太平洋沿岸各県の河川では、シラスウナギ漁が冬の風物詩となっています。シラスウナギは高級魚として人気が高いウナギの稚魚だけに、養殖業者に高値で売れる魚種の代表格です。
シラスウナギ漁は「儲かる副業」としても紹介されていますが、漁を行うには許可が必要という情報もあります。当ブログでは水産物を扱う仕事を取り上げる中で、関連する法律についても調べてきました。
シラスウナギは漁業法で採捕が禁止された特定水産動植物に該当します。遊漁者がシラスウナギ漁を行うのはNGですが、漁業の許可を得ていれば採捕が可能です。漁業法の改正に伴う3年の猶予期間を経て、令和5年12月1日にはシラスウナギの密漁が厳罰化されます。
そこで今回は許可を得てシラスウナギ漁を行う方法について、最新情報をまとめてみました。シラスウナギは不漁が続いているだけに、価格高騰時には1キロあたり100万円超の高値で取引されることもあります。きちんと許可を得ていれば、シラスウナギ漁は一攫千金も狙える仕事です。
シラスウナギが高値で売れる理由
スーパーの鮮魚売場で売られている魚の中でも、ウナギは最も高く売れる商品です。牛丼チェーンでは安価な中国産のウナギを使った鰻丼も提供されていますが、ウナギ専門店では高価な日本産の材料を使用しています。
スーパーにしても飲食店にしても、ウナギの99%は養殖物です。養殖と言っても、卵を孵化させて育てる「完全養殖」ではありません。天然ウナギの稚魚=シラスウナギを養魚池に入れ、1年から2年ほどかけて大きくしてから出荷しています。
ニホンウナギの生態は謎に包まれていましたが、マリアナ諸島付近の海嶺を産卵場所としていることがわかってきました。孵化した稚魚は黒潮の流れに乗って日本近海までやってきて、太平洋沿岸の河川を遡上した後に成長して成魚になります。
近年はこのシラスウナギの数が激減して不漁が相次いだことから、1キロあたり100万円を超えるような高値で取引されている状況です。シラスウナギ漁が盛んな県では、資源保護のために漁獲制限を設けているところも出てきています。
シラスウナギ漁は許可が必要?
シラスウナギはアワビやナマコとともに、原則として採捕が禁止された特定第一種水産動植物に指定されています。漁業権を持つ事業者や、漁業の許可を得た人でなければ採捕ができません。許可を得ないでシラスウナギを採捕した場合には密漁ということになり、罰則の対象とされます。
令和2年に漁業法が改正されたことで、特定第一種水産動植物の密漁が厳罰化されました。改正前は「6か月以下の懲役または10万円以下の罰金」だった罰則が、改正後は「3年以下の懲役または3,000万円以下の罰金」へと大幅に引き上げられます。違反した場合の罰金が300倍にもなるわけです。
アワビとナマコに関しては、すでに令和2年の改正時点で新たな罰則が適用されています。3年間の猶予期間が設けられたシラスウナギにも、令和5年12月1日からは改正後の罰則が適用されることになります。シラスウナギ漁を行うには所轄の農林水産振興事務所に申請し、都道府県知事または農林水産大臣の許可が必要です。
漁業法の改正に伴って、シラスウナギ漁の許可方式も変更になりました。従来は試験研究などの目的に応じた特別採捕許可でしたが、改正後は一般魚種と同様に知事許可漁業ということになります。必要な許可を得た上で漁獲高を報告していれば、同一県内に限定されない自由な販売が可能です。
シラスウナギ漁を副業にする方法
シラスウナギは高値で取引されているため、「儲かる副業」と紹介されてきました。実際にシラスウナギ漁を行っているのは、プロの漁師に限りません。農家や普通の会社員が冬場限定の副業として、シラスウナギ漁をしている例もよくあります。
漁業法の改正で密漁に対する規制は厳しくなりましたが、シラスウナギ漁を副業にする道が閉ざされたわけではありません。以下のような2つの方法が考えられます。
- シラスウナギ漁を手がける業者のアルバイト
- 個人でシラスウナギ漁の許可を取得
シラスウナギ漁のバイト
シラスウナギ漁を副業にする手段の1つ目は、許可を得て操業している業者に雇われて働く方法です。業者の従業員として働く限りは、個人でシラスウナギ漁の許可を取得する必要はありません。
ただし求人サイトでシラスウナギ漁のアルバイトを検索してみても、求人の募集がなかなか見つからないのが現状です。シラスウナギは莫大な儲けを生み出す魚種だけに、過去には暴力団の資金源にも利用されてきました。暴力団の息がかかった業者が借金を抱えた人を雇い、冬の川に入ってシラスウナギを取らせるような例です。
許可証を持たない密漁で取ったシラスウナギは、裏のルートを通じて高値で取引されます。シラスウナギ漁にはそんな闇の部分もあるせいか、表立ってアルバイトの求人を募集する正規の業者は多くないのが現状です。
