和製ドライフルーツとして古くから食されてきた干し柿は、月間2,000万人が利用するメルカリでも人気商品の1つです。自宅の庭で採れた柿を干し柿にしてメルカリに出品すれば、冬期間の副業にもなり得ます。
干し柿を販売するのに営業許可は不要ですが、食品衛生法上が改正されたことで保健所への届出が必要なケースも出てきました。どのような場合に届出が必要になるのか、干し柿の作り方や売り方と合わせて解説します。
干し柿を作る時期
そのままでも食べられる甘柿は糖度がそれほど高くないため、干し柿の材料には向いていません。タンニンが多く含まれる渋柿は渋抜きをしないと食用に適しませんが、糖度は甘柿よりも高くなっています。乾燥させることで渋味のもとになる水溶性のタンニンが不溶性に変わり、渋柿にもともと含まれていた甘味が引き立つようになるというわけです。
柿は早い品種だと8月や9月頃から収穫できるようになりますが、干し柿を作るのに適しているのはもっと遅い時期です。気温がまだ高い時期に干し始めると、柿にカビが生える恐れがあります。
気温が10℃以下にまで下がって空気も乾燥する時期が、干し柿を作るのに最も適した季節です。11月から3月にかけての冬期間はこの条件に当てはまり、12月頃が干し柿作りのピークとなります。昔から干し柿作りが盛んな地域では、農家にとって冬の貴重な収入源とされてきました。干し始めてから出来上がるまで、2週間から3週間ほどかかるのが一般的です。
干し柿の作り方
高枝切り鋏や脚立などを使用して干し柿用の柿を収穫する際には、ヘタの部分に枝が少し残るようにして切るのがコツです。あらかじめ60センチから70センチほどの長さに切っておいた紐(タコ糸でも可)を用意し、ヘタのところに枝がTの字型に残るようにして柿の皮をむいていきます。残した枝の部分に紐の両端を結びつけ、2個で1組になるようにして干すのが一般的です。
干す前に鍋で水を入れて沸騰させ、紐で結びつけた柿を熱湯に5秒ほど浸して殺菌すればカビが生えにくくなります。熱湯の代わりに焼酎やアルコールを使って殺菌するのも1つの方法です。
紐で結んだ柿を吊るして干す場所としては、日が当たって風通しの良い軒下が向いています。その条件さえ満たしていれば、集合住宅のベランダでも干し柿を作ることは可能です。
室内でも干し柿を作れないことはありませんが、屋外よりも風通しが悪かったり湿度が高かったりする場合もあります。扇風機を使って風を当て、必要に応じて除湿機を稼働させるなどの工夫も欠かせません。
軒先やベランダに柿を吊るして干す場合には、柿同士がくっつくとカビが生えやすくなります。洗濯物が乾きやすいようにするのと同じように、柿と柿を離すようにして干すのがコツです。干し始めてから1週間ほど経ったら柿を指で軽く揉み、さらに1週間ほど後にもう一度揉むことで渋が抜けやすくなります。
雨が当たるような場所に干す場合には、柿が濡れないように引き上げて室内に退避させておく必要があります。干し柿が出来上がるまでに普通は3週間ほどかかりますが、サイズが小さい柿なら2週間ほどで切り上げることも可能です。あまり長く干しすぎると硬くなってしまいますので、長くても1ヶ月から40日ほどで引き上げるようにするといいでしょう。
あんぽ柿の作り方
普通の干し柿は表面が乾燥して硬くなり、色も黒っぽく変化します。表面に白く粉を吹いたようになっているのは、渋柿にもともと含まれていた糖分(果糖)です。干し柿特有のこうした外観や食感が苦手な人も少なくありませんが、福島県で開発されたあんぽ柿は半生のように柔らかくジューシーな食感が味わえます。
あんぽ柿は硫黄を使って燻蒸させた独自の乾燥方法が特徴の干し柿で、見た目も普通の干し柿と違って鮮やかな橙色です。柿を収穫してから皮をむくまでの工程は、普通の干し柿を作るのとそれほど変わりありません。硫黄を使った薫蒸を行うには、紐と横木を使って吊るした柿の周りをブルーシートなどで覆う必要があります。ブルーシートの中で硫黄を燃焼させ、30分から1時間ほど燻すことでカビが生えにくくなるというわけです。
Photo by Okztosh(2005) / CC BY-SA 3.0
殺菌に使われた硫黄は柿を干す過程で蒸発するため、毒性は残りません。あんぽ柿の製造に使われる硫黄は、Amazonでも瓶に入った粉末の状態で入手が可能です。あんぽ柿を作るのに必ずしもこうした硫黄燻蒸の工程が必要というわけではありませが、市販のあんぽ柿はほぼ例外なく硫黄による殺菌の工程が行われています。硫黄燻蒸後の乾燥工程は普通の干し柿と同じでも、鮮やかな橙色で柔らかい食味のあんぽ柿に仕上がります。
硫黄燻蒸を行うと有毒の亜硫酸ガスが発生しますので、住宅密集地や室内での作業には向いていません。敷地に余裕がない場所では、普通の干し柿にしておくのが無難です。
干し柿の販売には許可が必要?
