学校が夏休みにはいる7月や8月になると、宿題代行の問題が必ずと言っていいほど話題に上ります。依頼に応じて宿題のドリルや読書感想文・自由研究などを子どもの代わりに書き、見返りとして報酬を受け取るのが宿題代行バイトの仕事です。大学生相手の論文代行なども含めると宿題代行バイトは結構な収入になることから、現役の大学生だけでなく会社員や主婦の副業としても利用されてきました。
宿題代行バイトは在宅ワークの1ジャンルとして定着した感もありますが、違法ではないかという声もあります。実際のところはどうなのか、識者からは「教育犯罪」とまで言われて非難されている宿題代行の現状についてまとめてみました。
宿題代行が人気の理由
当ブログでもさまざまな代行の副業を取り上げてきましたが、家事代行や運転代行などと比べると宿題代行は一般的とは言い難い面があります。依頼人の多くは受験を控えていたり、習い事や部活で忙しかったりする子どもを持つ親です。子どもを受験勉強に専念させてあげる目的で依頼する親が多く、依頼内容も宿題ドリルだけでなく読書感想文や課題作文・自由研究・工作・ポスターにまで及びます。
それらの宿題をいかにも本人が書いたように思わせるため、筆跡なども本人のものとそっくりに真似るのが代行バイトの腕の見せどころです。宿題ドリルにしても全問正解すればいいというわけではなく、本人の学力に合わせて適度に間違えてみせるような技も必要になってきます。
納品された宿題は学校へ提出することになりますが、代行サービスを利用した事実が学校にバレることがあってはなりません。宿題代行バイトの仕事をこなすにはある程度の学力が求められるため、求人の対象は現役の大学生か、社会人の場合は大卒者に限られてきます。そういう意味では学習塾の講師や家庭教師のアルバイトと似た仕事ですが、本人の筆跡や学力などを模倣する必要があるという点では違ったスキルが求められる副業です。
宿題代行バイトを在宅の副業にする方法
お金を払ってまでして子どもの宿題を代わりにやってもらう行為に対しては、今もなお否定的な意見が少なくありません。数年前にテレビで報じられて問題視されるようになったせいもあって、宿題代行サービスを手がける業者も代行スタッフを堂々と募集できない事情があります。そのため一般的なアルバイト求人サイトで検索しても、宿題代行バイトの募集は見つからないのが普通です。
以前はヤフオク!やメルカリでも宿題代行の出品が可能でしたが、現在では後述するような経緯があって禁止されています。クラウドワークスやランサーズなどのクラウドソーシングサイトも同様の状況でです。そうした厳しい状況の中でも宿題代行の仕事をしようと思えば、以下に挙げる3つの方法のどれかを選ぶしかありません。
- 宿題代行業者で募集している求人に直接応募する
- ココナラなどのスキル販売サービスに出品する
- SNSやブログを使って自分で集客する
それぞれ詳しく見ていきます。
宿題代行業者の求人に応募
以前はもっと多くの業者が存在していたと見られますが、宿題代行が問題視されるようになったせいか、現在では数が激減しています。現時点で宿題代行サービスを展開している法人は、家庭教師の事業も同時展開しているジーニアスアシスト1社だけです。
ジーニアスアシストでは宿題代行のアルバイトを随時募集しており、履歴書データを添付した上でHPから求人に応募すれば登録することができます。家庭教師は時給1,200円からとなっていますが、宿題代行の給与は時給制ではなく完全出来高制です。
それ以外の宿題代行サービスはいずれも個人が運営していると見られ、アルバイトを募集しているところは見つかりませんでした。現役大学生や大学卒業者が在籍しているという宿題代行屋Qは、現時点で登録スタッフの募集を終了している状況です。
メルカリは宿題代行の出品が禁止
フリマアプリとして絶大な人気を誇るメルカリでは、宿題代行のようなサービスの出品は以前から禁止されていました。夏休みの自由研究や工作・読書感想文などの完成品は出品が可能でしたが、2018年からは出品禁止の方針を打ち出しています。
楽天が運営するフリマサイトのラクマや、ヤフーが運営するネットオークションサイトのヤフオクも同様に、現在は宿題代行の出品が禁止の対象です。いずれも文部科学省との合意に基づく方針だけに、違反すれば出品削除などの厳しい措置が避けられません。
ココナラに宿題代行サービスを出品
フルマアプリやネットオークションでは宿題代行の出品が禁止されていますが、スキルを売り買いできるココナラでは「宿題のお手伝い」「宿題サポート」という名目でサービスが多く出品されています。ココナラはオンラインでやり取りしながらサービスを提供するのが基本で、トークルームの機能を使えば画像の添付なども可能です。
