スーパーマーケットはパートやアルバイトの従業員が大勢働いていて、求人の募集件数も非常に多い業種です。生活費を稼ぐための働き口としては最も始めやすい仕事ですが、スーパーにも仕事が忙しい時期と比較的暇な時期があるという点には注意が必要です。
繁忙期のスーパーは売上が普段の何倍にも達するだけに、普通にシフトを組んでいてはたちまち人手不足に陥ります。店によっては繁忙期に休みを取れなかったり、早出や残業を強制されたりする場合もあり得ます。
正社員の立場ではありましたが、筆者も以前スーパー業界で10年以上働いてきました。繁忙期の忙しさについては舞台裏を痛いほど知り尽くしていますので、
- スーパーの繁忙期はいつ?
- どれくらい忙しいの?
- 繁忙期は休めないの?
といった疑問に答えていきます。
スーパーの繁忙期は年に2回
結論から先に書くと、スーパーの繁忙期はお盆と年末の2回あります。一口にスーパーと言っても店によって性格が異なり、大型店と中小規模の店では繁忙期も微妙にずれてくるのが普通です。全国に1万以上あるスーパーの店舗は、以下の2種類に大きく分けられます。
- 食品だけでなく衣料品や雑貨・家具・家電など幅広い商品を扱う総合スーパー
- 主に食料品と日用雑貨を扱う食品スーパー
店舗数の上で圧倒的多数を占める食品スーパーでも、店が忙しい日はお盆と年末だけに限りません。節分や土用丑の日など行事のある日と、店舗独自に実施する特売日には、一時的に繁忙期並みの忙しさとなる場合があります。
販売部門によっても忙しい部署とそうでない部署で差が出てきますが、お盆商戦と年末商戦の忙しさは別格です。筆者がかつて働いていた店も典型的な食品スーパーで、毎年お盆の時期と年末になると憂鬱になるほど仕事に忙殺されていました。ゴールデンウィーク中や年明け後の初売り期間などは逆に来店客数が減り、店がかえって暇になるほど落差が大きいです。
一方の総合スーパーには数多くのテナントが入居し、アミューズメント施設やイベント会場などが併設されている例も珍しくありません。大型連休中にも絶大な集客力を発揮するため、総合スーパーはゴールデンウィークや年始の初売り期間なども繁忙期に含まれてきます。
お盆と年末が忙しいという点では、総合スーパーも食品スーパーと変わりありません。同じ総合スーパー内でも、食料品部門の繁忙期はお盆と年末がピークです。
衣料品部門や雑貨部門などは、お盆や年末に売上が極端に増えるというわけではありません。食料品部門の集客効果で店全体の来店客数が増えれば、他の部門の仕事もそれなりに忙しくなるという程度です。贈答品やお土産用商品を扱う部署はお中元やお歳暮・帰省シーズンが書き入れ時で、食品スーパーの繁忙期と重なってきます。
スーパーのお盆と年末が忙しい理由
筆者が所属していた食品スーパーでお盆と年末が特に忙しかったのは、これらの時期に需要が急増する商品に由来します。自分自身がお客さんの立場になってみると、お盆や年末には普段買わないような商品をスーパーで購入する機会が増えるはずです。
スーパーの側でもそれらの商品を大量に用意する必要が出てきますが、売上に比例するだけの人員を増やすには限界があります。どうしても従業員1人1人の負担が大きくなってしまうため、「スーパーの繁忙期は仕事が忙しくて大変」という結果になるわけです。
お盆に需要が急増する商品と年末に売れる商品には違いもありますが、以下3つの商品は共通します。
- 鮮魚部門で販売する刺し身盛り合わせ
- 惣菜部門で販売する寿司盛り合わせ
- 惣菜部門で販売するオードブル盛り合わせ
お盆や年末年始のシーズンになると、日本全国で大勢の人たちが地方にある実家に帰省します。家族や親戚・友人が集まる機会も増えるため、刺し身や寿司・オードブル盛り合わせの需要が急増するのは自然な成り行きです。
いずれも単価数千円の大型商品が飛ぶように売れることから、食品スーパーにとっては1年で最大の稼ぎ時となります。盛り合わせセットも売上のピークは8月13日と年末ですが、8月14日以降と年明け以降もある程度の需要がある商品です。そのため鮮魚部門と惣菜部門は、他の部署より繁忙期が長めになる傾向も見られます。
盛り合わせをきれいに装う作業は手間がかかるだけに、大量に用意するにはかなりの人員が必要になる商品です。スーパーの仕事は小売店でありながら、生鮮部門や惣菜部門で働く裏方の仕事は食品工場に近いとも言えます。繁忙期に需要が急増する商品を自分たちで製造しなければならないために、非常体制を組んで対応に当たる必要が出てくるというわけです。
店によっては臨時バイトを大量に雇って対応しているところもありますが、本番の前に仕事を覚えてもらう訓練の期間も必要です。臨時バイトの雇用は最低限にとどめ、あとは既存の従業員で対応してもらった方が人件費が安く済むという事情があります。店によっても対応が異なりますので、スーパーの鮮魚部門や惣菜部門で働き始める際にはそのへんのところを事前に確認しておくといいでしょう。
