平日は会社の仕事をしながら土日に畑で野菜や果物・米などを育てる週末農業の手段として、シェア畑を利用する人が増えています。シェア畑は「手ぶらで通える」のが特徴のサポート付き農園で、農機具や資材・野菜の種・肥料などを自分で用意する必要がありません。収穫した作物を売って収入を得ることも可能なだけに、シェア畑を利用した週末農業は立派な副業にもなり得ます。
健康にも役立つ副業として静かなブームを呼んでいる週末農業の始め方について、シェア畑の利用方法と野菜の販売方法を中心に基本情報をまとめてみました。週末農業に興味がありながら野菜を育てた経験がないために躊躇しているという人でも、この記事を読めば収益化の仕組みが理解できるようになります。
シェア畑とはどんなサービス?
週末農業に関心を持つ人の間で話題を集めているシェア畑とは、遊休農地や耕作放棄地を活用した畑のレンタルサービスです。農地をレンタルする市民農園は従来から存在しましたが、シェア畑は農具や資材など野菜を栽培するのに必要なものを用意してあるという点に新しさがあります。利用者は文字通り手ぶらで通うだけで野菜を栽培できる上に、農業の知識や経験がない人でも菜園アドバイザーに教えてもらえるというのも人気の一因です。
シェア畑で栽培される野菜は農薬や化学肥料を使わない有機栽培が特徴で、収穫物を栽培する際にも差別化につながります。農園によってはトイレや休憩スペースも設置されており、水道や井戸もあるため水やりや農具の洗浄にも困りません。
シェア畑を利用すれば野菜作りを趣味として楽しむことも可能ですが、収穫した野菜を売れば収入を増やす副業の手段にもなります。月額費用を上回る収益を上げるには販売方法などの工夫も必要とは言え、ありきたりの副業では飽き足りないという人にとっては挑戦し甲斐のある仕事です。
当ブログでは以前にも農業バイトという仕事について取り上げました。
農業の仕事でお金を稼ぐ副業の手段という点ではシェア畑の週末農業とも共通しますが、農業バイトは農業法人や農家に雇われて農作業の手伝いをする仕事です。収穫作業に特化した求人の募集が多く、必ずしも1つの作物で種まきから収穫までの全過程に関わるという仕事ではありません。
自分で育てた野菜を収穫して収入を得るという喜びは、農業バイトではなかなか味わえないのが普通です。いきなり自分で野菜を栽培するのが不安だという人はまず農業バイトで農作業の雰囲気を体験してみてから、本格的な週末農業に挑戦してみるという手もあります。
農地なし経験なしでも始められる
2012年に最初のシェア畑が開園されたのを皮切りとして、現在までに7都府県で約100ヶ所の農園が誕生してます。現時点では首都圏や関西圏に限定されますが、農地を持たない未経験者でも週末農業が始めやすくなった点では画期的な試みです。
農地をレンタルできる市民農園は全国各地に存在するとは言え、人口の多い首都圏や関西圏では空きがなかなか出ないのが実状でした。運良く農地を借りられて週末農業を始めても未経験だと栽培に失敗することも多く、収益化するのに時間がかかってしまいます。
そんな中でもシェア畑が多くの空きを確保しているのは、遊休農地や耕作放棄地を有効活用して貸し出す方式ならではのメリットです。シェア畑は単に農地や水道・トイレなどの施設をシェアするだけでなく、農具・農業資材といった物品や菜園アドバイザーの人材に至るまでをシェアできる仕組みとなっています。これだけ手厚いサポートを受けるのに必要な費用は、1万円前後の月額料金の他に入会金11,000円がかかるだけです。
一般的な市民農園ならもっと安い料金で借りられるとは言え、農具や資材・肥料などはすべて自分で用意しなければなりません。結果的にはシェア畑を利用するよりも割高になるケースも少なくないことを考えると、道具や消耗品は複数の利用者でシェアし合った方が合理的だと言えます。
バックアップ態勢も充実
シェア畑を利用している人の中には平日に会社勤務をしていて、生まれて初めて農業を経験したという人も少なくありません。野菜を栽培するのは観賞用の草花を育てるより難易度が高いと見られているだけに、普通は新規就農に高いハードルがあると思いがちです。市民農園を借りて野菜作りにチャレンジしても失敗する人が跡を絶たないのも、十分な知識がないまま自己流で栽培を始める人が多いという理由によります。
シェア畑には栽培経験が豊富な菜園アドバイザーが勤務しているため、野菜作りの経験がないまったくの初心者でも安心です。わからないことが出てきたらアドバイザーに教えてもらえる上に、実演を交えながら野菜作りを基礎から学べる講習会も定期的に開催されています。
シェア畑を借りている利用者同士の交流も活発で、互いに情報交換しながら栽培スキルを高められる点も人気の一因です。こうした手厚いバックアップ態勢は従来の市民農園になかった特徴で、土地も経験も持たない初心者が週末農業を始めるのに最適なサービスだと言えます。
シェア畑で週末農業を始める方法
