電気・ガス・水道の検針員は、人とあまり関わらずに稼げる仕事です。契約者宅を訪れて屋外のメーターを確認するのに、いちいち住人の許可を得る必要はありません。
コンビニや飲食店のアルバイトと違って、検針員のバイトなら接客も不要です。コミュニケーションが苦手な人でも務まりやすいことから、会社員や主婦の副業としても人気を集めています。
一見楽そうに思える仕事ですが、検針員のバイトは「きつい」という声も聞かれます。筆者の家にも水道の検針員とガスの検針員が毎月訪れますので、どういった点が大変なのか聞いてみました。
検針員の仕事のきついところを知っておけば、心の準備ができるようになります。記事の後半では、検針員の給料や将来性についても解説しておきました。「検針員のバイトに興味があるけれど、自分にできるかどうか不安」という人にとって、今回の記事は必読の内容です。
検針員はこんな仕事
各家庭の玄関付近や庭・駐車場などには、電気やガス・水道の使用量を示すメーターが設置されています。検針員が訪問してメーターの数値を読み取ることで使用量が判明し、月々の料金が決まる仕組みです。
電力会社などでは検診業務を自動化できるスマートメーターも普及しつつありますが、人力による検針作業に頼っているところも少なくありません。電力会社やガス会社・地方自治体から外部委託された会社に雇われ、検針業務を代行しているのが検針員です。
検針員の仕事は「アルバイト」と表現されることも多いですが、雇用契約を結んで働くとは限りません。検針代行会社と業務委託契約を結び、個人事業主の立場で働く人も増えています。
電気やガスと水道ではメーターを確認するやり方に違いもありますが、検針業務そのものはそれほど難しい仕事ではありません。契約者の自宅を訪問してメーターを探し出し、検針を行うのが主な仕事です。
かつては検針結果を手書きで入力していましたが、現在はハンディターミナルに入力する方式が普及しています。検診結果を入力して「お知らせ票」を印刷し、郵便受けに入れれば1件分の作業は終了です。特別な理由がない限り、訪問先の住人にいちいち検針の許可を得る必要はありません。
水道の検針だけは量水器ボックスの蓋を開けてメーターを目視する必要があるため、電気やガスの検針より手間がかかります。作業の負担を考慮してか、水道検針員の給料は電気やガスの検針員より高めです。
検針員の仕事がきついと言われる理由
人とあまり関わらずに済むという点では楽な仕事ですが、検針員のの間では「仕事がきつい」という声も少なくありません。楽なはずの仕事がきついとはどういうことなのか、気になる人も多いのではないでしょうか?
筆者の自宅(一軒家)にも、月に一度水道とガスの検針員が訪れます。家庭菜園を営んでいるため、庭で作業をしていてたまに顔を合わせることもあります。挨拶ついでに話を聞いたところでは、「基本的には楽だけど、きついところもある仕事」ということでした。
他の人の話も総合すると、検針員の仕事できつい点は以下の通りです。
- 夏の暑さがきつい
- 冬の寒さもきつい
- 雨や強風の日もきつい
- 検針そのものが困難なときがある
- 立ちっぱなしの仕事で体力が必要
- 犬に吠えられるのもきつい
- 休めないのがきつい
- 住人とトラブルで精神的にきつい
- 誤検針は許されない
1つ1つ見ていきましょう。
夏の暑さがきつい!
検針の仕事は、基本的に屋外で行います。夏は30℃以上の酷暑であっても、やるときはやらなければなりません。朝の涼しいうちに済ませることも可能ですが、早朝だけで回りきれない場合もあります。
猛暑の年になると、朝から30℃超えの日も珍しくありません。汗だくになりながらする仕事で、熱中症で倒れ人も出てきます。
検針員も工事現場の作業員や警備員並みに、万全の暑さ対策が必要です。こまめな水分補給はもちろんのこと、アイスベストやファン付き作業着を着用する検針員もいます。首の血管を冷やすネッククーラーも効果的です。
冬の寒さもきつい
筆者が住んでいるのは積雪の多い寒冷地のため、冬の検針作業も大変だという話です。除雪がされていない住宅の敷地で検針を行う際には、メーターのあるところまで雪を漕いでいかなければなりません。防寒着や携帯用カイロなどで寒さ対策をしていても、雪のせいで体が冷え切ってしまいます。
筆者はこの話を聞いて以降、検針日の前には庭をきちんと除雪するようになりました。水道のメーターが収納されている量水器は庭を通った一番奥にあるため、通路を確保するだけでも大変な作業です。雪が多い自治体では積雪期の検針業務を休止し、非積雪期のデータに基づく概算値で水道料金を請求しているところもあります。
雨や強風の日もきつい
夏や冬と比べて春や秋の検針は楽ですが、それも天気が良ければの話です。検針日はある程度決まっているため、雨が降ろうとも風が吹こうと任務をこなさなければなりません。
大雨や台風の中で検針作業をするのは、想像以上にきつい仕事です。ずぶ濡れになるのが避けられませんので、どんなに暑くても雨合羽を着用する必要があります。気温の低い冬場で風が強いと体感温度が余計に下がるため、万全の防寒対策が必要です。