出品価格は500円から1万円近い例まで幅が見られ、ライバル対策として相場より安く出品している人も少なくありません。ココナラで宿題サポートのサービスを提供した場合は、売上から22%が販売手数料として引かれる仕組みです。
ココナラ以外ではタイムチケットやジモティーにも、宿題に関連した出品が見られます。いずれも「宿題のお手伝い」「宿題見ます」といった名目で、依頼人を募集しているサービスです。
個人でSNSやブログを使って集客
宿題代行業者やスキル販売サービスを頼らず、自分でサービスを立ち上げて独自に集客している人もいます。集客の手段にはTwitterなどのSNSやブログが使われていますが、ブログ経由で仕事を獲得するには依頼人とどうやって接点を持つかが課題です。
多くの人は検索エンジンを頼りに宿題代行を引き受けてくれる人を探しているため、検索上位に表示されないと仕事の依頼がなかなか来ません。検索エンジンに依存しないSNSの方が情報拡散力に優れているため、依頼を獲得しやすいと言えます。
宿題代行の料金相場
宿題代行サービスは2014年頃にテレビ番組で取り上げられて問題視される以前から行われていただけに、宿題の種類ごとに料金の相場が成り立っています。小学生の算数や国語などの宿題ドリルは、1問あたり100円以上が平均相場です。ドリル1ページあたりの料金は500円ほどになり、1冊丸ごと引き受けて5,000円という例も少なくありません。
読書感想文や作文の代行になると400字詰原稿用紙1枚あたり2,500円以上が相場で、1文字あたりの単価にすると6円から7円ほどになる計算です。クラウドソーシングで募集されている一般的な記事ライティングの募集を見ると、文字単価が1円に満たない案件も珍しくありません。1文字あたり2円以上なら高単価の部類と言われる中では、読書感想文・作文代行は効率良く稼げる仕事だと言えます。
図画や標語ポスターの制作代行になると15,000円以上に相場が上がり、自由研究代行も20,000円以上という高単価の仕事です。大学の卒業論文や論文レポート代行はさらに難易度が高くなるため、1件で10万円の値が付く場合もあります。
慣れれば宿題代行の仕事で10万円以上を稼ぐことも可能ですが、本人の筆跡を真似たり子どもらしい視点で文章を書いたりするのは思ったよりも難しいものです。慣れないうちは必要以上に時間がかかりすぎてしまうため、時給換算にするとコンビニのバイトより稼げない可能性もあります。
オンライン家庭教師との比較
宿題代行と同じように在宅の副業として利用されている仕事の1つに、オンライン家庭教師が挙げられます。生徒の自宅を訪問して学習指導を行う対面型の家庭教師と違って、ZoomやSkypeなどを使うオンライン家庭教師なら在宅で完結する仕事です。オンラインの授業に対応した家庭教師センターに登録するか、または個人で生徒を募集して指導を行うスタイルが考えられます。
対象となる学年や難易度によっても金額は変わってきますが、家庭教師センターの料金は月額15,000円から40,000円程度が平均的な相場です。アルバイトやパートの家庭教師として雇用された場合の給料は、時給1,000円程度から2,500円以上までかなりの幅が見られます。1コマあたり60分から90分程度の授業を週に1回ほど受け持つことになりますが、運営会社の取り分として料金から半分以上の金額を引かれるのが一般的です。
家庭教師センターを通さず個人で生徒の親と直接契約を結んだ場合は、料金の全額を自分の収入にすることも可能になってきます。実際問題として生徒を自力で見つけるのが困難なため、ココナラのようなサービスを利用して集客するのが得策です。
この場合も売上から販売手数料を引いた残りの金額(ココナラは売上の22%)が報酬となる仕組みで、一般的な家庭教師センターよりは自分の取り分が多くなります。家庭教師センターでも完全出来高制の業務委託として働く場合、授業1コマあたりの報酬相場は2,500円前後です。
宿題代行はオンライン家庭教師と違って、1コマ単位で授業を行うわけではありません。ドリルや読書感想文・自由研究のような成果物を納品することで、対価を得ようとする仕事です。決められた納期さえ守っていれば、どの時間帯に作業をしても構いません。
そういう気楽さも副業として人気の一因ですが、作業に慣れていないと時給換算で思ったより稼げない場合もあり得ます。成果物に対する報酬額は決まっているだけに、完成までに時間をかければかけるほど時給換算で稼げる金額が減ってしまうからです。
宿題代行は「おいしい仕事」と受け取られている節もありますが、必ずしも効率的に稼げるとは限りません。子どもの筆跡を真似たりして工夫するのに手間取れば、オンライン家庭教師より稼げない可能性もあります。
なおオンライン家庭教師の仕事内容や給料の相場については、以下の記事で詳しく解説しておきました。
宿題代行サービスは違法?
