毎年春から夏にかけての季節に勢いを増してくるのが、「雑草」の名で総称されるさまざまな植物です。畑や庭では厄介者扱いされていますが、「雑草でお金を稼ぐ」という逆転の発想で活用している人たちがいます。「雑草ビジネス」と呼ばれる手法で収入を増やそうという一種の副業です。
当ブログではこれまでに、さまざまな自然物を活用してお金を稼ぐ副業を紹介してきました。庭や畑の雑草も、副業で稼ぐ手段になり得る自然物の1つです。雑草が生えるような土地を持たない人でも、必要な許可を得れば同じようにやってできないことはありません。
ただ同然で手に入る雑草がどうしてお金になるのか、実際に行われている雑草ビジネスを6つにまとめてみました。この記事を読めば、元手0円で収入を増やせるようになります。
雑草が売れる理由
雑草と言えば、何の価値もないものだと思いがちです。庭や畑に勝手に生えてくる雑草にも、お金を出して買いたいという人は存在します。「雑草という草はない」とは、有名な植物学者・牧野富太郎の言葉です。
ある人にとっては邪魔な「雑草」でも、別の人にとっては有用な植物ということはあり得ます。畑で野菜を作ったり庭で花を育てたりしている人にとって、勝手に生えてくる雑草はただ同然で手に入る自然物です。
ドライフラワーの材料やペットの餌用に欲しいと思っても、自然の少ない環境に住んでいる人はなかなか手に入りません。お金を出してでも買いたいという人が出てくるわけです。需要と供給が一致するところに、ビジネスチャンスが生まれてきます。
雑草ビジネスのアイデア6選
実際に雑草ビジネスを実践している人たちは、どのようにしてお金に換えているのでしょうか?
雑草として一括りにされている植物にも、種類によってさまざまな用途があります。雑草ビジネスのアイデアとして考えられる稼ぎ方は以下の通りです。
- 雑草を食用・薬用として売る
- ペットの餌用として売る
- ドライフラワーにして売る
- 観賞用に苗を育てて売る
- 種や実を採取して売る
- 草刈り代行で稼ぐ
それぞれ詳しく解説します。
雑草を食用・薬用として売る
畑や庭に勝手に生えてくる雑草の中にも、食べられる種類のものが意外と多くあります。
スベリヒユやヨモギなどは、食用にされている雑草の代表格です。ヨモギやドクダミ・タンポポ・スギナ・ツユクサなどは、薬用としての効能も知られています。
野草茶の材料にする目的で、乾燥させたものを販売するような稼ぎ方も可能です。セイタカアワダチソウやヨモギ・ドクダミなどは、入浴剤の材料にも使われています。
雑草を食用や薬用として売る場合には、よく似た毒草を誤って販売することがないよう注意が必要です。健康被害を引き起こしてしまうと、たとえ素人でも責任を問われることになります。
ペットのエサ用として売る
人の食用としてはそれほど人気がない植物でも、ウサギやリクガメなどのエサ用として雑草を購入しようという需要が存在します。小動物のエサ用に雑草を買ってくれた人は、以後もリピーターになる可能性のある上客です。
個人間での雑草売買に多く利用されているメルカリの例を見ると、以下のような野草がペットのエサ用として完売していました。
- ハコベ
- ノゲシ
- ヤブガラシ
- カラスノエンドウ
- 笹の葉
- シロツメクサ(クローバー)
- タンポポ
- オオバコ(乾燥させたもの)
- ヨモギ(苗)
いずれも郊外なら道端でもよく見かける雑草ですが、環境によっては農薬や除草剤の影響を受けている場合もあります。庭や畑から採取した雑草であれば(除草剤などを撒いていない限り)、出品の際に「無農薬」と表示することで安全性をアピールすることも可能です。
花材として売る
最近は花屋さんでもフラワーアレンジメントの材料として、ススキやナズナ(タラスピ)のような雑草を扱う店が増えています。エノコログサやヌカキビ・チカラシバ・ガゼクサのようなイネ科の雑草は、栽培して花屋に出荷している農家もいるほどです。
