最低賃金の対象外となる副業とは?適用されるバイトとの違いを解説

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本業の収入だけでは足りずに副業を始める人が増えていますが、限られた時間で効率的に稼ぐには時給換算でどれくらい稼げるかが重要なポイントです。副業の手段として利用されるさまざまな仕事には地域の最低賃金が適用される例がある一方で、対象外となってしまう仕事も少なくありません。対象外だと最低賃金の水準にも達しないほど安い報酬で働かされることになるだけに、選ぼうとする仕事が適用の範囲かどうか知って必要があります。

同じような仕事でありながら最低賃金の適用にこのような違いが生じるのはどうしてなのか、雇用形態の種類ごとに基本情報をまとめてみました。この記事を読めば最低賃金の現状が理解できるようになり、副業の仕事を選ぶ際にも役に立ちます。

最低賃金とは?

厚生労働省の特設HPでは、最低賃金について以下のように定義されています。

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。(出典:最低賃金制度を紹介する厚生労働省の特設サイト

最低賃金には地域別と産業別の2種類があって、よく引き合いに出されるのは都道府県ごとに毎年改定される地域別の数字です。鉄鋼業や自動車製造業・出版業・商品小売業など都道府県ごとに指定された産業には、特定(産業別)最低賃金が定められています。どちらも時給換算でいくらという金額で提示されており、特定(産業別)最低賃金に該当する産業でも地域別最低賃金が上回る場合はこちらが適用される仕組みです。

最低賃金に満たない給料しか支払わなかった場合には、雇用主は労働者に差額を支払う義務を負います。支払わない場合の罰則も定められていますので、時給が最低賃金に満たない場合は労働基準監督署に相談してみるといいでしょう。

最低賃金に地域格差がある理由

最近発表された2020年度の地域別最低賃金を見ると、全国の平均額は902円となっています。東京などの都市圏を中心とした7つの都府県では前年からの引き上げが凍結されましたが、これはコロナ禍で経営が苦しくなった中小企業が増えているというのが理由です。地域別最低賃金も前年までは大幅な引き上げが続いてきただけに、新型コロナウイルスの影響で日本経済の急ブレーキがかかっている状況を反映した数字となりました。

2020年度の都道府県別最低賃金図(出典:時事ドットコムニュース)

7都府県以外でも前年と比べてわずか1円から3円程度という微増にとどまっており、最も低い秋田・島根・鳥取・高知・佐賀・大分・沖縄の各県は792円に過ぎません。最も高い東京都の1,013円に比べると、低い県との格差は221円にも及びます。

このように最低賃金で地域による格差が見られるのは、東京などの都市圏と地方で企業の体力に差があるというのが1つの理由です。地域別の最低賃金にこれだけの格差があると東京や首都圏への一極集中が加速してしまいますが、低い県で同じ水準に上げてしまえば地元の中小企業に大きな負担がかかってしまいます。日本の地域別最低賃金は各都道府県の企業の賃金支払い能力を基準に決められている面があるせいか、人件費を増やす余裕のない中小企業が多い県ほど低い水準にとどまりがちです。

同じ仕事をしていても地域によって最低賃金の200円以上の格差があるため、1,013円の東京と792円の県では副業でも年間10万円以上の収入差が生じる可能性があります。最低賃金の低い県は東京などと比べて物価や家賃が安く生活費が少なく済むとは言え、不公平感が残ってしまう点は否めません。

最低賃金が適用されるアルバイトの仕事

以上のような計算が成り立つのは、あくまでも最低賃金が適用されるような仕事を副業に選んだ場合の話です。副業の手段に利用されている仕事の中には、最低賃金が適用されないような稼ぎ方も少なくありません。

アルバイトやパートとして雇用契約を結ぶ働き方であれば、雇用形態に関わらず労働者と見なされるため最低賃金の対象となります。労働者は労働基準法や労働契約法といった法律で権利が保証されており、最低賃金が適用されることで不当に安い報酬で働かされることがないように保護されているのです。

コンビニバイトや飲食店バイトなど、店に雇われるようなアルバイトの仕事を始める際には雇用契約を結ぶ必要があります。建設会社や警備会社・運送会社・清掃業者などの募集しているアルバイトの求人も、たいていは雇用契約を結ぶ働き方です。

アルバイト求人サイトで雇用形態から求人を絞り込んだ場合、副業に向いた「アルバイト・パート」には社員や契約社員と同様に最低賃金が適用されます。派遣社員の場合は実際に仕事を行う場所が必ずしも決まってはいませんが、派遣会社と雇用契約を結ぶという点では最低賃金の対象です。

なお、一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあるため、次の労働者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例が認められています。

  1. 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
  2. 試の使用期間中の方
  3. 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
  4. 軽易な業務に従事する方
  5. 断続的労働に従事する方

(出典:厚生労働省HP「最低賃金の適用される労働者の範囲」

求人の募集で試用期間中の給料が最低賃金より低く設定されているケースがあるのは、以上のような条件に当てはまるからなのです。待機時間が長く実際の労働時間が少ないような職種の場合は、「断続的労働」に該当すると判断されて最低賃金から減額される可能性があります。