すでに副業の一種として普及しつつあるとは言え、宿題代行に対しては今もなお批判的な意見が少なくありません。「尾木ママ」の愛称で知られる教育評論家の尾木直樹氏も、宿題代行に強く反対している識者の1人です。尾木ママのオフィシャルブログでは宿題代行を「教育詐欺」「教育犯罪」として、撤退を強く呼びかけています。
そうした批判の声を受けて文部科学省も宿題代行を取り締まる方向に動き、2018年にはYahoo!・楽天・メルカリの3社と出品禁止で合意に達しました。そうした動向を見ると宿題代行は違法のように思いがちですが、法律の専門家が吟味したところでは詐欺罪や偽計業務妨害罪・私文書偽造罪などの罪には当たらないとのことです。
それらの犯罪は被害者が存在しなければ立証できないため、刑法上の犯罪には当たらないと解釈されています。他人に代行してもらった宿題を提出する行為が学校を欺く結果になったとしても、金銭を騙し取るわけではないため詐欺罪は適用されません。したがって宿題代行バイトで稼いでも現時点では逮捕されることはありませんが、以下に挙げるようなモラル上の問題は残されます。
宿題代行が倫理的に問題とされる理由
ネットオークションやフリマアプリで宿題代行の出品が禁止されているのは、倫理的に見て問題があるというのが最大の理由です。夏休みの宿題を親が手伝ってあげるというのはよくある話で、親でなくても親族や知り合いに頼んで手伝ってもらうようなケースも珍しくありません。学校の先生方も夏休みの宿題を全員が自力で書いたものと信じているわけではなく、親などが手伝って完成させた例が含まれる可能性には気づいているはずです。
宿題代行もそうした風潮の延長線上として考え出されたサービスですが、第三者間で金銭のやり取りが生じるという点で大きく異なります。仕事や家事で忙しい親は自分で宿題を手伝う余裕がないために代行サービスを頼るわけですが、お金を出して宿題を買うような行為は子どもの教育に良くないというのが大方の意見です。
宿題そのものの意義を疑う子どもが増える結果になれば、宿題代行が横行することで学校教育そのものの崩壊にもつながりかねません。そういう危機感があるからこそ、文部科学省も宿題代行を禁止する方向に動いたとも考えられます。
お金を払って宿題を他人に丸投げするのは倫理的に問題がありますが、親や身近な大人に宿題を手伝ってもらう程度なら大目に見られるという人も少なくありません。その延長線上として、ココナラなどを利用した宿題の「お手伝い」ならぎりぎりセーフというわけです。
宿題代行を擁護する声も
2ch創設者のひろゆき氏は、宿題代行に対してもユニークな見解を示しています。親が代行業者を見つけてきて依頼するのは「反対」で、子どもが自力で見つけるなら「可」という意見です。
何でもお金で解決しようとするのは良くないという点に同意しつつも、ひろゆき氏は宿題の出し方自体に問題があると考えています。同じ考えを持つ大人(親)が少なくないからこそ、宿題代行が人気を集めているとも言えます。
実際に宿題代行を依頼している人の大半は親で、子どもが自力で代行業者を見つけるケースは決して多いとは言えません。夏休みなどに大量の宿題を出されるのは今に始まった話ではありませんが、加熱する受験や部活動で子どもたちの負担が昔より増えているのも事実です。
以前であれば子ども1人で消化しきれない場合に、親や身近な年長者が無償で宿題を代行する例も珍しくありませんでした。筆者も子どもに代わって宿題を書いた経験を持つ1人ですが、そういうボランティアとしての宿題代行は表に出にくいものです。
宿題代行はお金のやり取りが絡むビジネスだけに目立ちやすく、メディアにも目の敵にされている面があります。赤の他人が金銭を受け取って宿題を代行するのは悪で、身内の大人が無償で代行するのは可なのかどうか、そのへんの基準は必ずしも明確ではありません。
共働き世帯が増えて子どもの宿題を代わりにやってくれる大人が家庭内にいなくなると、お金を払ってでも代行業者を利用しようという人が出てきます。サービスの需要があれば、供給する人が出てくるのも世の習いです。
世の中には行列並び代行や結婚式出席代行・謝罪代行・墓参り代行など、常識人から見れば「不謹慎だ」と思えるような多種多様の代行業が存在します。宿題代行は子どもを対象とした点が非難されていますが、実際には大人の側の問題とも言えます。もともとは親がこっそり無償でやっていた宿題代行を、時代の変化で代行業者を頼るようになったために、問題が表面化してしまったのです。
そうした問題の中には受験や部活動で子どもの負担が増えている弊害だけでなく、大人が手伝ってやらなければこなしきれないほど大量の宿題を出す学校教育の弊害も含まれます。待機児童や少子化などと根を同じくする問題でもあるだけに、宿題代行を依頼する親にも同情の余地があります。
宿題代行バイトの現状まとめ
絶大な発言力を持つ教育界のインフルエンサーが「犯罪」とまで表現したこともあって、宿題代行は違法ではいかという不安の声が多く寄せられています。実際には立件できるような実害が生じるわけではないため違法には当たりませんが、以上のような理由で倫理的にNGという考え方が支配的です。
そうは言っても世の中から宿題代行の需要がなくならない限り、依頼に応えてあげようとする人が出てくるのも自然な成り行きです。宿題代行バイトを副業の手段に選ぶ際には、違法だと思っている人がまだまだ少なくない仕事だという点を承知しておく必要があります。
そうした点に不安な人でも、宿題の「代行」ではなく「指導」であれば理解されやすいはずです。宿題代行と同じように在宅で稼げるオンライン家庭教師のバイトや、ココナラを利用した「宿題サポート」サービスの出品を副業としておすすめします。