副業の手段が多様化している中で、野外から採取した品が意外に高く売れるとして話題を集めています。流松ぼっくりや苔・流木などと並んで、山林や河川敷に生えている山菜もその1つです。
山菜なら放っておいても勝手に生えてくるため、野菜と違って畑に種をまいたり肥料を与えたりして栽培する必要がありません。山歩きが好きな人にとって山菜採りは趣味と実用を兼ねた副業になり得るますが、採取する場所には注意が必要です。
筆者は自然豊かな地方に住んでいて、山菜採り歴は20年以上に及びます。これまでの経験に基づいて、山菜を売る方法と稼ぐコツをまとめてみました。山菜採りに伴うさまざまな危険や注意点についても、記事の後半で詳しく解説します。
山菜採りが副業として成り立つ理由
日本は国土のおよそ3分の2を森林面積が占めるだけに、山菜を採って食す習慣が庶民の間で古くから定着していました。秋にはキノコも含めた山菜を採って売る仕事は、農家の副業としても貴重な収入源となっています。
近くに里山がある環境に住んでいる人ならほとんどただ同然で山菜を採ることもできますが、都市部に住んでいる人は自分で簡単に採って来られないだけに貴重な食材です。スーパーで売られている山菜の多くは栽培したもので収穫から日にちが経っているだけに、「本物の新鮮な山菜を食べたい」という人たちを相手に山菜を直接販売できれば結構な収入になります。
個人が採った山菜の販売ルートも以前は直売所や道の駅などに限定されていましが、最近はインターネットを利用して全国に配送することが可能になりました。以前と比べて販路が大きく拡大した現在は、山菜販売が副業として成り立ちやすい状況に変わってきているのです。
山菜を売る方法(1)道の駅
自分で採ってきた山菜を売る最もポピュラーな方法は、全国各地に1,000以上の店舗が存在する道の駅です。道の駅は交通量の多い幹線道路沿いにあって集客力が高く、新鮮な農産物が安く買える場所として人気を集めてきました。
道の駅では山菜を含めた農産物の生産者を随時募集しており、生産者として登録することで委託販売が可能になります。生産者登録の手続き方法や費用は各道の駅によって異なりますが、入会金や年会費はそれぞれ数千円程度です。売上から委託販売手数料が引かれ、バーコード・ラベル発行費用も引いた残りの金額が自分の収入になります。
山菜を売る方法(2)農産物直売所
山菜を売るもう1つの手段として以前からよく利用されてきたのは、スーパーや八百屋を通さず消費者に直接販売する農産物直売所です。最も小規模かつ低コストな例としては、道路沿いにある農地や自宅などの敷地内に自分で直売所を設置する販売方法が考えられます。畑から収穫した野菜などと同じように山菜も無人販売所に置いて売ることは可能ですが、防犯カメラを設置するなどの盗難対策も欠かせません。
JAなどが運営する農産物直売所は個人の直売所より集客力が高い反面、他の人も同じような山菜を出荷するためにどうしても競合が発生します。JAの直売所で売りたい場合は商品が山菜であってもJA組合員への加盟が必要で、道の駅で委託販売するよりハードルが高めです。
山菜を売る方法(3)ネットショップ
道の駅・農産物直売所ともに店舗を訪れる地元の人たちが主な販売対象で、販路は狭いエリアに限られてしまいます。都市型マルシェの直売所で販売しない限りは、店舗販売の形だと自分で採った山菜を都市部の人たちにまで届けることができません。
今はあらゆる商品がネットショップで買える時代だけに、山菜もインターネットを利用すれば販路を全国に拡大することが可能です。BASEやStores.jp、カラーミーショップなど、個人でもネットショップが開設できるサービスが多く存在します。この場合はどうやって集客するかが問題になるとともに、特定商取引法に基づいた販売者の氏名や住所・電話番号などの情報表示も必要です。
山菜を売る方法(4)フリマサイト
インターネットを利用した販売方法で最近増えているのは、メルカリやラクマなどのフリマサイトに山菜を出品する例です。メルカリでは家庭菜園などで収穫した野菜の出品例も多く、山菜もその延長のような感覚で出品している人が多いと見られます。自分の所有する土地に生える山菜であれば採るのも売るのも自由ですので、規約の範囲内であれば販路としてフリマサイトを利用するのは合法な手段です。
実際にメルカリではワラビやゼンマイ・タラの芽・行者ニンニク・ミズなど、さまざまな種類の山菜が出品されています。自分でネットショップを開設するのと違ってフリマサイトなら特定商取引法に基づく表示も必要なく、購入者とは匿名のやり取りが可能で気軽に出品できるところが人気の一因です。
メルカリで高く売れる山菜
山菜を売る手段としてすっかり定着した感のあるメルカリでは、出品価格にかなりの開きが見られます。最低価格の300円で出品されている山菜もあれば、1万円以上の高値で売れている山菜もあるという具合です。