仮にアルバイトの求人が見つかっても、正規のルートで取引している業者とは限りません。求人に応募する際には、業者の素性をよく確認してから連絡することをおすすめします。
個人でシラスウナギ漁の許可を取得
個人で必要な許可を取得すれば、業者の求人が見つからなくてもシラスウナギ漁を副業にできるようになります。実際にシラスウナギ漁の現場では、個人で漁を行っている人も少なくありません。シラスウナギが捕れる河川の漁協に加盟した上で、必要な申請を行って許可を取得するのが一般的です。
発行する許可証の数に制限を設けている県も少なくないため、欠員が出るまでなかなか許可が降りない場合もあります。許可の取得方法や条件に関しては、シラスウナギ漁を管理している漁協に問い合わせてみるといいでしょう。
シラスウナギ漁の時期
ニホンウナギがマリアナ諸島の西方海域で産卵するのは、早春から夏頃にかけての時期です。孵化した稚魚は黒潮の流れに乗って日本近海に達し、12月から4月頃にかけて沿岸の河川を遡上してきます。
シラスウナギ漁もウナギの稚魚が遡上する時期に合わせて行われるため、冬場に限定した仕事です。決められた漁獲量に達した場合には、4月を待たずに漁が打ち切られることもあります。解禁される時期や漁期は漁協によって異なりますので、事前に確認しておくといいでしょう。
シラスウナギの取れる場所
日本国内でシラスウナギが捕れる場所は、黒潮の流れに沿った太平洋側に河口を持つ河川が中心です。以下の各県は、昔からシラスウナギ漁が盛んでした。
- 千葉県
- 神奈川県
- 静岡県
- 愛知県
- 三重県
- 和歌山県
- 徳島県
- 高知県
- 宮崎県
- 鹿児島県
高知県の四万十川や徳島県の吉野川、静岡県の大井川などは、古くからシラスウナギ漁で有名な河川です。関東地方でも千葉県の利根川や神奈川県の江ノ島周辺など、シラスウナギが捕れる川や砂浜は多くあります。
シラスウナギの取り方
シラスウナギ漁は漁業の一種に数えられますが、漁船や大型の網が必須というわけではありません。船や仕掛け網を使用しているのは、一部の漁業者に限られます。最低限必要な道具はタモ網とバケツ、それにシラスウナギをおびき寄せるための集魚灯です。
シラスウナギは夜行性で、光に集まってくる性質があります。シラスウナギ漁が夜間に行われるのも、光に寄ってくる性質を利用して捕獲するのが目的です。
シラスウナギ用の集魚灯は1万円前後、タモ網は数千円ほどで買えます。釣り用のウェーダーも5,000円前後で購入できますが、もっと安い長靴で漁を行うことも可能です。あとは1,000円前後のバケツや容器を用意すれば、シラスウナギ漁に必要な道具は揃います。
夜になったら水中に集魚灯を入れ、光に寄ってきたシラスウナギを網で捕獲するのが基本です。集めたシラスウナギは仲買人に販売し、最終的にはウナギの養殖業者に納品されることになります。
満月の夜は明るすぎて集魚灯の効果が低くなるため、シラスウナギ漁には不向きです。穏やかな天候の日は不漁になることが多く、天候が荒れた日の方が好漁になりやすいという話もあります。
悪天候の日は事故の危険も高まりますので、安全面には十分な注意が必要です。冬に冷たい川の水に浸かってする仕事ですので、万全の防寒対策と体調管理にも気を配る必要があります。
シラスウナギの取引相場
水産庁が発表した「ニホンウナギ稚魚の池入数量と取引価格の推移」によると、令和5年漁期におけるニホンウナギ稚魚の取引価格は1キロあたり250万円にも達しました。平成30年漁期の299万円に次いで、過去2番目に高い水準です。
実際の取引価格は日によって上下しますが、過去には1キロあたり400万円を超えた例もあったという話です。
シラスウナギは体長5センチから6センチほどで、1匹の体重は0.2グラムほどしかありません。1キロは数千匹に相当しますが、価格高騰時には1匹あたり500円以上になる計算です。
達人クラスになると、一晩で10万円以上稼ぐ人もいます。その代わり条件が悪いと1匹も取れず、収入ゼロに終わる日も珍しくない仕事です。近年はシラスウナギそのものの数が減ってきているため、以前と比べて稼ぐのが難しくなってきています。
まとめ
シラスウナギ漁に関しては以前から黒い噂が絶えず、密漁や密売が横行してきた歴史もありました。漁業法が改正されて密漁が厳罰化されてからは、裏のルートで流通する量も減っていくものと予想されます。
正規の許可を得て漁を行う限りにおいては、稼げる副業になり得る冬場限定の仕事です。集魚灯とタモ網があれば個人でも始められますので、まずはシラスウナギ漁の許可を申請するところから始めてみるといいでしょう。