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図書館の本がスマホで閲覧可能?著作権法改正を出版社が反対する理由

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文化庁で検討されている著作権法の改正が実現すれば、図書館の本がパソコンやスマホで読めるようになる可能性があります。図書館を利用していた人にとっては便利なサービスになりそうな動きですが、出版社サイドからは「民業圧迫だ」などと反対の声も少なくありません。著作権法の改正には出版業界や著作権団体の理解が不可欠なだけに、実現には険しい道のりが予想されます。

電子書籍の利用が拡大して読書環境が大きく変化する中、著作権法改正をめぐる議論は図書館のあり方について考え直す絶好の機会です。図書館の本をスマホで読めるようにするのは何が問題なのか、著作権保護の観点から実現に向けての課題について考察してみました。

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図書館の本がパソコンやスマホで閲覧可能に

論文を書いたり何か調べものをしたりする際には、参考文献を買い揃えなくても図書館で閲覧したり蔵書を借りたりすることで目的を果たすことができます。読書の手段としても図書館は多くの人に利用されてきましたが、電子化された蔵書を利用者個人のパソコンやスマホで閲覧することはできませんでした。絶版本など入手困難な本の多くはは国立国会図書館でデジタル化されており、電子データとして送信された各地の図書館でも専用端末を通じて閲覧が可能です。

現在流通している本でも各地の図書館で実施している複写サービスを利用すれば、著作全体の半分を限度にコピーしてもらえます。現状では著作権法の壁があるため紙媒体での複写物提供に限定されていますが、著作権法が改正されればパソコンやスマホに電子データとして直接送信してもらうことが可能になってきます。これまで各地の図書館に送信されていた絶版本の電子データも、利用を希望する人の端末に直接送信できるようになるという仕組みです。

現在流通している本を丸々一冊読みたいという場合でもない限り、著作権法改正が実現されれば図書館の利用の仕方が大きく変わることになります。入手困難な本を読むためにわざわざ図書館まで足を運ぶ必要がなくなり、新刊本でも「図書館でちょっと中身を確認してみたい」という程度ならスマホでも目的果たせるようになるのです。まさに紙媒体から電子媒体へと書籍が移行しつつある時代の変化を象徴するような動きですが、実現するには著作権に関わるさまざまな問題をクリアする必要があります。

料金はどう変わる?

図書館の本をスマホでも読めるようになれば、わざわざお金を出して本を買う必要がなくなるように思いがちです。文化庁で検討されている案はすべての本を1冊分丸ごと配信するのではなく、現時点でも実施されている図書館の複写サービスを電子データの送信に拡大する形と見られます。

現在の複写サービスでもコピー1枚あたり数十円程度の料金がかかる上に、郵送で受け取る場合は数百円の送料も必要です。単行本全体の半分を複写するよりも、その本を普通に新刊で購入した方が安く上がります。

現状の複写サービスが電子化されることで料金がどう変わるのかは明らかとなっていませんが、完全に無料で利用できるとは考えにくい状況です。従来の複写や郵送にかかる料金よりは安く済む可能性もありますが、電子データとして受け取る場合でも一定の料金を払うことになるものと見られます。

著作権法の改正が検討されている理由

文化庁でこうした検討が行われるようになったのは、やはり新型コロナウイルスの影響で図書館の利用に支障が出てきているのが最大の理由です。緊急事態宣言の前後には感染拡大を防止するため、全国各地の図書館で臨時休館が相次ぎました。

営業を再開して以降も仕切板の設置や3密環境の回避など、館内でクラスターが発生しないよう感染防止の徹底が求められている状況です。来館者にとっても図書館が以前より利用しにくくなっている点は否めず、今の状況が長引けば利用の低迷も予想されます。

国民の「知る権利」を守る役割を担う図書館が機能しなくなれば、経済格差を背景とした知識の格差がさらに拡大されかねません。そうした中で図書館の持つ役割を時代に合わせてアップデートさせようと、著作権法の改正が検討されるようになったのです。

インターネットを通じて図書館の蔵書にアクセスしたいという要望は、大学関係者など研究者の間でも高まっています。文化庁ではそうした声を受けて検討を重ねてきた結果、著作権法の改正案を来年の通常国会に提出する方針です。