サラリーマンが取り組む副業の手段としては週末農業もまだまだ「変わり種」の部類と思いがちですが、農業を副業とする働き方そのものは「兼業農家」という形で古くから存在しました。地方で圧倒的に多かった兼業農家の働き方を都市部でも可能にしたのが、シェア畑を利用した週末農業という新しい農業のあり方です。
シェア畑の公式サイトには各エリアごとに空きがある農園が紹介されており、広さと料金に加えて農園の施設やアクセス手段も掲載されています。その中から自分の通いやすい農園を選び、現地を実際に見学してみた上で正式に契約するのが利用を始めるまでの一般的な流れです。現在は新型コロナウイルスへの対策としてオンライン説明会を開催しており、オンライン会議ツールのzoomを通じてシェア畑のサービス内容やサポート体制を詳しく知ることができます。
副業でも収益を出しやすい野菜の種類
シェア畑を利用すれば野菜を作った経験がない人でも週末農業を始められるとは言え、副業レベルまで収入を増やすには売れる野菜を選ぶ必要もあります。収穫した野菜が売れなかったとしても自分で食べれば食費の節約にはなりますが、どうせなら収支をプラスにしたいところです。
キャベツ・レタスなどの葉物野菜やトマト・きゅうりなどの夏野菜は需要が多く、栽培もそれほど難しくないため比較的売りやすい作物とされています。とは言えそれらの野菜はプロの野菜農家がすでに多く手がけていて市場にも大量に出回っているため、素人が正面から対抗しようとしてもなかなか太刀打ちできません。葉物野菜や果菜は鮮度が落ちやすく、数日売れ残るだけで売り物にならなくなります。
初心者でも扱いやすいのは里芋やジャガイモ・サツマイモなどの芋類の他、ダイコン・ニンジン・玉ねぎなどの根菜です。ミョウガやタラの芽などは栽培に手間がかからないわりに販売単価が高く、安定した需要が期待できるニンニクや生姜とともに週末農業向きの野菜に数えられます。
プロに負けない販売方法
週末農業で栽培した野菜を売る手段としては、以下のような方法が考えられます。
- 地元のJAに卸す
- スーパーや飲食店に直接販売する
- 道の駅で委託販売
- 農産物直売所
- ポケットマルシェ
- ネットショップを開業
- メルカリに出品する
プロの農家はJAを通じて販売している例が多いですが、JAでは規格外の野菜を受け付けてくれません。規格に合った野菜なら確実に収入が得られる点がメリットとは言え、販売価格は市価の数十%という卸価格で安く買い叩かれてしまう点がデメリットです。
JAや青果卸売市場が間に入ると、どうしても中間マージンの分だけ利益が減ってしまします。地元のスーパーや飲食店に野菜を直接販売するという手もありますが、素人が作った野菜を買い取ってくれる店を探すのが大変です。
道の駅への委託販売や農産物直売所への出品でも15%程度の手数料はかかりますが、順調に売れればJAに卸すより手元に残る額が多くなります。インターネット上の農産物直売所としては最大手のポケットマルシェも、販売手数料は売上の15%です。
どの販売方法を選んだとしても消費者に商品が渡るまでに何らかのサービスを利用せざるを得ず、その分の手数料がかかってしまいます。いっそのこと自分でネットショップを開設し、野菜を消費者に直接販売すれば手数料をゼロに近づけることも可能です。BASEやSTORESのような無料ネットショップサービスも存在しますが、SNSを使って宣伝するなど集客の工夫も欠かせません。
どの販売方法にも一長一短があるせいか、最近はフリマアプリとして絶大な人気を誇るメルカリに野菜を出品している週末農家が増えています。売上の10%は手数料として引かれますが、道の駅や農産物直売所よりは手数料が少なく済むからです。
シェア畑の多い首都圏や関西圏は物流網の集積拠点に近いだけに、ネットショップやメルカリを利用して全国の消費者に野菜を発送するにも有利なポジションにあります。採れたての野菜を新鮮なうちに消費者のもとへ届けるには、インターネットを通じた販売方法は最も有望な手段です。
シェア畑で始める週末農業まとめ
ネットショップやメルカリで野菜を売る際には商品写真をきれいに撮影したり、説明文に栽培の過程を盛り込んだりするような工夫も欠かせません。JAやスーパーでは規格品の野菜しか取り扱ってくれませんが、農産物直売所やインターネットを通じた販売方法なら規格外の野菜でも売れる可能性が出てきます。
味よりも形を重視するのがJAやスーパーなら、直販は形より味を重視した販売方法です。消費者の間でもそうした認識が徐々に浸透しつつあり、形は少々悪くても新鮮でおいしい野菜が買える場所が人気を集めるようになりました。シェア畑で始める週末農業もそうした時代の流れに乗れば、土日だけ作業を行う副業でも収益を出していくことは十分に可能です。
農業バイトで日銭を稼ぐのと違ってすぐに収入が得られるわけではありませんが、自分で一から育てて収穫した野菜を売ってお金を稼ぐ喜びは格別なものです。健康にもプラスとなる週末農業にチャレンジしてみたいという人は、近くにシェア畑の空きがないかどうか調べてみるといいでしょう。
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