最低賃金の対象外となる副業の種類

雇用契約を結ぶ働き方とは別に、個人事業主として働く仕事やフリーランスとして収入を得るような仕事も副業の手段に含まれます。そのような仕事は特定の企業と雇用契約を結ばずに、業務委託契約を交わして仕事を請け負うのが一般的です。案件単位で仕事を受注する場合もあれば継続的に仕事をもらう場合もありますが、いずれも相手の企業と対等の立場で仕事を引き受けるという点で雇用契約と異なります。

フリーランスのエンジニアやスポーツインストラクター・ヨガスタジオの講師なども副業の手段となり得ますが、雇用契約を結ぶ求人は決して多くありません。それらの仕事は業務委託契約を結んで仕事を請け負うケースが多く、個人事業主やフリーランスの扱いとなれば最低賃金の対象外です。

運転代行や家事代行のような代行の仕事も個人事業主として稼いでいる人が大半で、仕事を多く受注すればするほど収入を増やすことができます。自由な働き方で人気のウーバーイーツ配達員も運営会社との関係は雇用契約ではなく、最低賃金の対象外となる業務委託契約です。

在宅ワークの副業としてすっかり定着した感のあるクラウドソーシングの仕事は、1件ごとにクライアントと業務委託契約を交わして受注する仕組みとなっています。最低賃金に縛られる必要がないせいか単価の安い案件も少なくはなく、時給換算では全国最低水準の792円より低くなってしまう可能性がある点には注意が必要です。

業務委託の仕事が対象外となる理由

同じように副業の手段となる仕事でありながら業務委託の仕事が最低賃金の対象外となっているのは、労働法上における労働者と見なされないのが最大の理由です。業務委託の場合は求められる業務や成果物に対する報酬を受け取ることを条件に、相手の企業と対等な立場で契約を結ぶことになります。

企業と業務委託契約を結ぶ個人事業主は言わばビジネスパートナーなのですから、雇用契約を結んで働くアルバイトやパートのような主従関係がありません。仕事に不満があればいつでも契約の解除が可能な立場にあると見なされていることから、弱い立場として法律で保護された労働者には当たらないと考えられているのです。

とは言えこのような形で仕事を請け負っている人の全員で、働き方の自由が保証されているとは言い難い面があります。業務委託でありながら時給単位で報酬が支払われていたりして、事実上の雇用契約と判断されるような求人の例も珍しくありません。完全出来高制で報酬が支払われる典型的な業務委託の例でも、契約先の企業に対する依存度が高い場合は対等の立場とは言えなくなってきます。

ウーバーイーツ配達員は好きな時間に好きなだけ働けるという点では業務委託のメリットを享受できる仕事ですが、実質的には運営会社側に仕事が支配されているという点で雇用契約に近い働き方です。仕事に慣れれば時給換算で最低賃金より大幅に高い収入を稼ぐことも可能とは言え、慣れないと最低賃金の半分も稼げません。同じような条件に置かれている業務委託の仕事は他の副業手段でも少なくはないだけに、フリーランスにも最低報酬が保証されるような制度の導入が政府で検討されています。

最低賃金とは無縁の副業

副業の手段としてもよく利用されているアフィリエイトやYouTuberは、企業の広告を主な収益源としています。広告主となる企業との間で雇用契約を結ぶわけではなく、たとえ稼げなくても完全な自己責任です。

ココナラタイムチケットメルカリなど個人対個人の取引で収入を得る場合も含め、既成の概念を覆すような副業の手段が数多く考え出されてきました。投資や賃貸収入で稼ぐ方法は厳密に言うと副業には該当しませんが、本業以外で収入を得る手段という点では広い意味での副業に含まれます。

この場合は銀行や証券会社・不動産投資会社などと契約を結ぶのが一般的とは言え、雇用契約ではなく顧客として結ばれる契約です。いずれも最低賃金の概念とは無縁の稼ぎ方で、投資に失敗すれば収入は保証されません。

このように副業の手段も多様化しており、最低賃金で収入が計算できるような稼ぎ方は比較的古いタイプの仕事に限られる状況です。新しいタイプの副業ほど最低賃金などという労働集約的な働き方に縛られず、才覚しだいで不労所得的な収入を稼げる可能性が秘められていると言えます。

最低賃金の基礎知識まとめ

副業と言えばひと昔前までは、本業以外にアルバイトやパートなど雇用契約を結ぶような仕事をする働き方を意味していました。いまだに副業禁止の会社が少なくないのも、複数の会社に雇われるような働き方に難色を示す企業が多い証拠です。

そんな副業のあり方にもここ10年ほどの間で大きな変化が生じ、雇用によらない稼ぎ方で本業以外に収入を得る人が増えてきました。働き方が多様化する中では最低賃金のような古い概念も次第に通用しなくなってきているのが現状で、自己責任の仕事で高収入を稼ぐ人も続出しています。

時代のそうした変化を受けて企業の側でも負担の大きい雇用契約から脱し、業務委託の形で人員を確保しようという動きも見られます。偽装請負のように脱法的な求人も紛れ込んでいるだけに、副業の手段として利用しようという場合には条件面を吟味する姿勢が欠かせません。

安定した副業収入を得ようとするなら、最低賃金が保証された雇用契約によるアルバイトの仕事を選ぶのが無難です。最低賃金はあくまでも最低限に保証された賃金に過ぎませんので、大きく稼ぎたいという人は雇用によらない新しいタイプの副業に挑戦してみるといいでしょう。

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