犬や猫などの動物が好きな人にとって、ペットの繁殖や販売を行うブリーダーは天職とも言える仕事です。ブリーダーの仕事を専業にしている人もいますが、副業で取り組んでいる人も少なくありません。
ただし動物の販売を伴う仕事を始めるには、許可の申請や資格の取得が必要になってくるケースがあります。第一種動物取扱業への登録が必要な動物のブリーダーの場合、費用が4万円程度の民間資格を取得するのがおすすめです。
当ブログでは以前にもペットシッターを開業する方法を解説した記事で、資格が必要かどうかという点について取り上げています。ブリーダーの場合は扱う動物や生き物の種類によって事情が違ってきますので、販売手段と合わせて基本情報をまとめてみました。この記事を読めばブリーダーになる方法が理解され、趣味と実益を兼ねた副業で収入が増やせるようになります。
ブリーダーになる方法
ブリーダーは犬や猫などの動物を繁殖させ、ペットショップなどに販売することで収入を得る仕事です。哺乳類や鳥類だけでなく、爬虫類や魚類・昆虫を扱うブリーダーも存在します。
ブリーダーになるのに国家資格が必須というわけではありませんが、動物や生き物を繁殖させるには専門的な知識が必要です。犬や猫を繁殖させる場合は、しつけやワクチン接種なども仕事内容に含まれてきます。
誰でも資格なしでブリーダーを名乗ることが可能とは言え、そうした専門スキルを持っていないと務まらない仕事です。ほとんどのブリーダーは動物関連の大学や専門学校に通ったり、養成講座を受講したりして、専門知識を身につけています。
ブリーダーが扱う動物や生き物には、第一種動物取扱業への登録が必要な種類とそうでない種類があります。第一種動物取扱業の登録要件が厳格化された関係で、ブリーダーになるための難易度は扱う動物の種類によっても差が出てきます。
第一種動物取扱業への登録が必要な動物
動物の販売や保管などの取り扱いを業として行う事業者は、第一種動物取扱業への登録が義務付けられています。動物の繁殖と販売を業とするブリーダーの場合、第一種動物取扱業の種別では「販売」に該当します。登録要件は都道府県ごとに異なりますが、いずれも対象となる「動物」は以下の3種類です。
- 哺乳類
- 鳥類
- 爬虫類
第一種動物取扱業への登録を申請する際には、事業所ごとに動物取扱責任者を置く必要もあります。個人でブリーダーを開業する場合、動物取扱責任者になるべき人は自分自身です。動物取扱責任者になるには、以下のような資格要件のいずれかを満たしている必要があります。
(動物取扱責任者の選任)
第九条 法第二十二条第一項の動物取扱責任者は、次の要件を満たす職員のうちから選任するものとする。
一 次に掲げる要件のいずれかに該当すること。
イ 獣医師法(昭和二十四年法律第百八十六号)第三条の免許を取得している者であること。
ロ 愛玩動物看護師法(令和元年法律第五十号)第三条の免許を取得している者であること。
ハ 営もうとする第一種動物取扱業の種別ごとに別表下欄に定める種別に係る半年間以上の実務経験(常勤の職員として在職するものに限る。)又は取り扱おうとする動物の種類ごとに実務経験と同等と認められる一年間以上の飼養に従事した経験があり、かつ、営もうとする第一種動物取扱業の種別に係る知識及び技術について一年間以上教育する学校その他の教育機関を卒業していること(学校教育法による専門職大学であって、当該知識及び技術について一年以上教育するものの前期課程を修了していることを含む。)。
ニ 営もうとする第一種動物取扱業の種別ごとに別表下欄に定める種別に係る半年間以上の実務経験(常勤の職員として在職するものに限る。)又は取り扱おうとする動物の種類ごとに実務経験と同等と認められる一年間以上の飼養に従事した経験があり、かつ、公平性及び専門性を持った団体が行う客観的な試験によって、営もうとする第一種動物取扱業の種別に係る知識及び技術を習得していることの証明を得ていること。
法改正によって動物取扱責任者の資格要件が厳しくなり、「半年間以上の実務経験」と「専門教育または資格」の両方が必要になりました。獣医師や愛玩動物看護師の有資格者は資格要件を満たしていますが、そうでない場合は専門学校や養成スクールで専門教育を受けるか、または後述する民間資格を取得するのが現実的な対処方法です。
第一種動物取扱業登録が不要な生き物
「生き物が好きでブリーダーの仕事をしたいけれど、専門教育を受けたり資格を取得したりしている余裕がない…」
そんな人も少なくないと思います。
ブリーダーになるためのハードルが高いのは、哺乳類や鳥類・爬虫類を扱う場合の話です。それ以外の生き物を扱うブリーダーであれば、第一種動物取扱業への登録や動物取扱責任者の資格取得も必要ありません。
金魚やメダカ・熱帯魚・エビなどの魚類に加え、カエルやイモリなどの両生類、カブトムシやクワガタなどの昆虫もペットとして人気の生き物です。最近はメダカの希少種や珍しい種類の昆虫が高値で取引される例が増えているだけに、犬や猫などメジャーな動物以外のペットを扱うブリーダーも副業になり得ます。
ブリーダーは副業でも可能?
