LINEグループの運営するNAVERまとめはまとめサイトの草分け的存在として親しまれてきましたが、2020年9月30日をもって終了しました。まとめ作成者に支払われていたインセンティブも、サービス終了に伴って今後は収入が得られなくなります。
NAVERまとめに代表されるまとめサイトは10年以上にもわたって隆盛を誇ってきましたが、サイト乱立で質の低下を招き、著作権侵害などさまざまな問題が指摘されていたのも事実です。副業の手段としても利用されてきたNAVERまとめが終了に至った理由について、大きな曲がり角に直面しつつあるまとめサイトの現状と合わせて考察してみました。
NAVERまとめ終了の経緯
インターネット上で情報が氾濫し、知りたい情報にたどり着くまで手間がかかるという弊害については以前から問題となっていました。そんな状況から抜け出してテーマごとに情報を収集し、見やすいように再編集して提供しようというのがまとめサイトのコンセプトです。
2009年にサービスが開始されたNAVERまとめはまとめサイトの先駆的存在となり、他のサイトにも大きな影響を与えてきました。最盛期の2015年には月間30億を超えるベージビュー数を誇ったNAVERまとめも、近年はアクセス数が減って影響力が低下していたものと見られます。2016年に表面化したWELQ問題でまとめサイト全体がバッシングを受け、それ以降は検索エンジンから評価を下げられてしまったのも致命的でした。
採算性が悪化したNAVERまとめはLINEグループの今後の成長戦略と相容れなくなったと判断され、サービスの終了を決断するに至ったと見られます。2020年の7月には2カ月後のサービス終了が発表され、9月30日をもってサイトが閉鎖されました。11月いっぱいまではこれまでに投稿された記事のダウンロードも可能ですが、10月1日以降は新たな記事の投稿や閲覧ができなくなります。
まとめサイトが乱立し質が低下
飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を続けていたNAVERまとめの快進撃にストップがかかった背景には、似たようなまとめサイトが乱立して質が低下していたという事情があります。まとめサイト自体はNAVERまとめ以前から2chまとめなどの形で存在しましたが、NAVERまとめの成功を受けて一大ブームが到来したのです。
Twitterのツイートを集めたTogetterや、YouTubeの動画をまとめたサイトも人気を集めています。個人が運営しているブログ形式のまとめサイトまで含めると相当な数が存在すると推定されますが、これだけ数が増えると記事の品質低下も避けられません。
2016年には大手IT企業のDeNAが運営していた医療系まとめサイトのWELQで不適切な投稿が問題となり、類似のサイトでも著作権侵害などの問題が次々と発覚しました。DeNAはWELQを始めとするサイトの非公開化を余儀なくされ、競合他社でもまとめサイトの見直しに迫られる事態へと発展したのです。
世間からの激しいバッシングを浴びたまとめサイトは検索エンジンの評価も下げられ、検索アルゴリズムの度重なるアップデートを経て検索上位への表示が困難となりました。まとめサイトの中ではトップクラスのページビュー数を誇っていたNAVERまとめも無事では済まず、ここ最近は検索結果でも上位に表示されにくくなっていたように思われます。
実際にNEVERまとめではWELQ問題の以前から、無断引用など著作権上の問題が指摘されてきました。NAVERまとめは誰でも簡単にまとめ記事を作れるのが特徴で、ブログのように自分でゼロから文章を考える必要もありません。以前はインターネットで情報を発信するのに一定のハードルがありましたが、NAVERまとめが登場したことで参入のハードルが低くなりました。
ネット上にある既存の記事や投稿を集めて情報を再編するのがまとめサイトの手法だけに、モラルの低い作成者の手にかかればどうしても著作権侵害が起きやすくなります。そうした弊害がWELQ問題をきっかけに大きく取り上げられるに至り、業界健全化に向けた取り組みへとつながっていったのです。
NAVERまとめでは稼げなくなっていた?