素人では花屋さんに卸すのは難しいかもしれませんが、メルカリのようなフリマアプリに出品して売るというやり方もあります。花材として活用されている種類の雑草を出品すれば、買ってくれる人が出てくるかもしれません。
ドライフラワーにして売る
ドライフラワーと言えばバラやラベンダー・アジサイなどが人気ですが、畑や庭に生える雑草もドライフラワーの材料になります。エノコログサ(ネコジャラシ)やセイタカアワダチソウ、ススキ・ナズナ・ハルジオンといった植物です。
ただで手に入る雑草にも、乾燥のひと手間を加えることで商品価値が生まれます。コバンソウやチガヤなども、ドライフラワーの材料として人気のある雑草です。染料(100円ショップで買えるプリンタ用のインクで十分)を吸わせ、色鮮やかにさせた上で乾燥させれば売れやすくなります。
苗を育てて売る
食用・薬用や花材・観賞用として需要がある雑草を、庭やベランダで栽培したいという人もいます。雑草と言えども種から育てるのは難しいですが、苗を入手できれば育てやすいものです。
そんな需要を見込んで、メルカリではさまざまな雑草の苗が出品されています。ヨモギやハコベ・ツユクサなどは、苗が売れる雑草の代表格です。
雑草の種を発芽させて苗まで育てるのはなかなか大変ですが、成功すれば収益率の高い商品になり得ます。腕に覚えがある人はチャレンジしてみるといいでしょう。
種や実を採取して売る
食用や花材になる雑草を種から育てようと思っても、ホームセンターや園芸店などではなかなか売っていないものです。売られているのは野菜や園芸品種の種が中心で、種が市販されていない雑草は少なくありません。
そんな需要の空白域にこそ、ビジネスチャンスが出てくるというものです。「種から育ててみたい」という需要のある植物に限られますが、庭や畑の雑草から採取した種も立派な「商品」になり得ます。
また「ひっつき虫」などと呼ばれて子どもの遊び道具になるオナモミの実も、メルカリでは意外に売れている商品の1つです。自由研究・工作やハンドメイドの材料にも利用されています。庭や畑にオナモミが生えていたら、採取した実を出品してみるといいでしょう。
草刈り代行で稼ぐ
雑草ビジネスのアイデアとして最後に紹介するのは、雑草そのものを売るのではなく、土地の所有者に代わって雑草を駆除する「草刈り代行」の仕事です。駐車場や空き地などで雑草を刈る仕事に加え、高齢などの理由で「庭や畑の雑草を刈ってほしい」という人からの依頼も考えられます。
造園業者や便利屋。シルバー人材センターなどの業者でも草刈り代行サービスを展開していますが、個人で仕事を請け負うことも可能です。個人で草刈り代行サービスを提供するには、業者に負けないだけの営業力も必要になってきます。雑草ビジネスとしては難易度が高めですが、リピーターを獲得すれば安定収入につながる稼ぎ方です。
雑草を売る方法
草刈り代行以外の雑草ビジネスは、雑草を販売することで収益を得る稼ぎ方です。雑草はそのへんの道端にも生えている植物ですので、そう簡単に売れるものではありません。
雑草そのものを売るにしても、雑草を加工して売るにしても、販売方法にはひと工夫が必要になってきます。販路として考えられる売り方は以下の通りです。
- 道の駅や農産物直売所で委託販売
- 知り合いの店舗に置かせてもらう
- フリマサイトに出品
- ネットショップを運営
いずれも農地や家庭菜園で収穫した野菜を個人で販売する方法と一致してきます。野菜の販売方法については、以下の記事で詳しく解説しておきました。
高く売れる雑草
ありふれた雑草もペットのエサ用なら需要は期待できますが、出品価格は1,000円未満という例が大半です。元手0円の雑草であっても、採取や梱包作業の手間はかかります。
フリマアプリを使って販売する際には送料を出品者側で負担するのが通例ですので、売上から送料と梱包費用・販売手数料を引いた残りが最終的な収益です。労力に見合うだけの収入が得られなければ、普通にアルバイトの仕事をした方がよほど稼げるという結果に終わりかねません。