個人がブリーダーとして開業する場合、専業で行くのか、それとも会社を辞めずに副業で取り組むのか、選択に迷うかもしれません。犬や猫などの動物は飼育だけでも手間がかかるだけに、会社勤務の傍ら自宅でブリーダーの仕事をするのはなかなか難しいものです。
まったくの未経験で哺乳類や鳥類・爬虫類のブリーダーになろうという場合は、会社の仕事をしながら養成講座を受講したり、資格取得を目指したりすることになります。第一種動物取扱業への登録と動物取扱責任者の取得が実現しても、対象となる動物の世話をどうするのかという点が問題です。日中に会社の仕事があって長時間留守にせざるを得ない人は、ブリーダーの仕事を副業にするのに向いていません。
魚類や両生類・昆虫などを扱うブリーダーであれば、世話をするのにそれほど手間がかからない種類を選ぶことで、副業での対応も可能です。在宅勤務を取り入れている企業の社員や在宅ワークで収入を得ているフリーランスの人なら、犬や猫など動物のブリーダーも副業になり得ます。外へ働きに出ている人でも家族の理解を得た上で留守中の世話を依頼できる場合も、同じように動物のブリーダーを副業にすることが可能です。
ブリーダー関連でおすすめの資格
ブリーダーになるのに資格が必須というわけではありませんが、動物関連の民間資格を取得しておいた方がいい場合もあります。半年以上の実務経験とともに動物関連の資格を取得することで、動物取扱責任者の資格要件を満たせるようになるからです。
東京都の例では20種類以上の民間資格が第一種動物取扱業「販売」の対象となっていますが、以下の資格は比較的安価な費用で取得できます。
- 愛玩動物飼養管理士
- 家庭動物管理士
- 愛犬飼育管理士
中でも公益社団法人日本愛玩動物協会が認定する愛玩動物飼養管理士は、犬だけでなく猫や鳥類・爬虫類を含めた幅広いペットが対象です。愛玩動物飼養管理士には1級と2級の2種類があって、どちらを取得しても動物取扱責任者の資格要件を満たせるようになります。
受講受験料は1級が34,000円、2級が32,000円です。認定登録料は1級が20,000円で2級が8,000円ですので、最低限4万円の費用で愛玩動物飼養管理士2級の資格を取得できます。
家庭動物管理士の3級も受験・受講料3万円に認定登録料1万円をプラスして、合計4万円で取得できる民間資格です。資格の有効期限は2年ですので、継続する場合は1万円の更新料も必要になります。愛犬飼育管理士はもう少し安い費用で取得できますが、犬以外のペットを扱う場合は、更新料が不要の愛玩動物飼養管理士がおすすめです。
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ブリーダーの販売手段
どの動物や生き物を扱うにしても、ブリーダーが収入を得るには販売ルートの確保が欠かせません。繁殖させて増やした個体を販売することで、ブリーダーの仕事が経済的に成り立つようになるからです。
物品を扱う販売ビジネスと違って、ブリーダーは命のある生き物を商品として扱うという難しさもあります。販路は自然と限られてきますが、以下のような販売ルートが代表的なところです。
- ペットショップに卸す
- ペットオークションに参加する
- ブリーダー仲介サイトを利用する
それぞれの概要を解説します。
ペットショップ
ブリーダーが利用している販売先として最もメジャーなのは、さまざまな種類の愛玩動物を扱うペットショップです。ペットショップでは競り市でも犬や猫などの愛玩動物を仕入れていますが、最近はブリーダーから直接仕入れている店が増えています。
GoogleやYahoo!で「ペットショップ ブリーダー募集」のキーワードを入力して検索すれば、ブリーダーを募集しているペットショップが見つかります。条件面などを考慮した上で、提携先の店舗を選んでみるといいでしょう。
ペットオークション
全国のペットショップで犬や猫などのペットが大量に販売されるようになった背景には、ペットオークションと呼ばれる競り市の存在があります。ペットショップや仲買業者などがオークションに参加し、ブリーダーが出品した個体を落札する仕組みです。
プリペットオークションは国内最大級のペットオークションサイトで、コンピューターを利用した競りシステムが導入されています。パソコンやスマホ・タブレットを通じてオークションに参加することも可能ですので、遠方の会場に足を運ぶ必要がありません。
国内で流通している個体のうち、犬に関しては半数以上がペットオークションを経由しているというデータもあります。オークションに参加するには入会金と年会費に加え、5%から8%程度の落札手数料が発生します。