検針そのものが困難な家もある
天候条件が悪くない場合でも、検針の作業そのものが困難な家があります。屋外に設置されたメーターが、検針のしやすいように維持管理されているとは限りません。
メーターの付近が雑草だらけになっていて、草の中に頭を突っ込むようにして検針をすることも珍しくないそうです。メーターのある場所にたどり着くまで顔が蜘蛛の巣に引っかかったり、土に埋もれたメーターを掘り出したりすることもあります。汚れても構わない服装でないと、検針作業はできません。
目がくらむような高所にメーターが設置されている場合は、検針の際に転落して怪我をしないように注意が必要です。直接確認できない場所にあるメーターの数値を見るために、専用の検針ミラーというものが発売されているほどです。
メーターが雑草や土に覆われていなくても、メーターボックスの中に物を入れている家は珍しくありません。メーターの付近にさまざまなガラクタが積まれていて、ゴミ屋敷のようになっている家もあるという話です。こういう家で検針をするには余計な時間がかかるため、稼ぐ効率が悪くなってしまいます。
立ちっぱなしの仕事で体力が必要
検針の作業そのものは決して難しくありませんが、ある程度の体力は必要となってきます。検針を1件1件こなすのに歩き回ることになるため、体力がないと務まらない仕事です。この間はずっと立ちっぱなしで、座って休む場面は基本的にありません。
決められた検針日の範囲内であれば、時間には融通のきく仕事でもあります。話を聞いた検針員(40代くらいの女性)は途中で休憩を入れて、疲れをためないようにしているということでした。
犬に吠えられるのがきつい
検針に訪れた家で住人と顔を合わせることは滅多にないそうですが、外で犬を飼っている家もあります。犬が放し飼いにされているような家であっても、メーターが敷地内にある限りは敷地に入るしかありません。
犬はもともと番犬として飼育されるようになったほど、警戒心が強い動物です。臆病な性質ゆえの防衛反応であっても、大きな声で吠えられると恐怖を感じてしまいます。犬が犬が苦手な人にとって、検針員は慣れるのが大変な仕事です。
休めないのがきつい
検針員のバイトはある程度自分のペースで働ける仕事ですが、1年間の検針スケジュールがきちんと決まっている会社もあります。急用ができたり体調が悪かったりしても、決められた検針日には必ず仕事をしなければなりません。子どもの病気や冠婚葬祭でも休めない点を、検針員の仕事がきつい理由の1つに挙げている人もいます。
筆者の家でもガスの検針は月によって日にちが違いますが、水道の検針は判で押したように毎月同じ日に来ます。土日でも正月でも、検針日は変わらないようです。
急な用事や急病などで検針ができなくなった場合、代わりの検針員を手配してくれる会社もあります。検針を行う会社によっても対応が違ってきますので、求人に応募する際には事前に確認しておくといいでしょう。
住人とトラブルで精神的にきつい
検針の仕事は人とあまり関わらずにできる点が魅力ですが、住人と顔を合わせずに済むとは限りません。検針先でたまたま家の人と顔を合わせ、トラブルになることもあり得る仕事です。
電気・水道・ガスでメーターの検針を行う際には、他人の土地であっても立ち入りができるという法律の規定があります。検針員が携帯する身分証にはこの条文が明記されていますので、メーターが設置されている場所に立ち入っても不法侵入にはなりません。
だからこそ訪問先で住人と顔を合わせずに任務を遂行できるわけですが、運悪く相手と鉢合わせる可能性もあります。法律を知らない人もいるせいか、「検針員が勝手に入ってきた!」というような勘違いの例は少なくありません。不審者と間違えられるようなトラブルも、全国各地でしばしば発生している状況です。
門扉が施錠されている家でメーターを確認するには、家の人に頼んで敷地に入れてもらわなければなりません。検針日に住人がたまたま不在の場合は、何度も再訪問する羽目になったりします。
メーターが車などに隠れているような場合も、住人を呼び出す必要も出てきます。検針に協力的でない人に当たってしまうと、1件で時間を取られてしまって効率的に稼げません。
庭の植木鉢がひっくり返っていたり、門扉が壊れていたりしたトラブルで、検針員が濡れ衣を着せられた例もありました。住人との間でトラブルに発展した場合は、精神的な意味できつい思いをすることになります。
誤検針は許されない
電気やガス・水道の検針で得たメーターの数値は、料金を決定するのに欠かせない重要なデータです。入力した数値が実際と違っていた場合、契約者や雇い主の会社に迷惑をかけることになります。
入力ミスの許されない仕事ですので、誤検針を犯した場合には何らかのペナルティを受けるのが普通です。ペナルティの内容は会社によって異なりますが、「誤検針○回以上でクビ」という厳しい会社もあります。