中でもアイヌネギ」の異名を持つ行者ニンニクは、本州では深山でないとなかなか見つかりません。急斜面にまとまって生えている例も多いことから希少価値が高く、メルカリで高く売れている山菜の1つです。
メルカリで完売した山菜を価格の高い順に並べ替えてみると、1万円以上で売れた行者ニンニクの出品が複数見つかりました。3,000円から10,000円の価格帯を見ても、行者ニンニクの完売例が目立ちます。
それ以外の山菜ではシーズンの出始めに高値で売れやすいと見え、低地で採れるコゴミでも100株で1万円台という完売例がありました。ワラビやフキノトウもありふれた山菜の部類ですが、数千円で売れている例も少なくありません。必ずしも高く売れるとは限らず、出品者が増えると出品価格も下がる傾向が見られます。
天ぷらにすると美味しいタラの芽は数千円での完売例が多く、行者ニンニクに次いで高く売れやすい山菜の1つです。ゼンマイは普通のやり方だとアク抜きができないため、手間をかけて乾燥させたものが高値で売れています。この他にも葉ワサビや山ウド・天然セリといったところが、数千円でも完売例がある主な山菜です。
「姫竹」や「根曲がり竹」の異名を持つチシマザサのタケノコも、高地性のため希少価値があります。美味しいタケノコが採れる山は、入山料を徴収しているほどの人気ぶりです。5月から6月にかけてのシーズンが旬で、メルカリでも高値での出品が相次ぎます。
山菜採りの副業で注意すべきポイント
新型コロナウイルスの影響で激減した収入を補おうと、フリマサイトで山菜を販売する人は増加傾向です。普段からメルカリを利用した不用品販売や転売で収入を得ている人も、山菜にこれだけ需要があるとわかれば、自分も売ってみようと考える人が出てきます。そうした理由で慣れない山菜採りに挑戦しようという場合には、安全面やモラル面にへの配慮が欠かせません。
ネットショップやフリマアプリを利用して食品を販売する際にも、守るべきルールは存在します。自分で採ってきた山菜を売る場合に知っておきたい注意点をまとめてみました。
山菜とよく似た毒草には要注意
山菜の多くは生えてきたばかりの若芽を採取しますが、毒草の若芽と似ている種類も少なくない点には注意が必要です。過去には道の駅などで毒草や毒キノコを誤って販売し、食中毒事故が発生したケースもありました。
独特の香りが人気のシドケ(モミジガサ)は若芽が毒草のヤマトリカブトと似ているため、昔から中毒事故が多い山菜の代表格です。希少価値が高い行者ニンニクも毒草のイヌサフランやスズラン・バイケイソウと似ていますが、独特のニンニク臭で区別がつきます。
ゼンマイやヤマウドなどの山菜は急斜面の危険な場所に良い株が生えやすく、転落事故が跡を絶ちません。美味なタケノコとして根強い人気があるネマガリダケは人里離れた深山でないと採れない上に、見通しのきかない笹藪の中に生えるため毎年遭難事故が発生しています。
山で遭遇する可能性のある有害な生物
山菜採りの最中にクマやイノシシなどの野生動物と遭遇し、襲われてケガをしたり命を落としたりする人も少なくありません。夏から秋にかけてのシーズンはスズメバチの活動も活発になりますので、夏でも採れる山菜やキノコを探す際には襲われないよう注意しながら行動する必要があります。日本全国の山に住んでいるオオスズメバチは最も強力な毒を持つ危険な蜂で、土の中や木の空洞に巣を作るため気づくにくいのが特徴です。
地域によっては山林に吸血性のヤマビルが生息している場合がありますので、生息域の山に入る場合は服装や忌避剤による対策が欠かせません。谷筋で湿気が多い場所は良質な山菜が見つかりやすい場所ですが、藪にはマムシやヤマカガシなどの毒ヘビが潜んでいる可能性もあります。山で行動する際にはドクガの幼虫(毛虫)やムカデなど、スズメバチ以外にも毒を持つ昆虫に注意が必要です。
山菜採りが違法と判断されかねないケース
自分や家族で食べる分だけを採る場合も含め、自分の持つ私有林で山菜を採っているという人は一部にとどまります。多くの人は林道や登山道を通り、立入禁止でいない国有林や公有林などに入って山菜を採っているのが現状です。
国有林や公有林から勝手に山菜を採る行為は、厳密には森林窃盗罪に該当します。実際に摘発されたのは、よほど悪質な採り方をした場合の話です。山菜採りやキノコ採りに関しては、必ずしも法律が厳重に適用されているわけではありません。
畑などと違って山林は管理が緩いところも多く、森林窃盗罪を適用して違反者を捕まえるのは至難の業です。私有林などで明確に「立入禁止」と表示してある場合を除き、自分で消費する量の山菜を採る程度なら黙認されています。
