平日は会社の仕事をしているサラリーマンの間で、「週末農業」が静かなブームを呼んでいます。自分で作った野菜を売れば、週末農業が副業にもなり得るのではないでしょうか?
でもプロの農家だっていることだし、副業程度の取り組み方ではそう簡単に売れないんじゃないの?
確かに週末農業は副業にならない可能性もありますが、趣味の範囲でも楽しむことは十分に可能です。筆者もライター業の傍ら家庭菜園で野菜作りをしていて、生活が豊かになったという実感があります。
そこで今回は週末農業を趣味にするスタイルと、副業にするスタイルを比較してみました。趣味の週末農業を副業の域にまで高める4つの方法も、記事の後半で詳し解説します。
農業を副業にするのは難しい?
平日の日中は会社員として普通に働き、土日の休日だけ田んぼや畑に通って農業に取り組むのが週末農業のライフスタイルです。週末農業は兼業農家と似ていますが、「必ずしも現金収入を得るのが目的とは限らない」という点で異なります。
昔からある兼業農家というのは、世帯のうち農業以外の仕事で収入を得ている人が含まれる農家です。農業収入を主とする第1種兼業農家にとっては、農業以外の仕事が副業という扱いになります。兼業収入を主とする第2種兼業農家が、週末農業のスタイルに近いとも言えます。
筆者が以前勤めていた職場にも、農繁期だけまとまった休暇を取って農作業の手伝いをしている兼業農家の人がいました。もともと農業を営んでいた人が他の仕事をするのならともかく、普通の会社員が農業を副業にするのは難しいとも言われています。プロの農家が競合相手となってくるだけに、素人が対抗しようとしてもなかなか稼げないからです。
未経験の状態から週末だけの農作業で野菜を作っても、経費を上回るだけの売上を上げるのは簡単でありません。プロの農家は規模の大きい農地経営で徹底したコストカットを実践し、農産物の大量生産で収益を得ています。小規模経営の週末農業だと収量あたりのコストが割高で、収益性は大量生産の農家より低くなるのが普通です。
週末農業を副業にするのは難易度が高めですが、現金収入が得られなかったとしても無駄にはなりません。週末農業を副業にするスタイルだけでなく、趣味にするというスタイルも考えられます。
趣味としての週末農業は難易度が低め
「農業」について辞書で意味を調べると、以下のように定義されています。
土地を利用して作物を栽培し、また家畜を飼育して衣食住に必要な資材を生産する産業。広義には農産加工・林業も含む。(デジタル大辞泉 小学館)
出典:「農業」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書
農業は産業の1つと見なされているだけに、お金を稼げなければやる意味がないと思うかもしれません。
一方で人類の長い歴史という観点から見ると、農業には自給自足的な生産活動も含まれてきます。自家消費する分の野菜を自分で作るようなライフスタイルも、広い意味では週末農業の一種です。
週末農業を副業にするのと違って、趣味としての週末農業なら採れた農作物を売る必要はありません。自分や家族が食べる分だけ栽培し、豊作で余った野菜は知り合いにあげるというスタイルです。
たとえ現金収入が得られなかったとしても、週末農業には以下のようなメリットが残されています。
- 食費の節約になる
- 採れたてのおいしい野菜が食べられる
- 自然と触れ合うことでストレスの解消になる
- 農作業を通じて運動不足の解消にもつながる
- ハードルが高い農業に気軽にチャレンジできる
- 栽培を通じて野菜に関する知識が学べる
週末農業のやり方によっては、「食費の節約になる」というメリットは微妙かもしれません。家庭菜園で野菜を作っても節約にならない?費用節約のポイントを解説で取り上げたように、自分で野菜を作るよりスーパーで買った方が安く上がる場合もあるからです。
たとえ費用の方が高くついたとしても、週末農業にはまだまだ他のメリットが残されています。趣味と実益を兼ねた活動と考えれば、費用をかけるだけの価値は十分にあるはずです。
販売や集客のノウハウを身につけ、収穫した野菜が売れるようになれば、一石二鳥どころか五鳥にも六鳥にもなります。趣味としての週末農業なら難易度が低めですので、趣味から始めて副業へとステップアップしていくのがおすすめです。
野菜を育てるには手間がかかると思いがちですが、ほとんど放置しておいても勝手に育ってくれる野菜があります。週末農業におすすめの野菜を15種類選んでみましたので、放置しても育つ野菜はどれ?週末農業におすすめの野菜15選も参考にしてみるといいでしょう。
週末農業を副業にする方法
趣味の範囲内で週末農業に取り組むのなら、作った野菜を自分で消費するだけで十分です。趣味からスタートさせた週末農業を副業の域にまで上げるには、何らかの手段で収入を得るようにする必要があります。
週末農業を副業にしたいと考えている人の多くは、本業の仕事で足りない収入を増やすのが目的のはずです。週末だけ農業の仕事をして収入を増やすには、以下のような4つの稼ぎ方が考えられます。
- 収穫した農作物を販売する
- 農業法人のアルバイトや農家の手伝いで稼ぐ
- 農業系のブログやSNS・YouTubeで稼ぐ
- 菜園アドバイザーの仕事で稼ぐ
それぞれ詳しく解説します。
収穫した農作物を販売する
週末農業に取り組む素人でもプロの農家と同じように、自分で栽培した農作物を売って現金に換えることは可能です。ほとんどの農家はJA(農協)を通じて米や野菜などの作物を販売していますが、他にもさまざまな販売方法があります。無人販売所で野菜を売ったり、農産物直売所で委託販売したりする方法です。