ペットショップに卸す場合や後述する直販と比べ、オークションの落札価格は全般に低めの水準です。何らかの理由があってペットショップに買い取ってもらえなかったりした個体を販売するのに、オークションを利用しているブリーダーも少なくありません。
哺乳類や鳥類・爬虫類以外の生き物であれば、国内最大のネットオークションサイトヤフオクにも出品が可能です。ヤフオクにはメダカや熱帯魚・エビなど魚類の他、カエルやイモリなどの両生類、カブトムシやクワガタなどの昆虫が数多く出品されています。珍しい個体が高値で落札された例も少なくないだけに、梱包・発送方法にさえ注意すればメインの販売手段になり得ます。
ブリーダー仲介サイト
犬や猫などのペットを飼いたい人たちの間で、最近はブリーダーから子犬や子猫を直接購入する例が増えています。インスタグラムなどのSNSを通じて情報発信し、自身のホームページで飼い主に直接販売しているブリーダーの例も珍しくありません。
この場合はホームページ制作やSNS運用・決済手段など、いろいろと専門的な知識も必要になってきます。ペットを購入したい人とブリーダーを仲介するマッチングサイトを利用すれば、ホームページを持っていない人でも飼い主への直接販売が可能です。サイトの指定した登録要件を満たしていれば、仲介サイトにブリーダーとして登録できるようになります。
株式会社シムネットが運営するみんなのブリーダーは、国内でも最大級の子犬ブリーダー仲介サイトです。同社が運営するみんなの子猫ブリーダーと合わせ、成約件数は2022年10月時点で約24万件に達します。登録ブリーダー数はみんなのブリーダーが3,137人、みんなの子猫ブリーダーが1,425人です。
株式会社アニマライフもブリーダーナビと子猫ブリーダーナビを通じて、子犬と子猫のブリーダー仲介サイトをそれぞれ運営しています。2022年10月時点でブリーダーナビの登録ブリーダー数は2,320人、子猫ブリーダーナビは946人です。犬専門のブリーダー仲介サイトにはこの他にも、ブリーダーズやdogoo.comなどがあります。
ブリーダーの年収はどれくらい?
ブリーダーの会社に勤務する場合と個人で開業する場合で年収は違ってきますが、どちらのケースでも会社員全体の平均年収を上回る人は一部にとどまるものと推定されます。ブリーダーの会社は中小企業が大半で、従業員の給与水準も決して高いとは言えません。正社員でも平均年収は300万円程度と見られます。
個人で開業した場合はブリーダーによって収入の格差が大きいだけに、平均年収を計算するのは困難です。犬や猫を2~3頭飼育・繁殖させるモデルケースで試算してみましょう。
1年目は売上がまだ0円ですので、繁殖用個体の購入費用と飼育費用で数十万円ほどの赤字が見込まれます。翌年以降に子犬や子猫を数頭ずつ販売できるようになり、2年目で元が取れる計算です。1頭あたり20万円で販売できれば年間の売上は100万円前後で、飼育費用と交配・出産費用を引いて70万円前後の年収ということになります。
年収をもっと多く稼ごうと思えば1頭あたりの販売価格を上げるか、または繁殖させる頭数を増やすしかありません。パピーミルと呼ばれる悪質ブリーダーならもっと稼いでいる可能性はありますが、良心的なブリーダーほど年収が少ないという傾向も見られます。
副業のブリーダーになる方法のまとめ
犬や猫など哺乳類のブリーダーになるには、鳥類や爬虫類とともに第一種動物取扱業への登録が欠かせません。個人で開業する場合は自分自身が動物取扱責任者になる必要もあるため、ブリーダーになるためのハードルは高めです。
動物取扱責任者の資格要件を満たすには半年以上の実務経験に加え、関連する資格か専門教育も必要になってきます。法改正によってブリーダーになるための条件は厳格化されましたが、哺乳類・鳥類・爬虫類以外の生き物を対象とするならその限りではありません。メダカや熱帯魚・昆虫など、第一種動物取扱業への登録が不要なペットも人気を集めています。
どうしても犬や猫・鳥類などのブリーダーになりたい場合は、愛玩動物飼養管理士のように費用が比較的安い民間資格を取得するのがおすすめです。犬や猫のように飼育の手間がかかる動物のブリーダーを副業にするには、在宅の仕事をしている人や家族の協力が得られる人に向いています。
魚類や昆虫など手間がそれほどかからない生き物のブリーダーなら、会社員の副業にすることも可能です。自分に合ったやり方で、ブリーダーの副業にチャレンジしてみるといいでしょう。