とは言え販売を目的に山菜を大量採取する場合は、黙認してもらえるとは限りません。国有林や公有林で販売目的の山菜を採る際には、管轄する役所に申請して許可を取る必要があります。
国立公園や国定公園などの特別保護地区内で山菜を取るのは、天然記念物でなくても完全な違法行為です。立入禁止措置がされていない私有林の場合は、所有者の許可を得れば山菜を採取しても構いません。
いずれのケースでも、生えている山菜を根こそぎ採るのはNGです。来年以降も収穫できるようにするため、適度に残して採るのがマナーとされています。後から採りに来る人のことも考え、全部を採らないで敢えて残すのがスマートなやり方です。
加工販売や配送時の注意点
山菜は採取の際に以上のような注意点があるだけでなく、販売時にも法律や規約を守る必要があります。山菜を採ってきたままの状態で販売するだけなら問題ありませんが、乾燥やアク抜き処理を施した上で販売する場合は注意が必要です。
ゼンマイなどは一度乾燥させてから水で戻して食べるのが一般的で、道の駅やメルカリで販売する際にも乾燥ゼンマイの形で出品した方が当然売れやすくなります。タラの芽やコゴミなどアク抜きが必要ない山菜もありますが、ワラビなどはアク抜きした上で出品した方が商品としての付加価値が高まるのは間違いありません。
いずれのケースでも加工食品の扱いとなるため、保健所の許可を取った上で消費期限または賞味期限の表示が求められます。メルカリでは保健所などの許可がない加工食品の出品が禁止されており、期限の表示がなかったり到着後1週間以内に期限が切れる食品の出品も規約違反です。
山菜は鮮度が落ちやすいため、加工せずに採ってきたままの状態で配送する場合でも配慮が必要になってきます。水洗いはせず新聞紙などに包んで冷蔵しておけばたいていの山菜なら1週間程度は持ちますが、気温が上昇しやすい夏場は保冷対策を施して発送しないと傷んでしまうのです。
送料を上乗せしてクール便で送るならダンボールでも可能ですが、メルカリ便などを使って常温で配送する場合は保冷剤を入れた発泡スチロールを使うなどの対策が求められます。山菜は衣類などと違って発送や梱包費用が余計にかかってきますので、経費も計算に入れて価格設定する必要があります。
体験型販売の可能性
ネットショップやフリマサイトなどインターネットを利用した山菜販売の弱点は、購入する人が商品を直接見て品定めできないという点です。同じような山菜が多数出品されている中では、販売実績が豊富で信頼性が高いと評価されている出品者が選ばれやすくなります。
個人でネットショップを開設して山菜を売る場合は、自宅の敷地に直売所を設置するのと同じように、集客をどうするかが最大の課題です。SNSやブログ・YouTubeなどを併用しながら旬の山菜に関する情報を発信し、ネットショップの宣伝につなげるような工夫が求められます。
新型コロナウイルスの影響で打撃を受けたインバウンド業界でも、近年はモノの消費から体験型消費へと移行しつつありました。インターネットを介した山菜の販売でも同様に、バーチャルな体験を提供することで付加価値が高められる可能性があります。
実際に山菜を採る場面をGoProなどのアクションカメラで撮影し、編集した動画をYouTubeで公開してネットショップの販売ページに埋め込むアイデアはその一例です。こうすることで購入者に擬似的な山菜採りを体験してもらい、価格以上の付加価値を商品に付与することができます。
メルカリに山菜を出品する場合でも商品の写真を最大限に活用することで、動画のバーチャル体験に近づけることは可能です。出品の手間は余計にかかりますが、同じ画像を使い回すよりも出品ごとに商品の写真を撮影し直す方が購入者の信頼が得やすくなります。
山菜採りの副業まとめ
メルカリなどのフリマサイトを利用した山菜販売は最近登場してきた新しい手法だけに、法整備やモラル形成が追いついていない状態です。よく考えないで安易に山菜を採ってきて出品した場合は、思わぬクレームを受けたり規約違反に問われたりしかねません。以上に紹介したような注意点を心得た上で法律やマナーを守りながら鮮度などにも配慮して発送すれば、クレームを受けるリスクも低く抑えられます。
都会に住んでいて本物の山菜を簡単には購入できない環境にある人にとって、ネットショップやフリマサイトで山菜を手軽に購入できるのは便利なサービスです。そうした人たちに山菜採りの楽しさを動画や写真で伝えるような体験型販売が、ライバルに対抗する差別化の鍵になってきます。
きちんとモラルを守りながら山菜を採っている点を商品の説明文や動画のテロップでアピールすれば、お客さんも安心して購入できるものです。そうやって販売実績を積み重ねることでリピーターが付き、山菜採りが副業として成り立つようになります。
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