージャンプ
ウインタースポーツ関連のインストラクター
- スキー
- スノーボード
- スノーモービル
乗り物関連のインストラクター
- サイクリング
- モーターサイクル
- 乗馬
自然観察関連のインストラクター
- 野鳥ガイド(バードウォッチング)
- 自然観察インストラクター
- 森林インストラクター
動植物関連のインストラクター
- 釣り
- フライキャスティング
- 山菜採り士
- 菌類インストラクター(キノコ採り)
アウトドアインストラクターの仕事に資格は必要?
以上のようなインストラクターの種類ごとに民間資格が存在するわけですが、いずれも名称独占や業務独占の国家資格とは性質が異なります。資格を持っていないからと言って、インストラクターの仕事ができないというわけではありません。
専門性の高い分野でインストラクターを募集している場合、該当する分野の民間資格を持っていることが採用の条件となっている求人も見かけます。一般のアウトドア施設やスポーツ用品店でインストラクターを募集しているケースでは、資格不要・未経験者可の求人も少なくありません。
アウトドア関連の民間資格を持っていれば、インストラクターとして採用される際に有利となる場面は考えられます。アウトドア関連で人気の資格は以下の通りです。
- キャンプインストラクター・キャンプディレクター(日本キャンプ協会)
- 自然ガイド・登山ガイド・山岳ガイド(日本山岳ガイド協会)
- 森林インストラクター(全国森林レクリエーション協会)
- 自然観察指導員(日本自然保護協会NACS-J)
ボランティアのアウトドアインストラクターとして活動する場合でも、こうした資格があれば依頼を受けやすいものです。資格を取得するにはスポーツ関係の大学や専門学校で学ぶ以外にも、個人で認定団体に申し込む方法があります。
決められた講習を受けることで認定される資格や、試験の合格が必要なケースなどさまざまです。いずれも2万円前後の費用がかかりますので、本当に資格が必要かどうか慎重に判断する必要があります。
まとめ
アウトドアインストラクターの平均年収から始めて、仕事内容や関連する資格までを見てきました。350万円前後と推定される年収が平均より低めの水準となっているのは、仕事の価値が低いからではありません。以下のような理由があるために、アウトドアインストラクターの平均年収は会社員全体より低めとなっているのです。
- 季節や天候などの要因で収入が不安定
- 非正規雇用の割合が比較的多い
- 都市部より地方の求人が多い
- 副業やボランティア的な働き方をしている人が含まれる
年収水準の高い仕事とは言えませんが、アウトドアインストラクターには自然と触れ合える点で他にない魅力があります。山や川・海などの自然をこよなく愛し、収入の金額よりも仕事のやりがいを重視したい人におすすめの仕事です。