収穫した柿をメルカリなどに出品してそのまま販売するだけなら、野菜や山菜を売る場合と同じように営業許可や保健所への届出も必要ありません。収穫した農産物に手を加えて販売しようとすれば、加工食品の扱いとなって保健所の許可が必要になる場合も出てきます。野菜や果物を乾燥させるだけの簡易な加工であれば、営業許可を得なくても販売は可能です。
営業許可が不要なケースであっても、基本的には保健所への届出が必要になってきます。営業許可を得るような場合と違って専用の加工場所を用意する必要はなく、許可を得るための立入検査もありません。届出をするだけで認可されるのが一般的ですので、漬物を販売する場合などと比べれば手続きの難易度は低めです。
手作りの干し柿を販売する場合でも、自分で収穫した柿を材料とする場合は保健所への届出は必要ありません。自分で収穫した農産物を乾燥させるような簡易な加工は、食品衛生法上で規定された「食品採取業」の範囲内です。
厚生労働省の農業及び水産業における食品の採取業の範囲についてというガイドラインには、「干し柿の製造」は食品採取業の範囲外と規定されています。これには但し書きがあって、農家が自ら生産した農産物を原材料とする場合は食品採取業の対象です。
干し柿の販売に許可や届出必要かどうかについては、これまで自治体ごとに対応が異なる状況でした。食品衛生法の改正を受けて厚生労働省が以上のような見解を示したことにより、今後は自治体の対応も統一されてくるはずです。
食品衛生法が改正されてからまだ日が浅いだけに、周知が徹底されていない可能性もあります。自分で収穫した柿で作った干し柿を販売する場合は、念のため管轄の保健所に問い合わせて確認しておくといいでしょう。
知人からもらったり購入したりした渋柿で干し柿を作った場合は、食品採取業の範囲外です。干し柿を販売するには保健所への届出が必要になりますので、メルカリなどに出品する前に申請しておくことをおすすめします。
干し柿を売る方法
干し柿作りは昔から農家の副業として利用されてきましたが、販売方法は時代とともに大きく様変わりしています。市場で売ったり行商で売り歩いたりしたのは昔の話で、インターネットが発達した現在はネット通販やフリマアプリなど売る方法が多様化している状況です。
自分でネットショップを開設して直販の形で売ることも可能ですが、この場合は特定商取引法に基づいた表記が欠かせません。販売価格と送料・代金の支払い方法などの必要情報に加え、事業者の氏名と住所・電話番号といった個人情報の記載も必要です。ちょっとした副業のつもりで干し柿を販売しようとする人にとっては、個人情報を記載するのは少々ハードルが高いと感じてしまいます。
メルカリのようなフリマアプリを利用して販売する方法であれば、運営会社の側で特定商取引に関する表記をしているので安心です。メルカリに干し柿を出品する場合でも購入客に個人情報を開示する必要はなく、メルカリ便を使えば相手に自分の住所を伝えないで荷物を送る匿名配送も可能です。
メルカリでは野菜や果物・山菜など、農産物に分類される食品も数多く出品されています。干し柿は通販サイトで普通に注文すれば結構な値段がするだけに、メルカリでも人気商品の1つです。
メルカリでは干し柿に限らず、市販品より安く購入できるところが人気の一因となっています。農家から安く買い取った干し柿を数倍の価格で出品し、すぐに売り切れた人の例もあるほどの人気ぶりです。メルカリに出品しても必ず売れるとは限りませんが、自分で作った干し柿を売る方法としては有力な選択肢の1つとなってきます。
干し柿の販売でどれくらい儲かる?
楽天市場やAmazonなどの通販サイトで検索してみると、干し柿が1セット数千円ほどで販売されています。1万円前後で売られている商品も少なくない状況で、農産物の加工食品としては決して安価な商品ではありません。
それだけ干し柿を作るには手間がかかる証拠ですが、メルカリに出品されている干し柿は価格設定も低めです。それでも1,000円以上で出品している例が多い状況ですが、干し柿ファンにとっては十分に割安感があります。
1,500円程度で出品されている干し柿だと、分量はだいたい500g前後です。同じ分量でも他の通販サイトだと2,000円以上するのが普通だけに、メルカリで干し柿がよく売れているのも納得できます。
保健所に届出をすれば自分で柿を収穫しなくても、購入した渋柿を干し柿にして売ることで収益を得ることは可能です。メルカリでは干し柿用の渋柿が10キロ数千円程度で数多く出品されている状況で、1キロで1,000円を切る出品も少なくありません。
水分が抜けると重量は5分の1ほどに減りますが、干し柿にすることで商品価値が上がります。キロ単価が数百円程度だった渋柿が、干し柿になるとキロあたり数千円の価値が出てくるというわけです。
仕入れ値と売値の差額で儲ければ、干し柿作りも立派な副業になり得ます。メルカリにはライバルも多いだけに必ず売れるとは限りませんが、腕に自信のある人は試してみる価値があります。
まとめ
干し柿作りと言えばかつては農家の副業というイメージもありましたが、インターネットが普及した現在は誰にでもチャンスが与えられている状況です。庭に柿の木があって自分で収穫できる人は、手作りの干し柿を販売する場合でも保健所に届出をする必要はありません。
逆に届出さえ済ませれば、安く購入した渋柿で干し柿を作って高く売ることも可能です。庭に柿の木がなくても干し柿作りを副業にできるようになりますので、興味のある人はチャレンジしてみるといいでしょう。
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