鮮魚や惣菜以外の部門
お盆や年末に鮮魚と惣菜部門が大忙しになるのは以上のような理由によりますが、他の部門も忙しくないわけではありません。お盆の時期には墓参り用の花や、さまざまなお盆用品を用意する必要があります。墓参り用の花は花屋さんで購入するという人もいますが、普段から利用しているスーパーで買うという人は少なくありません。
筆者の店では普段から青果部門で花を扱っていましたが、お盆のピーク時に店内で対応していてはレジの会計が追いつかなくなります。お盆商戦本番の8月12日と13日には店頭に特設テントを設置し、青果部の従業員がついて対面販売をしていたほどです。
当時の筆者はお盆用灯籠やお盆菓子などお盆用品の担当だったため、特設テントの一角を借りて対面販売を試みたことがあります。そういうお盆用品は早めに買い揃えておく人が多いせいか、本番の2日間に売ろうとしてもさっぱり売れませんでした。
隣では花が飛ぶように売れ、包装や会計が追いつなくなっているのを見かねて、そちらの方を手伝っていたほどです。お盆にはお供え用の果物もよく売れるため、青果部門は鮮魚や惣菜に負けないくらいに大忙しとなります。
筆者が担当していた日配(デイリー)部門は、お盆より年末の忙しさが顕著でした。12月にはクリスマス商戦もあって、売上目標は他の月よりかなり高く設定されています。クリスマスケーキや年越しそば・鏡餅・おせち用商材など、年末商戦に欠かせない商品を大量に売らない限りは到底達成できない目標です。
他の部門でもおせち用の食材や贈答品・お土産用の商品など、売るべき商品はたくさんあります。お盆・年末ともに忙しさの度合いには部門による差も見られますが、他の時期よりも売上が大きく増える点では変わりありません。
特に地方では帰省客で人口が一時的に増える時期だけに、地元のスーパーで買い物をする人も普段より多く、客単価も高くなりがちです。平常時と同じ態勢で臨んでいてはレジも大混雑することになりますので、どの店もお盆と年末の繁忙期には特別態勢を整えて対応しています。鮮魚や惣菜・青果部門と並んで、レジの担当も繁忙期に多忙を極める部署の1つです。
スーパーでは繁忙期に休めない?
インターネット上ではスーパーで実際に働いたアルバイトやパートの口コミとして、「お盆や年末年始の繁忙期には休みたくても休めない」という投稿も見かけます。「お盆の墓参りに行きたいと思っても仕事が休めない」という人や、「正月休みを取りたいと思っても拒否された」というような声です。本当のところはどうなのでしょうか?
この点に関しても店によって対応が分かれてきますが、基本は繁忙期に休めないと思っていた方がいいでしょう。企業体力のある店舗では繁忙期に備えて臨時バイトを大量に雇用し、一時的に急増する商品の需要にうまく対応しています。常勤の従業員にはできるだけ負担を増やさないように配慮するのが理想ですが、現実には人件費の関係でなかなか理想通りにいかないのが実情です。
夏休みや冬休みの学生アルバイトを雇い入れても、普通はお盆や年末に急増する売上に対応しきれません。8月12日・13日の2日間(14日を含む店もあり)と12月30日・31日の2日間(店によっては年明けの初売り期間を含む場合もあり)は、従業員全員出社を原則とする店が大半です。
夏休みや冬休みの学生アルバイトも、普通は繁忙期の2日間よりだいぶ前から働き始めることになります。これは本番までに仕事に慣れさせるための準備期間で、実質的には最も忙しい2日間のために雇われているようなものです。
よほどの事情があれば休みが認められる場合もありますが、「墓参りに行きたい」「帰省客を交えた集まりに参加したい」というのは他の従業員も変わりありません。そうした理由でお盆や年末年始の休みを認めていては、ただでさえ普段より忙しい店が成り立たなくなってしまいます。1人でも例外を認めてしまうと不公平感が出てくるため、「全員出社」を原則にして繁忙期を乗り切ろうとしているわけです。
このへんは日本人特有の同調圧力が働いている面もありますが、スーパーの仕事は医療従事者や介護職などと同じエッセンシャルワーカーの1つに数えられます。他の人たちが休んでいる間も働き続けることで、人々の生活を守るのがエッセンシャルワーカーの務めです。
お盆や年末年始に休めないと損をしたような気分になりがちですが、人々に奉仕する仕事をしているという点は誇りに値します。スーパーの仕事を長続きさせるには、そうした点にやりがいを感じられるかどうかが1つの分かれ道です。
店によっては早出や残業を強制される可能性も