著作権法改正に出版社が反対している理由

図書館の利用者から見れば著作権の縛りを緩和する動きも歓迎すべき動きですが、出版業界では反対の声も少なくありません。言うまでもなく出版社は小説や漫画・ノンフィクション・学術書・実用書・雑誌など、著作権物を書籍化し販売することで収益を得ている企業です。それらの本が読みたいという人は書店などを通じて商品を購入する必要がありますが、販売価格の中には著作権者に支払われる著作権料も含まれます。

全国各地の図書館は税金を財源にそれらの本をまとめて購入し、利用客が無料で読めるように取り計らってくれる存在です。本来であれば著作権料を支払って購入すべき本を無料で読めるのも、国民に認められた「知る権利」を守るために必要な措置だと言えます。

そうした法的根拠があるために出版業界も図書館の存在は認めざるを得ないところですが、現行の著作権法では図書館利用者個人のパソコンやスマホにデジタル化された書籍の電子データを送信することはできません。そこまでやってしまと単なる「知る権利」を満たす行為から逸脱し、著作権の侵害に当たる行為だと判断されるようになってしまうのです。

入手が困難な絶版本ならまだしも、現在も書店で普通に売られているような本まで送信の対象としてしまえば売上に響きかねません。書店の売上減は最終的に出版社にまで波及し、著作権者でもある本の著者の生活を脅かす事態にまで発展し得ます。出版業界には著作権者の権利を守るという重要な使命もあるだけに、著作権法の改正にはどうしても慎重にならざるを得ないのです。

著作権上の問題点

著作権を有する書籍物は、紙に印刷された状態で提供されるというのが長い間の常識でした。電子書籍が登場したことでその状況に変化が訪れたのは、ここ10年から20年ほどの話です。

図書館法はそれ以前に制定された法律だけに、時代の変化に法整備が追いついていない状況にあります。デジタル化された作品の扱いに関して議論があるという点では著作権法も同様ですが、海賊盤漫画サイトの問題を通じて対策が進められてきました。

小説や音楽・動画なども含め、作品の違法ダウンロードは明らかな犯罪行為です。アップロードした人はもちろん、著作権侵害を認識していながらダウンロードした人も罰則の対象となります。

図書館で電子化された本のデジタルデータをどう扱うのかという点に関しては、そうした線引きがあいまいな状態です。著作権法が改正されて配信が可能になったとしても、海賊盤漫画サイトほど深刻な著作権侵害には当たらないと見られます。

現行の複写サービスを拡大したデジタル版のサービスが始まるとすれば、現在流通している本の内容が1冊丸ごと配信されるというわけではなさそうです。本の内容が気になったので試しに買ってみたという人は減る可能性もありますが、本の一部しか配信されないのであれば、最後まで読み通したいという本来の目的を果たすことはできません。

配信の対象がすべての書籍に拡大された暁には、作家などの著作権者に補償金が支払われることになる見通しです。そうすることで著作権が守られるという名目は成り立ちますが、中抜きされる形となる出版社にとっては収益減につながりかねません。

企画立案や編集作業などで本の出版にも一定のコストがかかっている点を考えると、著作権法の改正は著作権者以上に出版社サイドのダメージが大きくなる可能性があります。そうした業界特有の事情があるために、大手出版社から反対の声が上がっているのです。

まとめ

筆者も図書館はよく利用する身だけに、電子データの配信実現には大いに期待しているところです。図書館でなければ閲覧できない入手困難の絶版本を参照しようという際にも、わざわざ館内まで足を運ぶ必要がなくなります。

コロナ対策の観点から見ても図書館からの電子データ配信は歓迎すべき動きですが、著作権法の改正という高いハードルがあるため実現は容易でありません。経営の圧迫につながりかねないとして出版社が頑強に反対すれば、改正案が暗礁に乗り上げる事態もあり得ます。長年にわたって著作権を守り続けてきた出版業界とどう折り合いをつけていくのか、今後も議論百出が予想される著作権法改正の行方から目が離せません。

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