家に庭がある人にとっても苔はありふれた存在で、庭を持たない人でも山に行けば苔はいくらでも見つけることができます。道端ですら至るところに生えている苔を売ることができれば、元手ゼロでお金を稼げるおいしい副業になります。苔はテラリウムや苔玉作りの素材として人気を集めているだけに、結構な値段で売れる可能性があるのです。
とは言え自分で採ってきた苔を一般の園芸店に売ろうとしても、個人相手だとなかなか買取してもらえません。業者でもない人が苔を欲しい人に直接売るには、ネットオークションやフリマアプリに出品するのが一般的なやり方です。
敢えて個人から苔を購入しようとする人は、園芸店や通販サイトより安く買えることを期待しています。売る量が少ないとたいした稼ぎにはなりませんが、採ってきた苔を自分で増やせばまとまった収入につながります。
その気になれば副業でも苔農家を目指すことは可能ですので、苔を上手に育てるコツや採取の際に注意すべきポイントとともに基礎知識をまとめてみました。苔を売って稼ぐというのは一風変わった副業ですが、この記事を読めばビジネスとして立派に通用する理由が理解できるようになります。
庭や山に生えている苔が売れる理由
苔は民家の庭や公園・山林だけでなく、そのへんの道端でもアスファルトの隙間や側溝の中にまで生えているほど生命力の強い植物です。植物体を固定するための仮根はありながら水分を吸収するための根は持たないため、コンクリートの上だろうと壁だろうとどこにでも繁殖する底力を秘めています。
根ではなく葉を使って空気中から水分を吸収する仕組みとなっているせいか、苔は日当たりのあまり良くないじめじめした場所を好むのが特徴です。以前は苔が生えるような場所が嫌われがちだったため良いイメージを持たれていませんでしたが、最近は若い女性の間でも苔が人気を集めるほど評価が大きく様変わりしています。盆栽に似た苔玉と呼ばれるコンパクトなアレンジメントがブームを呼んでおり、苔を緑のアクセントに使ったテラリウムもお洒落なインテリアとしても人気です。
そうした個人の苔愛好家に需要があるだけでなく、造園業者や一般企業の間でも苔の需要が高まっています。造園業者は依頼主の庭に敷き詰める目的で、工場などを運営する企業は屋上や敷地内を緑化する目的で、それぞれ大量の苔を必要としているのです。
多方面の需要が期待できる苔は園芸店が主な供給元ですが、一般の個人の中にも自分で採ってきたり栽培したりした苔を売って収入を得ている人は少なくありません。近年はまさに苔ビジネスとも言える稼ぎ方が確立され、拾ってきた石や流木が売れるのと同じく副業として成り立つようになってきているのです。
女性に人気の苔玉アレンジメント
ベランダや室内に飾る植物と言えばフラワーアレンジメントや観葉植物が代表的ですが、根の部分を包み込む土の表面を苔で丸く覆った苔玉も女性に人気のアレンジメントです。盆栽の世界でも鉢から取り出して水盤の上に置き、根を含めた植物の全体を鑑賞する根洗いという技法があります。苔玉は盆栽の根洗いをルーツとして、植物の根の部分を苔で覆うように発展させた新しい技法です。
苔玉を作る際にはシート状にしたシノブ苔と呼ばれる材料が必要で、通常は土などとともに園芸店などから購入して用意します。作ってから時間が経って変色したりハリ・ツヤがなくなったりした苔を蘇らせる際にも、張り替え用の新しい苔が必要です。
苔を使ったお洒落なテラリウム
お洒落な室内空間を演出するのに使われる苔は、他の植物と組み合わせて飾る苔玉ばかりではありません。小さなボトルやガラス容器・水槽などに苔を飾り付けたテラリウムも、お洒落なインテリアとして多くの人に愛好されています。苔と一緒に流木や石を配置したり、苔と同じように湿った環境を好む植物を加えたりするアレンジも人気です。
室内に小さな自然を再現するテラリウムはまさに箱庭の世界で、庭のない集合住宅の室内でも緑を手軽に楽しめます。テラリウム用の苔は園芸店やアクアリウムショップなどで売られていますが、その気になれば自分で野外から採取してきた苔を飾り付けることも可能です。
園芸店では苔の買取不可?