最近はメルカリやラクマなどのフリマアプリを利用して、個人対個人で野菜を直接販売している人が増えています。インターネットが普及したことで、プロの農家でない人でも野菜を気軽に販売できるようになりました。
商品の品質や梱包・発送などの面で課題もありますが、今は農業を副業にしやすい時代です。ネット販売のノウハウを身につければ、大量生産の農家にも十分に対抗できるようになります。
お小遣い稼ぎ程度の金額しか稼げなかったとしても、自分で作った野菜が売れたときの喜びは格別です。週末だけの農作業で、100万円以上の副業収入を稼ぐサラリーマンもいます。
収穫した野菜を販売するという稼ぎ方の他にも、野菜の苗を育てて売ったり、自家採種した種を売ったりする稼ぎ方も可能です。米や野菜・果物など食用にする有用植物だけでなく、花や観葉植物・多肉植物も販売の対象となってきます。
メルカリやヤフオクには食用・観賞用を問わず、さまざまな種類の植物が出品されている状況です。農家が大量出品している例も見られますが、個人による出品も少なくありません。販売ノウハウを身につけた副業農家にとっては、収穫物や種・苗を販売するのが王道の稼ぎ方と言えます。
農業法人のアルバイト・農家の手伝い
週末だけ農業の仕事をして収入を増やすなら、農業法人で募集しているアルバイトの方が手っ取り早く稼げます。たいていは野菜や果物などの収穫時期に合わせ、期間限定で募集される季節労働の仕事です。年間を通して複数の農作物を栽培している農業法人では、期間を限定せずにアルバイトを募集している例もあります。
一時的に多くの人手が必要となる収穫作業だけの場合、栽培の工程すべてに関わるわけではありません。単調な作業に終始する可能性もありますが、働けば働いた分の給料を確実にもらえる点が農業バイトのメリットです。
収穫期に作業スタッフを募集しているのは、会社経営の農業法人だけではありません。個人事業主として農地を経営している農家でも、農繁期に手伝ってくれる人を募集している例が見られます。
筆者も枝豆を栽培している友人に頼まれ、収穫作業の手伝いをしたことがありました。枝豆もぎ取り機を使って、枝豆の脱莢作業を担当する仕事です。慣れない身には結構な重労働でしたが、農家の人たちとの共同作業は貴重な経験となりました。
農家の手伝いは地域の人脈を通じて募集される例も少なくないせいか、一般の求人サイトではなかなか見つかりません。農業法人で募集するアルバイトも含め、地方の求人に強い求人検索エンジンで仕事を探してみることをおすすめします。
ブログやSNS・YouTubeで稼ぐ
週末農業を副業にする方法の3つ目は、農業に関する情報発信で副収入を得る稼ぎ方です。自分で作った野菜を売ったり、農家の手伝いをしたりして稼ぐのと違って、広告収入が収益の柱となります。
農業そのものには趣味の範囲で取り組み、栽培する作物も自家消費する分だけで構いません。農作物を育てる過程を文章や写真・動画で記録し、ブログやSNS・YouTubeなどを使ってインターネットで発信します。投稿した記事や動画に広告を掲載すれば、広告が利用されるごとに収益が発生するという仕組みです。
TwitterやインスタグラムなどのSNSでも、広告収入を稼げないことはありません。インフルエンサーとして有名になれば、企業案件で高収入を稼げるようになる可能性も出てきます。
それほど有名でないうちは、WordPressで作成したブログの方が広告収入を稼ぐのに有利です。農業系ではありませんが、筆者もまったくの無名からWordPressブログをスタートさせ、初年度から収益が発生しました。動画投稿で情報発信するYouTuberも、ブログと同じように広告収入を柱とする副業の1つです。
ブロガーもYouTuberも普通にやっていては、まとまった収入を稼げるようになるまである程度の時間を要します。しばらくはほとんど稼げない状態が続いても、情報発信を粘り強く続けるのがコツです。
菜園アドバイザー
週末農業に慣れてきて栽培のノウハウを身につけたら、初心者を対象とした指導の仕事で副収入を得る道も開けてきます。家庭菜園やレンタル農園で野菜作りを始める人は増加傾向だけに、アドバイスの仕事は有望な副業の1つです。
同じように週末農業を始めようという初心者の指導なら、土日だけの勤務でも十分に務まります。サポート付きのレンタル農園として人気が高まっているシェア畑でも、野菜作りの経験がある人を対象に菜園アドバイザーを募集中です。本業の仕事で販売や接客の経験があれば、初心者へのアドバイスにも役に立ってきます。
農業に関するアドバイスの仕事を副業にするのは、ココナラやストアカのようなスキルマーケットでも可能です。サポート付き農園で働くのと違って、スキルマーケットではオンラインでアドバイスを行うケースが多くなっています。
ストアカやタイムチケットなら、対面で指導を行うことも可能です。近くで求人が見つからない場合には、スキルマーケットへのサービス出品も検討してみるといいでしょう。
まとめ
農業を副業にするのは難しいと言われている中で、週末農業を始める意義について考察してきました。たとえ現金収入が得られなかったとしても、自分で農作物を育てることには多くのメリットがあります。収穫した野菜を自家消費するだけでも、採れたての新鮮な野菜が味わえるのは大きなメリットです。
趣味で始めた週末農業から一歩進めて販売ノウハウを身につければ、副業としても成り立つ可能性が出てきます。農業法人のアルバイトや農家の手伝いは、最も手っ取り早く稼げる方法です。
広告収入やアドバイスの仕事まで含めると、副業の可能性は大きく広がってきます。自分に合った方法を選んで、週末農業を始めてみるといいでしょう。
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