「もっと効率的に稼ぎたい」という場合には、珍しい種類の山野草を栽培して増やしたものを売るという手もあります。珍しい種類の山野草なら、苗や種・球根も高値で取引されている状況です。
クマガイソウやヤマユリは花の観賞用として人気が高く、サギソウやトキワシノブなども数千円で取引されています。沖縄県や奄美地方で雑草のように生えてるクワズイモも、斑入りなら1万円以上の高値で売れた例がありました。ただの雑草も場所が変われば珍しい山野草になり得ますので、地方在住の人は雑草の販売で稼ぐチャンスです。
2021年頃にはネットオークションで希少な観葉植物の価格が高騰し、「雑草バブル」と言われるほどの活況を呈していました。雑草バブルと言っても、平凡な雑草が高く売れていたわけはありません。
10万円以上の高値で落札されていたのはフィロデンドロンやモンステラなど、主に熱帯地方原産の観葉植物です。熱帯のジャングルでは雑草のように見かける植物かもしれませんが、温帯気候の日本ではそう簡単に入手できません。日本の一部地域に分布するクワズイモも、雑草バブル当時は価格が高騰していました。
いずれも現在は価格が落ち着いていて、雑草バブルと呼ばれた状況は沈静化してきています。2025年7月現在、Yahoo!オークションで過去180日間の平均落札価格は以下の通りです。
- フィロデンドロン4,815円
- モンステラ7,377円
- クワズイモ3,815円
フィロデンドロンやモンステラなら、10万円以上で落札された例もまだあります。
いずれもこの記事を最初に投稿した2022年と比べて、最高額と平均落札価格は下落傾向です。以前ほどの極端な高値では売れなくなりましたが、他のありふれた雑草よりは高く売れる可能性はあります。
雑草販売の注意点
自宅の庭や所有する畑に生える雑草なら問題ありませんが、公有地や他人の所有地で採取する場合は注意が必要になってきます。
道端に生えている雑草は邪魔者扱いされているくらいですので、勝手に採取しても構わないように思いがちです。実際には場所によって判断が異なり、植物の採取が違法になる場合もあります。その場所が私有地となっている場合には、原則として土地の所有者に許可を得ないまま雑草を採取することはできません。
公道の道端や河川敷・自治体の管理する公園などの場合、勝手に生えてきた雑草であっても管理者の財物扱いです。雑草を採取する際にも法律を厳密に適用すれば、いちいち管理者の許可を得る必要があります。
現実にはそこまでうるさいことは言わず、個人で利用する範囲内であれば大目に見られているのが実情です。観賞用の山野草やペットのエサ用の雑草に限らず、食用の山菜も同じように採取が黙認されています。法的にはグレーゾーンの状態ですので、販売目的で雑草を大量に採取しようという場合には、念のため管理者の許可を得ておくのが無難です。
国立公園や国定公園・都道府県立自然公園など、自然公園法の対象となっている場所では雑草と言えども採取が厳しく制限されています。自然公園内の特別保護地区では、草1本でも持ち出すのは厳禁です。
特に希少な高山植物が盗掘される被害は、以前から大きな問題とされてきました。珍しい山野草が株ごと持ち去られた例の多くは、個人の鑑賞目的ではなく販売目的ではないかと推察されます。
公有地や他人の私有地に生えている植物を採取する際の注意点については、以下の記事でも詳しく解説しておきました。
まとめ
ある人にとってはただのありふれた雑草でも、住む環境が違えば「お金を出してでも買いたい植物」になり得ます。そんな需要と供給のギャップがあるところにこそ、雑草ビジネスが成り立つ余地が出てくるというものです。
本格的な農業と違って本業の仕事にするのは難しい面もありますが、副業なら月に数万円前後でも稼げれば上出来と言えます。畑で野菜を作っていて雑草に手を焼いているという人や、庭の雑草を活用できないかと思っている人は、この記事で紹介したような「雑草ビジネス」を検討してみるといいでしょう。