以上のような紆余曲折を経ながらもNAVERまとめが今まで存続してきたのは、他のまとめサイトにない独自のインセンティブ制度による延命効果とも考えられます。NAVERまとめにはまとめ記事の作成者が報酬を受け取れるシステムがあり、ページビュー数や記事の質などに応じてインセンティブの金額が決まる仕組みです。記事を作成した人がお金を稼げる仕組みがあったからこそ、熱心にまとめ記事を作成してくれる人も絶えなかったものと見られます。
とは言えほとんどの人はインセンティブ収入が月に1万円未満で、NAVERまとめではたいして稼げないとも言われてきました。インセンティブの金額が決まる基準には不透明な部分もあり、単純にページビュー数だけでは収益性が測れません。
サービス終了の日に24時間限定で公開された「数字で振り返るNAVERまとめの歴史」という記事によると、1ユーザーが獲得した月間の最多インセンティブは234万円にも達しました。総額で1,000万円以上を稼いだ作成者が17人ほど存在するのも事実ですが、まとめ作成者全体で見ればほんの一握りに過ぎません。ごく一部の人がNAVERまとめで高収入を稼いできた一方で、その他大勢の作成者は月にせいぜい数千円程度しか稼げなかったのが実状なのです。
このインセンティブはNAVERまとめに掲載されていた広告による収入の一部を作成者に還元したものですが、広告収入の額はページビュー数にある程度比例します。NAVERまとめ全体のアクセス数が減ると広告収入も減少し、作成者に還元されるインセンティブも少なくなるのは当然です。
NAVERまとめも最近は検索結果で上位に表示されにくくなっていただけに、以前にも増してインセンティブで稼げなくなっていたものと推定されます。大きな見返りが期待できなるとまとめ記事を作成しようとする人も減り、衰退へと向かうのが世の常です。
まとめサイトの今後
長らく牽引役となっていたNAVERまとめが終了したことで、隆盛を誇ったまとめサイトも大きな曲がり角に直面しています。2016年のWELQ問題で冷水が浴びせられた時点から、まとめサイトの限界が見えていたと考えることも可能です。
まとめサイトがあれほどの盛り上がりを呈していたのは、文章力がなくても記事を量産できるという利点のおかげでした。話題性のある情報をネット上から集めてきて手早く記事に仕立て上げ、次々と公開するだけでページビューが稼げるという時代は過ぎつつあります。すでに検索エンジンの巨人Googleはコンテンツのオリジナリティを最重視する方針を打ち出し、既存記事を寄せ集めたようなまとめ記事は検索上位に表示されにくくなっているのが現状です。
斜陽産業とまで言われるようになったまとめサイトが延命を図るとしたら、SNSなど検索エンジン以外からの流入経路を切り開いていくしかありません。ネット上には依然として膨大な量の情報が氾濫し、検索するのに手間がかかるという点では10年前と変わらない状況です。そうした混乱に風穴を開けるかと期待されたまとめサイトも衰退しつつある今、新たな情報編集の手法が問われています。
検索エンジンがコンテンツの質や権威性を重視するようになった結果、検索結果の上位に表示される情報は長文記事と企業のPR情報に二極化されている状況です。検索上位には読み通すのに苦労する長文記事が並び、多忙な社会人が短時間で効率良く情報を収集するのが困難になりつつあります。知名度の高い企業の公式サイトというだけで上位に表示されたページに関しては、製品やサービスの宣伝に終始している例も少なくありません。
WELQ問題からNAVERまとめの終了へと至ったこの4年間はまとめサイトだけでなく、検索エンジンにとっても大きな曲がり角でした。LINEグループではNAVERまとめで培ったノウハウを生かし、新たな検索事業への参入を目指しています。ネット検索はGoogleによる事実上の独占状態が続いてきましたが、LINEの参入で今後どう変わるのかが注目されるところです。
NAVERまとめの終了まとめ
残念ながらNAVERまとめは終了してしまいましたが、普通に検索したのでは情報が多すぎてわけがわからないと感じている人は依然として少なくありません。ネット上に氾濫する情報の洪水から価値ある情報だけを拾い上げ、わかりやすい形に整理・加工して提示するというのは画期的な試みでした。インセンティブが設けられたことでページビュー稼ぎに走る人が続出し、まとめ記事の質が低下してしまったのは残念な結果です。
他のまとめサイトに端を発した不祥事がNAVERまとめにも波及した末、最大手のサービス終了という最悪の結末を迎えてしまいました。何かとネガティブな目で見られがちなまとめサイトは時代遅れの手法と思われがちですが、要領よくまとめられた情報に対する需要は世の中にまだまだ存在するはずです。そうした需要にどう応えていくのか、進化版のまとめサイト登場が待たれます。
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