簡単には解雇できない正社員と比べ、雇用契約のアルバイトや業務委託契約の個人事業主は弱い立場です。多くの検針員は誤検針に怯えながら、目を凝らしてメーターの数字を読み取っています。
検針員の楽なところ
ここまで検針員のマイナス部分ばかり挙げてきましたが、「検針の仕事は大変そうだから、やめておこう」と判断するのはまだ早いです。どのような仕事にも悪い部分があれば、他の仕事と比べて良い部分もあります。検針員より楽そうに見える他のアルバイトの仕事でも、別の部分で意外に大変な部分があるはずです。
検針員のアルバイトは天候の影響を受けやすい反面、以下の点では他の仕事より楽に働けます。
- 人とあまり関わらずに済む
- 自分のペースで稼げる
「人とあまり関わらずに済む」というメリットについては、記事の前半でも触れました。時には訪問先の住人と遭遇したり、声をかけてメーターの場所を教えてもらったりするケースも出てきます。人とまったく関わる必要がないわけではありませんが、業務の大半はひとりで完結できる仕事です。
検針員は職場の人間関係も希薄なため、人付き合いが苦手な人にとっては楽な仕事だと言えます。特に業務委託契約を結んで働く場合、決められた勤務時間や勤務シフトもありません。「午前9時から午後4時までの好きな時間に4~5時間勤務」「休憩時間を自由に取れる」といった求人も多く見かけます。
1日にこなす検針の件数が少ないと収入も減ることになりますが、自分のペースで稼げるという点は検針員の見逃せないメリットです。
検針員のアルバイトでどれだけ稼げる?
どれほど楽な仕事でも、稼げる金額が少なすぎては仕事のモチベーションが上がりません。その点で検針員のアルバイトはどうなのでしょうか?
検針員を募集している求人にはアルバイトやパートとして雇用契約を結ぶ働き方と、個人事業主として業務委託契約を結ぶ働き方の2種類があります。アルバイトやパートの場合は時給900円から2,000円程度まで、または日給6,000円から1万円超まで、稼げる金額はさまざまです。最低賃金を保証した出来高制で給料が増減するような求人も見られます。
給料が日給で支払われる求人の場合、1日の仕事を早く終えれば終えるほど時給換算で稼げる金額が増える仕組みです。日給6,000円でも午前中の3時間で1日分の検針を終えれば、時給換算で2,000円稼いだ計算となります。逆に検針1件1件に手間取って時間がかかった場合は、稼ぐ効率が下がってしまいます。
業務委託契約を結んで仕事を請け負う個人事業主には、アルバイトやパート従業員と違って最低賃金法が適用されません。業務委託の場合は時給や日給ではなく、検針1件あたりいくらという形で給料が支払われるのが普通です。地方の検針だと家々の間が離れているため、移動するだけでも結構な時間がかかります。
求人サイトで募集されている検針員の求人を「業務委託」で絞り込んで条件面を比較してみたところ、ほとんどの求人では検針1件あたりの金額が明記されていませんでした。具体的な金額が記載されていた求人に限っても、稼げる金額は1件あたり50円から80円程度です。
1日に多くの件数をこなせばアルバイトやパートの検針員より稼げる可能性もありますが、件数を消化できないと時給換算で最低賃金より低くなりかねません。住宅が密集していたりして稼げる地区を担当になれば、同じ時間働いても効率的に稼げるようになります。同じ地区を担当しても、検針の仕事に慣れた人と不慣れな人で稼げる金額に差が出てくる仕事です。
検針員の仕事がなくなる?
電気の検針員を10年間務めた川島徹さんの『メーター検針員テゲテゲ日記』を読むと、検針員の仕事の大変さがよくわかります。その中で気になる記述がありました。電気の使用状況を無線通信で送信できるスマートメーターが普及すると、検針員が不要になるという話です。
すでに電気の検針については、契約者の半分以上でスマートメーターが導入されています。まだ導入されていない家庭にはこれまで通り訪問による検針を行っていますが、今後10年ほどをかけて徐々に無線化が進められていく予定です。したがって将来的には、電気の検針員が完全に姿を消すものと予想されます。
ガスや水道の分野でも、スマートメーターの導入が進められている最中です。今はまだ検針員のアルバイト求人も結構募集されていますが、これから先は求人が減っていくのは間違いありません。
まとめ
電気やガス・水道の検針員は人とあまり関わらずに稼げる点で、精神的に楽な仕事です。コミュニケーションが苦手な人に向いた仕事ですが、暑さ寒さや天候に大きく左右される点では覚悟が必要になってきます。
訪問先でたまたま住人と鉢合わせたり、犬に吠えられたりする可能性もゼロではありません。メーターがわかりにくい場所に設置されている例も少なくないだけに、不審者と間違われたりするようなトラブルも考えられます。
そういった点が「きつい」と感じられる場合もありますが、検針の仕事に慣れれば時給換算で効率的に稼ぐことも可能です。将来的にはなくなると予想される仕事ですので、興味がある人は求人が募集されている今のうちに経験してみるといいでしょう。