スーパーの繁忙期には従業員が自由に休みを取れないだけでなく、早出や残業が続いて労働時間が長引く傾向も見られます。筆者も繁忙期に休めないのは仕方ないと思っていましたが、極端に早く出社しなければならない点は憂鬱でした。朝早く起きるのがもともと苦手なタイプだけに、お盆の2日間や年末の2日間は午前3時半や4時に出社するのが苦痛だったものです。
もちろんすべてのスーパー従業員がそれほど極端な早出を強いられるわけではありませんが、繁忙期に普段より早く出社する例は多く見られます。特に刺し身やオードブルなど、盛り合わせの大型商材を抱える鮮魚部門と惣菜部門で顕著です。
そういう繁忙期は筆者が午前3時半に出社しても、鮮魚部門の正社員はすでに仕事を始めているのが常でした。何時に出社したのか訊いてみると、最も早い人で1時という答えが返ってきたほどです。パートやアルバイトの出社時刻はもっと遅く設定されていましたが、それでも鮮魚と惣菜部門はまだ夜が明けないうちに全員が働き始めていました。
筆者の店のように繁忙期に開店時刻を1~2時間早める場合は、他の部門の従業員も早出をして開店準備に当たるのが通例です。お盆と年末の各2日間には、それぞれ前日の仕事が長引いて残業になる可能性もあります。前の日のうちにやれる仕事は可能な限り済ませておいて、翌日の忙しさに備える必要があるからです。
筆者の担当していた非生鮮部門では、普段から特売日前日には残業して売場作りの準備をするのが普通でした。繁忙期になると鮮魚や惣菜といった部門でも、前日のうちに仕込み作業を済ませておくというケースが出てきます。
人手が不足している店では前日の夜に遅くまで働かされた上に、当日の朝も極端な早出を強制される可能性があります。そのへんの判断は各部門を担当するチーフに委ねられている場合も多いだけに、店舗や部門によって働き方にかなりの差が見られる状況です。
店長の権限が大きい店では、店長命令で早出や残業を強制される場合もあり得ます。そういうブラック体質の店は従業員がすぐに辞めてしまうため、アルバイトやパートの求人を常時募集しているのが特徴です。繁忙期でも早出や残業はできるだけ避けたいという人は、あらかじめ評判を検索してから求人に応募することをおすすめします。
スーパーの冬休み・夏休みバイトはきつい仕事?
多くのスーパーでは前述の理由で人員が不足することから、繁忙期の年末年始やお盆に合わせて臨時のアルバイトを募集しています。食品スーパーで一番忙しいのは、年末とお盆期間の数日間です。
高校生や大学生の冬休み・夏休み期間に合わせてアルバイトが募集されますが、最も忙しい数日間以外は臨時バイトを雇うほど人手が足りないわけではありません。それほど忙しくない日に従業員が増えることで、かえって暇を持て余す場面も出てきます。
それでも冬休みや夏休み期間に合わせてアルバイトを募集するのは、一番忙しい日までに一人前の戦力になってもらうのが目的です。働き始めてから仕事を覚えるまである程度の日数を要するのが普通ですので、店がそれほど忙しくないうちにスーパーの仕事に慣れてもらおうという狙いがあります。
そんなスーパーの臨時バイトは、忙しい日とそうでない日で仕事のきつさ加減にも差が出てきます。年末やお盆で最も忙しい数日間はほとんど休む暇もないほど作業に追われるだけに、特に鮮魚部門や惣菜部門に配属された場合は覚悟が必要です。
青果部門や一般食料品(グロサリー)部門なども重い荷物が多いため、体力的にきつい思いをする可能性があります。レジの臨時バイトもずっと立ちっぱなしで体力を要する上に、接客の面でも気を使う仕事です。
店によっても違いはありますが、年末とお盆のそれぞれ数日間以外はそこまで忙しくはありません。普段の仕事を「きつい」と感じるかどうかは、その人の資質や仕事への習熟度にもよります。仕事が楽な部門に配属された場合でも、店が忙しくない日は暇を持て余すつらさを味わうことになります。
スーパーの繁忙期まとめ
スーパーはお盆の期間と年末(年始)が2大繁忙期で、総合スーパーと食品スーパーでは忙しい期間に微妙な違いも見られます。いずれの期間も刺し身盛り合わせを抱える鮮魚部門と、寿司・オードブルの盛り合わせを扱う惣菜部門は大忙しです。お盆と年末にはそれぞれの時期に需要が高まる特有の商品があって、鮮魚や惣菜以外の部門も多忙を極めます。
スーパーの2大繁忙期にはレジを含めた店全体で人手不足に陥るため、従業員は原則として全員出社としている店が大半です。臨時バイトを多く雇って対応している店もありますが、従業員に極端な早出や残業を強制する店も少なくありません。
店舗によっても繁忙期の大変さが違ってきますので、スーパーの求人に応募する際には店の選び方が重要になってきます。どの店でもお盆と年末に普段より仕事が忙しくなるという点は、あらかじめ覚悟しておいた方がいいでしょう。