苔玉やテラリウムに使う苔は園芸店などで購入するのが一般的ですが、店で売られている苔は業者を通じて仕入れた品です。園芸店は信頼できる取引先業者から仕入れた商品を販売するのが普通で、リサイクルショップなどと違って個人から植物や苔を買取することはありません。自分の家の庭や道端に生えている苔を採ってきてそういう店に持ち込んでも、相手にしてもらえる可能性は極めて低いと言えます。
山林を所有していて良質な苔を大量に採取可能な人であれば、個人事業主の扱いでも取引先として仕入れの対象に加えてもらえる可能性はあります。そうなると誰にでもできる稼ぎ方とは言えなくなってしまいますので、一般の個人が副業として苔を売るには買取以外の方法を選ぶしかありません。
幸いヤフオク!やメルカリでは苔の出品が可能で、実際に庭や山から採ってきた苔でも買い手がついています。苔を売る副業を手がけている人の大半はこうしたネットオークションやフリマアプリを利用し、個人対個人の取引で収益を上げているのです。
副業苔農家を目指す方法
苔を売ってお金を稼いでいる人の中には野外から採取するだけでなく、自分で栽培した苔を販売して売上を増やしている人も少なくありません。山林の所有者や農家が副業として苔の栽培を手がけているケースが多いため、そうした手法で稼いでいる人たちは苔農家とも呼ばれています。
苔を売るだけで生計を成り立たせるのは難しいように思いがちですが、苔はコメの10倍儲かると言う人がいるほど収益性の高い「作物」です。実際に造園業者に卸したり苔通販サイトを運営したりして、年商3千万円を稼いだ苔農家の例がテレビでも紹介されました。
さすがに副業レベルでここまで稼ぐのは困難ですが、庭や山から採ってきた苔を増やした上で販売すれば収益性が上がるのは間違いありません。苔は他の農作物と違って、生育に適した環境にさえ置いていればほとんど放置していても勝手に増えていきます。栽培するのにそれほど手間がかからないという点では、苔は忙しい会社員の副業に向いた商品なのです。
苔を採取する際の注意点
日本国内で採取が可能な苔はおよそ1,800種類もあるだけに、限られた場所にしか生息しない貴重な種類も含まれます。ヤフオク!やメルカリに出品されている苔はどの種類でも値段が同じというわけではなく、供給量の少ない種類ほど高値で取引されているのは当然の市場原理です。
ヤフオク!では苔の平均落札価格が1,000円を少し上回る程度ですが、貴重な苔や人気の高い苔ほど高額で落札される傾向にあります。スギゴケやハイゴケなどは街中でも見かけるほどありふれた種類のため、出品しても高値ではなかなか売れません。人気の高いカサゴケはトレイ1枚が5,000円で売れることもあり、希少種を除けば最も高値で売れやすい種類です。
もっと効率的に稼ぎたいばかりに山岳地帯から貴重な種類の苔を採取しようとする人もいますが、国立公園や国定公園に指定されている区域では採取が禁止されています。神社や神社の境内を含めた私有地で苔を採取する場合でも勝手に持ち去るのはNGで、原則として所有者の許可が必要です。
自治体が管理するの公園や国有林などの場合は少量なら苔を採取しても大目に見られますが、業として大量に採取した場合は罰則の対象となる可能性もあります。元手をかけずに栽培用の苔を入手する際にはその場所が採取可能なのかどうか、事前にしっかりと確認しておくことが欠かせません。
苔を増やして稼ぐ
道端に雑草のようにして生えている苔であれば、私有地でもない限り特別な許可を得なくても採取は可能と考えられます。私有地でない山林なども少量なら苔を採って咎められることはありませんが、違法にならない範囲で集めた程度の量では大きく稼ぐのが難しいものです。
苔ビジネスと呼ぶほどの収益を得るには、採ってきた苔を栽培して増やす必要も出てきます。ハイゴケやスナゴケであれば細切れにほぐした苔を土の上に撒いておくだけで新芽が出てきますので、土が乾燥しないよう霧吹きで湿らせながら栽培にチャレンジしてみるといいでしょう。
集合住宅などに住んでいて庭がないという人でも、園芸用のトレイやテラリウム用の容器を使えば苔の栽培は可能です。苔玉などの形に加工した苔はヤフオク!やメルカリでも高値で売れる可能性がありますので、センスに自信のある人は挑戦してみる価値があります。
苔を売ってお金を稼ぐ方法まとめ
そのへんの道端にも生えている苔を売って収入が得られるというのは不思議なようでもありますが、それだけ苔の採取を面倒だと感じている人が多い証拠です。苔を愛好する個人や大量の苔を必要とする造園業者の中には、お金を払ってでも買った方が早いと考えている人が少なくありません。
そこに苔ビジネスが成り立つチャンスも出てくるわけですが、採ってきた苔をそのまま買取してくれる店を見つけるのは困難です。苔を売って稼ぐにはネットオークションやフリマアプリを利用するのが一般的で、そこにはライバルも多くひしめいています。苔を少しでも高く売るには希少価値の高い苔を育てて出品するか、または苔玉に仕立て上げるなりして付加価値を高める工夫が欠かせません。
まずは庭や山から苔を採ってきて出品し、苔が実際に売れるという事実を体験してみることから始めるのが無難です。慣れてきたら栽培して増やした苔を売る苔農家へとステップアップしていけば、副業でも大きく稼げる可能性が広がります。